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日照権とは?よくあるトラブル事例や裁判上の判断基準を弁護士が解説

作成日:
s.miyagaki

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

皆さんは、家の窓から差し込む明るい日差しが突然失われるという状況を想像したことはありますか?

新築の高層マンションや増築された隣家によって、これまで楽しんでいた日当たりが急に悪くなることがあります。実は、こうした問題に対応するための権利が「日照権」です。

しかし、日照権の侵害がどのように認められ、どのように対処すれば良いかを知っている方は少ないかもしれません。

このコラムでは、日照権とは何か、その法的な基礎から具体的なトラブル解決の方法まで、分かりやすく解説します。近隣関係を良好に保ちながら、住宅環境を快適に維持するための知識を身につけていただければ幸いです。

この記事を読んでわかること

  • 日照権と日照権に関するルールとは
  • 日照権を侵害しているかどうかの判断基準とは
  • 日照権でのトラブル典型例とは
  • 日照権でトラブルになった場合の対処法とは

ここを押さえればOK!

日照権は建物の日当たりを確保する権利で、健康的な生活や快適な居住環境に欠かせないものです。法律に明記されていないものの、裁判上権利として認められています。
建築基準法では「日影規制」と「斜線制限」によって建物が日当たりを妨げないよう制限が定められています。日照権侵害かどうかは「受忍限度」を超えるかで判断され、法律違反、日光遮断の程度、配慮の有無、建物環境などが考慮されます。新築や増築で日当たりが悪化する場合、損害賠償請求や建物建築の差し止めができる場合があります。
典型的なトラブルには高層マンションによる日当たりの悪化や太陽光パネルの影響があり、対処法としては隣家との交渉や自治体や弁護士への相談が推奨されます。
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

日照権とは?

日照権とは、建物の日当たりを確保する権利をいいます。これは、特に日照によって健康的な生活や快適な居住環境を維持するために重要です。

日照権自体は法律で明記された権利ではありません。

しかし、日照権は裁判上権利として認められ、隣家の新築や増築によって日当たりが悪化した場合には、損害賠償請求や建物建築の差し止めなどが認められることもあります。

日照権に関するルールとは?

建物によって日当たりが妨げられないように、建物が建築できる範囲を制限する「日影規制(ひかげきせい・にちえいきせい)」「斜線制限」を建築基準法で定めています。

(1)日影規制

日影規制(ひかげきせい・にちえいきせい)とは、マンションなど中高層のため建物で日光が遮られないようにする規制です。建物によって日影になる時間が一定時間を超えないように制限がかけられています。

(2)斜線制限

斜線制限は、道路境界線または隣地境界線からの距離に応じて建築物の各部分の高さを制限することで、 道路や建物の日照や採光・通風確保することが目的とされています。

例えば、北側斜線規制とは北側に位置する建物が日当たりを確保するための制限です。北側の境界線(一定の高さを起点とする)から一定の傾斜の範囲内に建築物を建設する必要があります。

他にも、斜線規制として隣地斜線制限、道路斜線制限などの規制があります。

日照権を侵害しているかどうかの判断基準とは?

日照権を侵害しているかどうかの判断基準は、裁判上「受忍限度」を超えるかどうかで判断されます。言い換えると、日当たりの妨害が社会生活上我慢すべき範囲かどうかということです。

裁判で日照権を侵害していると判断された場合、損害賠償請求や建物建築の差し止めなどが認められる可能性があります。

<受忍限度を超えるかどうかの判断要素>

  • 建築基準法などの法律に違反していないか
  • どの程度日光が遮られるか
  • 日光が遮られないように配慮したか
  • 問題になっている建物のある環境はどうか など

これらの要素を総合的に考慮して、日当たりの妨害が社会生活上我慢すべき範囲(受忍限度)かどうかを判断することになります。

(1)建築基準法などの法律に違反していないか

建築基準法や地方自治体の条例に違反している場合には、受忍限度を超えると判断される可能性が高いでしょう。一方で、建築基準法や地方自体の条例に適合している場合には受忍限度を超えると判断されづらくなります。

(2)どの程度日光が遮られるか

次に、どの程度日光が遮られるかも判断基準の一つです。例えば、冬季の日照時間が短くなる場合や、リビングなど主要な生活空間が常に暗くなる場合などがあります。遮られる日光の量や時間が多ければ多いほど、受忍限度を超えると判断される可能性が高くなります。

(3)日光が遮られないように配慮したか

建築主が隣地などに対し日光が遮られないようにどの程度努力したかも考慮されます。例えば日光が遮らない場所に建てることは可能だったか、事前に十分な説明を尽くしていたかなどです。適切な努力が行われていない場合、受忍限度を超えると判断されやすくなります。

(4)問題になっている建物のある環境はどうか

問題になっている建物のある環境はどこかも考慮されます。例えば、住宅街であれば日光を遮られないようにする必要性が高いとされる一方で、商業地域や工業地域では住宅街に比べると日光を遮られないようにする必要性が低いとされています。

日照権でのトラブル典型例とは?

日照権のトラブルと聞くと、高層マンションが建設され日当たりが悪化するケースをイメージされるかもしれません。

しかし、それ以外にも太陽光パネルを設置したにもかかわらず、隣地に建物が建設された結果、太陽光発電ができないというトラブルや太陽光パネルによって、日光の照り返しで眩しい状態が続くというのもトラブルの典型例として挙げられます。

日照権でトラブルになったときはどうすればいい?

日照権トラブルが発生したからといって、引っ越しをすることは簡単にはできません。日照権トラブルになったときの対処法について解説します。

  • 直接交渉:隣家の住民もしくは施主(建設予定の場合)と話し合います。
  • 自治体に相談:自治体の建築指導課や住民相談窓口に相談します。

必要に応じて、裁判所に損害賠償請求や建物建築の差し止めなどを申し立てる方法もあります。この場合には、事前に弁護士に相談するのをおすすめします。

【まとめ】日照権とは日当たりを確保する権利|お困りの場合には自治体や弁護士へ

日照権は、住宅の日当たりを確保するために重要な権利です。具体的には、隣家の建築によって日当たりが悪化し受忍限度を超える場合には、損害賠償請求や建築差し止めが認められる可能性があります。

日照権に関する問題がある場合は、早めの対応が重要です。日照権に関するトラブルが発生した際は、まずは隣家と話し合い、自治体や日照権トラブルを扱っている弁護士に相談することをお勧めします。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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