「夫が職場の女性と不倫していた。夫の立場だってどうなってもいいと思っているので、不貞行為の事実は会社に報告して、不倫相手に会社を辞めさせてやりたい!でも、報告したら何か問題になるのかな?」
夫の社内不倫が発覚して、このように考えている方はいませんか?
自分の家庭はめちゃくちゃになったのに、不倫相手は今も会社で働いて普通に生活していると思うと、仕返しをしてやりたいという気持ちも理解できます。
しかし、不倫(不貞行為)の事実を会社に報告することは、名誉毀損にあたる可能性があり、あなたにとって不利になりますので、やめましょう。
また、会社としても、不貞行為があったというだけで解雇や減給などの処分をすることはできません。
制裁を与えたいのであれば、会社に報告するのではなく、不倫相手本人に慰謝料を請求することを検討しましょう。
不貞行為によって受けた精神的損害は、金銭で賠償してもらうことができます。
この記事を読んでわかること
- 不貞行為の事実を会社に報告した場合のリスク
- 不貞行為の事実を会社に報告せずに制裁を与える方法
法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件部にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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不貞行為の事実を会社に報告するのはやめておきましょう!
私はお金が欲しいわけじゃないんです!
不倫相手が会社を辞めさせられたら、生活に困りますよね。私がこんなに苦しんでいるのだから、不倫相手にも苦しい思いをしてほしいと思うのは、当然ではないでしょうか?不貞行為の事実を会社に報告しても構いませんよね?
会社への報告はやめておきましょう。
不貞行為の事実を不倫相手の会社に報告することは「名誉毀損」にあたる可能性があります。
名誉毀損は刑法上の犯罪ですし、民法上の「不法行為」にもあたりますから、不倫相手が警察に訴え出たり、逆にあなたに損害賠償請求をしてきたりして、あなたがお金を支払わなければならなくなるリスクがあります。
また、実際には報告せずとも、「会社に不倫の事実を報告してやる」などと不倫相手に告げるだけでも、「脅迫」にあたる可能性があります。
脅迫も名誉毀損と同様に刑法上の犯罪ですし、民法上も「不法行為」に当たりますから、やはり不倫相手が警察に訴え出たり、あなたに損害賠償をしてきたりするリスクがあります。
そもそも、会社が不倫の事実を把握しても、不倫相手が会社を辞めさせられる可能性はそこまで高くありません。
会社が不倫の事実を知っても、制裁にならない可能性がある
仮に、不貞行為の事実が会社に知られたとしても、不倫相手がまったく損をせず、制裁を与えることにつながらない場合があります。
(1)会社側は簡単に処分できない
会社側は、従業員が不倫したという理由だけで、簡単に解雇や減給などの処分をすることはできません。
会社としては、労働関係の法令を守らねばならず、雇用契約で守られた従業員をそう簡単に解雇することはできません。
したがって、あなたが不倫相手に会社を辞めてもらいたい、と考えたとしても、簡単に解雇されることはないでしょう。
会社にとっても、社内不倫するような人がいたら迷惑ですよね?解雇はできなくても、せめて減給などの処分はできないんですか?
たしかに、社内不倫をしたことで、職場の風紀を著しく乱すなどして、その業務に悪影響を及ぼしているといえる場合、処分の対象となることはあり得ます。
しかし、あくまで、不倫により会社が損害や迷惑を被ったことが処分の理由となります。社員が不倫をしていたというだけで実際に会社に損害が発生していないような場合には、社内不倫の一方当事者の妻であっても、会社に対して当事者の処分を求めることはできないのです。
※会社に対して何らかの処分を求める権利はありません。しかし、社内不倫が会社の就業規則などに違反している場合、一方当事者の妻(または夫)が「社内不倫について何らかの調査をして欲しい」などとお願いすること自体はあり得る手段といえます。
ただし、あなたが問題ない行為だと考えても、会社や不倫相手が同じように考えるとはかぎりません。後ほど説明するような法的責任を追及されるリスクがありますのでご注意ください。
(2)和解の条件に「退職」や「異動」を入れることはできる
性的関係をともなう不倫は「不貞行為」といい、原則として民法上の不法行為にあたります。
そのため、後で詳しくご説明しますが、法律的な解決方法としては慰謝料などの金銭で償うことが原則です。
したがって、不倫相手に対し、「退職」や「異動」を請求する法律上の権利はありません。
しかし、不倫相手が同意するのであれば、和解の条件として、退職や異動を盛り込むことは可能です。
実際に、慰謝料の代わりに自主退職を求め、不倫相手が同意するケースは存在します。
不倫相手が同意すれば、異動させることもできるのですか?
同意しているのであれば、異動に関して約束をすることは可能です。
ただ、退職はともかく、通常は従業員が自らの異動について自由に決定することはできないため、異動を会社に申し入れることを約束するのが限度でしょう。
「名誉毀損」「脅迫」「恐喝」に該当しうる行為はNG
「名誉毀損」や「脅迫」、「恐喝」になりかねない行為はしないように注意しましょう。
次に、名誉毀損や脅迫、恐喝に該当しうる行為について説明します。
(1)「名誉毀損」について
名誉毀損罪は、人の名誉を傷つける犯罪です。
刑法第230条1項(名誉毀損)
引用:刑法第230条1項|e-Gov法令検索
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
※2022年6月に、「懲役」と「禁錮」を廃止し「拘禁刑」に一本化する改正刑法が成立しました。改正刑法は2025年頃までに施行される予定です。
したがって、不貞行為の事実を名指しで会社に報告する行為は、名誉毀損罪にあたる可能性があり、刑事上の責任を問われるリスクがあります。
「名誉毀損」に該当しうる行為は次のとおりです。
- SNSやインターネット上で、個人が特定できるような内容とともに不貞行為の事実を公開する。
- 多数の人に伝わる可能性がある状況で、会社内の従業員に不貞行為の事実を公開する。
など
また、名誉毀損は民法上の「不法行為」にもあたり得ます。
そのため、名指しした夫や不倫相手から損害賠償請求をされてしまうリスクがあるのは、先ほども説明したとおりです。
不貞行為の事実が、本当のことであったとしても名誉毀損になってしまうのですか?
本当のことであったとしても、名誉毀損にあたる可能性があります。
公表した事実が真実かどうかは、名誉毀損になるかならないかには無関係だからです。
(2)「脅迫」について
脅迫罪とは、生命・身体・名誉・自由・財産に対して害を及ぼすことを告げる犯罪です。
刑法第222条(脅迫)
引用:刑法第222条|e-Gov法令検索
- 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
- 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
「家族や会社に不貞行為をバラす」などという言動は、相手の名誉を害する旨を告知する行為ですので、脅迫罪の実行行為に該当する可能性があります。
言い方やその場の雰囲気にもよりますが、言われた相手が恐怖を感じたのであれば、脅迫罪が成立する可能性があり、場合によっては被害届や告訴状を提出されてしまうかもしれません。
(3)「恐喝」について
恐喝罪とは、相手を脅迫したりして怖がらせて、お金などの財産を要求する犯罪です。
刑法第249条
引用:刑法第249条|e-Gov法令検索
- 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
- 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
「慰謝料を支払わないなら、会社に不倫をばらす」などと言った場合、恐喝罪の実行行為に該当する可能性があります(実際にお金を支払わせたら恐喝罪、お金を支払わせるには至らなかった場合でも、相手を怖がらせてお金を支払わせるような言動があれば、恐喝未遂罪が成立する可能性があります)。
不貞行為の事実を会社に報告せずに制裁を与える方法

今まで説明したとおり、不貞行為の事実を会社に報告することはリスクが大きい行為です。
不倫をした夫や、不倫相手に対して、法律的に問題なくできる制裁の方法は、やはり慰謝料を請求して経済的制裁を与えることです。
また、不倫相手に、夫への接触禁止を約束させたり、その約束を破った場合には違約金を支払うという約束をさせることができる場合があります。
(1)方法1|慰謝料請求する
慰謝料は、不倫した夫とその不倫相手の両方に請求することができます。
被害者である不倫された側の妻は、両方に請求することもできますし、どちらか一方にだけ請求することもできます。
ただし、いわゆる「二重取り」はできないため、すでにどちらか一方から十分な慰謝料を受け取っている場合には、他方への慰謝料請求は難しくなるため、ご注意ください。

慰謝料の相場は、離婚する場合はおよそ100万~300万円程度、離婚しない場合はおよそ数十万~100万円程度とされています。
不倫の慰謝料の裁判上の相場(目安) | |
離婚をした場合 | 100万~300万円 |
離婚しない場合 | 数十万~100万円 |
個人で慰謝料を請求すると、相手が真剣に対応しようとしない場合や、逆に「脅迫まがいに慰謝料を請求された」といわれてしまう場合があります。
弁護士を通して請求すると、本気で責任を取らせようとしていることが相手にわかりますので、相手に精神的なプレッシャーを与えることが期待できるでしょう。
(2)方法2|不倫相手に夫への接触禁止を約束させる
また、不倫相手に対し、夫との接触禁止の約束や、その約束を破った場合には違約金を支払うという約束をさせることができる可能性もあります。
接触とは、一般的に、面会、電話、メール、FAX、手紙、SNS等あらゆる手段で連絡をとることを指します。
不倫相手が今後も夫と同じ職場で働くのであれば、業務上やむを得ない場合を除き、接触されることは防ぎたいですよね。
慰謝料請求の交渉の中で、お金だけでなく、これからの行動についても誠意を示すことを求めていくことが必要です。
離婚しない場合は求償権に注意
不貞行為の当事者(夫と不倫相手)には、共同不法行為者としての責任が発生します。
すべての共同不法行為者は、発生した損害全額について、連帯して賠償する義務を負います。
つまり、被害者から慰謝料を請求されたら、「他に不法行為者がいるから、自分の責任の分だけ支払います」といって慰謝料の減額を主張することはできないのです(※請求された慰謝料が相場より高額であった場合には、減額交渉ができる可能性はあります)。
しかし、不貞行為の当事者の一方が、適切な金額の慰謝料を支払った場合、他方当事者に対して、支払った慰謝料の分担を求めることができます。このような請求ができる権利を、「求償権」と言います。

例えば、夫が不倫して、妻がその不倫相手に慰謝料を請求したとします。
不倫相手が妻に対して慰謝料を支払った場合、不倫相手は求償権を行使して、夫にその責任分に応じた金銭の支払いを請求することができます。
夫婦が離婚しない選択をした場合は、夫婦の家計は同一であることが多いため、求償権を行使されると、結局慰謝料の一部を取り戻されたのと同じような結果になります。
そこで、不倫相手に対して慰謝料請求をする際は、求償権を放棄させるために交渉し、不倫相手が求償権の放棄に応じれば、その旨を書面に残しておけると良いでしょう。
夫婦が離婚するのであればそれほど大きな問題になることは少ないですが、求償権の行使により夫の資力が減ることにはつながります。
そのため、離婚の際の財産分与や慰謝料を事実上請求しにくくなるというリスクがあるかもしれません。
「離婚する」ことが夫に対する制裁になる場合も
不倫した夫が、「離婚したくない」と考えている場合には、不貞行為を理由として離婚を請求することが夫に対する制裁になります。ただし、実際に離婚するかどうかは慎重に検討するようにしましょう。
もっとも、不貞行為は法律で定められた離婚事由に該当するため、夫が離婚を拒否しても、離婚を求める裁判を起こせば、離婚が認められる可能性が高いでしょう。
【まとめ】不貞行為を会社に報告すると名誉毀損罪、「会社へ報告する」と相手に告げると脅迫罪が成立する可能性がある!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 不貞行為の事実を会社に報告すると、名誉毀損にあたる可能性がある
- 「不貞行為の事実を会社に報告してやる」などと告げると脅迫にあたる可能性がある
- 「退職しないなら慰謝料を請求する」などと告げて慰謝料を受け取ると恐喝あたる可能性がある
- 会社側は、不貞行為だけを理由に従業員の処分をすることができない
- 会社に報告しなくても、慰謝料請求という制裁の方法がある
- 慰謝料は、不倫した夫と不倫相手の両方に請求できる
- 不倫相手には、夫への接触禁止の約束やそれを破った場合に違約金を支払うことについて約束させることができる場合がある
- 不倫相手に慰謝料を請求する場合、求償権について知っておこう
求償権とは、不貞行為の当事者の一方が、自分の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合、他方当事者に対して、自分の責任を超えて支払った分について金銭の支払を求めることができる権利のこと
不貞行為の事実を会社に報告することは、あなたの方が刑事罰に問われたり、損害賠償請求をされてしまうリスクがありますので、やめましょう。
一方、不倫の慰謝料請求は法律で認められた正当な権利です。
被害者であるあなたがリスクを負うことなく、夫や不倫相手に経済的な制裁を加えて責任を取らせるためにも、慰謝料の請求をご検討ください。
アディーレ法律事務所では、不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません(以上につき、2025年2月時点)。
不倫の慰謝料請求でお悩みの方は、不倫の慰謝料請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。