「22時以降に残業をした場合、残業代はどうなるのだろう?」
深夜(22時以降)に残業をした場合には、深夜労働という点と残業をしているという点が重なり、通常の残業代よりも上乗せされた割増賃金が発生します。
残業代がきちんと支払われているのか不安な場合には、深夜(22時以降)に働いた場合に受けとれる残業代の割増率や計算方法を知っておきましょう。
さらに、深夜に働いた場合の残業代についてよくある質問についても回答しておりますので、参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 深夜(22時以降)の残業代の割増率と計算方法
- 深夜の残業についてよくある質問(Q&A)
ここを押さえればOK!
時間外労働は法定労働時間を超えた場合に時間外労働手当を支払う必要があります。深夜労働と時間外労働が重なる場合には、通常の深夜手当よりも高い割増率の残業代を支払う必要があります。具体的な割増率は、22時以降の労働では1.25倍以上、法定労働時間を超えた22時以降の労働では1.5倍以上、法定休日に22時以降の労働では1.6倍以上となります。
残業代の計算方法は、1時間あたりの基礎時給を計算し、割増率を乗じることで求められます。固定残業代制の場合でも、実際の時間外労働や深夜労働の割増賃金を下回る場合には不足分を追加で支払う必要があります。
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中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
22時以降は「深夜手当」の対象になる
22時から5時までの労働は「深夜労働」にあたり、雇用主は労働者に対して「深夜手当」を払わなければなりません。
一方、法定労働時間(法が定める1日の労働時間の上限)である1日8時間を超えて労働をした場合、その労働は「時間外労働」にあたります。そして、雇用主は労働者に対し、「時間外労働手当(いわゆる残業代)」を払う必要があります。
また、深夜(22時以降)かつ時間外労働が重なる場合には、通常の残業代よりも高い割増率の残業代を払う必要があります。
22時以降に働いた場合の割増率とは
割増率とは、通常の賃金より賃金がどれくらい増えるのかということです。
例えば、10時~19時の勤務(1時間休憩あり)で、19時を超えて20時まで働いた場合を考えてみましょう。
この場合、18時を超えた1時間分の労働については、「時間外労働」にあたります。そして、通常の労働時間に対して払われる賃金よりも1.25倍以上の賃金が払われなければなりません(※)。
この「1.25倍以上」という割合が「割増率」というものです。
(1)22時以降に働いた場合の割増率とは
22時以降に働いた場合の割増率は、1.25倍以上とされています。
つまり、22時以降に働いた場合には、通常の賃金よりも1.25倍以上の賃金が払われなければなりません。
さらに、その22時以降の労働が法定労働時間(法が定める1日の労働時間の上限である8時間)を超えていた場合の割増率は、1.5倍以上となります。
例えば、9時~18時の勤務(1時間休憩あり)で、22時以降も残業をしていた場合には、通常の賃金よりも1.5倍以上払われなければならないのです(22時以降)。
(2)法定休日に22時以降働いた場合の割増率とは
次に、法定休日に22時以降働いた場合の割増率について見ていきましょう。
そもそも「法定休日」とは、会社が労働者に対して法律上最低限与えなければならないとする休日のことです。週休2日制(土曜日と日曜日が休日)の会社であれば、日曜日が「法定休日」とされているケースが一般的です。
そして、 法定休日に行われた労働のことを「休日労働」といい、この休日労働の割増率は1.35倍以上です。
例えば、日曜日を法定休日とする会社で、日曜日に働いた場合には、通常の賃金よりも1.35倍以上払われなければなりません。
また、法定休日に22時以降働いた場合の割増率は、1.6倍以上となります。
先ほどの例(日曜日が法定休日とする会社)で考えると、日曜日に22時以降に働くと、通常の賃金よりも1.6倍以上の賃金受けとることになります。
これまで説明してきた「割増率」について、まめとめると次の表のとおりになります。

22時以降の残業代を計算する方法とは
では、次に残業代の計算方法について説明しましょう。
(1)法定労働時間を超えて働いた場合
残業代は、次の計算式で計算をします。

この計算をする場合、まず「1時間あたりの基礎時給」を計算する必要があります。
例えば、月給がわかっている場合には、次の計算方法で1時間あたりの基礎時給を計算することができます。
【月給から基礎時給を割り出す計算式】
(所定月給-除外賃金(※))÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間数=1時間あたりの基礎時給
※ 通勤手当や住居手当、家族手当、臨時賃金(ボーナス)などが除外賃金にあたります。
では、次のようなケースで1時間あたりの基礎時給と22時以降の労働に払われる残業代を計算してみましょう。
- 所定月給32万円(そのうち2万円は住居手当)
- 1日の所定労働時間10時~19時(1時間休憩ありの8時間)
- 年間の所定休日125日
- 19時から21時まで残業
このケースの場合、(32万円-2万円)÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間数=1時間あたりの基礎時給ということになります。
そして、1ヶ月あたりの平均所定労働時間数は、次の計算式で計算することができます。
【1ヶ月あたりの平均所定労働時間数を割り出す計算式】
(365日-年間の所定休日)×1日の所定労働時間÷12ヶ月=1ヶ月あたりの平均所定労働時間数
このケースの場合の1ヶ月あたりの平均所定労働時間数は、(365日−125日)×8時間÷12ヶ月=160時間となります。 つまり、このケースの場合の1時間あたりの基礎時給は、(32万円-2万円)÷160時間=1875円となります。
そして、22時までの1時間当たりの残業代は時給の1.25倍以上なので、このケースの場合、1875円×1.25倍×2時間=4688円以上(小数点以下の処理は、50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ)ということなります。

(2)法定労働時間を超えて22時以降まで働いた場合
例えば、次のケースで残業代がいくらもらえるのかを考えてみましょう。
- 所定労働時間は10~19時(8時間勤務、休憩時間1時間)
- 1時間当たりの基礎時給1000円
- 24時まで残業
この場合、19~22時までは時間外労働ということになりますので、「時間外手当」が払われなければなりません。 そして、22~23時までは「時間外手当」と「深夜手当」が重なることになります。
時間外手当は基礎時給の1.25倍なので、19~22時の残業代は3750円です(基本時給1000円×1.25倍×3時間)。
加えて、時間外手当・深夜手当が重なると、基本時給の1.5倍が支払われることになるので、22~24時の残業代は3000円となります(基礎時給1000円×1.5倍×2時間)。

(3)法定休日に22時以降まで働いた場合
では、次のケースで残業代がいくらもらえるのかを考えてみましょう。
- 1時間当たりの基礎時給1000円
- 法定休日に10~24時(休憩時間1時間)まで勤務
この場合、10~22時までが休日労働ということなり、「休日手当」が払われなければなりません。
そして、22~24時までは「休日手当」と「深夜手当」が重なることになります。
休日手当は基礎時給の1.35倍なので、10~22時(休憩を除く)の残業代は1万4850円です(基礎時給1000円×1.35倍×11時間)。 加えて、休日手当・深夜手当が重なると基本給の1.6倍が支払われることになるので、22~24時の残業代は3200円となります(基礎時給1000円×1.6倍×2時間)。

22時以降の残業代についてよくある質問
最後に、22時以降の残業代についてよくある質問について回答いたします。
(1)深夜1時や2時まで残業させられるのは違法では?
労働基準法36条に基づく「36協定」を労使間で締結し、労働基準監督署への届出をすれば、時間外労働をさせることも違法にはなりません。 基本的には深夜残業(深夜の時間外労働)も可能となります。
しかし、深夜残業が時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間まで)に触れる場合には、違法な残業ということになります。
ただし、一定の場合にはさらに長い時間の時間外労働も認められます。
(2)固定残業代制の残業代ってどうなっているの?
固定残業制がとられている場合、実際の労働時間にかかわらず固定給として支払われます。
しかし、あらかじめ定めた残業代が、実際の時間外労働や深夜労働の割増賃金を下回る場合には、不足分を追加した残業代を払われなければなりません。
固定残業代制は、常に残業代が一定という制度であるから、深夜残業や休日労働でも残業代が発生しないと勘違いするケースが多いので注意しましょう。
(3)未払い残業代がある場合どうすればいいの?
支払われるべき残業代が未払いの場合、会社に請求することができます。
例えば、タイムカードなどで残業した時間が明らかであれば、未払い分を請求できます。
また、タイムカードが実際の勤務時間と異なる場合であっても、勤務終了後に送信した業務メールや業務日報、会社のパソコンのログ履歴などを元に、未払分を請求できることもあります。
会社との交渉に不安がある場合 には、弁護士への相談がおすすめです。相談することによって、適正な残業代の算出や会社との交渉を代行してもらうことができます。
【まとめ】22時以降の残業代は通常の時給の1.25倍
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 22時以降の労働の割増率は1.25倍になる。さらに時間外労働と合わさった場合の割増率は1.5倍、休日労働と合わさった場合の割増率は1.6倍になる。
- 残業代の計算は、1時間あたりの基礎時給×割増率×残業時間で求められる。
- 未払いの残業代がある場合には、会社に請求をする。不安な場合には、弁護へ相談がおすすめ。
未払いの残業代を請求することは、労働者の正当な権利です。
もし毎日遅くまで残業をしているのに、きちんとした残業代が受けとれていないのであれば、会社に一度問い合わせてみましょう。
もし会社が誠実に対応してくれない場合には、アディーレ法律事務所にご相談ください。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2024年12月時点
「未払いの残業代があるけど、どうすればいいかわからない」「会社とのやり取りに不安がある」という方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。