「残業代が未払いになっているけど、遅延損害金も請求できないだろうか」
そんな風にお考えではありませんか?
残業代が発生しているのに給料日に支給されなければ、残業代に遅延損害金が発生することがあります。
また、場合によっては、付加金というペナルティが発生することもあります。
実際に未払い残業代や遅延損害金を請求するには、正確な知識が必要です。
この記事では、遅延損害金や付加金の計算方法、実際に請求する方法などをわかりやすく説明しますので、参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 残業代に遅延損害金が発生する場合
- 未払い残業代の遅延損害金の利率
- 未払い残業代と遅延損害金を請求する方法
- 未払い残業代の付加金
ここを押さえればOK!
未払い残業代や遅延損害金の請求方法には、会社との任意交渉、労働審判、訴訟の3種類があります。遅延損害金は、法律上請求することができたとしても、実際にもらえることは多くありません。話し合って和解で合意する場合などでは、通常、遅延損害金まで含めないからです。
ただし、相手にプレッシャーをかける効果があるため、遅延損害金を請求するのには意味があります。時効もありますので、「残業代を請求しよう」と思ったタイミングで早めに弁護士に相談するようにしましょう。
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中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
未払い残業代の遅延損害金とは
未払い残業代がある場合、遅延損害金を加えた額を請求することができます。どれくらいの利率なのか、どうやって計算したらいいのかわかりやすく説明します。

(1)未払い残業代には「遅延損害金」が加算される
残業代を本来の支払日に支払わないと、「遅延損害金」が発生します。
「遅延損害金」とは、残業代のようなお金を支払う義務があるのに支払うべき日までに支払わなかった場合に発生する、延滞金(損害賠償金)のことです。
遅延損害金は毎月の給料だけでなく、賞与、退職金の未払いがある場合にも発生します。
(2)在職中の未払い残業代の遅延損害金の利率
残業代の遅延損害金は、一定の利率で計算します。
在職中の未払い残業代の遅延損害金の利率は、他に約定がない場合、民法404条の法定利率の3%です(※)。
※法定利率は、定期的な期間で見直されることになっています。2024年5月現在は年3%です。
法定利率について詳しくは、法定利率とは?民法改正で変更された5つの変更点と影響も解説をご覧ください。
(3)未払い残業代の遅延損害金の計算方法

※閏年は366日で計算します。
遅れた日数とは、残業代の支払期限の翌日から実際の支払日までの日数です。
残業代は毎月支払われるものなので、何ヶ月も未払い残業代がある場合には、各給料日ごとに(1ヶ月ごとに)計算する必要あります。
【計算例】
2024年4月25日に支払われるはずであった未払い残業代が2万円あるとします。
この残業代を、在職中である2024年6月1日に請求する場合、その時点までの遅延損害金は、60円です。
2万円×3%×37日÷366日(2024年は閏年)=60.82円
遅延損害金は、実際に支払われるまで日々発生しますので、最終的に支払日までの遅延損害金を請求できます。
(4)退職後の遅延損害金の計算方法
退職後に未払い残業代を請求する場合、遅延損害金の利率は年14.6%となります。
計算式は、退職前の遅延損害金と同様です。
この利率は、賃金の支払の確保等に関する法律とその施行令で定められていおり、退職日の翌日から支払日までの日数に適用されます。
ただし、天災や会社の破産手続きなど、やむを得ない事由に該当する場合には、年利14.6%は適用外となります。
未払い残業代の付加金とは
未払い残業代には、遅延損害金だけではなく、「付加金」も請求できることがあります(労働基準法114条)。
「付加金」とは、労働基準法で定められた残業代などを支払わない使用者(会社)へのペナルティ(制裁)として課せられることがあるお金です。
遅延損害金と何が違うのですか?
遅延損害金は自分で計算して請求できますが、付加金は裁判所が支払いを命じないと請求することができません。
付加金は、違反があったときから2年以内に請求しなければなりません。
会社との話し合いの結果合意した場合や、労働審判で問題が解決して訴訟まではしない場合、訴訟になっても裁判上の和解をした場合などでは、付加金は支払われません。
付加金は、訴訟手続の判決において、会社が特に悪質なケースに裁判所が支払いを命ずるものです。
そのため、付加金が認められるケースは限定的です。
話し合いで解決する余地がなく、訴訟を見据えた訴訟により未払い残業代を請求する場合に付加金も請求し、かつ裁判所が訴訟において付加金の支払い命令を下す場合に、付加金が認められるということになります。
未払い残業代の遅延損害金の請求方法
未払い残業代を請求するには、会社との任意交渉、労働審判、訴訟などの方法があります。
(1)会社との任意交渉
労働者本人または労働者本人の代理人である弁護士が、会社との間で、未払い残業代の支払いについて交渉します。一般的な交渉の流れは次の通りです。
残業代を請求する旨の書面を送付
会社と協議
残業代の金額を合意する
(2)労働審判
会社との任意交渉で合意に至らなかった場合には、労働審判を申し立てることが多いです。
労働審判では、まずは調停という話し合いによる解決を試みます。
労働審判手続きは、労働審判官1名(裁判官)と労働審判員2名(労働者側と使用者側の有識者)、合計3名で構成される労働審判委員会が審理し、原則3回以内の期日で審理を終え、話し合いによる迅速な解決を目指します。
話し合いがまとまると、調停が成立します。
話し合いがまとまらない場合には、審理の結果を踏まえて労働審判委員会の判断である審判が下されます。
(3)訴訟
労働審判の内容にも不服がある場合には、異議の申立てにより労働審判から訴訟に移行します。
また、労働審判を経ずに、訴訟を提起することも可能です。
訴訟を提起し、訴訟の手続きの中で和解して解決する場合もあります。
労働審判や訴訟について詳しくは、労働審判とは?訴訟(裁判)との違いや手続きの流れを詳しく解説をご覧ください。
未払い残業代を請求するときの注意点
(1)遅延損害金はもらえないことが多い
未払い残業代に加えて遅延損害金を請求しても、任意交渉で合意する場合には通常遅延損害金の支払いについては合意しませんので、遅延損害金はもらえません。また、労働審判で解決する場合も、通常は、遅延損害金はもらわないという内容になりますので、遅延損害金はもらえません。
訴訟になったとしても、判決ではなく、当事者が和解をして解決する場合も多いです。その場合も、遅延損害金は支払われないという内容の和解になる可能性が高いです。
遅延損害金を支払ってもらえない内容の和解になることが多いのに、遅延損害金を請求する意味はあるのですか?
遅延損害金を請求すれば、会社にプレッシャーをかけることが期待できるため、一定の効果はあると考えられます。
また、仮に、労働審判でも訴訟でも合意に至らず、最終的に判決になる場合、もともと遅延損害金を請求していなければ、基本的には判決でも遅延損害金は認められません。
(2)未払い残業代と遅延損害金の請求は弁護士に相談しよう

未払い残業代に加えて、遅延損害金を請求すれば、あなたが本気で残業代を請求しており、残業代未払いの状態を許さない姿勢であることを、会社に対して伝えることができます。
会社も、残業代本体の支払いに応じなければ、最終的には訴訟を提起され、裁判所の判決によって、遅延損害金、付加金などが認められる可能性があるということを認識することができるでしょう。
残業代本体が高額だと、遅延損害金と付加金も高額になりますので、会社は「残業代本体は支払わなければならないとしても、せめて遅延損害金や付加金の支払いは逃れたい」と思うはずです。
これにより、会社に対して、残業代請求を無視することなく、残業代を支払う内容の合意が成立するようプレッシャーをかけることができます。
未払い残業代や遅延損害金を計算をしたり、実際に会社に対して請求して交渉するのには、時間や労力が必要です。無事請求できても、すんなり支払ってもらえるとは限りません。もし反論されたら、根拠をもって再度反論して、自分には未払い残業代を支払ってもらえる権利があることを主張しなければなりません。
日々の忙しい生活を送りながら、このような交渉をするのは大変なことですし、精神的なストレスもかかります。
弁護士に依頼すれば、弁護士が親身にあなたの言い分に耳を傾け、あなたの利益を第一に考えて、未払い残業代や遅延損害金を計算し、任意交渉や裁判手続きを代理して行います。
残業代請求をすることであなたにかかる労力やストレスを軽減してくれるでしょう。また、残業代請求は消滅時効があります。放置していると請求できなくなってしまうこともあります。
時効について詳しくは、放っておくと権利が消滅?残業代の時効と更新(中断)について解説をご覧ください。
「そういえば未払い残業代があったな」「きちんと支払ってもらいたい」と思われたら、その時が相談のタイミングです。なるべく早く弁護士に依頼することをおすすめします。
【まとめ】未払い残業代は遅延損害金をもらえることも
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 遅延損害金とは、残業代を本来の支払日に支給されなかった場合に請求できる延滞金(損害賠償金)のこと
- 未払い残業代の遅延損害金は、基本的には、在職中は法定利率(2024年5月時点では年3%)、退職後は14.6%の利率で会社に請求できる
- 未払い残業代の付加金とは、労働基準法で定められた一定の金銭を支払わないことに対するペナルティ(制裁)のこと。付加金を請求する場合、最終的に訴訟で裁判所に支払を命じてもらう必要がある。
- 未払い残業代と遅延損害金を請求したい場合は、弁護士に依頼してサポートを受けることがおすすめ
残業代未払いの状態が長いと、遅延損害金だけでもそれなりの金額になります。遅延損害金もしっかり払ってもらいたいと思うのは当然のことです。
ですが、まずは残業代本体をしっかり請求して支払ってもらうことを目標にしましょう。遅延損害金の請求は、残業代本体を支払ってもらうための交渉のカードの一つと思うとよいかもしれません。
アディーレ法律事務所では、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からのお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2024年12月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。