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残業200時間の異常性!この状況で起こる問題や違法性も解説

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

皆さんの残業時間は月何時間ですか?
もし、残業時間(時間外労働)が月200時間にも上っている場合は、要注意です。
働きすぎで体を壊したり、最悪の場合、過労死するリスクも高くなります。

残業200時間の場合に起こる問題や違法性について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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残業200時間はどのぐらい異常なの?

残業200時間とひとことで言っても、どれだけ負担のかかる労働をしているかというのは、なかなか想像できないかもしれません。
そのため、ここではまず、月200時間の残業を1日あたりの残業時間に換算して、その重さや負担を考えてみましょう。
次に、「過労死ライン」(※)と比較をして、残業200時間の異常性を見ていきます。

※後述のとおり、過労死ラインとは、過労死等(脳血管疾患・心臓疾患による死亡等)招きやすいとされている残業時間(時間外労働)の基準です。
時間外労働とは、原則として、1日8時間、週40時間を超える労働のことです。

(1)残業200時間を1日の残業時間で換算してみる

25日出勤した月の残業(時間外労働)が200時間だった場合、1日あたりの残業(時間外労働)の時間は8時間です。
1日8時間の法定労働時間と合わせた場合、1日16時間働いていることになります。

例えば、朝8時出勤の会社だった場合、それから16時間後というと、24時です。
ただし、会社にはお昼休みなどの休憩時間があるため、朝8時出勤の人が月200時間残業をした場合、退社は25時(午前1時)以降になる可能性が高いです。
※8時間を超える勤務の場合、労働基準法上、休憩は1時間以上取る必要あります。

会社に行くためには、通勤時間やその準備の時間も必要になります。
通勤時間を往復1時間、自宅での入浴や食事・出かける準備などに3時間かけた場合、1日3時間弱しか睡眠時間を確保できないことになります。

残業200時間のイメージ

1日の時間をイメージすると、こんな感じです。
細かい時間はさておき、1日の回り方がこのような状況だという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、25日出勤ということは、週の休みは1回程度です。
この状況で働き続けると、心身にかなりの負担がかかります。

(2)過労死ラインと残業200時間

過労死ラインとは、過労死等(脳血管疾患・心臓疾患による死亡等)を招きやすいとされている残業時間(時間外労働)の基準です。

「過労死等」とは何ですか?

「過労死等」とは、次の場合です。

  1. 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  2. 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  3. 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患・精神障害

具体的には、次のいずれかの状況が『過労死ライン』と評価されることがあります。

  • 発症前2~6ヶ月間の時間外労働が平均月80時間を超える場合

    または、

  • 発症前1ヶ月の時間外労働が月100時間を超える場合

厚生労働省では、過重労働により労災(過労死等)が生じたか否か判断するための認定基準を設けています。

この厚生労働省の認定基準によると、残業(時間外労働)が月45時間を超えると、業務と、脳疾患や心疾患の発症との関連性が徐々に強まると評価されます。

そして、時間外労働が次のラインを超えると、業務と脳疾患や心疾患などの発症との関連性が「強い」と評価されます。

  • 発症前の1ヶ月に100時間を超える場合

    または

  • 2~6ヶ月の平均がおおむね80時間を超える場合

残業200時間は、この認定基準をはるかに超えているため、過労死リスクがきわめて高い水準と評価すべきです。

参考:脳・心臓疾患の労災認定「過労死」と労災保険|厚生労働省

残業200時間に違法性はない?

残業200時間は原則として違法です。
残業200時間の違法性の有無は、労働基準法上の時間外労働に関するルールに沿って判断されます。
特に注目したいのが、36(さぶろく)協定です。

36協定は、労働基準法36条にもとづく「時間外・休日労働に関する労使協定」のことです。
法定労働時間を超えて労働者に労働をさせる場合(時間外労働の場合)や、法定休日に労働させる場合(休日労働の場合)には「36協定の締結」と「所轄労働基準監督署長への届出」が必要となります。

36協定を締結するためには、使用者と、全労働者(パートやアルバイトを含む)の過半数で組織する労働組合(過半数組合)が書面による協定を行わなければなりません。
過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)と、書面による協定をする必要があります(労働基準法36条1項)。

36協定があれば残業200時間でも問題なし?

36協定でも、無制限な残業が認められるわけではありません!

36協定を締結したからといって、残業200時間が問題なしになるわけではありません。

すなわち、36協定を締結する場合であっても、時間外労働の上限時間は原則として、次の時間内と決められています。

月45時間・年360時間(労働基準表36条4項)

それ以上の残業を36協定で認めることは出来ますか?

36協定の「特別条項」によって、臨時的な業務上の必要がある場合には、もう少し上限時間を伸ばすことは出来ます。

それでも残業時間には原則として次のような制限があります(労働基準法36条5項、6項)。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、どの2~6ヶ月の平均(複数月平均)をとっても、全て1ヶ月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度

また、特別条項の有無にかかわらず、常に、時間外労働と休日労働の合計は、

  • 月100時間未満
  • どの2~6ヶ月の平均をとっても80時間以内

にしなければなりません(労働基準法36条6項2号、3号)。

なお、特別条項の有無にかかわらず、「坑内労働その他労働基準法施行規則で定める健康上特に有害な業務」の時間外労働は、1日2時間を超えないことが必要です(労働基準法36条6項1号)。

※ただし、医師など一部の業種では、時間外労働・休日労働の上限規制の有無・内容が異なります。

何だかんだと、いつも忙しくて、残業時間が延ばされている気がします。
特別条項は、どんな時でも有効なんですか?

特別条項が使えるのは、「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」に限られます。
例えば、突発的な仕様変更、製品トラブル・大規模なクレームへの対応、機械トラブルなどです。
「業務上やむを得ない時」など、結局常に長時間労働になってしまうようなケースでは認められません。

参考:時間外労働の上限規制わかりやすい解説 限度時間を超える場合の36協定届の記載例(特別条項)|厚生労働省

残業200時間は、労働基準法の36条で許容される倍以上の残業時間であり、原則として違法です(医師など、残業の上限規制が全部または一部が適用除外・猶予されている業種を除く)。

この上限規制に違反すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法119条1号)。

残業の上限規制について詳しくは、こちらの記事もご確認ください。

36協定をわかりやすく解説!締結における時間外労働の上限は何時間?

残業200時間で起こりやすい病気やトラブル

残業200時間の状態が続くと、次のような心や体の病気や不調、そこからくるトラブルが起こりやすくなります。

1.心疾患や脳疾患

2.精神疾患

3.寝不足・過労による事故などのトラブル

(1)心疾患や脳疾患

心疾患は、心筋梗塞・狭心症・心停止・解離性大動脈瘤が労災補償の対象です。
脳疾患は、脳出血・くも膜下出血・脳梗塞・高血圧性脳症が労災補償の対象となります。

令和2年度において、過労死等の労災補償の支給が決定されたのは802件(うち死亡148件/請求件数2835件)で、そのうち心疾患・脳疾患の労災補償は194件(うち死亡67件)でした。
なお、心疾患・脳疾患による労災補償の支給が決定した方の時間外労働時間の内訳は次のとおりです。

時間外労働時間期間
発症前1ヶ月発症前2~6ヶ月における平均
60~80時間017(5)
80~100時間475(28)
100~120時間27(7)18(9)
120~140時間14(6)5(1)
140~160時間84(2)
160時間以上5(2)1
※支給決定事案のうち、「異常な出来事への遭遇」又は「短期間の加重業務」を除きます。
※()内の数字は死亡した方です。

残業時間200時間であると、このような脳疾患や心疾患が発症しやすくなることがお分かりになるかと思います。

参考:脳・心臓疾患の労災補償状況|厚生労働省
参考:脳・心臓疾患の労災認定「過労死」と労災保険|厚生労働省

(2)精神疾患

厚生労働省の労災認定の基準によれば、仕事が特に過重であると、うつ病などの精神障害発病の原因にもなりやすくなります。
当該基準によると、残業(時間外労働)200時間は「発病直前の1ヶ月におおむね160時間以上の時間外労働を行なった場合」に該当するため、評価としては「特別な出来事としての極度の長時間労働」にあたります。

このような極度の長時間労働に当たる場合は、精神障害を発病しやすくなります。
令和2年度において、過労死等の労災補償の支給が決定されたのは802件のうち、精神障害に関する労災補償は608件(うち、未遂を含む自殺件数81件)でした。
なお、精神障害に関す労災補償の支給が決定した方の時間外労働時間の内訳は次のとおりです。

時間外労働時間時間外労働時間(1ヶ月平均)
20時間未満68(3)
20~40時間40(7)
40~60時間45(11)
60~80時間26(13)
80~100時間28(12)
100~120時間56(10)
120~140時間24(6)
140~160時間12(6)
160時間以上30(6)
その他279(7)
※()は自殺した方の件数です。

うつ病などの精神障害は、時間外労働だけでなく、職場環境などによることも多いですが、長時間にわたる時間外労働などによって、睡眠障害や自殺念慮などの症状を発症し、その影響で薬物依存傾向から過量服薬に及んだ結果死亡した事例(東京地裁平成23年3月25日・富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ事件)などもあります。ですから、残業200時間をしていると、うつ病になったり、精神障害が原因となって自殺をする危険性が高まります。

参考:精神障害の労災補償状況|厚生労働省
参考:精神障害の労災認定|厚生労働省

(3)寝不足や過労によるトラブルや事故

心疾患や脳疾患、うつ病といった明らかな病気にならなくても、残業200時間によって寝不足や過労が続けば、通勤中の交通事故などを起こすリスクも高まります。
また、仕事中にもミスを頻発したり、製造業などでは異物混入などの大きな問題を起こすリスクもあります。

このように、残業を200時間もしていると、仕事における安全性が著しく低下するリスクがあります。

残業200時間の残業代はきちんと支払われている?

残業200時間を強いるようなブラックな会社の場合、その残業代をきちんと払っていない可能性もあります。

残業200時間の残業代の金額は従業員本人の時給や月給、その会社の所定労働時間、会社の規模などの各種条件によって変わってきます。

例えば、2023年4月1日以降に、東京の最低賃金(2023年度:1113円(時給))に近い、1時間あたり1200円の基礎賃金の人が、残業200時間(時間外労働)を行なった場合、次の計算式の通り、34万2000円の残業代になります。
※計算上、深夜労働や休日労働は行っていないものとします。

1200円×1.25(割増率)×60時間(残業時間)+1200円×1.5(割増率)×140時間(残業時間)=34万2000円

※2023年4月1日以降は、全ての企業で、1ヶ月60時間を超えた時間外労働について割増率が1.5倍以上になります。

※中小企業は、2023年3月末までは、1ヶ月60時間を超える時間外労働についても、最低の割増率は1.25倍となります。

「中小企業」とは、どの規模の会社ですか?

ここでいう中小企業は次の条件に当てはまる場合をいいます。

  • 小売業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が50人以下
  • サービス業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • その他:資本金3億円以下または常時使用する労働者が300人以下

この流れで算出した残業代は、あくまでも最低賃金に近い水準です。
賃金単価がもっと高い人の場合、残業代もさらに高くなります。

残業(時間外労働)が200時間にも及ぶというのは、基本的には違法かつ異常な状態です。
周りが皆同じように働いているから、と思って会社に言われるがまま残業をしている方もいるかもしれません。

いつまでも状況が変わらなかったり、残業代も支払われていないような会社であれば、残念ながら退職を検討しても良いでしょう。
ご自身で退職を申し出ることが難しい、ということであれば、退職手続を弁護士など第三者が代わりに行ってくれる「退職代行サービス」の利用を検討することも一つの方法です(アディーレ法律事務所も退職代行サービスを提供しています)。

退職代行について詳しくは、次の記事をご参照ください。

退職代行とは?サービスの内容や未払賃金・残業代も請求できるか解説

参考:地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

【まとめ】残業200時間は違法の可能性が高く、未払いの残業代があることも

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 25日出勤した場合で時間外労働時間が月200時間というと、1日当たり16時間働いていることになり、「過労死ライン」を超える。
  • 「過労死ライン」は、時間外労働時間が、発症の1ヶ月前に100時間を超える又は発症2~6ヶ月の平均が80時間を超える場合。
  • 時間外労働時間が「過労死ライン」を超える場合、健康を害するリスクが高く、脳疾患や心疾患、精神疾患が発症する可能性が高くなる。
  • 36協定を締結しても、基本的には月200時間を超える時間外労働は違法である。
  • 月200時間の時間外労働をさせる会社については、残業代が支払われていないことも多い。
    長時間労働に悩む人は、心身が健康なうちに退職をするのもひとつの方法です。

アディーレ法律事務所では退職代行を取り扱っており、退職代行に関する相談料は何度でも無料です。

また、未払いの残業がある方は、しっかりと請求するようにしましょう。
アディーレ法律事務所は、残業代請求も取り扱っております。残業代請求については、相談料・着手金はいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。

そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年8月時点

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