自動車の運転中、次の予定に遅れそうなのに前の車が遅いとイライラしてしまうことがありませんか。そんなときでも、車間距離を詰めて相手を煽ることは事故につながる危険性が高いので、絶対にやめてください。
周囲の安全を確認して追い越すか、または追い抜くようにしましょう。
追越しと追い抜きの違いは?
そもそも追越しと追い抜きにはどのような違いがあるのでしょうか。
(1)追い越しとは
道路交通法2条1項21号で、追越しは次のように規定されています。
追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
引用:道路交通法2条1項21号
つまり、追越しとは、2車線以上ある状況で走行中、前の車に追いついたときに右側の追い越し車線に移って、前の車を抜いた後元の車線に戻ることです。左側の車線から追い越すことは、道路中央寄りを通行している車両を追い越す場合等を除き、基本的に控えてください。
安全に追い越すためには、次の3つのポイントを意識してください。
- 後方の車両と十分な車間距離を開ける
ウインカーを点滅させて周囲の車に追越しを知らせておくのも有効です。 - 対向車が来ていないことを確認する
一般道路など一方向の車線が1つしかない場合には、必ず対向車が来ていないことを確認しましょう。見通しの悪い場所で追越しをすると事故を招くのでやめてください。 - 追い越した後は速やかに走行車線に戻る
自動車を運転するときには、一番左側の車線を走行しなければなりません(道路交通法20条1項)。ずっと追越車線を走っていると、「通行帯違反」となります。
(2)追い抜きとは
追越しと異なり、追い抜きは道路交通法上定義されていません。
一般に追い抜きと追越しは車線変更を要するかで区別されており、追い抜きとは、車線変更をせずに前の車の側方を通過して、前の車の前方に出ることです。
追い越しのルール
追い越し禁止のルールや追い抜かれる側のルールを確認しましょう。
(1)追い越し禁止の場所がある
道路交通法30条では、追い越し禁止場所について次のように規定されています。
車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
引用:道路交通法30条
一 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂
二 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
つまり、次の9つの場所では追越しが禁止されているということです。
- 道路標識等により追越しが禁止されている道路
- 道路のまがりかど附近
- 上り坂の頂上附近
- 勾配(こうばい)の急な下り坂
- トンネル(車両通行帯の設けられた道路を除く)
- 交差点及びその手前の側端から30メートル以内の部分
- 踏切及びその手前の側端から30メートル以内の部分
- 横断歩道又及びその手前の側端から30メートル以内の部分
- 自転車横断帯及びその手前の側端から30メートル以内の部分
また、二重追越しになるときにも追越しは禁止されています(道路交通法29条)。
二重追越しとは、前の車が自動車を追い越そうとしているときに追い越すことです。前の車が原動機付自転車や軽車両を追い越そうとしている場合には、二重追越しにあたりません。
もっとも、前の車が加速した状況での追越しが危険なことには変わりありませんので、そのような状況で前の車を追い越すのはやめましょう。
さらに、教習所では次のような状況では追越しをしないように指導されています。
- 後ろの車が自分の車を追い越そうとしているとき
- 前の車が右折しようとしているとき
- 対向車や路面電車の通行を妨害するおそれがあるとき
- 追い越した車を妨害しないと左側の車線に戻れないとき
オレンジのラインは追い越し禁止
前の車を追い越そうとするとき、センターラインがどうなっているかを確認しましょう。
センターラインには、白色の実線、白色の破線(点線)、オレンジの実線の3種類があります。皆さんは、センターラインの色の意味をきちんと把握できていますか。
センターラインが二重線、三重線になっている場合には、中央の線に着目します。
センターライン | 意味 |
---|---|
白色の実線 | はみ出し禁止(追い抜きは可能) |
白色の破線 | はみ出し、追い越し可能 |
オレンジの実線 | 追い越しのためのはみ出し禁止 |
オレンジ色の実線になっている場合には、追越ししないようにしてください。自分の前を通行しているのが自動車ではなく自転車の場合にも追越禁止なので注意しましょう。
もっとも、違法駐車の車両を追い越す場合等やむを得ない場合にはオレンジ色の実線でもはみ出すことができます。
(2)追越車線を走行し続けるのは違反
一番右側にある追越車線を走行し続けていると、「通行帯違反」として取締りの対象になります。どのくらい追越車線を走り続けると取り締まられるかについて明確な規定はありません。「2km未満なら追越車線を走っても大丈夫」と聞いたことがあってもそれは事実ではなく、2km未満しか走っていなくても取り締まられることがあるので注意しましょう。
(3)追い越「される」側のルール
追越しされる側の運転手には、次の2つの義務が課されています(道路交通法27条)。
- 追越しが終わるまで速度を上げてはいけない
- できる限り道路の左側端に寄ってこれに進路を譲らなければならない
相手が追い越そうとしている状況でスピードを上げてしまうと、追い越そうとした側に「煽られた」という印象を与え、思わぬトラブルを招きかねません。
後ろの車が勝手に追い越すだけだと思わずに、事故を起こさないように協力してください。
この義務に反すると1点減点されますし、次の表のとおり反則金の規定もあります。
悪質なケースでは刑事処分として5万円の罰金を科される可能性もあるのです。
車の種別 | 反則金の金額 |
---|---|
大型車 | 7000円 |
普通車 | 6000円 |
二輪車 | |
小型特殊車 | 5000円 |
原付 |
追い越し禁止違反の罰則は?
追い越し禁止違反の点数と反則金について解説します。
(1)減点される
追い越し禁止違反では、いわゆる青キップ(交通反則切符)が切られ、車両の種類を問わず、2点減点されます
原則として7日以内に納付書で反則金を支払えば、刑事裁判になる恐れがなくなるため、前科はつきません。
しかし、過去3年以内に交通違反をしており、今回の違反で違反点数が6点に達すると免許停止処分になりますので、十分に注意してください(前歴があると免許停止処分になる点数が低くなり、前歴が4回以上あると直ちに150日間の免許停止処分になります)。
(2)反則金が課される
追い越し禁止違反の反則金は、次の表のとおりです。
車の種別 | 反則金の金額 |
---|---|
大型車 | 1万2000円 |
普通車 | 9000円 |
二輪車 | 7000円 |
小型特殊車 | 6000円 |
原付 | 6000円 |
参照:交通違反の点数・反則金等の一覧表(その1)|埼玉県警察
【まとめ】交通事故や交通トラブルでお悩みの方はアディーレ法律事務所へ
追越しが禁止されているのは、追い越すと事故につながる危険性の高い場所・状況なので、追い越し禁止違反をせずに道路交通法を遵守して車を運転しましょう。
きちんと注意して運転していたにもかかわらず事故に巻き込まれてしまった場合には、事故の相手方の保険会社の対応でご不安な方は、交通被害事故を取り扱っているアディーレ法律事務所にご相談ください。