Wさん(仮名)は、自動車運転中の衝突事故で右足首を骨折してしました。長い治療の結果、骨はつながったものの、事故前に比べて足首が曲がりにくくなったと感じています。
このように、足首を骨折した場合、症状等によっては後遺障害と認定されることがあります。
この記事を読んでわかること
- 後遺障害とは
- 足首の骨折による後遺障害の種類
- 足首の骨折で認定される可能性のある後遺障害等級
- 足首の骨折による後遺障害で請求できる慰謝料の相場
- 足首の骨折による後遺障害で請求できる逸失利益
- 示談交渉などを弁護士に依頼するメリット
東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
弁護士による交通事故被害の無料相談はアディーレへ!
費用倒れの不安を解消!「損はさせない保証」あり
ご相談・ご依頼は、安心の全国対応。国内65拠点以上(※1)
後遺障害とは
交通事故でケガを負った場合、治療してもこれ以上回復できない状態で症状が残ることがあります。これを「後遺症」といいます。
「後遺障害」とは、交通事故で負った後遺症のうち、自賠責保険の基準に基づき、所定の機関(損害保険料率算出機構など)により障害を認定されたものをいいます。
後遺障害は1~14級(および要介護1級・2級)の等級に分かれており、1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。
各等級で、眼・耳・四肢・精神・臓器などの部位、障害の系列などに応じた障害の認定基準(各号)が定められています。
後遺障害が認定されると、被害者は加害者に対し、治療費や休業損害(=ケガのために仕事を休んだことによって失った収入)などに加え、後遺症慰謝料や逸失利益(=後遺障害により得られなくなった・または減少した将来の収入)も請求できるようになります。
では、足首の骨折に関する後遺障害について具体的に見ていきましょう。
足首の骨折による後遺障害の種類
足首は、後遺障害の用語では「下肢」(=ふだん私たちが「足」と呼んでいる部分)の3大関節の1つであり、「足関節」と呼ばれます。
【下肢と下肢3大関節】
足首の骨折による後遺障害には、主に次のようなものがあります。
- 機能障害:関節を動かすことができる範囲(「可動域」といいます)が狭くなること
- 神経障害:神経が圧迫されるなどにより、痛みやしびれなどが残ること
足首の骨折で認定される可能性のある後遺障害等級
ここからは、足首の骨折で認定される可能性のある主な後遺障害等級について、機能障害と神経障害に分けて見ていきましょう。
(1)機能障害
足首の骨折による機能障害で認定され得る後遺障害等級は次のとおりです。
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
ここからは、これらについて具体的に説明します。
(1-1)8級7号|1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
関節の「用を廃した」とは、次のいずれかの状態をいいます。
ア 関節が強直(※1)したもの
イ 関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの(※2)
ウ 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側(=正常な側)の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの
(※1)強直…関節が完全に動かない、またはそれに近い状態
(※2)完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態…体を動かそうとしても筋肉を動かせず常にだらんとした状態、または外から力を加えると動くものの、自力では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となった状態
つまり、左右いずれかの足首を骨折し、治療後に上記ア~ウのいずれかの症状が残る場合に8級7号に該当することになります。
(1-2)10級11号|1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかの状態をいいます。
ア 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの、または
イ 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されていないもの
つまり、左右いずれかの足首を骨折し、治療後に上記ア・イのいずれの症状が残る場合に10級11号に該当することになります。
(1-3)12級7号|1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているものをいいます。
つまり、左右いずれか足首を骨折し、治療後に可動域が健側の角度の4分の3以下に制限された場合に12級7号に該当することになります。
(1-4)足首の関節の機能障害の検査
足首の関節の機能障害の検査は、関節の可動域を測定し、健側(=正常な側)の可動域または参考可動域の角度と比較することによって評価します。
原則として他動運動(=医師が外部から力を加えて動かす)により測定しますが、他動運動による測定が適切でないものについては、自動運動(=自力で動かす)による測定値を参考にします。
足関節は、「屈曲」「伸展」の合計値で評価します。
【足関節の参考可動域角度】
運動方向 | 屈曲(底屈) | 伸展(背屈) |
参考可動域角度 | 45 | 20 |
なお、骨折による機能障害が認定されるためには、これらの可動域測定に加えて、骨折したことがレントゲンやCTなどの画像診断で認められることを前提に、骨折状況、治療経過、骨癒合状態(変形の有無、関節面の状態)などから総合的に評価されます。
(2)神経障害
続いて、神経障害です。足首の骨折による神経障害で認定される可能性のある後遺障害等級は次のとおりです。
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経障害を残すもの |
14級9号 | 局部に神経障害を残すもの |
12級13号は、レントゲンなどの画像上でも確認できる異常が残り、それが理由で痛みが生じている場合などに認定されます。例えば、偽関節(骨の癒合不全)が残ってしまった場合や、関節面に不整が残った場合などです。
これに対し、痛み・しびれなどの自覚症状があっても、レントゲンなどの画像診断で明確な異常がない場合(レントゲンなどで見る限りは骨折が完治した場合)は、12級13号は認められませんが、骨折の程度や症状の推移などによっては、14級9号が認定される場合があります。
足首の骨折による後遺障害で慰謝料の相場は?
交通事故で、足首の骨折により上記の後遺障害等級のいずれかに認定されると、事故の相手方(加害者)に対して後遺症慰謝料を請求できるようになります。
後遺症慰謝料の金額(相場)を決める基準には、次の3つがあります。
- 自賠責の基準……自動車損害賠償保障法(自賠法)で定められた、最低限の賠償基準
- 任意保険の基準……各保険会社が独自に定めた賠償基準
- 弁護士の基準……弁護士が、加害者との示談交渉や裁判の際に用いる賠償基準(「裁判所基準」ともいいます)
どの基準を用いるかによって慰謝料の額が変わります。
3つの基準を金額の大きい順に並べると、一般に、
弁護士の基準>任意保険の基準>自賠責の基準
となります。
【3つの基準による一般的な慰謝料額のイメージ】
「弁護士の基準」が一番高くなることが一般的です!
足首の骨折による後遺障害が認定された場合の後遺症慰謝料(相場)を、自賠責基準と弁護士基準で比べると、下の表のようになります(2020年4月1日以降に起きた事故の場合)。
等級 | 自賠責の基準 | 弁護士の基準 |
8級7号 | 331万円 | 830万円 |
10級11号 | 190万円 | 550万円 |
12級7号・13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
被害者が、自分自身(または加入している保険会社の示談代行サービス)で示談交渉を行うと、加害者側の保険会社は、自賠責の基準や任意保険の基準を用いた低い金額を提示してくるのが通常です。
これに対し、弁護士が被害者の代理人として交渉する場合、通常最も金額が高くなる弁護士の基準を用いて交渉します。
つまり、示談交渉を弁護士に依頼すると、後遺症慰謝料を含む賠償金の増額が期待できるのです。
弁護士の基準について詳しくはこちらをご覧ください。
足首の骨折による後遺障害で逸失利益も請求できる
交通事故による足首の骨折で後遺障害が認定されると、加害者に対して逸失利益も請求することができます。
逸失利益とは、後遺障害によって得られなくなった将来の利益のことをいいます。
例えば、タクシードライバーとして生計を立てている人が、交通事故の足首骨折により足首が曲がりにくくなり、ドライバーとしての仕事ができなくなってしまった結果、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入などです。
逸失利益の金額は、
基礎収入×後遺障害による労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
という計算式で算出します。
「基礎収入」は、原則として事故発生前の収入の金額が採用されます。
「労働能力喪失率」とは、後遺障害により労働能力がどれだけ失われたのか、その割合をいいます。後遺障害等級ごとに目安が定められており、足首の骨折による後遺障害(8級・10級・12級・14級)の場合は次のとおりです。
【労働能力喪失率】
8級 | 10級 | 12級 | 14級 |
45% | 27% | 14% | 5% |
つまり、100%ある労働能力のうち、8級では45%、10級では27%、12級では14%、14級では5%が失われたとみなされることになります。
「ライプニッツ係数」とは、被害者が将来得られたはずの利益を前もって受け取ったことで得られた利益(利息など)を差し引くための数値です。
ライプニッツ係数における就労可能年数(=働くことができる年数)は、原則として67歳までの期間で計算します。
症状固定時点または死亡時点で、67歳に近い(または67歳を超えている)場合、平均余命の原則2分の1を就労可能年数とします。
なお、逸失利益について詳しくはこちらをご覧ください。
交通事故による足首の骨折で後遺障害認定を受けるポイント
後遺障害認定を受けるためには、等級に関わらず、次の3つが必要です。
- 交通事故と後遺症の間に因果関係があること
- 医師により、症状固定(=これ以上治療しても改善も悪化もしないこと)の診断を受けること
- 医師により後遺障害診断書を作成してもらうこと
この点を踏まえた上で、交通事故による足首の骨折で後遺障害認定を受けるポイントを説明します。
(1)ポイント1|検査を早めに受ける
後遺障害の原因が交通事故にあると証明するためには、事故後すぐに検査する必要があります。期間があくと、本当に交通事故が原因なのか因果関係を疑われてしまうからです。
事故後すみやかに、検査を受けるようにしましょう。
(2)ポイント2|後遺障害診断書の内容が肝心
後遺障害の認定を受けるためには、医師により、これ以上治療しても改善の見込みがない(これを「症状固定」といいます)という診断を受ける必要があります。
そのうえで、後遺障害診断書に、他覚症状や各種検査結果、症状固定の時点での客観的な症状(機能障害であれば可動域の角度など)や、自覚症状などを正確に記載してもらうことが重要です。
足首の骨折の後遺障害について弁護士に依頼するメリット
後遺障害の認定手続きを弁護士に依頼することには、いくつかのメリットがあります。
ここからは、後遺障害の認定手続きについて、弁護士に依頼するメリットをご紹介します。
(1)メリット1|弁護士は、後遺障害が認定されやすくなるコツを知っている
交通事故案件を担当してきた弁護士は、後遺障害の認定率を高める後遺障害診断書の作成方法や、資料収集のコツを知っています。
適正な等級認定がなされるよう、後遺障害診断書に何を書いてもらうべきか助言を受けることができます。
したがって、後遺障害認定の手続きを被害者本人でするよりも、弁護士に依頼するほうが認定される確率は高まります。
(2)メリット2|後遺障害認定の手続きを任せられる
また、後遺障害認定の手続きを弁護士に依頼すれば、申請のための面倒な作業を任せられ、ご自身は治療に専念できます。
(3)メリット3|慰謝料などの増額が期待できる
上で述べたように、加害者側との示談交渉などを弁護士に依頼すると、弁護士の基準を用いた交渉により、慰謝料などを増額できる可能性があります。
(4)メリット4|弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を保険でまかなえることも
示談交渉などを弁護士に依頼すると、別途弁護士費用がかかります。
被害者ご自身もしくは一定のご親族等が自動車(任意)保険に加入している場合は、この弁護士費用を「弁護士費用特約」でまかなえる場合があります。
「弁護士費用特約」とは、弁護士への相談・依頼の費用を一定限度額まで保険会社が補償する仕組みです。この弁護士費用特約を利用すると、実質的に無料で弁護士に相談・依頼できることが多いのです。
私の保険で弁護士費用特約をつけた記憶がないです。特約は使えないでしょうか?
弁護士費用特約には、「被害者ご自身が任意保険に加入している場合以外にも利用できるケースがある」というポイントがあります!確認してみましょう。
ここでポイントなのが、「弁護士費用特約」が利用できるのは被害者ご自身が任意保険に加入している場合だけではない、という点です。
すなわち、次のいずれかが任意保険に弁護士費用特約を付けていれば、被害者ご自身も弁護士費用特約の利用が可能であることが通常です。
- 配偶者
- 同居の親族
- ご自身が未婚の場合、別居の両親
- 被害にあった車両の所有者
また、弁護士費用特約を使っても、自動車保険の等級が下がる(保険料が上がる)ことはありません。
ご自身が弁護士費用特約を利用できるのか、利用できる条件などを保険会社に確認してみましょう。
【まとめ】交通事故で足首を骨折した場合、後遺障害が認定される可能性あり
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 交通事故で足首を骨折した場合、機能障害・神経障害の後遺障害が認定される可能性がある。
- 後遺障害認定がされると、治療費などに加えて、後遺症慰謝料や逸失利益も請求できることがある。
- 後遺症慰謝料の額を算定する基準としては、自賠責の基準・任意保険の基準・弁護士の基準の3つがあり、一般的には弁護士の基準が最も高い。
- 示談交渉などを弁護士に依頼すれば、一般に最も高額な弁護士の基準による交渉により、賠償額の増額も期待できる。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、弁護士費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様にあらかじめご用意いただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2023年7月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。