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交通事故の示談、交渉を円滑にするためのタイミング、ポイントを弁護士が解説

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交通事故の被害に遭ってしまうと、ケガを負って治療が必要になったり、ケガのために仕事を休まざるを得なくなったり、事故以前の生活を送れなくなったりして、生活が一変してしまいます。
もとの生活を取り戻すことだけでも大変ですし、場合によっては後遺症に悩まされるなど、残念ながら元の生活を取り戻せない場合もあります。
被害回復のためには、加害者や加害者の任意保険会社から慰謝料等の損害賠償金を受領する必要がありますが、そのためには、話し合って示談を行う必要があります。

「交通事故の被害に遭った。ケガの治療中だけど慰謝料はいつもらえるのか。」
「保険会社から示談案を提案されたけど、見方もわからないし、内容や金額は妥当なのかわからない。」
「早く交渉を終わりにして元の生活に戻りたい。保険会社からの示談案に合意してよいのか。」

加害者側との示談交渉の過程で、このようにお悩みの方も多いかもしれません。
今回は、交通事故の示談交渉について、弁護士がタイミングやポイントを解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後、岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

示談とは話し合いによる解決

交通事故により、加害者は、被害者に対して、民法上の不法行為責任を負います(民法709条)。これにより、被害者は、加害者に対して、不法行為に基づく損害賠償として、金銭の支払いを請求することができます。
そして、この損害賠償の金額を、当事者同士が話し合いにより円満に解決することを「示談」といいます。
加害者が任意保険に加入していれば、任意保険会社が示談代行をするので、被害者は保険会社と話し合うことになるでしょう。
「示談」という用語は、主に刑事事件や交通事故の加害者と被害者の話し合いによる解決の際に使われています。刑事事件では、当事者同士が示談したとしても、刑事事件として立件されないとは限りませんが、立件すべきかどうかの考慮事由とはなります(示談成立は、加害者に有利な事情として考慮されます)。
示談は口頭でもすることができますが、誤解が生じ後々争いになることがあるので、通常は、合意内容を明確にして、客観的な証拠とするために示談書を作成します。

(1)法律上は和解契約

示談とは、一般的に使われる用語で、法律上は、和解契約といいます(民法第695条)。
厳密には、和解契約は互譲(相互に譲歩していること)が必要ですので、互譲のない示談は和解契約とはなりませんが、互譲の結果成立する示談がほとんどといってよいでしょう。
示談が成立せずに訴訟を提起した場合でも、訴訟上で和解することもできます(民事訴訟法89条、267条)。
訴訟上の和解は、和解調書が作成され、示談と異なり、強制力があります。つまり、加害者が和解調書の約束を果たさなければ、和解調書に基づいて、加害者の財産について差し押さえなどの強制執行を行い、権利を実現することができるのです。
ただ、加害者に任意保険会社がついている場合は、示談であっても、訴訟上の和解であっても、任意保険会社が合意内容に納得して和解していることになりますから、基本的には自主的に支払われるでしょう。
示談が成立せずに訴訟になるのは、交通事故の過失割合について争いがあったり、後遺障害等級に争いがあったりして、加害者と被害者が妥当と考える損害賠償額に大きな開きがあり、裁判所の判断を求めるのが適当とされるケースが多いようです。

(2)示談にする理由

損害賠償については、多くの場合、次のような理由から、まずは話し合いでの解決を試みます。

  • 被害者の場合、裁判で争う場合にかかる費用と時間が節約でき、早期の被害回復が得られる。
  • 交通事故の損害賠償については、数多くの裁判例を基礎に定型化しており、ある程度客観的に金額について話し合うことができる。
  • 加害者が任意保険会社に加入していることが多く、保険会社も、金額に合意できれば早期解決を望む傾向にある。

(3)示談金と慰謝料との違い

交通事故の損害賠償について調べてみると、「示談金」と言っていたり、「慰謝料」と言っていたりすることに気づくかもしれません。両者は、同じ意味ではありません。
「示談金」は、交通事故によって被る全ての損害を金銭に換算した合計の金額です。損害の項目は、交通事故の被害内容によって異なります。損害の項目としては次のような項目が挙げられます。

  • 自動車の修理代
  • 入院雑費
  • 治療費
  • 通院費
  • 付添看護費
  • 休業損害
  • 傷害慰謝料
  • 逸失利益
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料
  • 葬儀関係費
  • 将来介護費 など

一方で、「慰謝料」とは、交通事故により被った精神的苦痛を金銭で評価したもので、示談金の一部の項目にすぎません(上記の、「傷害慰謝料」、「後遺障害慰謝料」、「死亡慰謝料」とあるのが、慰謝料です)。

示談交渉を始めるタイミング(いつ始めるべきか)

交通事故は、物に関して生じる損害と、人に関して生じる損害があり、通常、それぞれ示談書を分けて示談を成立させます。
物損に関する賠償については、比較的早い段階で損害額を確定できることが多いので、通常は、人損に対する賠償とは分けて、先に示談を成立させます(過失割合を争う場合には、物損で示談した過失割合が人損の過失割合に影響する可能性があるので、事前に専門家に相談するとよいでしょう)。
ここでは、人損に対する賠償について示談交渉すべきタイミングを、交通事故の流れに合わせて解説します。

(1)交通事故が発生

交通事故が発生した段階では、示談交渉をすべきではありません。
まずは、事故直後は警察や保険会社への連絡などを優先させる必要があります。
また、事故直後では、ケガの程度が分からないこともありますし、治療が必要な場合には治療費がいくらになるかも分かりません。交通事故による全体の損害額が明らかになった後に示談すべきですから、示談を急ぐ必要はありません。

(2)通院・入院で治療~完治・症状固定

治療中は、必要な療養をし、ケガの治療と回復に努めるようにします。
治療を受けても、一定の後遺症が残り、治療の効果・症状の改善が期待できなくなった状態と判断されると、医師は症状固定と診断します。
治療が終わるまでは(ケガが完治する又は症状固定日までは)、治療費や、入通院慰謝料等が日々発生し続けているので、全体の損害額が確定しません。したがって、治療中は、交渉するタイミングには適していません。
ただ、自己負担している費用がある場合には、後々請求する場合に備えて,自己負担した費用についての証拠(交通費の領収書、自己負担した治療費の領収書など)は残しておきます。

(3)治療終了後に示談交渉を開始

一般的には、治療終了後に示談交渉を開始すべきです。具体的には、ケガが治った場合には完治後、後遺症が残ってしまった場合には後遺障害の等級認定の審査結果が出た後になります。
後遺障害の等級が認定されれば、示談金額が上がる可能性がありますので、示談を急がないようにしましょう。
経済的に苦しいときは、示談が成立していなくても、休業損害などの示談金の一部を内払してくれることがありますので、保険会社と話してみるとよいでしょう。
加害者側の任意保険会社は、交通事故の示談交渉を代行しており、交通事故については豊富な知識を有しています。しかし、あくまで加害者側の立場であり、裁判所のように公平で中立な立場にあるものではなく、弁護士のように被害者の利益を第一に考える立場でもありません。
したがって、提示された示談案が妥当な金額だとは限りません。合意する前に、示談案の内容が妥当なのかどうか精査する必要があります。
弁護士は、専門家として交通事故に関する法的知識を有しており、裁判所の考え方も踏まえながら、被害者の利益を第一に考える立場で交渉します。示談案の内容を精査し、損害の項目が抜けていたり、損害額が不当に低かったりすれば、適切な額の支払いを求めて交渉することで、示談金の増額が見込めます。

(4)示談が成立

示談案の内容に納得できたら、示談書を作成し示談成立となります。
振込先は、弁護士に交渉を依頼している場合には弁護士名義の口座となることが多いです。本人が交渉している場合には、本人名義の口座に振り込まれます。

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示談書の書き方や書式について

話し合って示談案に納得できた場合には、示談書を作成します。
示談書の書き方や書式について解説します。

(1)相手が保険会社であればご自身での作成は不要

加害者が任意保険に加入しており、その保険会社が示談代行をする通常のケースでは、保険会社が示談書を作成します。被害者が内容を確認の上、署名押印して返送すれば示談が成立します。

(2)示談書の内容

保険会社が直接の交渉相手ではないケースでは、示談書を自分で作る必要がある場合もあります。通常、示談書に記載する内容は以下のような事項になりますが、示談書作成にあたっては弁護士に相談した方がよいでしょう。

  1. 当事者の特定(被害者と加害者の特定)
  2. 事故の詳細(事故発生日時、車両番号、事故発生状況など)
  3. 損害の内容
  4. 過失割合
  5. 示談金額
  6. 支払条件(支払日と支払方法)
  7. 清算条項
  8. 示談日、当事者の氏名住所、署名押印

示談交渉で注意すべきポイント

示談交渉で注意すべきポイントを解説します。

(1)示談案の金額が妥当であるか

交通事故の損害賠償については、過去の裁判例を基礎に定型化されているため、妥当な損害賠償額を算出することが可能です。
示談案に記載されている損害の項目に漏れがないか、項目ごとの金額について誤りがないか、又は交渉によって増額が可能かどうか、過失割合の認識に齟齬がないかなど、一つ一つ丁寧に検討します。

(2)保険会社の示談案にそのまま従う必要はない

保険会社の提案する金額が、「正しく」、「適切」だとは限りません。
それどころか、保険会社の初回提案額は、裁判所の考え方からしても、低い金額であることがほとんどです。
被害者は、自身が受けた損害について、適切な賠償を請求する権利がありますので、納得できない場合には、「納得できない」と、明確に保険会社に伝えるようにしましょう。
妥当な金額が分からない場合には、ご自身で判断することは避け、事前に弁護士に相談するとよいでしょう。

(3)弁護士に一任するのもよい

各損害に対する賠償額の算出基準は、自賠責の基準、任意保険の基準、弁護士の基準の3種類があります。
自賠責保険は、被害者を救済するための強制加入保険で、最低限の補償を行うことを目的としていますので、自賠責の基準の支払額は、通常、一番低く設定されています(ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、加害者側になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります)。
任意保険の基準は、任意保険会社が示談交渉をする際の支払いの基準で、会社によって異なり、公開されていません。一般的に、自賠責の基準と同程度かそれ以上ではありますが、弁護士の基準と比べると、低い水準です。
弁護士の基準は、これまでの裁判例の積み重ねにより認められてきた、各ケースの賠償額を定型化して基準を作成したもので、裁判所の基準と呼ばれることもあります。これは、次の書籍にまとめられており、裁判官・弁護士といった法曹は、この書籍を参考に賠償額を算定します。

  • 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本) 財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行
  • 交通事故損害額算定基準(青本) 財団法人日弁連交通事故相談センター本部発行

一般的に、弁護士の基準で計算すると、自賠責の基準や任意保険の基準と比べて、賠償額は高額になります。
しかし、ご自身で計算すると間違いが生じる可能性がありますし、計算できたとしても、本人との交渉において、任意保険会社が弁護士の基準の支払いに応じることはまずありません。
弁護士であれば、最も高額となる基準(基本的には弁護士の基準)で各損害を計算し、最も高額な基準に近づけるよう任意保険会社と交渉することができますので、賠償額の大幅な増額が可能なケースもあります。
示談案が妥当な金額が分からない場合には、弁護士に相談するようにしましょう。増額可能性があると弁護士が判断したのであれば、弁護士とご自身の希望についてよく話し合ったうえで、弁護士に示談交渉を任せるのもよいでしょう。

示談による合意が難しいとき

まずは、迅速な被害回復が可能な示談交渉による解決を目指しますが、当事者が損害の内容や額に合意できなければ、示談は成立しません。
そのような場合には、ADR(裁判外紛争解決手続き)や裁判所を利用して解決を図る必要があります。

(1)ADR(裁判外紛争解決手続き)

ADRは、紛争を解決するための民間の組織で、交通事故に関しては、公益財団法人交通事故紛争処理センター(全国11ヶ所)、日弁連交通事故相談センター(各都道府県)が有名です。
具体的な手続きや、利用できるかどうかの基準は、ADRによって異なりますので、直接連絡して尋ねてみるとよいでしょう。
上記二つの組織では、基本的に、第三者仲介のもと、和解・示談あっせんにより合意を目指します。
合意ができず、あっせんが不調となった場合には、「審査」を申し立てることができます。
審査は、裁判官経験者や弁護士等で構成された審査会が、話し合って賠償額についての裁定(結論)を出します。保険会社は審査会の裁定を尊重することになっていますので、被害者が裁定に同意すれば、示談・和解が成立します。
ADRは、裁判所を利用するよりも費用が安く(組織によっては有料のところもありますが、ほとんどの組織で無料です)、ご自身で対応することが可能であるなどのメリットがあります。
一方で、ADRで仲介する担当者(弁護士)から無料で法的な見解を聞くことはできますが、担当者はあくまで話し合いを仲介する立場であり、被害者の立場に立って助言したり、加害者側を説得したりしてくれるものではないことには注意が必要です。
また、被害者が審査の裁定に同意できない場合には、ADRで解決することはできず、解決するためには、裁判所に対して訴訟を提起する必要がありますので、紛争が長期化することもあります。

(2)裁判所

裁判所を利用した解決には、複数の方法があります。

(2-1)調停

訴訟を提起するよりも費用が安く、ご自身で対応が可能であるなどのメリットがあります。しかし、ADRと同様に、仲介する調停委員は、あくまで話し合いを仲介する立場であり、被害者の味方ではないことには注意が必要です。
また、調停は、話し合いでの合意を目指しますので、合意できない場合には、調停で解決することができません。

(2-2)訴訟

ADRや調停で解決することができなかった場合や、当初から意見の食い違いが大きく、ADRや調停での解決の見通しが立たない場合には、訴訟を提起して解決を図ることになります。
訴訟では、法的な知識に基づいた主張と証拠の提出が必要となりますので、ご自身で対応するとかえってご自身に不利益な結果となりかねません。交通事故に強い弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士費用がかかりますが、ご自身の自動車保険などに弁護士費用特約が付帯されている場合には、弁護士費用はその特約で手当てできますので、自己負担はありません。また、法律事務所によっては、示談が成立して示談金が支払われた後に、その示談金から弁護士費用を支払うことができます。まずは、相談してみるとよいでしょう。

【まとめ】交通事故の被害でお困りの方は弁護士へご相談を

示談書には、通常清算条項が含まれており、示談をした後に、「調べたらもっともらうことができた」と気づいても、示談をなかったことにすることはできません。
示談をする前に、一度、交通事故に強い法律事務所に相談することをお勧めします。

交通事故の被害でお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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