「パートだから残業代は出ない」「少しの残業だから我慢するしかない」そう思い込んでいませんか?
実は、パートタイムであっても、「労働者」である以上、正社員と同じように残業代が支払われなければなりません。
サービス残業は違法です。あなたの労働には正当な対価が支払われるべきです。
この記事では、パートの残業代に関する基本的なルールから、具体的な計算方法、残業代が支払われていない場合の対処法まで、あなたの疑問をわかりやすく解説します。
もう一人で悩む必要はありません。あなたの権利を守り、適切な残業代を受け取るための一歩を踏み出しましょう。
ここを押さえればOK!
未払いの残業代を請求するには、まず雇用契約書や給与明細、タイムカードなどの証拠を集めましょう。その上で、冷静に会社と話し合うことが重要です。話し合いで解決しない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。
また、弁護士に依頼すれば、正確な残業代の計算や会社との交渉、法的手続きを任せることができます。費用はかかりますが、費用対効果が高いケースも少なくありません。
「管理職だから」「固定残業代があるから」といった理由で残業代が支払われない場合でも、残業代を請求できるケースが多くあります。
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パートでも残業代は支払われる?あなたの疑問を解決します
「パートだから残業代はもらえない」というのは間違いです。
会社に雇用されているパートであれば、正社員と同じく「労働者」として残業代を請求することができます。
(1)残業代が発生する「残業」とは
残業と一口に言っても、一般的に二つの意味があります。
一つは「法定時間外労働」で、これは1日8時間、週40時間という法定労働時間を超えて労働した場合を指します。
もう一つは「所定時間外労働(法内残業)」で、これは会社の所定労働時間は超えているものの、法定労働時間内にとどまっている労働を指します。
法定時間外労働をした場合には、法定の割増率による割増賃金を支払わなければなりません。
所定時間外労働(法内残業)は、法律では割増率の規定はありませんので、通常の賃金を支払うことになります(会社によって割増率が定められていることもあります)。
パートの場合は、所定労働時間が法定労働時間より短く設定されていることが多いため、所定時間外労働(法内残業)が発生しやすい傾向にあるのです。
所定時間外労働(法内残業)であっても、残業であることには違いありません。割増率の適用はなくとも、通常の賃金分の残業代は請求することができます。
(2)知っておきたい!パートの残業時間の上限
労働基準法では、原則として「1日あたり8時間、1週間あたり40時間」を超える労働を禁止しています。
もっとも、使用者(会社)と労働者が36協定を締結した場合は、法定労働時間を超える労働(時間外労働)をさせることも可能です。
ただ、この残業時間にも、原則「1ヵ月で45時間・1年間で360時間」といいう上限があります(労働基準法36条4項)。
36協定や1ヶ月の労働時間の上限について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
あなたの残業代、いくら?具体的な計算方法と注意点
ご自身の残業代がいくらになるのか、具体的な計算方法を知ることで、未払いの残業代を把握しましょう。
(1)残業代の計算式
残業代は、次の計算式で求めることができます。
残業代 = 1時間当たりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間
計算要素を、一つ一つ説明します。
(1-1)1時間当たりの基礎賃金
残業代を計算する基礎となる時給のことです。
1時間当たりの基礎賃金を計算する際には、日給や月給などの基本給に各種手当を含めたものから、通勤手当など所定の手当を除外します。
時間給で働いているパートの場合、1時間当たりの基礎賃金は、時給の金額です。
(1-2)割増率
法定時間外労働、深夜労働(原則22時~5時)、休日労働をした場合に、割り増して支払わなければならない賃金の率のことです。
主な割増賃金の率は、次のとおりです。
- 法定時間外労働(月60時間以下):25%以上
- 休日労働:35%以上
- 深夜労働:25%以上
パートに多い法内残業の場合には、法律では割増率の決まりはないので、通常の賃金が支払われることになります(会社によっては割増されることもあります)。
(1-3)残業時間
実際に法定労働時間や所定労働時間を超えて労働した時間のことです。
残業は、原則として1分単位で計算します。
会社によっては15分や30分単位で計算されることもあるようですが、原則としてそのような計算方法は違法です。
(2)【ケース別】パートの残業代の計算例
時給1200円で、1日の所定労働時間が5時間、法内残業の割増率が0%で、1日7時間労働を行ったパートを例に残業代を計算します。
1日の残業代は、1200円×1(割増率0)×2時間で、2400円です。
また、1日9時間労働をした場合の1日の残業代を計算してみましょう。
1200円×1(割増率0)×3時間+1200円×1.25(割増率25%)×1時間で、5100円となります(※)。
※時給制の残業代は、割増率抜きですでに一部支給されていることも多いです。このような場合には、未支給の割増分を請求することになります。
扶養内で働くパートが残業する際の注意点
扶養内で働くパートの方にとって、残業代の支払いは年収に影響を与え、扶養から外れてしまう可能性があります。特に「103万円の壁」や「130万円の壁」といった税法上・社会保険上の扶養の壁を意識している場合、残業代を含めた年収がこれらの壁を超えてしまうと、配偶者の所得税や社会保険料の負担が生じることになります。
残業を依頼された際は、自身の年収見込みと相談し、扶養の範囲に収まるかどうかを事前に確認することが賢明です。
扶養内で働く場合に知っておきたい年収の壁について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「残業代が出ない」と悩んだら?取るべき対処法と相談先
もし残業代が支払われていない状況に直面しても、泣き寝入りする必要はありません。
適切な対処法と相談先を知り、行動に移しましょう。
(1)まず、残業代を請求するための証拠を集めよう
残業代の証拠は、大きく、「残業代はいくらか」「実際の残業時間はどのくらいだったか」という2つに分かれます。
【残業代をいくらもらっていたか】
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 就業規則
- 賃金規程
- 給与明細
- 預金通帳 など
【残業時間はどのくらいだったか】
- タイムカード
- 勤怠管理ソフトの記録
- 業務日報・日報の写し など
一つ一つ確認しながら集めるようにしましょう。
これらの証拠は、会社と有利に交渉するためにも重要です。
手元に証拠があまり集められなかったとしても、それだけであきらめることはせず、一度弁護士にご相談ください。
(2)次に、会社に相談!スムーズな話し合いの進め方
残業代を計算し、未払いの残業代があることが分かったら、会社に直接相談します。
感情的にならず、具体的なデータ(残業時間や計算した残業代)を提示しながら、冷静に話し合いを進めることが重要です。
口頭だけでなく、日付や内容が残るメールなどでやり取りを行うとよいでしょう。
残業代が出ない理由も、会社の誤解や計算ミスである可能性もゼロではありません。
会社との対話を通じて、解決の糸口を探ることが望ましいでしょう。
(3)会社が応じない場合の相談先
会社との話し合いで解決しない場合や、話し合いに応じてもらえない場合であっても、あきらめる必要はありません。次のような相談先があります。
(3-1)労働基準監督署
労働基準監督署は、会社に労働基準法などの法律のルールを守らせるための公的機関です。
企業に違反が確認できた場合、指導や是正勧告を行うことがあります。
ただし、個人の労働トラブルを解決するための機関ではないため、労基署に相談しても、必ずしも未払い残業代が支払われるとは限りません。
(3-2)総合労働相談コーナー
都道府県の労働局や全国の労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーでは、広い分野の労働問題を対象として、労働者の相談に応じています。
予約不要で、無料で利用できます。集めた証拠があれば、持参して相談するとよいでしょう。
(3-3)弁護士
「退職する際に未払い残業代の請求をしたい」「自分では残業代の計算が難しい」という方も多いです。
そのような場合には、初めから弁護士に依頼して、未払い残業代の計算や、自分の代わりに会社に請求してもらうことをお勧めします。
弁護士に依頼する最大のメリットは、法的な知識に基づいた正確な残業代計算と、会社との交渉や法的手続きを一任できる点です。
デメリットとしては、弁護士費用が発生する点が挙げられますが、未払い残業代の金額によっては費用対効果が高いケースも少なくありません。
無料相談を実施している法律事務所も多いため、相談だけでもしてみて、残業代が発生しているのかどうか、未払い残業代はどれほどかなどの見通しのアドバイスを受けるとよいでしょう。
残業代に関するよくある勘違いを解消!
「パートだから」「〇〇という職種だから」といった理由で、残業代が出ないと誤解しているケースがあります。ここでは、そうしたよくある勘違いを解消していきます。
(1)管理職は残業代が出ないって本当?
一般的に「管理職だから残業代が出ない」という話を聞くことがありますが、間違いです。
確かに、労働基準法41条2項では、「管理監督者」には残業代を支払わなくてもよいと定められています。しかし、管理監督者と管理職は、同じ意味ではありません。
管理監督者は、例外的に、会社の経営者と同じような地位にあるなどの条件を満たした場合に認められるものです。単に、「店長」や「リーダー」といった役職名が付いているだけでは管理監督者に当たりません。
一般的に、パートタイム労働者が会社の経営者と同じような地位にあることはありません。会社から「管理監督者だから残業代は出ない」と言われたとしても、管理監督者には当たらず、残業代を請求できるケースが多いでしょう。
(2)固定残業代(みなし残業代)とは?パートにも適用される?
固定残業代(みなし残業代)とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。
この制度はパートタイム労働者にも適用されることがありますが、いくつかの注意点があります。
まず、固定残業代制度は、無効であることが少なくありません。
無効となると、固定残業代として払われていたお金は、残業代ではなかったことになりますので、未払いの残業代を請求できます。
また、有効であるとしても、固定残業代として想定されていた残業時間を超えて残業した場合、会社はその超過分の残業代を別途支払う義務があります。したがって、契約で定められた固定残業時間を超えて残業しているにもかかわらず、追加の残業代が支払われていない場合は、未払い残業代が発生している可能性があります。
固定残業制度が有効になる要件など、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】あなたの労働には価値がある!諦めずに残業代請求を
パートであっても「労働者」である限り、正社員と同じく、残業代を請求することができます。
未払い残業代の問題は、一人で抱え込まず、総合労働相談コーナーや弁護士に相談しましょう。
アディーレ法律事務所では、未払い残業代に関するご相談を承っております。あなたの状況を伺い、考えられる解決策などをご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。