「社内不倫がバレて、不倫相手の妻から『会社を辞めろ』と要求された。どう対処すればいい?」
たとえ会社内での不倫が理由であっても、基本的には会社を辞める法的義務は発生しません。
そのため、「会社を辞めろ」という要求に応じる必要はなく、法的には慰謝料を支払う義務を負うにとどまることに留意しつつ、誠実に対応するようにしましょう。
このことを知っておくと、「会社を辞めろ」という要求に対しても、冷静に対応することができます。
この記事を読んでわかること
- 不倫で生じる法的責任
- 不倫相手の配偶者から退職要求を受けたときの対処法
- 不倫を理由に会社から退職勧奨や解雇処分を受けたときの対処法
法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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不倫で生じる法的責任とは?
不倫で生じる法的責任は、基本的に慰謝料の支払義務だけです。
被害者に対して、不倫の責任を取って会社を辞める法的義務は発生しません。
不倫で生じる法的責任は慰謝料を支払う義務
不倫をした場合、被害者(不倫相手の配偶者)に対して不倫の慰謝料を支払う義務が生じます。
なお、慰謝料を支払う義務が発生する不倫は、原則として「不貞行為」があった場合に限られます。
不貞行為とは、自由な意思に基づいて既婚者と性行為を行うこと(肉体関係を持つこと)をいいます。
また、肉体関係を持つまでには至っていないとしても、一緒に風呂に入る、体を触って愛撫するなどの行為があった場合にも、慰謝料を支払う義務が生じることがあります。
不倫をした場合に、被害者に対して発生する法的責任は、基本的にはこの慰謝料を支払う義務だけです。
言い換えれば、会社を辞める義務などが法的に発生するということはありません。
たとえ社内不倫であったとしても、このことに変わりはありません。
不倫を理由とした退職要求への対処は?
不倫トラブルでは、不倫相手の配偶者から「会社を辞めろ」などと退職を要求されることがあります。
しかし、不倫の責任を取って退職する法的義務はありません。
不倫を理由とした退職要求に応じられないという場合には、次のような対処が考えられます。
- 不倫の示談交渉の中できっぱりと拒否する
- 慰謝料を多めに支払い納得してもらう
- 仕事以外の場で不倫相手と接触しないことを約束する
- 不倫をバラされる懸念に対しては口外禁止を約束してもらう など
(1)不倫の示談交渉の中できっぱりと拒否する
不倫の示談交渉の中で、「会社を辞めろ」という要求には応じられないということをはっきりと主張し、退職要求をきっぱりと拒否するようにしましょう。
もし少しでも退職要求を受け入れようという態度を見せれば、圧力がますます強まることにもなりかねません。
「会社を辞めろ」という退職要求には法律上の根拠がなく、退職する法的義務もありません。
このため、退職要求に応じなくても何か不利益が生じるということは基本的にはありません。
会社を辞めるつもりがない場合には、まずは会社を辞める意思はないことをはっきりと伝えて要求を拒否することが大切です。
(2)慰謝料を多めに支払い納得してもらう
「会社を辞めろ」という要求を拒絶した場合には、不倫相手の配偶者の怒りが収まらないかもしれません。
この場合には、慰謝料を多めに支払って納得してもらうというのも一つの方法です。
不倫慰謝料には裁判上の相場があり、通常はこの相場の範囲内の額の慰謝料を支払うことになります。
相場の範囲内でも、高めの額を慰謝料として支払うことを約束すれば、請求者が納得してくれる可能性は高まります。
もっとも、この相場からかけ離れて高額の請求を受けている場合には、そのような高額な請求をそのまま受け入れる必要はありません。
あくまでも相場の範囲内で慰謝料を支払うようにしましょう。
不倫慰謝料の相場とは、具体的にはどのようなものですか?
不倫をした場合には慰謝料を支払う法的義務が発生しますが、金額に決まりがあるわけではありません。もっとも、支払わなければならない慰謝料の額にはおおまかな裁判上の相場があります。
具体的には、不倫慰謝料の裁判上の相場は次のとおりです。
- 離婚しない場合、数十万~100万円程度
- 不倫が原因で離婚した場合、100万~300万円程度
(3)仕事以外の場で不倫相手と接触しないことを約束する
不倫の示談交渉の中で、「今後、仕事以外の場では不倫相手と会ったり連絡を取ったりして関わるようなことはしない」と約束することも、対処法の一つです。
今後は不倫相手と会ったり連絡を取ったりして関わるようなことはしないという条項(接触禁止条項)を不倫の示談書の中に盛り込むことは、不倫相手の配偶者を納得してもらうための材料の一つとなり得ます。
接触禁止といっても、同じ職場に勤めている以上、仕事の場で会うことは避けられません。大丈夫でしょうか?
仕事の場で会うことは避けられないという場合には、「仕事以外の場では接触しない」というように接触禁止の場面を限定するようにしましょう。
このようにすれば、仕事の場で会ったとしても接触禁止条項に違反したことにはなりません。
(4)不倫をバラされる懸念に対しては口外禁止を約束してもらう
「相手の『会社を辞めろ」という要求を断ったら、不倫の事実を会社や家族にバラされてしまわないか心配です…。」
そのような心配をされる方は多いです。しかし、不倫の事実について会社や第三者に伝えることは、法律上は名誉毀損にあたる可能性もある行為です。
被害者が不倫関係について会社や第三者に伝えるなどの不適切な行為に及ぶ懸念がある場合には、できるだけ早く弁護士に依頼するべきです。
また、示談交渉の中で、不倫の事実について会社に伝えたり第三者に伝えたりして口外することがないように約束する条項(口外禁止条項)を示談書に盛り込むことで、被害者が不倫の事実を会社や第三者に伝える可能性を下げることができます。
不倫を理由として会社から退職勧奨や解雇を受けた場合の対処法
社内で不倫をしていたことが、何らかの理由で会社に伝わってしまうこともあります。
この場合、会社が不倫の責任を取って任意に会社を辞めるように勧めたり求めたりすることや(このことを「退職勧奨」といいます)、解雇したりすることもあり得ます。
しかし、そのような退職勧奨や解雇は、場合によっては違法・無効となることもあります。
このような退職勧奨や解雇に対する対処法には、次のようなものがあります。
- 退職勧奨をきっぱりと拒絶する
- 解雇に対しては解雇無効を主張する
(1)退職勧奨をきっぱり拒絶する
労働者が退職勧奨に応じる法律上の義務はありません。
また、退職勧奨に応じなかったからといって、何か不利益を受けるということは基本的にありません。
不倫を理由とする退職勧奨に対しては、会社を辞めるつもりはないということをはっきりと伝え、きっぱりと拒絶するようにしましょう。
退職勧奨に関して詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)解雇に対しては解雇無効を主張する
不倫を理由として、会社が労働者を解雇することがあります。
しかし、不倫を理由とした解雇は有効なものとして認められないことが多いです。
そもそも解雇が有効とされるためには、
当該解雇に客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当
でなければなりません(労働契約法16条)。
また、懲戒解雇とするときには、就業規則や労働契約書に懲戒事由及び懲戒処分として懲戒解雇できる旨の規定がなければならず、やはり懲戒解雇とすることに客観的に合理的理由があり、かつ社会通念上相当でなければなりません(労働契約法15条)。
解雇が有効とされる場合ではないにもかかわらず、会社が労働者を解雇した場合には、そのような解雇は解雇権ないし懲戒権を濫用するものとして無効とされます。
この場合には、解雇が無効であることを主張して会社と交渉したり、会社に対して訴訟を提起し、労働者としての地位があることなどを主張することになります。
社内不倫を理由とした会社の解雇が有効となる場合はあるのですか?
一般に社内不倫をしていたとしても、それは会社が干渉するべきではない私生活上の問題(男女の恋愛に関する問題)であるといえるため、社内不倫をしたことだけを理由として当該従業員を解雇することはできないでしょう。
ただし、社内不倫が私生活上の問題に止まらず、会社の業務に影響を与えたということであれば、当該従業員を解雇することも可能な場合があります。
そして、解雇は雇用契約を一方的に解消させるものであり、労働者に対する影響が極めて大きいのであり、社内不倫を理由とする解雇の有効性の判断は厳格になされます。
すなわち、社内不倫をしたことで、会社の業務に対し、具体的にいかなる内容の影響を与えたのかが問題とされ、看過できない程度の悪影響(あるいは損害)を与えるものでないと、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であるともいえず、当該解雇は有効であるとはされません。
例えば、会社の業務に対し、具体的に看過できない程度の悪影響を与えたという事情が認められるのであれば、社内不倫を理由とする解雇が有効とされるものと考えられますが、有効とされるハードルは非常に高いでしょう。(参考:長野地判昭和45年3月24日)
解雇無効に関して詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「会社を辞めろ」と要求された場合には弁護士に依頼する方法もある
「会社を辞めろ」と要求してくる場合、被害者は感情的になっている場合が多いです。
感情的になっている被害者と直接交渉することは、対応次第では被害者の怒りをさらに大きくしてしまうことにもなりかねません。
このような場合、弁護士に依頼して、代理人として交渉を代わりに行ってもらうことをおすすめします。
弁護士に不倫の示談交渉を依頼することには、次のようなメリットが実現できる可能性が高まります。
- 弁護士が代理人として代わりに被害者と交渉してくれることで、被害者と直接交渉するストレスが軽減される。
- 弁護士が間に入ることで被害者が冷静さを取り戻すこともあり、トラブルの拡大を防ぐことができる。
また、被害者が冷静さを取り戻して「会社を辞めろ」などの理不尽な要求を取り下げる可能性が高まる。 - 自分が直接対応するよりも、慰謝料を減額できたり分割払いを認めてもらえるなど有利に解決できる可能性が高まる。
【まとめ】不倫の責任は、基本的には慰謝料の支払いで、退職する法的義務はない。
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 不倫で生じる法的責任は、基本的に慰謝料の支払義務だけ。
不倫の責任を取って会社を辞める義務は発生しない。 - 不倫を理由とした退職要求への対処としては、次のものがある。
- 不倫の示談交渉の中できっぱりと拒否する
- 慰謝料を多めに支払い納得してもらう
- 仕事以外の場で不倫相手と接触しないことを約束する
- 不倫をバラされる懸念に対しては口外禁止を約束してもらう
- 不倫を理由として会社から退職勧奨や解雇を受けた場合の対処法としては、次のものがある。
- 退職勧奨をきっぱりと拒絶する
- 解雇に対しては解雇無効を主張する
不倫相手の配偶者が「会社を辞めろ」と要求してきた場合、非常大きな怒りを抱えていることが予想されます。
不倫した本人が「仕事を辞める法的義務はない」と正しいことを主張しても、開き直りなどと捉えられかねず、会社や第三者に不倫の事実を口外されたり、慰謝料の減額交渉に応じてもらえなくなったりする可能性があります。
そのため、不倫相手の配偶者から、慰謝料請求のほかにも理不尽な要求をされている場合、対応を弁護士に依頼し、代わりに示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
アディーレ法律事務所では、不倫慰謝料を請求された事件の相談料は何度でも無料です。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため、費用倒れの心配はありません。
(以上につき、2023年3月時点)
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