「残業代の支払いが遅れがち…ちゃんと支払われる限り、支払いが遅れるだけなら違法にはならないの?」
そんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
実は、残業代の支払いが遅れることは労働基準法に違反する可能性が高いのです。
労働基準法第24条では、賃金は毎月1回以上、一定の期日に全額支払わなければならないと定められています。これには残業代も含まれ、支払いが遅れることは違法行為となり得ます。
残業代の未払いに悩んでいる方や、支払いが遅れることに不安を感じている方は、ぜひこの記事を参考にして、適切な対応を取るための第一歩を踏み出してください。
この記事を読んでわかること
- 残業代の支払時期
- 違法な残業代の支払い方
- 残業代の請求方法
ここを押さえればOK!
就業規則で残業代の支払時期を定めることは違法ではありませんが、労働基準法に反する内容は無効です。
たとえば、残業代を数ヵ月後にまとめて支払うことや繰越払いは違法です。
未払いの残業代が発生した場合、労働者は残業代だけではなく遅延損害金を請求する権利があります。
残業代の未払いが発生した場合、労働者は証拠を収集し、未払い分を計算して会社に請求します。会社が対応しない場合は、労働基準監督署に相談するか、弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士に依頼することで、複雑な計算や会社との交渉、法的手続きにおいて専門的なサポートを受けることができ、精神的な負担も軽減されるでしょう。
交渉がまとまらない場合でも、弁護士が労働審判や訴訟に対応してくれるため、安心して請求手続を進めることができます。
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東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
残業代の支払時期に関する法律
労働基準法は、労働者の権利を保護するためにさまざまな規定を設けています。
そのなかでも、残業代の支払い時期に関する規定は非常に重要です。
労働基準法第24条2項では、賃金の支払いについて「毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とされています。これは、労働者が生活費を確保するために、定期的かつ確実に賃金を受け取る権利を保障するためのものです。
具体的には、残業代もこの「賃金」に含まれ、通常の給与と同様に毎月一定の期日に支払わ
れる必要があります。
たとえば、月末締めの翌月払いが一般的ですが、企業によっては異なる支払いサイクルを採用している場合もあります。
労働基準法のこれらの規定に従い、企業は労働者に対して適切な時期に残業代を支払う義務があります。これに違反する場合、企業は法的な制裁を受ける可能性があります。
労働者は自身の権利を守るために、賃金の支払状況を確認し、問題がある場合は適切な対応を求めることが重要です。
就業規則で残業代の支払時期を定めることは違法か?
就業規則で残業代の支払時期を定めること自体は違法ではありません。
むしろ、企業が就業規則において賃金の支払時期を明確に定めることは、労働者にとっても企業にとっても重要です。
ただし、就業規則で定める支払時期が労働基準法に違反している場合は別です。
たとえば、残業代を数ヵ月後にまとめて支払うような規定は、労働基準法の「毎月1回以上」の原則に反するため違法となります。
また、賃金の全額払いの原則があるため、残業代を分割して支払うことも許されません。
勝手に翌月繰り越すことは違法
前述したように、残業代の翌月払いは一般的であり、違法ではありません。
しかし、会社が勝手に、残業代を支払うべき時期に支払わず、残業代の全額あるいは一部を翌月に繰り越して支払うことは、違法です。
具体的には、労働者がその月に行った残業に対する賃金は、その月の給与と一緒に支払われるべきです。会社が一方的に残業代を翌月に繰り越すことは、労働者の生活費の確保を妨げることになりかねません。
残業代の翌月繰越しが常態化している場合、会社が法的な制裁を受けるリスクは高まっているといえるでしょう。
残業代のボーナス払いも違法
残業代をボーナスと一緒にまとめて支払う、あるいは残業代をボーナスとして支給することも違法です。
前述のとおり、労働基準法第24条では、賃金は毎月1回以上、一定の期日に全額支払わなければならないと規定されているからです。
ボーナスは通常、年に数回しか支給されないため、残業代をボーナスとして支払うことはこの規定に反します。
労働者には、残業代を毎月の給与と一緒に受け取る権利があります。
そもそも残業代の未払いは違法
残業代の未払いは、労働基準法に違反する行為です。
労働基準法第37条では、労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、その時間に対して割増賃金を支払うことが義務付けられています。
この割増賃金がいわゆる残業代であり、会社はこれを適切に支払わなければなりません。
残業代の未払いが発生する理由として、会社の経営難や管理体制の不備、あるいは意図的な不正行為が考えられます。
しかし、どのような理由であれ、未払いは許されません。労働者は、自身の労働に対する正当な対価を受け取る権利があります。
残業代の支払いが遅れると「遅延損害金」を請求できる
未払いの残業代がある場合、請求できるのは残業代そのものだけではありません。
残業代の支払いが遅れる場合、労働者は「遅延損害金」を請求する権利があります。
前述のとおり、賃金は毎月1回以上、一定の期日に全額支払われることが、労働基準法によって義務付けられています。
それに違反して賃金の支払いが遅れた場合、労働者は遅延損害金を請求することができます。遅延損害金とは、賃金の支払いが遅れたことによる損害を補填するための金銭です。
遅延損害金の利率は法律で決まっています。
具体的には、支払日が2020年4月1日以降の残業代は、法定利率である年利3%(民法第404条)が原則です。
なお、退職後に残業代を請求する場合は、基本的に年利14.6%(賃金の支払の確保等に関する法律第6条)となっています。
残業代の請求方法
残業代の未払いが発生した場合、適切な手順を踏んで請求することが重要です。
順を追って説明します。
(1)証拠を収集する
まず、最初に行うべきは、給与明細やタイムカードの写し、業務日報の写しなどの証拠を収集することです。これらの書類は、実際にどれだけの時間残業したかを証明するために必要となります。
(2)残業代の金額を計算する
集めた証拠を参考にして、未払い分の残業代を計算します。
未払いの残業代は、次のような計算で求めます。
1時間あたりの賃金(基礎時給)×割増率×実際の残業時間
なお、法定労働時間を超える労働が月に60時間以内であれば、割増率は1.25倍となります。
(3)残業代を請求する
次に、会社に対して、未払いの残業代を請求します。
この際、具体的な証拠を提示し、未払いの金額や期間を明確に伝えることが重要です。
会社が誠実に対応し、未払い残業代を支払う意向を示す場合は、それで問題が解決することが多いでしょう。
(4)外部機関に相談する
しかし、会社が請求や話合いを拒否した場合や、納得のいく回答が得られない場合は、労働基準監督署に相談することが次のステップとなります。
労働基準監督署は、労働者の権利を守るための公的機関であり、会社に対して指導や是正勧告を行う権限を持っています。
ただし、労働基準監督署は、あなたの代わりに残業代を請求してくれるわけではありません。
その点、弁護士に依頼すれば、代わりに未払いの残業代について会社と交渉してくれます。
交渉がまとまらなければ、労働審判や訴訟といった法的手続を選択することもありますが、その際にも手続きを依頼すれば、裁判所に提出する書面の作成なども任せることができます。
残業代請求を弁護士に依頼するメリット
残業代の未払いが発生した場合、弁護士に依頼することには多くのメリットがあります。
主なメリットを3つご紹介します。
(1)複雑な残業代の計算を任せられる
残業代の計算は、基本給、割増率、深夜労働や休日労働の有無など、さまざまな要素を考慮する必要があり、非常に複雑です。
仕事をしながら、一般の方がそういった計算を適切に行うことは非常に困難でしょう。
その点、弁護士に依頼すれば、適切な計算を行ってもらえるうえ、交渉の際に会社側の主張にも適切な反論をすることが期待できます。
(2)会社との交渉に伴う精神的苦痛を軽減できる
未払いの残業代を請求する際、会社との交渉は避けて通れません。しかし、労働者が直接交渉することは心理的な負担が大きく、ストレスを感じることが多いと考えられます。
その点、弁護士が代理人として交渉すれば、労働者は精神的な負担を軽減できるでしょう。
(3)労働審判や訴訟に発展した場合にも対応してもらえる
会社との交渉がうまくいかない場合、労働審判や訴訟といった法的手段を取ることが必要です。
弁護士に依頼せず、本人が対応することも可能ですが、裁判所とのやり取りや慣れない書面の作成を自分だけで行うことはやはり難しいでしょう。
この点、弁護士に依頼していれば、交渉がまとまらなかった場合にも引き続き対応してもらえるため、安心して残業代の請求に踏み出すことができると考えられます。
【まとめ】残業代の翌月払いは違法ではないが、繰越しやまとめ払いは違法
残業代の未払いは労働者の権利を侵害する重大な問題です。
未払いの残業代に悩んでいる方は、まずは証拠を収集し、それをもとに残業代を計算してみましょう。計算した残業代を会社に請求したところ、会社が真摯に対応すれば、あっさり問題が解決する可能性もあります。
ただし、残業代の計算は複雑です。会社が納得のいく対応をしてくれるとも限りません。
あなたの権利を守り、適切な対応を取るためには、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2024年11月時点
残業代の未払いや翌月繰り越し・ボーナス払いの措置をとられているなどでお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。