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交通事故でPTSDを発症した場合の慰謝料と後遺障害の認定要件を解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

PTSDとは、強いショック体験が心の傷となり、時間が経ってからもその経験に対して強い恐怖を感じる症状です。震災などの自然災害や暴力、犯罪被害などが原因となりますが、交通事故もその原因の一つです。

交通事故が原因でPTSDを発症した場合には、どのくらいの慰謝料を受け取ることができるのでしょうか?

PTSDによって受け取ることができる慰謝料の金額は、入院・通院期間や、PTSDが後遺障害等級に認定されるかによって大きく変わります。PTSDが認定される可能性がある後遺障害等級の中で一番高い等級の9級に認定された場合には、690万円(目安、弁護士の基準)を受け取れる可能性があります(被害者に交通事故の過失がないケース)。

PTSDによる慰謝料を請求する前に、交通事故を原因にPTSDが発症した場合に受け取れる慰謝料や後遺障害認定要件について知っておきましょう。

この記事では、交通事故を原因とするPTSDについて、次のようなことを弁護士がくわしく解説します。

  • PTSDの症状やその治療法
  • 交通事故でPTSDを発症した場合の慰謝料
  • PTSDで後遺障害認定要件
  • 後遺障害認定を受けるための手続き
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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PTSDとは

まず、PTSDの定義、症状、発症時期、治療法についてご説明します。

(1)PTSDの定義

PTSDとは、Post Traumatic Stress Disorderの頭文字をとったもので、日本語では 「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。
強烈なショック体験や強い精神的ストレスを受ける経験をすると、時間が経ってからもそうした経験に対して強い恐怖を感じる症状をいいます。

ここでいう強烈なショック体験や強い精神的ストレスとは、自分や親しい人の命の危険を感じる経験、自分の力では太刀打ちできないような強い力に支配される経験、とても怖い思いをする経験などを指します。
例えば、震災や火事、暴力や犯罪被害、そして交通事故などがPTSDの原因となりえます。

恐怖の対象は人によって異なるため、同じ体験をしてもPTSDになる人とならない人がいます。

参考:PTSD|厚生労働省

(2)PTSDの症状

PTSDの代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • ふとしたときに突然つらい記憶がよみがえり、感情が不安定になる
  • 同じ悪夢を繰り返し何度も見る
  • いつもイライラする、ささいなことで驚きやすい、ぐっすり眠れないなど、常に神経が過敏で張り詰めている
  • つらい記憶を呼び起こすような状況や場面を避けるようになる
  • つらい記憶から心を守るために、感覚が麻痺してしまう  など

特に、交通事故によるPTSDでは、次のような症状があるといわれています。

  • 突然事故の記憶がよみがえり、不安になる
  • 救急車のサイレンなど、事故を連想させるものに接すると動悸がする
  • 事故の夢を繰り返し何度も見る   など

こうした症状が1ヶ月以上にわたって続くと、PTSDの可能性が高くなります。

(3)PTSDの発症時期

これまで説明したPTSDの症状の持続期間は通常、最低1ヶ月間程度であるため、ショック体験から1ヶ月以上経過しても症状が続く場合にはPTSDの可能性が高くなります。
たいていのケースでは、ショック体験から6ヶ月以内に発症しますが、6ヶ月以後に発症する場合もあります。

なお、症状の継続が3ヶ月未満なら「急性PTSD」、3ヶ月以上続くと「慢性PTSD」と診断されます。

(4)PTSDの治療法

PTSDの治療は、 苦しい症状が現れた時にそれを軽減する対症療法と、 心の傷の回復をはかりPTSDそのものを治療する方法の2本柱で行われます。

PTSDに用いられる治療法は主に、次のような方法があります。もっとも症状の内容に応じた治療がなされるため、次の治療法とは異なる治療がなされる場合もあります。

  1. 持続エクスポージャー療法
  2. EMDR(眼球運動脱感作療法)
  3. 認知療法
  4. グループ療法
  5. 薬物療法

それぞれどういった治療法なのかを具体的に説明します。

(4-1)持続エクスポージャー療法

トラウマとなったつらい場面をあえてイメージしたり、記憶を呼び起こすような状況や場面にあえて身を置く方法です。

ただし、思い出せば治る、というわけではないので注意が必要です。必ず知識と経験のある専門の治療者の立会いのもとに行う必要があります。

(4-2)EMDR(眼球運動脱感作療法)

トラウマとなった経験を思い出しながら、医師が動かす指を追いかけてもらう方法です。眼球運動を行うことで脳を直接刺激し、脳が本来もつ働きを活性化することができます。

ただし、この治療法も単純なように見えますが、必ず知識や経験のある専門の治療者のもとで行うようにしてください。

(4-3)認知療法

自身の考え方やこだわりを見直し、物事に対する別の見方の獲得を目指す方法です。

(4-4)グループ療法

PTSD患者が複数名で自らの悩みを語り合う方法です。

(4-5)薬物療法

不眠や不安・抑うつ症状などの症状を、抗不安薬・気分安定薬・抗うつ薬などで軽減する方法です。

交通事故でPTSDを発症した場合に受けとれる可能性のある2つの慰謝料

交通事故でPTSDを発症した場合、加害者に対して次の2つの慰謝料を受けとれる可能性があります。

  • 入通院慰謝料
  • 後遺症慰謝料

入通院慰謝料と後遺症慰謝料に分けて説明します。

(1)入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院慰謝料とは、交通事故によって負ったケガで入通院を強いられたことによって生じた精神的苦痛に対する慰謝料です。傷害慰謝料は、治療期間や実際に入院・通院した日数に基づいて計算されます。基本的に、 治療期間が長くなるほど慰謝料額は高くなります。

なお、PTSDについては、本当に事故を原因としたものかどうかを争われることも多く、 複雑な判断が必要となるケースもあります。治療期間については、事故状況や医師の意見等もふまえて判断する必要があるため、 専門家にご相談することをお勧めします。

(2)後遺症慰謝料

交通事故によるPTSDを理由に後遺症慰謝料を受け取るためには、基本的に、 PTSDが「後遺障害」として認定されることが必要になります。

ここでは、後遺障害(等級)と後遺症慰謝料の相場についてくわしく説明します。

(2-1)後遺障害とは

後遺障害は、1~14級(および要介護1級・2級)の等級に分かれて、それぞれ認定要件(症状)が定められており、1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。

参考:後遺障害等級表|国土交通省

PTSDにより認定される可能性かある後遺障害等級は、9級・12級・14級のいずれかとなります。

等級認定要件(症状)
9級10号通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害(※)のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの
12級13号通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害(※)のため、多少の障害を残すもの
14級9号通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害(※)のため、軽微な障害を残すもの

※PTSDやうつ病のような精神的な障害は「非器質性精神障害」と呼ばれています。

それぞれの等級認定に必要な要件については、後で説明します。

(2-2)後遺症慰謝料の相場とは

後遺症慰謝料を算定する基準は3つあり、 どの算定基準を使って算定するかによって、相場は変わります。

慰謝料算定基準概要
自賠責の基準自賠責の基準は、自動車保有者が加入を義務付けられている「自賠責保険」で採用されている基準です。
自賠責の基準は被害者への最低限の補償を目的として設けられているので、慰謝料の基準額は基本的に3つの算定基準のうち最も低くなりやすくなります。
ただし、自賠責保険は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、ご自身の過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。
任意保険の基準任意保険の基準は、各保険会社が独自に設定している非公開の算定基準です。
加害者側の任意保険会社は、通常は自社の任意保険の基準をもとにして慰謝料を提示してきます。基準額は、自賠責の基準と同程度か、やや高い程度であると推測されます。
弁護士の基準弁護士の基準は、過去の裁判例をもとに設定された基準です。弁護士に示談交渉を依頼した場合などに使われる算定基準です。
弁護士の基準による慰謝料金額(目安)は3つの算定基準のうちでは基本的に最も高額となりやすくなります。

ご紹介した3つの基準で定められている金額(目安)を小さい順に並べると、次のようになることが一般的です(例外あり)。

後遺症慰謝料について自賠責の基準と弁護士の基準の相場は次のとおりになります(2020年4月1日以降に発生した事故でご自身に過失がない場合)。

等級自賠責の基準弁護士の基準差額
9級249万円690万円441万円
12級94万円290万円196万円
14級32万円110万円78万円

この図からわかるように、 少しでも高額の慰謝料を受け取るためには弁護士の基準を使うのがおすすめです。

弁護士の基準を利用した慰謝料を受け取るためには、弁護士へ依頼することをおすすめします。
被害者本人が加害者側の保険会社と示談交渉すると、加害者側の保険会社は自賠責の基準や任意保険の基準による慰謝料額を提示してくるのが通常です。これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉や裁判を行う場合は、最も高額になりやすい弁護士の基準を利用して慰謝料を算定しますので、弁護士の基準に近づけた形での示談が期待できます。

交通事故でPTSDを発症した場合の後遺障害認定

交通事故でPTSDを発症した場合の後遺障害認定の要件や後遺障害等級について解説します。

(1)PTSDの後遺障害認定要件

PTSDやうつ病のような精神的な障害が後遺障害として認定されるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  • 次の(ア)の精神症状のうち1つ以上が認められ、かつ、
  • 次の(イ)のうち1つ以上の能力について、能力の欠如や低下が認められること
(ア)精神症状(イ)能力に関する判断
1.抑うつ状態
2.不安の状態
3.意欲低下の状態
4.慢性化した幻覚・妄想性の状態
5.記憶または知的能力の障害
6.その他の障害(衝動性の障害・不定愁訴(=だるい・眠れない)など)
1.身辺日常生活(食事・入浴・更衣など)
2.仕事、生活に積極性・関心を持つこと
3.通勤・勤務時間の遵守
4.普通に作業を持続すること
5.他人との意思伝達
6.対人関係・協調性
7.身辺の安全保持・危機の回避
8.困難・失敗への対応

また、PTSDの発症と交通事故で受けたダメージとの間に因果関係が認められることも必要となります。

(2)PTSDの後遺障害等級

上記の(ア)(イ)が認められる場合、さらにその症状の程度に応じて次の後遺障害等級が認定されます。

(2-1)9級10号:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの

具体的な認定基準は次のとおりです。

就労の有無認定要件
就労している者、または就労の意欲はあるものの就労はしていない場合(イ)の2~8のいずれかひとつの能力が失われているもの、または(イ)の4つ以上についてしばしば助言・援助が必要と判断される障害を残しているもの
就労意欲の低下または欠落により就労していない場合(イ)の1について、ときに助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているもの

(2-2)12級13号:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの

具体的な認定基準は次のとおりです。

就労の有無認定要件
就労している者、または就労の意欲はあるものの就労はしていない場合(イ)の4つ以上について、ときに助言・援助が必要と判断される障害を残しているもの
就労意欲の低下または欠落により就労していない場合(イ)の1について、適切にまたはおおむねできるもの

(2-3)14級9号:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの

具体的な認定基準は次のとおりです。

(イ)の1つ以上について、ときに助言・援助が必要と判断される障害を残しているもの

後遺障害認定を受けるための2つの方法

では最後に、後遺障害認定の申請手続について見ていきましょう。

後遺障害認定を受けるためには、まず担当医から症状固定(=これ以上症状が改善も悪化もしないこと)の診断を受け、後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。そして、この後遺障害診断書のほか必要書類一式を揃えて所定の機関(損害賠償料率算出機構など)に審査を申請します。

後遺障害認定を受けるための申請手続きには、次の2つの方法があります。

  • 事前認定
  • 被害者請求

それぞれの方法について説明します。

「事前認定」とは、加害者が加入する任意保険会社に依頼して後遺障害認定の手続きを進めてもらう方法です。

流れとしては、次のようになります。

参考:支払までの流れと請求方法|国土交通省

これに対し、被害者請求とは、交通事故の被害者が直接加害者側の自賠責保険会社などに請求する方法です。

流れとしては、次のようになります。

参考:支払までの流れと請求方法|国土交通省

事前認定と被害者請求の違いをまとめると次のようになります。

被害者請求は必要書類などを自ら準備する手間がかかりますが、被害者に有利な資料や主張を自由に提出できるため、事前認定に比べ思いどおりの等級認定を受けやすくなるため、 PTSDのように後遺障害認定を受けることが難しい症状の場合には被害者請求がおすすめです。

被害者請求に必要な書類や手順を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

交通事故の被害者請求とは?必要書類と申請の手順を分かりやすく解説

PTSDを理由に後遺障害認定を受けるのは難しい

交通事故でPTSDを発症した場合、後遺障害認定を受けるのは容易とはいえません。

というのも、PTSDは外から見てわかるケガとは異なり、本当に交通事故を原因として発症したものかを疑われることがあるからです。

この点、弁護士に依頼すれば、後遺障害診断書を書いてもらう際に、等級認定に有利なポイントを弁護士から担当医に伝えてもらうこともでき、後遺障害認定を受けるためのサポートをすることができます。

また、症状固定前に弁護士と医師とが連携することで、等級認定に必要な検査や治療を受けることができ、後遺障害等級の申請に必要な資料を的確に収集できます。
つまり、弁護士に依頼することにより、後遺障害認定される可能性が高まります。

さらに、弁護士に依頼すれば面倒な示談交渉や手続きから解放され、ご自身は治療に専念できるというメリットもあります。

【まとめ】交通事故でPTSDが発症し、9級に認定された場合には後遺症慰謝料として690万円(目安)を受け取れる可能性

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 交通事故によるPTSDの主な症状
    • 突然事故の記憶がよみがえり、不安になる
    • 救急車のサイレンなど、事故を連想させるものに接すると動悸がする
    • 事故の夢を繰り返し何度も見る
    これらの症状が1ヶ月以上続く場合にはPTSDの可能性がある
  • 交通事故でPTSDを発症した場合には、入通院慰謝料と後遺症慰謝料の2つの慰謝料を受け取れる可能性がある

  • 後遺症慰謝料について自賠責の基準と弁護士の基準の相場(2020年4月1日以降に発生した事故でご自身に過失がない場合)

    9級:弁護士の基準であれば690万円(自賠責の基準であれば249万円)
    12級:弁護士の基準であれば290万円(自賠責の基準であれば94万円)
    14級:弁護士の基準であれば110万円(自賠責の基準であれば32万円)

  • 後遺障害認定要件

    9級:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの
    12級:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの
    14級:通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの

  • 後遺障害認定を受けるための申請手続きには、事前認定、被害者請求の2種類があります

PTSDを理由に後遺障害認定を受けることは難しいのが実情です。そのため、PTSDの症状が疑われる場合には、治療については精神科や心療内科などの医療機関に、後遺障害認定や慰謝料請求については弁護士に相談されるのをおすすめします。

交通事故によるPTSDで慰謝料請求をお考えの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

アディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。

すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという完全成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。

また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。

※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。

実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。

弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。

(以上につき、2022年7月時点)

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