「不倫を続けていた夫が亡くなった。離婚になれば生活に困るから我慢してきたけれど、夫の死後でも不倫相手に慰謝料は請求できるの?」
生前の夫との関係が悪化するのを心配して、不倫について問い詰めることができなかった方もいらっしゃるかもしれません。
実は、不倫の一方当事者(夫)が死亡した後であっても、不倫の他方当事者(不倫相手)に慰謝料を請求することは可能です。
ただし、不倫(不貞行為)の慰謝料請求には、時効があります。
時間が経ちすぎると請求できなくなることがありますので早めに行動するようにしましょう。
今回の記事では、
- 慰謝料請求の対象となる「不貞行為」とは
- 夫の死後に不倫相手に慰謝料請求する際のポイント
- 不貞行為の慰謝料の相場
などについて弁護士が解説します。
ここを押さえればOK!
慰謝料請求の際は、遺品から不貞行為の証拠を集めることが重要です。また、求償権の相続に注意し、不倫相手に求償権を放棄させることも検討すべきです。
慰謝料の相場は、離婚する場合は約100万~300万円、離婚しない場合は約数十万~100万円です。
一人で証拠を精査したり、不倫相手に請求することには労力とストレスがかかります。ひとりで悩まず、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件部にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
【Xアカウント】
@ikeda_adire_law
離婚、浮気・不倫の慰謝料に関するご相談はアディーレへ!
費用倒れの不安を解消!「損はさせない保証」あり
ご相談・ご依頼は、安心の全国対応。国内65拠点以上(※1)
不倫の慰謝料は、夫の死後であっても不倫相手に請求できる!

既婚者との性行為・肉体関係をともなう不倫は、法律上「不貞行為」とされています。不貞行為は、不法行為(民法709条)といって、人の権利を侵害する行為として慰謝料の請求の対象となります。
不貞行為とは、既婚者と自由な意思でおこなう性行為・肉体関係のこと
不貞行為は、配偶者とその不倫相手が共同して行うものであるため、「共同不法行為」(民法719条)と呼ばれています。不貞行為の一方当事者が死亡したとしても、もう一方の当事者が法的責任を負っていることには変わりません。
したがって、夫の死後であっても、その不倫相手に慰謝料を請求することは可能です。
夫の死後、その不倫相手に慰謝料を請求する際のポイント3つ
夫の死後、不倫相手に慰謝料を請求する際に知っておきたいポイントは次の3つです。
1.証拠があるか確認する
2.消滅時効に注意する
3.「求償権」の相続に注意する
それぞれについてご説明します。
(1)証拠があるか確認する~遺品の中に証拠があるかも!
慰謝料請求をする際に、不貞行為の証拠集めに苦労される方は多いようです。
不貞行為をした夫にバレないように証拠集めをしたい場合、夫に気付かれないように証拠を集めるのは、思っているより困難な場合があります。
不貞行為をした夫がすでに亡くなっていると、夫の目を気にすることなく、遺品の中から証拠になりそうなものがないか、落ち着いて探すことができます。
有力な証拠として、肉体関係を推測させる内容のメールやメッセージ、肉体関係を示す写真や動画などが主なものとして挙げられます。
このようなデータは、今はほとんど携帯電話(スマートフォン)に保存されていますので、携帯電話(スマートフォン)があるときはチェックするようにしましょう。

また、後で述べるように、不貞行為をしていた期間は、慰謝料の金額を決定する際の判断材料になります。
もちろん、不貞期間が長いほど、夫婦関係に与えた悪影響は大きいということで慰謝料も増額方向に傾きやすいのですが、不貞期間がいつ始まったのか、証明できないことも少なくありません。
しかし、手元に夫の遺品(特に携帯電話)があれば、不倫相手との関係が始まった時期(夫の生前に不貞関係が終了していたのであれば、終了時期も)が特定できる可能性が高まります。
(2)消滅時効に注意する~時間が経ちすぎると請求できなくなることも!

あなたがもし、「証拠になりそうな遺品は手元にあるし、気持ちが落ち着いてから請求しよう」と考えているなら、知っておいて欲しいことがあります。
それは、慰謝料請求には、「消滅時効」があるということです。消滅時効とは、「一定の期間」が経過することにより権利が消滅するという制度のことです。
慰謝料請求の消滅時効は,次の期間のうちいずれか短いほうであるとされています。
- あなたが配偶者の不貞行為および不倫相手を知った時から3年間
- 不貞関係が始まったときから20年間
もし、あなたが夫の生前から、不倫をしていた事実と不倫相手の名前や連絡先などを知っていたのであれば、3年間の時効期間のカウントはすでに始まっています。
また、夫の生前には、不倫相手の名前や連絡先などを知らなかったとしても、夫の遺品などから不倫相手の名前や連絡先などを知り、不倫相手を特定できたといえる場合には、その時点から時効期間のカウントが始まることになります。
したがって、すでに消滅時効が進行している場合には、早めに証拠を確保したり、弁護士に相談したりするようにしましょう。
ただし、消滅時効の期間が過ぎても、法律上請求することは可能です。消滅時効は請求される側の利益となる規定であるため、請求される側が「時効が成立したから、支払わない」と主張(時効の援用)しない限り、考慮する必要はないためです。請求された側が任意に支払うのであれば、消滅時効の期間を過ぎていても、慰謝料を受け取ることはできます。
慰謝料請求の時効については、こちらの記事もご覧ください。

(3)「求償権」の相続に注意する~求償権の放棄の検討を忘れずに!
不貞行為の慰謝料請求において忘れてはならないこととして、最後に「求償権」があります。
不貞行為は、ひとりではできません。不貞行為をした当事者2人のうち、一方が自身の責任部分を超えて被害者に慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者に対して、自己の責任を超えて支払った部分について請求できる権利のことを、「求償権」といいます。

求償権は、不倫した当事者同士の関係を調整する考え方です。本来共同して責任を負うべきなのに、一方が損をして一方が得をするという状態を是正するものです。
通常、求償権は、不倫した一方の当事者が他方の当事者に請求するものですので、不倫をされた配偶者は無関係です。
しかし、不倫をした夫が亡くなっていると、話が違ってきます。
不倫をされて慰謝料を請求した妻は、相続放棄をしていないかぎり、亡くなった夫の権利や義務を相続しているためです。
したがって、妻は、「不倫相手からの求償権を行使される夫の立場」も相続することになるのです。
すなわち、不倫相手に慰謝料を請求した妻が、(夫の相続人として)不倫相手から求償権を行使される立場になり得るということになります。
また、夫を相続したのが妻だけではない場合(夫婦に子どもがいる場合など)には、法定相続分に応じて、妻以外の相続人も不倫相手から求償権を行使されかねないという結果になってしまいます。
自分だけでなく、他の相続人まで巻き込んでしまう可能性があるなら、不倫相手に対する慰謝料請求もためらってしまうかもしれません。
また、仮に妻しか相続人がいなかったとしても、不倫相手から慰謝料を支払ってもらったあと、不倫相手から求償権を行使されて、夫の負担部分に当たる金額を支払って、と考えると面倒だと思われるかもしれません。

そこで、慰謝料の支払いについて合意する際に、不倫相手に求償権を放棄させるという内容の合意もしておくことをお勧めします。
求償権を放棄させる場合、慰謝料の支払いについて定めた合意書や示談書、公正証書に「求償権を放棄する」旨を条項として記載しておくことが一般的です。
求償権は、必ず放棄させられるものなのですか?
不倫相手の法的な権利ですので、必ず放棄させられるわけではありません。
しかし、不倫相手の立場に立っても、妻であるあなたに慰謝料をいったん支払った後で、再びあなたに(相続人が複数いる場合は、その全員に対し)求償権を行使するのはかなり面倒な行為といえます。求償権を放棄させるために、慰謝料の金額を下げざるを得ない可能性はありますが、求償権の放棄には応じることが多いと考えられます。そのため、必要以上に心配することはありません。
求償権については、こちらの記事もご覧ください。
不貞行為の慰謝料の相場
不貞行為の慰謝料の裁判上の相場は、次のとおりです。裁判ではなく、話し合いでの解決(示談)によって慰謝料を支払ってもらう場合にも、交渉する際の目安になりますので、裁判上の相場を知っておくといいでしょう。
不貞行為の慰謝料の裁判上の相場(目安)
- 離婚をする場合は、約100万~約300万円
- 離婚に至らなかった場合は、約数十万~約100万円
不貞行為によって離婚に至ったかどうかが大きなポイントとなるようです。
夫の死後、不倫相手に慰謝料を請求する場合は、不貞行為が原因で離婚に至ったと評価することは難しいかもしれません。
しかし、増額(減額)要素は他にもあります。特に、結婚期間が長期であり、不貞期間も長期間に及ぶような場合には、慰謝料の増額要素とされる傾向にあります。
一般的に、慰謝料の金額を決めるポイントとしては次のようなものがあげられます。
- 夫婦の婚姻期間、子どもの有無
- 不貞行為が始まった経緯
- 不貞行為の期間や回数
- 不貞行為による妊娠・出産の有無
など
【まとめ】夫の死後でも不倫相手に慰謝料請求ができる!時効に注意して早めの行動を
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 夫の死後であっても、夫の不倫相手に慰謝料を請求できる
- 夫の死後、不倫相手に慰謝料を請求する際のポイント3つ
1.遺品の中に証拠があるかも
2.時間が経ちすぎると請求できなくなることも(消滅時効)
3.「求償権」の相続に注意し、不倫相手に求償権を放棄させよう - 慰謝料の相場は、離婚をする場合は、約100万~約300万円、離婚に至らなかった場合は、約数十万~約100万円
もしもあなたが、夫との関係悪化や離婚になってしまうことを心配して、夫に不倫の事実を問い詰めることができなかった場合、長い間ひとりで苦しんできたことだと思います。
夫が亡くなって間もないのであれば、まだ何も考えられないかもしれません。
しかし、慰謝料請求には時効があります。
あなたが不倫の事実と、不倫相手の名前や連絡先などを知ってから原則3年間で、慰謝料を請求できる権利は時効にかかってしまいます。
寂しいことではありますが、もう夫婦関係の悪化を心配することはありません。せめて、不倫相手には、慰謝料を支払うという形で、あなたを傷つけた責任を取ってもらいませんか?
アディーレ法律事務所では、不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
(以上につき、2022年8月時点)
不倫の慰謝料請求でお悩みの方は、不倫の慰謝料請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。
