「アスベストの吸引でがんになるって本当?」
アスベスト(石綿)には発がん性があるといわれています。
どれくらいの量のアスベストを吸引すればがんを発症するかは明確に明らかにはなっていませんが、
アスベストを吸い込んだ量と、肺がん・悪性中皮腫の発症には相関関係があるといわれています。
また、アスベストの吸引によって、がんの他にも、石綿肺やびまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)などの重篤な疾病を発症する危険性があります。
アスベストを吸引した疑いがある方は、自身のばく露(アスベストにさらされたこと)の経緯をしっかりと把握し、健康診断やガン診断等を受けて、定期的なヘルスチェックを行っていく必要があります。
この記事では、
- アスベストの吸引によって発症する可能性のあるがんやその他の疾病
- アスベストの種類ごとの危険性
- 疾病を検査する方法
について解説します。
アディーレ法律事務所
同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属
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アスベストで健康被害が起こる理由とは?
アスベストとは、繊維状鉱物の総称で、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト等に分類されます。
アスベストは、ほぐすと綿のようになり、その繊維は極めて細かく、耐熱性、耐久性、耐摩耗性、耐腐食性、絶縁性等の特性に優れているため、建材等の様々な工業製品の原材料に使用されていました。
ただし、アスベストは工業製品の原材料等として優れた適格性を有している反面、現在は人体に対する有害性も有していることが認められています。
アスベストの繊維は非常に細かいため、研磨機や切断機による作業や、吹き付け作業等を行う際に、所要の措置を行わないと容易に飛散・浮遊し、人体に吸引されやすくなっています。
そして、人体にいったん吸引されると、肺胞に沈着し、その一部は肺の組織内に長期間滞留することになります。
この肺に長期間滞留したアスベストが要因となって、肺がん、悪性中皮腫、石綿肺を引き起こすと考えられています。
アスベストによって発症する可能性のあるがんやその他の疾病
アスベストにどの程度ばく露すれば、どの程度の発病リスクがあるかということまでは明らかとなってはいませんが、アスベストばく露と肺がん、悪性中皮腫、石綿肺などの疾病との間には相関関係が認められています。
また、アスベストにはいくつか種類があり、種類によって人体に対する有害性に差があります。
ここでは、アスベストの吸引により発症する可能性のある疾病やアスベストの種類ごとの有害性について解説します。
アスベストの吸引により発症する可能性のある疾病

(1)(原発性)肺がん
アスベストによる肺がんは、
原発性肺がんです。
原発性肺がんとは、肺の細胞が変化して発生したがんをいい、
転移してできたがんである転移性がんと区別されます。
肺がんは、アスベスト以外にも様々な要因で発生するものといわれており、例えば喫煙は肺がんの重要な危険因子といわれています。
アスベストばく露量が多ければ多いほど肺がんの発症率が高いといわれていますが、ばく露からすぐに発症するわけではなく、発症するまで15~40年の潜伏期間があるといわれています。
症状は、咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、発熱などがありますが、肺がんができた場所や大きさによってはほとんど症状がでないこともあるといわれています。
なお、アスベストによる肺がんとアスベスト以外の原因による肺がんで、症状や治療方法等について特に差はないようです。
(2)悪性中皮腫
中皮とは、胸膜、心膜、腹膜などの内臓を覆う膜の表面を覆う薄い細胞層をいいます。
悪性中皮腫とは、この
中皮細胞から発生する悪性腫瘍をいいます。
若年期にアスベストにばく露した場合に悪性中皮腫を発症しやすいといわれています。
平均潜伏期間は40~50年と非常に長く、ばく露から20年以下で発症する例は非常に少なく、10年未満での発症例はないといわれます。
症状としては、咳、胸の痛み、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感があるといわれ、原因不明の発熱や体重減少がみられる場合もあるといわれます。
(3)石綿肺
石綿肺とは、
肺が線維化するじん肺の一つです。
じん肺は、粉じんを吸引することによって、吸入した粉じんが肺胞に沈着して肺の繊維化を起こす疾病の総称であり、特にアスベストの吸引によって発生するじん肺を石綿肺と呼びます。
仕事で10年以上アスベストにばく露した労働者に発症する可能性が高いと言われています。また、通常、アスベストにばく露してから10年以上経過して所見が現れるとされています。
初期症状には息切れ、咳、痰がみられ、症状が進行すると呼吸機能が低下し日常生活に支障が現れるといいます。
また、肺結核、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾病)、気管支拡張症、気胸などの合併症がみられます。
(4)アスベストの種類ごとの有害性
アスベストは、次の6種類に分類することができます。
- クリソタイル(白石綿)
- クロシドライト(青石綿)
- アモサイト(茶石綿)
- アンソフィライト
- トレモライト
- アクチノライト
このうち、建材や摩擦材などの工業製品の原材料として使用されていたのは、主に、クリソタイル、クロシドライト、アモサイトの3種類です。
クリソタイルは、ほとんどすべてのアスベスト製品に使用されてきたもので、世界で使用されたアスベストの約9割以上を占めます。
また、クロシドライトとアモサイトについては、主に、石綿吹付作業の原料として使用されてきました。
アスベストは繊維が細くて長いものほど人体に対する有害性高くなるといわれており、「クロシドライト(青石綿)>アモサイト(茶石綿)>クリソタイル(白石綿)」の順で有害性が強いといわれています。
WHOの報告書によれば、クロシドライトはクリソタイルにくらべて500倍の発がん性があり、アモサイトはクリソタイルにくらべて100倍の発がん性があるとされています。

アスベストによる疾病を検査する方法
従前働いていた職場でアスベストを扱っていた、などアスベストばく露の疑いがある方については、自身のばく露歴をしっかりと把握して、健康診断やがん検診等を受けて定期的なヘルスチェックをすることが重要です。
ここでは、アスベストによる疾病を検査する方法等を解説します。
(1)アスベストばく露歴を把握する
アスベストを扱う職業に従事していたご経験がある方は、自身のアスベストばく露歴を把握しておきましょう。
次のような職業に従事していた方は、アスベストに直接ばく露した可能性が高く、早めに健康診断やがん検診等を受けることをお勧めします。
- 石綿鉱山等における石綿含有鉱石または岩石の採掘、精製等の作業
- 石綿原料等の運搬作業等
- 石綿の製造、加工業(石綿紡織製品、石綿スレートなどの石綿含有セメント製品、被覆材などの耐熱性石綿製品など)
- 石綿吹付作業
- 石綿製品の切断等の加工作業
- 石綿が使用されている建物等の解体作業
- 石綿製品を用いた補修作業 など
また、アスベストのばく露は、上記のようなアスベストに直接ばく露するような作業に従事していた場合以外にも起こる可能性があります。
例えば、
- 家族内にアスベストばく露作業に従事していた方がいて、その作業着などを洗濯したり、管理したりしていたことがある
- 幼少期に石綿工場、鉱山、造船所、建材物置場、自動車修理工場、石綿廃棄物回収事業場等の付近で遊んだりしたことがある
- アスベスト工場の周辺に居住していたことがある など
これらの場合、アスベストに間接的にばく露していた可能性があります。
アスベストばく露の疑いがある方については、アスベストにばく露したかどうかを自身でチェックすることができる「石綿自記式簡易調査票」を利用することも可能です。
医療機関等に診察に行く際には、まずはこの調査票を使ってご自身でばく露の有無、程度をチェックし、チェック後、この調査票を持参して医療機関等の診察を受けるのがよいでしょう。
参考:石綿にばく露する業務に従事していた労働者の方へ|厚生労働省
(2)健康診断やガン検診を受診する
現在では、アスベストの危険性からアスベストにばく露する作業については、ばく露対策を徹底するように石綿障害予防規則が定められています。
その規則において、事業者は石綿を取り扱う作業に従事させた又は従事させている労働者に対して、健康診断を実施しなければならないとされています。
ですから、過去アスベストを取り扱う作業に従事して現在も雇用されていたり、現在アスベストを取り扱う業務に従事している方は、会社の実施する健康診断を受けることによってヘルスチェックをすることが可能です。
過去にアスベストを取り扱う業務に従事していたけれども、現在はその企業で雇用されていない方については、医療機関等が実施する健康診断を受ける必要があります。
なお、1回のアスベスト(石綿)健康診断にかかる費用は医療機関によって異なりますので、直接問い合わせるようにしましょう。
また、所定の要件を満たす方については、健康管理手帳の交付を受けることによって、指定医療機関で実施される健康診断を決まった時期に年2回(じん肺の健康管理手帳については年1回)無料で受けることが可能です。
健康管理手帳について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
(3)相談窓口を利用する
アスベストを使用する作業に従事していた方で健康被害等に関して不明点がある方は、保健所、各都道府県の産業保健総合支援センターまたは労災病院等に相談するとよいでしょう。
また、次のような症状がみられる場合には、アスベストばく露によって疾病を発症している可能性がありますので、早期に医療機関等の診察を受けましょう。
- 息切れがひどくなった
- せきやたんが以前に比べて増えた
- たんの色が変わった
- たんに血液が混ざった
- 顔色が悪いと注意された
- 爪の色が紫色に見える
- はげしい動悸がする
- 風邪をひいて、なかなか治らない
- 微熱が続く
- 高熱が出た
- 寝床に横になると息が苦しい
- 食欲がなくなった場合や急にやせた
- やたらに眠い
アスベスト被害に対する救済制度
次の表は、アスベスト被害にあわれた方に対する救済制度を簡単にまとめたものです(救済対象となるためのすべての要件を示すものではありません)。
救済対象 | 提訴の要否 | 給付の内容 | |
---|---|---|---|
労災保険給付 | アスベスト関連疾病が業務症疾病であると認定された方 | 不要 | 療養費、休業補償、遺族年金、特別遺族年金等の支給 |
石綿健康被害救済法に基づく給付 | 日本国内においてアスベストを吸引することによって指定疾病にかかった旨の認定を受けた方 | 不要 | 医療費、療養手当、特別遺族弔慰金等の支給 |
工場型アスベスト訴訟 | 1958年5月26日から1971年4月28日までの間にアスベスト工場での労働が原因でアスベスト関連疾病を発症した方 | 必要 | 最大1300万円の賠償金(和解金) |
建設型アスベスト給付金 | 1975年10月1日から2004年9月30日までの間にアスベスト含有建材を用いた建設作業に従事したことが原因でアスベスト関連疾病を発症した方 | 不要 | 最大1300万円の給付金 |
※救済対象には、アスベスト被害にあわれた方のご遺族も含まれます。ただし、救済対象のご遺族には、救済を受けられる順位や制限がある場合がありますので、詳しくは制度を管轄する窓口や、アスベスト被害について取り扱っている弁護士などにご相談ください。
アスベスト被害にあわれた方は、救済制度の対象者である可能性がありますので、 救済制度の中身を必ずチェックするようにしましょう。
アスベスト被害にあわれた方に対する救済制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【まとめ】アスベストには発がん性があり、がんの原因となるといわれている
本記事をまとめると次のとおりです。
- 吸引したアスベスト粉じんが肺の組織内に滞留し続けることで、中皮腫、肺ガン、石綿肺等の健康被害をもたらすといわれている
- アスベストは種類によって人体に対する有害性が異なり、主に石綿吹付作業の原料として用いられていたクロシドライトやアモサイトについては、発がん性が特に強いといわれている
- アスベストを取り扱う作業に従事していた方は、アスベスト粉じんに直接的にばく露した可能性があり、また、アスベスト工場周辺に居住していた方等は、アスベスト粉じんに間接的にばく露した可能性がある
アスベスト被害者として救済の対象であるにも関わらず、それを知らずにお金を受け取れないとしたら大変残念なことです。アスベストの吸引が原因で癌や特定の疾病が発生した方は、救済の対象となるかどうか一度ご確認することをお勧めします。
アディーレ法律事務所では、アスベストの被害にあわれた方及びそのご遺族の方の給付金・賠償金請求のご依頼に関し、着手金、相談料はいただいておらず、原則として報酬は給付金・賠償金受け取り後の後払いとなっております。
そのため、 当該事件をアディーレ法律事務所にご依頼いただく場合、原則としてあらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
※以上につき、2023年1月時点
アスベスト被害に遭われた方またはそのご遺族の方は、アスベスト被害に積極的に取り組んでいるアディーレ法律事務所にご相談ください。