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不倫の誓約書を無効にする方法とは?できるケースと対処法を解説

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kiriu_sakura

「既婚者との不倫が発覚して、不倫相手の妻から誓約書の提出を求められた。後ろめたさから断れなくて、ついサインしてしまったけれど、内容には納得できないところがある。一度サインした誓約書を無効にする方法はないの?」

このような状況でお困りではありませんか?

原則として、誓約書のような簡易な書面であっても、当事者間の権利義務が記載された場合、その部分は法的効力を有することになります。

したがって、基本的には、一度サインした誓約書をあとから一方的に無効にすることはできません。

この記事を読んでわかること
  • 誓約書にサインするリスク
  • 誓約書を無効にするための条件
  • 誓約書を無効にしたいときの対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。東京弁護士会所属。

不倫トラブルで誓約書にサインするリスク

不倫が発覚した際、不倫相手の配偶者から誓約書などへのサイン(署名や押印)を求められることがあります。
しかし、内容について吟味せずに、あるいは納得いかないと思いつつも、後ろめたさから断れずにサインしてしまうことにはリスクがあります。

(1)誓約書とは?

そもそも誓約書とは、当事者の一方だけが相手方(この場合は、不倫相手の配偶者)に約束する内容(事実や義務)を記載して差し出す書面のことです。

不倫の誓約書の場合、不倫相手と肉体関係を持った事実を認め、不倫相手の配偶者に対し慰謝料として〇〇万円支払うことを約束するという内容のものになることが一般的でしょう。
もちろん、誓約書は差し出す本人の自由意思で作成するものであり、相手方から強要されて作成すべきものではありません。

そして、誓約書は差し出す本人しかサインしない書面であるため、いわゆる示談書や合意書にはなりません

つまり、一方的な約束を記載したに過ぎず、その内容を相手方が了承したという証拠にはならないため、後に追加請求を受けるリスクがあります

追加請求を受けるとは、どういうことですか?

例えば、「慰謝料として100万円支払います」という内容の誓約書にあなたがサインし、約束通り100万円支払ったとします。
しかし、その後で、不倫相手の奥さんから「この100万円という金額はあなたが一方的に約束しただけです。私はこの金額に納得していたわけではないので、追加であと100万円支払ってください」と言われる可能性があるということです。

したがって、のちに再びトラブルになることを防止するためには、約束した内容を当事者双方が承諾したことを明らかにし、双方がサインする形式の書面(示談書や合意書など)にした方が良いでしょう。

(2)誓約書への安易なサインは禁物

相手方が誓約書の文面を作成し、あなたにサインを求めてきた場合、その内容は相手方に有利なものになっている可能性が高いといえます。

あなたがサインをしてしまうと、誓約書に記載された事実について認め、記載された義務を負うことを相手方に約束したことになります

そのため、誓約書の記載内容が事実と違ったり、納得がいっていなかったりしても、一度サインしてしまったら、基本的にくつがえすことは難しいでしょう。

誓約書だけではなく、合意書など双方がサインする形式の書面であっても、双方がサインして約束が成立したのであれば、くつがえすことが難しくなるのは同様です。

名目の如何を問わず、納得がいかない内容の書面には、安易にサインしないように気を付けてください。

(3)誓約書へのサインの強要は違法行為になることも

相手方の強迫等により、あなたが無理やりサインすることを強要されたのであれば、その誓約書の効力を無効にできるかもしれません

強迫されたり、だまされたりしたことによる意思表示(サインした、など)は、法律上は取消しが可能(民法96条1項)です。
ですが、「詐欺(又は強迫)により取り消します」と言っても相手がすぐに納得するとは限りません。あくまでも相手が誓約書の有効性を主張する場合には裁判になる可能性もあります。裁判になると手間もかかりますし、詐欺や強迫されたことなどを裁判で証明するのは、なかなか困難な場合が多いでしょう。

民法96条(詐欺又は脅迫)

1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

民法 | e-Gov法令検索

なお、「誓約書を書かなければ職場や家族に不倫をばらす」と脅されてサインをした場合や、無理やり手をつかんでサインをさせられた場合など、相手方の暴行や脅迫により強要されて誓約書にサインをさせられたのであれば、刑事上も強要罪(刑法223条1項)が成立する可能性があります。

そのため、もし相手方の暴行や脅迫により、誓約書にサインをさせられたという事情があれば、警察に相談してみるのも手段のひとつです。

誓約書を無効にできるケース

一度サインしてしまった誓約書の内容は、原則として無効にすることができないことは先にご説明したとおりです。
例外的に、誓約書の効力を否定できるケースはとても限られています。

(1)誓約書を無効にできる例外的なケース

誓約書の内容が法的に「無効」または「取消し」可能(それぞれの法的な意味については後でご説明します)なケースとしては、次のようなものが挙げられます。

【無効】:誓約書の内容が公序良俗に反する場合(民法90条)
➡例えば、慰謝料の金額が、裁判上の相場(※1)を大きく超える法外な金額で、その金額を支払わせることがむしろ社会正義に反するような場合

【取消し】:前提としていた事柄に錯誤(※2)があった場合(民法95条)や、詐欺や強迫によって誓約書にサインさせられた場合(民法96条)

※1不倫の慰謝料の相場は、次のとおりです。

不倫の慰謝料の裁判上の相場(目安)
不倫が原因で離婚した場合100万~300万円
離婚しない場合数十万~100万円

※2「錯誤」とは、意思表示の内容や、その意思表示をした動機が、誤解に基づくものであることをいいます。
そして、その誤解が意思表示の内容や動機の重要な部分について存在するといえる場合には、「錯誤」に基づく取消しが認められることになります。

【「無効」と「取消し」の法的な意味】
無効:最初から誓約書の法的拘束力が当然に発生しない
取消し:取消す権利を持つ人が取消しの意思表示をすることにより、誓約書の法的拘束力がさかのぼって消滅する

(2)あらためて交渉に応じてくれる可能性

相手方も誓約書の内容を白紙に戻すことに合意すれば、約束をなかったことにすることは可能です。
相手方が、都合よくこちらのお願いを聞き入れてそんな合意をするわけがない、と思われるかもしれません。

しかし、相手方に弁護士が付いておらず、誓約書の文面も相手方本人が作成したものであった場合、きちんとした合意書を作成し直した方が、相手方にとってもメリットがある場合があります。

清算条項を記載できる

清算条項とは、この合意書によって解決したので、合意書を交わした以降は合意の当事者の間で互いに権利や義務を主張しあわないことを確認する規定のことです。
この規定により、合意する以前に生じていた事情を理由に、お互いに相手に何らかの請求をすることができなくなります。

そのため、あなたも相手方からさらなる請求をされることはなくなりますし、相手方も、後々になってあなたとのトラブルが再燃する心配をしなくて済むという点にメリットを感じる可能性があります。

求償権についても合意できる

求償権とは、不倫の当事者2人のうち一方が慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者に対して、その負担割合に応じて慰謝料の一部の支払いを請求できる権利のことをいいます。

例えば、あなたが仮に慰謝料として100万円を請求されて全額支払った場合(※慰謝料として100万円が妥当な場合)、不倫相手の彼に対して、「私があなたの負担分まで慰謝料を支払ったのだから、あなたの負担分(たとえば50万円)を私に支払ってください」と請求することができるのです。

(*金額は一例です。求償できる金額は、必ずしも支払った分の50%分になるわけではありません。)

不倫が発覚しても夫婦が離婚しない場合、家計が同じであることも多いでしょうから、相手方(不倫相手の奥さん)が、あなたから自分の夫に対して、求償権を行使され、夫が金銭を支払うことになるのを嫌がる場合があります。

そこで、慰謝料について取り決める際に、「前もって求償権を放棄します(後から求償権を行使しません)」という内容の約束をすることがあります

したがって、相手方があなたに求償権を放棄することを望む場合、このような約束ができることをメリットに感じる可能性があります。
そして、あなたの側も、「求償権を放棄する代わりに、慰謝料を減額してください」という交渉ができる可能性があるでしょう。

誓約書を無効にしたい!トラブル回避のポイント

次に、一度書いてしまった誓約書を無効にするために、相手方と交渉する際のポイントについてご説明します。

(1)一方的に反故(ほご)にしない

誓約書の内容が、公序良俗に反するものだったり、強要されて書かされたりして、先述した誓約書を無効にできる例外的なケースだと判断した場合でも、一方的に誓約書を反故にする(約束を破る)と、トラブルが拡大する可能性があります。

弁護士に相談・依頼しながら冷静に対処していくことをお勧めします。

(2)相手方との交渉を弁護士に依頼する

不倫トラブルの場合、当事者たちが感情的になっていることが多いため、弁護士に対応を依頼することをお勧めします。
弁護士が交渉窓口になることで、相手方の態度が軟化するケースや、相手方の冷静な対応を引き出しやすくなるケースがあるからです。

また、当事者同士で誓約書や合意書を作成しても、後のトラブル防止の観点からは不十分な内容になってしまうことも少なくありません。
弁護士に対応を依頼すれば、法的に有効な合意書の作成まで、トータルでサポートしてもらえますので、その点からも、弁護士に依頼した方が良いといえるでしょう。

【まとめ】基本的に一度サインした誓約書を一方的に無効にすることはできない

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 誓約書とは、当事者の一方だけが相手方に約束する内容(事実や義務)を記載して差し出す書面のこと
  • 誓約書は差し出す本人しかサインしない書面であり、その内容を相手方が了承したという証拠にはならないため、後に追加請求を受けるリスクがある
  • 基本的に一度サインしてしまうと、誓約書に記載された事実について認め、記載された義務を負うことを相手方に約束したことになるため、安易にサインしてはならない
  • 強迫等により、無理やりサインすることを強要されたのであれば、誓約書を取消すことができる可能性がある
  • 公序良俗に反する内容の誓約書は無効である
  • きちんとした合意書を作成し直した方が、相手方にとってもメリットがある場合もあるため、相手方があらためて交渉に応じてくれる可能性もある

不倫相手の配偶者から誓約書へのサインを求められてお困りの方や、すでに誓約書にサインをしてしまい、その効力をくつがえせないかお悩みの方は、男女トラブルを取り扱っている弁護士に相談することをお勧めします。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年3月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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