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相続放棄の注意点3つと「してはいけないこと」を具体的に解説

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kiriu_sakura

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「相続放棄を考えているけれど、どんなことに注意しておくべきなのだろう?」

亡くなった方が多くの借金を抱えている場合などには、確実に相続放棄をしたいですよね。

相続放棄をするにあたっては、いくつか守るべき注意点があります。
例えば、相続放棄を考えている場合には、遺産の「処分」をしてはいけません。

相続放棄の注意点をしっかりと守っておかないと、場合によっては相続放棄が認められないこともあります。

このことを知っておけば、相続放棄をする予定だったのに相続放棄に失敗してしまったという可能性を減らすことができます。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 相続放棄が選ばれるケース
  • 相続放棄の注意点
  • 相続放棄をするためにしてはいけないこと
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

同志社大学、及び同志社大学法科大学院卒。福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2020年4月より退職代行部門の統括者。勤務先から不当な退職引きとめをされる等、退職問題についてお悩みの方々が安心して退職され、次のステップに踏み出していただけるよう、日々ご依頼者様のため奮闘している。神奈川県弁護士会所属

相続放棄が選ばれるケース3つ

最新の統計データでは、2021年度に相続放棄の申述が新たに受理された件数は、25万1993件でした。
それ以前の5年間の受理件数の推移を見ると、毎年1万件程度ずつ受理件数が増加している傾向にあります。

参考:令和3年司法統計年報 家事編|裁判所 – Courts in Japan

このように、相続放棄がなされる件数は、年々増加しています。

相続放棄は、次のようなケースで選ばれることがあります。

  • 借金が超過することが明らか
  • 被相続人と疎遠であり相続したくない
  • 相続人の一人に遺産を相続させたい

(1)ケース1|借金が超過することが明らか

相続放棄が選ばれる最も代表的なケースが、「相続財産について借金が超過することが明らか」というケースです。

相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も受け継ぎます。
このため、プラスの財産(資産)よりもマイナスの財産(借金・負債)が多い場合には、これを受け継いだ相続人が借金・負債を返していくことになってしまいます。

被相続人の借金・負債を受け継いで返さなければならないという負担を避けるために、相続放棄をするという手段があります。

相続放棄をすれば、初めから相続人とならなかったものとみなされるので、マイナスの財産(借金・負債)を受け継ぐことを回避することができます。

相続放棄をした場合には、プラスの財産はどうなるのですか?
プラスの財産だけ受け継ぐことはできますか?

相続放棄をした場合には、プラスの財産だけを受け継ぐことはできません。
プラスの財産もマイナスの財産も、全てまとめて放棄することとなります。

(2)ケース2|被相続人と疎遠であり相続したくない

相続放棄が選ばれるケースとして、「被相続人と疎遠であり相続したくない」というケースもあります。

被相続人(亡くなった親など)と十数年や何十年も会っておらず連絡も取っていないというケースや、生前に仲たがいをしてしまい縁を切っているというケースがあります。
このようなケースでは、そのような被相続人の財産を受け継ぐことを避けたいという理由で相続放棄が選ばれるケースがあります。

(3)ケース3|相続人の一人に遺産を相続させたい

「相続人のうちの一人に遺産を集中的に相続させたい」という理由で、その他の相続人が相続放棄をするというケースもあります。
例えば、長男だけに土地建物などの遺産を受け継がせるために、次男や姉妹が相続放棄をして、長男だけが遺産を受け継ぐというようなケースです。

このようなケースでは、財産を受け継ぐ一人だけが相続放棄をしないままでいて、その他の相続人が相続放棄をすることになります。

相続放棄の注意点3つ

相続放棄をするにあたっては、注意点があります。

  • 相続放棄ができる期間は限られている
  • 相続放棄は個別に行う必要がある
  • 相続財産を処分してはいけない

これらについてご説明します。

(1)注意点1|相続放棄ができる期間は限られている

相続放棄ができる期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から原則3ヶ月以内です(民法915条1項本文)。

この3ヶ月という期間内に、相続放棄をするか、それとも全ての財産を受け継ぐ単純承認やプラスの財産の限度でマイナスの財産を受け継ぐ限定承認をするかを選ばなければなりません。
相続放棄ができるこの期間のことを、「熟慮期間」と言います。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、次のいずれの事実をも知った時のことです。

  • 相続開始の原因事実があったこと
  • 自分が相続人になったこと

「相続開始の原因事実」とは、基本的には、被相続人が亡くなったことです(死亡の他には、失踪宣告があったことなども含まれます)。

熟慮期間が過ぎると、もう相続放棄できないのですか?

基本的にはそうなります。
もっとも、ケースによっては3ヶ月を過ぎても相続放棄が認められる場合もあります。
自己判断で諦めずに、弁護士に相談してみてください。

熟慮期間について、詳しくはこちらをご覧ください。

借金を相続したくない!自分で相続放棄をする際の注意点【弁護士が解説】

(2)注意点2|相続放棄は個別に行う必要がある

それぞれの相続人は、ひとりひとり相続放棄をするか財産を受け継ぐかを決めることができます。相続放棄は、それぞれの相続人が個別に行う必要があり、相続人のうち誰か一人が相続放棄をしたら、ほかの相続人も当然に財産を受け継がない、というわけではありません。

相続人の一人が相続放棄をすると、その相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
この場合、他に相続人がいれば、他の相続人が遺産を受け継ぐこととなります。

例えば、被相続人に、配偶者と子2人がいたとします。子のうち1人が相続放棄をしたとすると、もう一人の子と配偶者とで遺産を分け合うこととなります。

(3)注意点3|相続財産を処分してはいけない

相続放棄を予定している場合には、相続財産(遺産)を処分してはいけません。

相続放棄を予定しているのに相続財産を「処分」した場合には、相続人は「単純承認」をしたものとみなされてしまい、相続放棄することはできなくなってしまうためです(法定単純承認。民法921条)。

「単純承認」とは、プラスの財産もマイナスの財産も全て受け継ぐことを言います。

法定単純承認の原因となる相続財産の「処分」とは、典型的には相続財産を消費してしまったり売却してしまったりするなどのことです。

これは、自分が相続財産について受け継いだかのような行為を行っておきながら、後から相続放棄をすることは許されないということです。
相続財産の処分については、知らないまま行ってしまう方もいるかもしれません。
相続放棄を予定している場合には、意識しておく必要があります。

処分の詳しい具体例については、後でご説明します。

「処分」のほか、相続財産を隠匿した場合(わざと隠した場合)などにも、法定単純承認が認められます。

法定単純承認について、詳しくはこちらをご覧ください。

親の借金を相続放棄する方法とは?おさえておきたい3つのポイント

【具体例】相続放棄をするためにしていいこと・してはいけないこと

ここからは、相続放棄を予定している場合に、死後の手続きで「していいこと」「してはいけないこと」を具体例とともにご説明します。

なお、過去の裁判例では問題がないとされている行為であっても、後々債権者によって「処分にあたるから単純承認したものと扱われるはずだ。借金を支払え」などと争われる可能性もあります。
確実に相続放棄をしたいのであれば、財産としての価値がある遺産には一切手を付けないほうがよいです。

(1)預金の解約・払い戻し

相続放棄をするつもりであれば、預金の解約・払い戻しは行うべきではありません。
全く手を付けずに放置しておくようにしましょう。

単に解約・払い戻しをしただけで、現金として保有して利用していないのであれば、厳密には処分行為にはあたらないと考える余地があります。
しかし、少しでもそれを利用してしまうと処分行為にあたる可能性があります。
万が一預金の解約・払い戻しをしてしまった場合には、自分自身のお金と遺産のお金を分けて管理するようにしましょう。

(2)葬儀費用の支払

相続財産からの葬儀費用の支払は、一定の範囲内であれば、行って構いません。
葬儀は、遺族として当然に行うものです。
一般的に、相続財産から支出した葬儀費用が社会的に見て不相当に高額でない限りは、「処分」にはあたらないとされます(大阪高等裁判所決定平成14年7月3日)。

(3)仏壇・墓石の購入

仏壇・墓石の購入も、日本の通常の慣例上、相続財産を利用するのも自然な行為です。
このため、相続財産を利用して仏壇・墓石を購入しても、社会的に見て不相当に高額でない限りは、明白に「処分」に当たるとは断定できないとされています(大阪高等裁判所決定平成14年7月3日)。

(4)返済の督促

被相続人がお金を貸していた人に対して、返済を求めたり請求することそのものは、基本的には処分行為にはあたりません。
もっとも、取り立てて受け取る行為は、処分行為にあたる可能性があります(最高裁判所判決昭和37年6月21日)。

(5)生命保険金・遺族年金の受け取り

生命保険金と遺族年金の受け取りについてご説明します。

(5-1)生命保険金

生命保険金について、保険契約上、配偶者などの相続人が受取人として指定されている場合には、それは遺産ではなく相続人固有の財産となります。
このため、受け取ったり使ったりしても処分にはなりません(山口地方裁判所徳山支部判決昭和40年5月13日)。

これに対して、被相続人が受取人となっていた保険金を請求する権利は、相続財産に含まれます。
このため、被相続人が受取人となっていた保険金を受け取る行為は「処分」にあたり、行ってはいけません(千葉地方裁判所八日市支部判決昭和7年3月19日)。

受取人の指定がない場合には、保険金を請求する権利は契約者である被相続人にあることが一般的です。
この場合、保険金は相続財産となるので、相続人が受け取ったら処分にあたる可能性があります。
もっとも、このような場合でも保険会社の約款で受取人は「配偶者とする」などと定められていることもあります。
仮に「配偶者とする」と約款で定められていれば、保険金は相続財産とならない可能性もあるので、受取人がはっきり定められていない場合には保険会社に約款を確認するようにしましょう。

(5-2)遺族年金

遺族年金については、遺族が固有の受け取る権利を持っているものです。
このため、遺族年金を受け取ることは、「処分」にあたらず、単純承認をしたことにはなりません。
相続放棄を予定していても、遺族年金を受け取ることは可能です。

(6)入院費や施設の利用料の支払

遺産から、被相続人が支払うべきであった入院費や施設の利用料支払など債務の弁済を行った場合に、「処分」とされて単純承認したものとみなされるかについては、考え方が分かれています。
一般的には、支払期限が到来した債務の弁済は、財産全体から見て現状維持と言えるのであれば、処分行為にはあたらないと考えられています。

入院費や施設利用料の支払期限は、医療機関・施設によって異なります。
確実に相続放棄をしたいという場合には、もし払う場合でも、遺産から支払うのではなく自分のお金で支払うのが安全だと言えるでしょう。

(7)形見分け

「形見分け」とは、亡くなった方が愛用していた品々を家族や友人などに分け与えて形見とすることを言います。

一般的には一定の経済的価値があるものであっても、経済的に重要ではないものであれば、形見分けをして自分がもらったり誰かにあげたりしても「処分」にはあたりません(東京地方裁判所判決平成21年9月30日)。
例えば、衣類、ノートパソコン、テレビなどは、形見分けをできる可能性があります。

具体的に形見分けが許されるかは、相続財産の額、相続人の財産状態、行為の性質(貸与、無償譲渡、有償譲渡など)などについて総合的に考慮して判断されます。

(8)各種支払い

例えば次のような支払など、日常生活で発生する支払をする必要があることは多いでしょう。

  • 光熱費
  • 水道料金
  • NHK利用料金
  • 携帯電話料金
  • クレジットカード利用料金

これらは、いわゆる「日常家事債務」にあたる可能性があります。
「日常家事債務」とは、婚姻生活の中で日常生活にとって必要な支出のことです。
例えば、食料品の購入費やガス・水道・電気の利用料金などが日常家事債務の典型例です。

「日常家事債務」であれば、夫婦が連帯して支払う義務を負うため、被相続人(夫など)の名義であっても妻など配偶者が連帯して支払う責任を負います。
このため、相続放棄をしたとしても、自分自身が支払う責任を負うものとして、自分のお金で支払うこととなります。

日常家事債務でなければ、請求を受けても支払う義務はありません。
仮に支払うように督促されても、「相続放棄するつもり」と答えればよいです。

仮に相続財産で支払ってしまっても、支払時期が到来している債務の弁済は「処分」にあたらないと考えることもできます。
しかし、この点は考え方が分かれるところでもあるので、相続放棄するのであれば相続財産には手を付けないのが無難です。

(9)部屋の片づけ

被相続人が生前に単身賃貸物件で暮らしていた場合には、通常は相続人や親族が借りていた部屋の後片付けをすることになります。
この後片付けの際、ゴミや価値のないものは、処分してしまっても構いません。
これに対して、経済的な価値があってそれなりの値段がつくようなものについては、売却したり廃棄してしまったりすると法定単純承認事由である「処分」にあたるとされてしまう可能性があります。
売却したり廃棄してしまったりしないようにしましょう。

(10)敷金の受け取り

被相続人が生前に単身賃貸物件に住んでいた場合、亡くなったことに伴い部屋を退去する際、大家から敷金が返還されることがあります。
差し入れていた敷金から未払い賃料などを差し引いて余った場合には相続人に敷金が返還され、不足が出た場合には相続人に不足分が請求されます。

相続放棄を予定しているのであれば、敷金の返還は受けないようにしましょう。
敷金を受け取ってしまうと、「処分」があったとされてしまうことがあります。

これに対して、不足分を請求されて相続財産の中から請求額を支払うことは、一般的には「処分」にはあたらないと考えられます。
もっとも、確実に相続放棄をしたいと考えているのであれば、このような支払いもしないでおくことが無難です。

どうしても支払わなければならない事情がある場合には、相続財産の中から支払うのではなく、自分のお金で支払うようにすれば、「処分」にはあたらないため、安全です。

(11)保険の解約返戻金の受け取り

保険の解約返戻金の受け取りは、行うべきではありません。
解約返戻金は、遺産の一部をなすものであり、これを受け取ってしまうと遺産を「処分」したこととなってしまうからです。

(12)被相続人が生前入院や手術をしたために請求できる入院・手術保険金

被相続人が生前に入院や手術をしたことが原因で請求することができる入院・手術保険金の請求・受け取りも、行うべきではありません。
これらの保険金は、一般的には被保険者(被相続人)本人が受取人とされていることが多いです。
被相続人本人が受取人とされている医療保険であれば、その保険金は遺産を構成することになります。
保険金が遺産を構成する以上は、その請求・受け取りを行ってしまうと「処分」として扱われ、単純承認をしたとみなされてしまいます。

(13)自動車の廃車手続き

自動車の廃車手続は、価値のある自動車であれば「処分」にあたる可能性があります。

被相続人名義の自動車があれば、それは相続財産です。
ローンの支払中だと第三者名義になっていることが多いので、その場合には車検証などを見てその第三者に連絡するようにしましょう。

市場価値がなければ、廃車手続きを行っても、「処分」にはなりません。
もっとも、市場価値があるかどうかは、自己判断で決めて良いものではありません。
複数の査定をとるなどして、市場価値があるかどうかを把握するようにしましょう。

【まとめ】相続財産を「処分」すると相続放棄ができないので注意

この記事のまとめは次のとおりです。

  • 相続放棄は、借金が超過することが明らかな場合などに選ばれる。
  • 相続放棄の注意点として、「相続放棄ができる期間は限られている」「相続財産を処分してはいけない」などのことがある。
  • 相続放棄をするためにしてはいけないこととして、「預金の解約・払い戻し」「被相続人が受取人となっていた保険金の受け取り」「保険の解約返戻金の受け取り」などがある。

相続放棄を予定している場合に、してもいいこと・してはいけないことの見極めは難しいです。
ご自身の判断で何かをしてしまった場合に、それが「処分」にあたるとして、相続放棄ができなくなってしまう可能性も十分に考えられます。
相続放棄にも、なにをしていいか・してはいけないか、何をするべきかなどについて、法的な判断が必要となります。
相続放棄を予定している場合には、できるだけ早く弁護士に相談するようにしましょう。

アディーレ法律事務所では、相続放棄に関するご相談は何度でも無料ですので、フリーコール「0120-406-848」までご連絡ください。
アディーレ法律事務所に相続放棄をご依頼いただければ、次のことを弁護士が代わりに行います。

  • 戸籍謄本の収集
  • 相続人の調査
  • 裁判所に対して行う相続放棄の申述
  • 裁判所からの照会書に対する対応
  • 相続放棄申述受理通知書の受領
  • 支払いの督促をされている債権者へ相続放棄したことの連絡
  • 後順位相続人へのご連絡およびご説明

これにより、ご依頼者様の負担を減らすことができます。

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(※以上につき2022年11月時点)

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この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

同志社大学、及び同志社大学法科大学院卒。福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2020年4月より退職代行部門の統括者。勤務先から不当な退職引きとめをされる等、退職問題についてお悩みの方々が安心して退職され、次のステップに踏み出していただけるよう、日々ご依頼者様のため奮闘している。神奈川県弁護士会所属

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。