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【弁護士が解説】片方が優先道路の交差点で起きた事故の過失割合は?

作成日:更新日:
yamazaki_sakura

自動車を運転していたEさん(仮名)。交差点を直進しようとしたところ、左方から自転車が交差点内に進入してきました。驚いたEさんは慌てて急ブレーキを踏み、ハンドルを切ったため衝突は回避できましたが、車両はガードレールにぶつかって破損した上、Eさんは車体に頭をぶつけてけがを負ってしまいました。
後日、相手側の保険会社と過失割合について話し合いをしたところ、「双方の過失割合は5:5が妥当だろう」とのこと。

しかし、Eさんが走行していたのは優先道路です。減速もせずに交差点内に飛び出してきた相手方の過失のほうがはるかに大きいはずであり、Eさんは5:5という過失割合に納得がいきません。

このような場合、Eさんは過失割合について、何か主張はできるのでしょうか。

この記事では、次のことについて、弁護士がご説明します。

  • 優先道路の見分け方
  • 一方が優先道路である交差点での事故の過失割合
  • 一方が優先道路である交差点での事故で過失割合に納得できないときの対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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優先道路とは?

まず前提知識として、そもそも優先道路とはどのような道路のことをいうのか、説明します。

(1)法律上の規定

道路交通法上の「優先道路」は、道路交通法36条2項により明確に定義されています。

車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

引用:道路交通法36条2項

参考:道路交通法|e-gov法令検索

つまり、道路交通法上の「優先道路」とは、次の道路のことです。

  • 道路標識などで優先道路と指定されている道路
  • 道路標識などで交差点内に中央線もしくは車両通行帯が設けられている道路

なんのために、優先道路とその他が区別されていんですか?

優先道路を直進中の車両には、次の効果が認められているのです。

  • 信号機のない交差点でも、徐行する必要がない(道路交通法36条3項)
  • 見通しが悪い交差点でも、徐行する必要がない(道路交通法42条1号)

なお、これらはいずれも信号機などで交通整理の行われていない交差点でのルールです。
信号機などにより交通整理が行われている交差点では優先道路はなく、信号機の表示に従って進行することになります。

いわゆる「左方優先」や、「そちらが一時停止だからこちらが優先だ」というのは、相対的な「優先の道路」で、法律上の「優先道路」というわけではありません。

(2)優先道路の見分け方

では、実際に道路を走行中に優先道路を見分けるための2つの基準を紹介します。

(2-1)道路標識

【優先道路の標識】

もっとも明確な基準が、「優先道路」の標識です。
縦の太い矢印が走行中の道路が優先道路、それと交差する横の細いラインは非優先道路を表しています。

【補助標識】

また、同方向に向かって合流する道路などで、一時停止を表す「止まれ」や「徐行」などの標識とともに「前方優先道路」の補助標識がある場合、その前方の道路が優先道路となります。

(2-2)センターライン

センターライン(中央線)が交差点内を貫通している場合は、センターラインがあるほうが優先道路となります。センターラインが、破線、白色、黄色のどれでも同じです。

【センターライン】

交通量が多く、センターラインの破線が消えている場合や、積雪でセンターラインが見えなくなっている場合、道路交通法上の効果を厳密に考えるならば、優先道路性は失われています。
しかし、交通事故の加害者と被害者の双方が優先道路を熟知している場合には、民事上の過失割合としては優先道路であるとすべきでしょう。

四輪車どうしの事故

続いて、一方が優先道路の場合の出会い頭の交通事故の過失割合について説明します(※なお、これからご紹介する過失割合は、いずれも事故のパターンごとの基本的な過失割合です。実際には、個別の事故の具体的状況に応じて修正がなされます)。

【四輪車どうしの場合】

まず、四輪車どうし(直進車どうし)の事故の過失割合から見ていきましょう。

この場合、優先道路を通行している車両のほうが優先されることから、優先でない方の道路を走っていた車の過失が大きくなります。

優先道路を走行している側は、そもそも過失はないと思っていました。
優先道路を走行していても過失が認められるんですね…。

優先道路を通行している車にはあらかじめ徐行する義務はありません。
ですが、優先でない道路を通行する車両が現れた場合には注意して、できる限り安全に走行する義務がある(道路交通法36条4項)ので、そのような義務を怠って交通事故が起きた場合には、やはり過失が認められるのです。

実際には、優先道路を進行する側が事故を回避するのは不可能な場合が多いのですが、停止中の追突事件同様に無過失とまでは言いにくく、類型として優先道路を走っていた車の過失割合は0%にまではならず、10%の過失が生じるとされます。

参考:東京地裁民事交通訴訟研究会(編集)『別冊判例タイムズ38』判例タイムズ社【105】

【過失割合(%)】

A(優先車)B(非優先車)
1090

四輪車とバイクの事故

次に、四輪車とバイクの事故の場合です。
この場合、優先道路を走行していたのが四輪車かバイクかで過失割合が変わってきます。

【バイクが優先道路の場合】

バイクが優先道路を走行していた場合、自動車どうしの場合と同じく、四輪車:バイクの過失割合は90:10となります。

参考:東京地裁民事交通訴訟研究会(編集)『別冊判例タイムズ38』判例タイムズ社【171】

【過失割合(%)】

A(優先車)B(非優先車)
1090

【四輪車が優先道路の場合】

これに対し、四輪車が優先道路を走行していた場合、四輪車:バイクの過失割合は30:70となります。
四輪車どうしの事故の場合と比べ、四輪車の過失割合が大きくなっていますよね。これは、道路上では四輪車よりもバイクの方が弱者であり、過失割合を決めるにあたっては、立場の弱いバイクを保護すべきという考えによるものです。

バイクの側のケガに自賠責保険枠をできるだけ使わせてあげようという人道上の配慮も含まれていますが、そうだとすると、物損部分の過失割合も30:70とするのはいささかやりすぎかもしれません。

参考:東京地裁民事交通訴訟研究会(編集)『別冊判例タイムズ38』判例タイムズ社【172】

【過失割合(%)】

A(優先車)B(非優先車)
3070

四輪車と自転車の事故

次に、四輪車と自転車の事故の場合です。
この場合も、優先道路を走行していたのが四輪車か自転車かで過失割合が変わってきます。

【自転車が優先道路の場合】

自転車が優先道路を走行していた場合、四輪車:自転車の過失割合は90:10となります。

参考:東京地裁民事交通訴訟研究会(編集)『別冊判例タイムズ38』判例タイムズ社【245】

【過失割合(%)】

A(優先車)B(非優先車)
1090

【四輪車が優先道路の場合】

冒頭でご紹介した、Eさんの事例ですね。

四輪車が優先道路を走行していた場合、四輪車:自転車の過失割合は50:50となります。
ここでも、四輪車どうしの事故の場合と比べ、四輪車の過失割合が大きくなっています。これは、道路上では四輪車よりも自転車の方が弱者であり、過失割合を決めるにあたっては、立場の弱い自転車を保護すべきという考えによるものです。

参考:東京地裁民事交通訴訟研究会(編集)『別冊判例タイムズ38』判例タイムズ社【246】

【過失割合(%)】

A(優先車)B(非優先車)
5050

一方が優先道路である交差点での事故で過失割合に納得できないときは?

自動車×自転車の交通事故は、自動車が優先道路であっても、自動車の過失割合は結構高いんですね…。
この過失割合は、変更できないんですか?

今回ご紹介した過失割合は、事故のパターンごとの基本的な割合です。
個別の事情によって、過失割合は修正されることも多いんですよ。

それでは、事故の相手側の保険会社が提示する過失割合に納得できない場合の対処法について説明します。

(1)納得できる過失割合で示談すべき理由

そもそも過失割合とは、事故が発生したことや損害が拡大したことについての各当事者の過失(不注意・ミス)の割合をいいます。

過失割合が大きいほど責任が重くなります。
例えばある事故について、被害者の過失が2割・加害者の過失が8割の場合、過失割合は20:80となります。仮に、交通事故により被害者に生じた損害額が1000万円だったとしても、被害者が最終的に受け取ることのできる賠償金は、1000万円のうち、2割の過失分である200万円を差し引いた800万円だけなのです。

このように、被害者の過失割合に応じて賠償額が減額されることを「過失相殺」と言います。

過失割合は、過去の事故の判例をもとに、今ご紹介したような事故のパターンに応じて当事者どうしの話し合いで決めることになります(話し合いで決まらない場合、最終的には裁判所に判断してもらうことになります)。
過失割合は、被害者が受け取れる損害賠償額に大きく影響します。
したがって、被害に見合った適正な賠償を受けるためには、事故状況を正しく反映した過失割合で相手方と合意することが大切なのです。

(2)過失割合は個別の事情によって修正される!

交通事故の示談の際、通常は、相手方の保険会社から示談金額と過失割合の提示があることが多いです。

ですが、保険会社の提案する過失割合をそのまま受け入れなければいけないわけではありません。

過失割合は、個別の事情によって、修正できることも多いのですが、保険会社の提示は、必ずしも被害者側に有利となる方向での過失割合の修正要素の有無について十分に検討されているとは限りません。

過失割合に納得できない場合には、具体的な事情を挙げ、「この事情により過失割合は修正されるはず」としっかり伝えるようにしましょう。

例えば、今回の事例の場合、次のような事情があれば、自転車の過失が加算される可能性があります。

(2-1)自転車に著しい過失がある場合

「著しい過失」とは、事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失のことです。例えば、自転車では次のようなケースが、通常著しい過失とされます。

  • 自転車の2人乗り(都道府県の公安委員会の規則等で認められている場合を除く)
  • 片手運転(片手で傘をさしている場合など)
  • 夜間の無灯火   など

また、自転車が右側通行をしていて、自動車からみて左方から交差点に進入したという場合も、自動車による事故の回避が困難になるため、自転車に「著しい過失」があるとされる可能性があります。

(2-2)自転車に重過失がある場合

「重過失」とは、著しい過失よりもさらに重い、故意に比肩するような重大な過失のことです。例えば、自転車では次のようなケースが、通常重過失とされます。

  • 酒に酔ってフラフラな状態で運転した
  • 病気や薬物の影響で正常な運転ができない状態で運転した
  • ピストバイクを改造するなど、ブレーキのきかない自転車を運転した など

他方、自転車が自転車横断帯や横断歩道を通行していた場合や、自転車を運転していたのが児童や高齢者の場合、逆に自動車側に過失が加算される可能性があります。
個別の事故で過失割合には納得できないけれど、どう修正したら良いか分からないという場合には、まずは弁護士にご相談ください。

過失割合の修正要素について詳しくはこちらをご覧ください。

過失割合修正要素とは?事故別の加算要素と減算要素を弁護士が解説

(3)過失割合に納得できないときは弁護士に相談を

相手側の保険会社が提示してくる過失割合に納得できない場合は、弁護士に相談するのも一つの手です。

「どちらが優先道路だったか」など、誰が見ても明らかな事実を覆すことは難しいですが、弁護士に交渉を依頼し、相手方が見逃しているような修正要素を根拠とともに主張することで、より適正な過失割合で相手方と示談(合意)できる可能性が高まります。

さらに、ご自身と相手方との間で、そもそも事故態様そのものについての主張が食い違う場合なども、弁護士に相談するメリットは大きいです。

と言うのも、これまでご説明したとおり、基本的な過失割合や過失割合の修正要素は、事故態様ごとに大枠が決まっています。
そこで、被害者側と加害者側で事故態様に争いがある場合には、まずは事故態様を確定しなえればいけません。
事故態様を確定するためには、次のような証拠を集める必要があります。

  • ドライブレコーダーの記録
  • 交通事故の目撃者の話
  • 防犯カメラの映像
  • 事故直後の様子を撮影した写真
  • 警察の実況見分調書 
  • 加害者と被害者の供述調書           など

このうち、警察の実況見分調書や供述調書は、刑事事件の捜査のために警察や検察が作成する「刑事記録」です。刑事記録は開示を請求したり閲覧・謄写を請求したりできる場合があります。

そもそも事故態様自体が保険会社と食い違うような場合、これらの証拠をふまえてまずは事故態様を確定し、その上で適正な過失割合に修正するよう保険会社と交渉する必要があります。
ですが、保険会社と交渉し納得させるためには、これまでの裁判例などをふまえて説得的にご自身の過失割合を主張しなければいけませんので、専門的な知識も必要です。
もしも、刑事記録の入手方法が分からなかったり、適正な過失割合を主張・交渉に自信がないという場合には、交通事故を専門に取り扱っている弁護士に相談されることをお勧めします。

交差点内の事故について、弁護士に依頼した結果、過失割合が修正されて受け取れる賠償金が増額された事例を一部ご紹介します!

過失割合に納得いかないときの対処法について詳しくはこちらをご覧ください。

示談交渉などを弁護士に依頼すると、別途弁護士費用がかかります。
もっとも、被害者ご自身もしくは一定のご親族等が自動車(任意)保険に加入している場合は、この弁護士費用を「弁護士費用特約」でまかなえる場合があります。
「弁護士費用特約」とは、弁護士への相談・依頼の費用を一定限度額まで保険会社が補償する仕組みです。この弁護士費用特約を利用すると、実質的に無料で弁護士に相談・依頼できることが多いのです。

ここでポイントなのが、「弁護士費用特約」が利用できるのは被害者ご自身が任意保険に加入している場合だけではない、という点です。
すなわち、次のいずれかが任意保険に弁護士費用特約を付けていれば、被害者ご自身も弁護士費用特約の利用が可能であることが通常です。

  1. 配偶者
  2. 同居の親族
  3. ご自身が未婚の場合、別居の両親
  4. 被害にあった車両の所有者

また、弁護士費用特約を使っても、基本的には自動車保険の等級が下がる(保険料が上がる)ことはありません。

ご自身が弁護士費用特約を利用できるのか、利用できる条件などを保険会社に確認してみましょう。

弁護士費用特約について詳しくはこちらをご覧ください。

弁護士費用特約は保険に入っていない人でも補償範囲になる?利用できるケースを解説

【まとめ】一方が優先道路である交差点で起きた事故の過失割合は事故のパターンごとに異なる

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 優先道路とは、基本的に道路標識などで優先道路と指定されている道路、または道路標識などで中央線もしくは車両通行帯が設けられている道路をいう。
  • その他、センターラインの有無や道路の幅、一時停止の標識などによっても優先道路が決まる。
  • 一方が優先道路である交差点での事故の過失割合は、事故のパターンによって異なる。
  • 自動車×自転車の事故の場合、自動車が優先道路を走行していたとしても、基本的な過失割合は50:50になる。
  • 過失割合は、個別の状況によって、修正ができる場合がある。
  • 事故の相手側の保険会社が提示してくる過失割合に納得がいかない場合は、弁護士に交渉を依頼することも検討すべき。

被害者に1割の過失が認められると、被害者が受け取れる賠償金は1割分減額されてしまうので、適正な過失割合で示談をすることはとても大切です。

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すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという完全成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。

また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
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実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。

(以上につき、2022年9月時点)

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