バック事故では、基本的に、後方確認を怠ってバックしてぶつかってきた側の責任が重くなります。
しかし、事故が起きた状況により、バックする車にぶつかられた側にも事故の責任があるとされるケースもあります。ぶつけられた側に落ち度があれば、さらに過失割合が加算されることもあります。
実際の過失割合がどれくらいになるのかは、ケースバイケースです。
この記事では、バック事故の状況別の基本的な過失割合、加害者側のよくある反論と対処法などを解説します。
この記事を読んでわかること
- 状況別バック事故の基本的な過失割合
- バック事故の加害者からよくある反論と対処法
- 被害者が請求できる示談金について注意すること
ここを押さえればOK!
加害者側からのよくある反論として、「そっちが警告のクラクションを鳴らさなかったのが悪い」「そっちは停車しておらず徐行していた」などと言われて過失割合の修正を求めてくることがあります。反論が事実と異なる場合には、証拠を集めて毅然と再反論する必要があります。
被害者は請求できる示談金について、請求できる項目をもれなく請求できているか、もらえる金額に影響するので自分に不利な過失割合の修正に安易に応じないことが大切です。また、加害者側の保険会社からの提案額は不当に低額であることも多く、交渉により示談金が増額する可能性があるかどうかは弁護士に相談することが推奨されます。
弁護士による交通事故のご相談はアディーレへ!
費用倒れの不安を解消!「損はさせない保証」あり
ご相談・ご依頼は、安心の全国対応。国内65拠点以上(※1)

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
バック事故とは
「バック事故」とは、バックしてきた車に人や車がぶつけられた交通事故のことをいい、「逆突事故」ともいわれます。
一般的に、公道は前進することが前提ですので、公道を走行中にバック事故が発生することはあまりありません。一方、駐車場では、駐車のためにバックすることがあります。実際、バック事故が発生する場所は、ほとんどが駐車場です。
バックする車にぶつけられたときの過失割合
バック事故の過失割合は、事故の場所(公道・駐車場)や事故の状況によって異なります。
次のケース別に過失割合を説明していきます。
- 停車していたらバックする車にぶつけられた場合
- 道路外からバックしてきた車にぶつけられた場合
- 駐車場で徐行していたらバックする車にぶつけられた場合
- 駐車場で歩いていたらバックする車にぶつけられた場合
過失割合について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(1)停車していたらバックする車にぶつけられた場合
駐車場で、駐車していた車が出庫するのを待って停車していたら、バックで出庫してきた車にぶつけられた場合、過失割合は「停車中の車:バックする車=0:100」です。
また、信号待ちで停車していたら、バックしてきた車にぶつけられた場合も、同じく「停車中の車:バックする車=0:100」です。
ぶつけられた車は、停車していて事故の責任はなく、バックしてきた車両に事故の全責任があると考えられています。
(2) 道路外からバックしてきた車にぶつけられた場合
道路を走っていると、道路外の店舗や、駐車場から道路に入ってくる車を見かけることがあると思います。
道路を進行していて、道路外から道路にバックで入ってきた車にぶつけられた場合の基本的な過失割合は、「進行する車:バックする車=20:80」です。
一般的に、道路外から道路に入る車は徐行や合図を出して道路を走る車の進行を妨げないようにする義務があることから、責任が重くなっています。
(3)駐車場で徐行していたらバックする車にぶつけられた場合
徐行していたらバックする車にぶつけられた場合には、いくつかのケースが含まれます。
ここでは、次のケースについて説明します。
- 駐車区画に進入する車がバックしてぶつけられた
- 駐車区画から退出する車がバックしてぶつけられた
(3-1)バックで駐車区画に入る車にぶつけられた

駐車場を徐行していたら、駐車区画に入ろうとしてバックしてきた車にぶつけられた場合の基本的な過失割合は、「徐行中の車:バックする車=80:20」です。
駐車場は、駐車のための施設ですので、原則として、駐車区画へ進入する行為は、駐車場の通路の通行よりも優先されるべきと考えられています。
つまり、駐車場の通路を徐行する車(A)は、バックで駐車区画に入ろうとする車(B)を確認したら、その車が駐車区画に収まるまで停止して待機するか、安全にすれ違うことのできる距離を確保して安全な速度で進行する義務を負うのです。
そのため、通路を徐行中の車(A)が、駐車区画に進入しようとバックする車(B)にぶつけられた場合には、通路を徐行中の車の方により重い事故の責任があるとされます。
(3-2)バックで駐車区画から出る車にぶつけられた

駐車場を徐行していたら、駐車区画から出ようとしてバックしてきた車にぶつけられた場合の基本的な過失割合は、「徐行中の車:バックする車=30:70」です。
駐車区画から通路に出ようとする車(B)は、通路を進行する車(A)よりも容易に安全を確認し、衝突を回避することができると考えられています。
また、駐車区画から通路に出ることは、通路における他の車の進行を妨げることになることから、通路を進行する車に衝突しないようにする安全に配慮する重い注意義務が課されます。
そのため、通路を徐行中の車が、バックで駐車区画から出ようとする車にぶつけられた場合には、バックで駐車区画を出しようとした車(B)に重い事故の責任があるとされるのです。
(4)歩いていたらバックする車にぶつけられた場合

駐車場で駐車区画に入ろうとバックしてきた車が、歩行者にぶつかった場合、基本の過失割合は、「歩行者:バックした車=10:90」です。
駐車場は、駐車場の利用者が乗車・降車する場所でもありますので、駐車区画を進行する車の運転者は、常に人の往来に注視しながら、いつでも停止できる速度で進行すべき義務があります。
一方で、歩行者も車の動きに注意しながら歩行する義務がありますが、原則として歩行者と車とでは車との注意義務の方が重くなります。
そのため、駐車場で車が歩行者にぶつかった場合、車側の事故の責任が重くなります。
なお、歩行者が児童や高齢者といった交通弱者の場合には、車両側により重い事故の責任があると考えられます。
具体的には、歩行者が児童・高齢者の場合には+5程度車側の過失割合が加算され、幼児・身体障害者等の場合には、+10程度車側の過失割合が加算されます。
バック事故で加害者側のよくある反論と対処法

事故当事者の間で、少しでも自分に有利な過失割合とするために、事故状況が争われることがあります。
加害者側から、こちらの主張する過失割合よりも、こちらに不利となる過失割合を反論された場合には、事故状況や事実の確認をしたうえで、対処する必要があります。
バック事故の過失割合の認定において、加害者側からよくある反論は次の5つです。
- 「そっちが警告のクラクションを鳴らさなかったのが悪い」と言われる
- 「そっちは停車しておらず徐行(前進)していた」と言われる
- 「自分はバックしていない」と言われる
- 「そっちの停車位置が悪いからぶつかった」と言われる
- 「そっちが順路(進行方向)を守っていなかった」と言われる
(1)「そっちが警告のクラクションを鳴らさなかったのが悪い」と言われる
衝突回避のために警告のクラクションを鳴らすべきであったのに、鳴らさなかったことには過失があるから、鳴らさなかった側に重い過失割合があるという主張です。
確かに、ぶつけられた側も衝突を回避する義務がありますし、警告のクラクションを鳴らすことは通常は容易ですので、警告のクラクションを鳴らすことができたのに鳴らさなかったとされてしまうと、5~20程度の過失割合を負う可能性があります。
この反論があったときの対処法としては、クラクションを鳴らしたのであれば、ドライブレコーダーや目撃者、もしくは駐車場の防犯カメラなどの証拠を示して、クラクションを鳴らしたことを主張するとよいでしょう。
(2)「そっちは停車しておらず徐行(前進)していた」と言われる
バックでぶつけてきた側から、こちらは停車しておらず、徐行(前進)していたと反論してくるケースがあります。
停車してぶつけられた場合、ぶつけられた側には事故の責任がなく、過失は0です。
一方、停車しておらず、徐行(前進)していたとすると、徐行(前進)していた側にも事故責任があるとして一定の過失が認められることになります。
この反論があったときの対処法としては、確かに停車していたのであれば、ドライブレコーダーや目撃者、もしくは駐車場の防犯カメラなどの証拠を示して、停車していたことを主張するとよいでしょう。
(3)「自分はバックしていない」と言われる
交通事故の発生状況について、こちらは「相手方がバックしてきたから衝突した」と主張しているのに対し、相手からは、「こちらが停車中に、そっちが追突してきたから事故になった」と反論してくることがあります。
基本的に停車中に車には事故の責任がなく、ぶつかった側に責任があるとされます。
この反論の対処法としては、目撃者やドライブレコーダー、もしくは駐車場の監視カメラなどで事故状況の証拠を示して、こちらの主張が正しいことを反論することになります。
(4)「そっちの停車位置が悪いから衝突した」と言われる
バックしてぶつかってきた相手から、「そっちは、駐車区画から出る車のバックの妨げにならないような位置に停車すべきだったのに、バックする車に近接して停車したからぶつかった」と反論されるケースがあります。
この場合、停車した車両にも事故の責任があるとして、基本の過失割合から、停車していた車に不利に過失割合が修正されます。
この反論の対処法としては、目撃者やドライブレコーダー、もしくは駐車場の監視カメラなどで事故状況の証拠を示して、こちらの主張が正しいことを再度反論することになります。
(5)「そっちが順路(進行方向)を守っていなかった」と言われる
バックでぶつかってきた相手から、「そっちが通路の順路(進行方向)の指示を守っていないために事故が起こった」と反論されることがあります。
駐車場を進行する車は、駐車場内のルールを守るべき注意義務があります。例えば、順路を守っていない、一時停止を指示されていたにもかかわらず、守らずに事故が起こった場合には、守らなかった側に事故の責任が認められ、過失割合が加算されることがあります。
この反論の対処法としては、順路を守っていたのであれば、目撃者やドライブレコーダー、もしくは駐車場の監視カメラなどで事故状況の証拠を示して、こちらの主張が正しいことを再度反論することになります。
相手から納得のいかない過失割合が提示された場合には、うのみにせず、一度弁護士へ相談することをおすすめします。
バック事故の被害者が請求できる示談金について
バック事故の被害者は、加害者側の保険会社に対して、受けた損害について損害賠償を請求することができます。この請求するお金については、話し合いで決着することが多いので「示談金」と呼ばれています。
示談金の提示を受けて、漠然と、「このくらいもらえるならいいかな」と考えて示談に応じてしまうと、後で「もっと示談金をもらえるはずだったのに損してしまった」と後悔することになりかねません。
示談金を請求する際には、次のことに注意するようにしましょう。
- 自分が請求できる損害をもれなく請求する
- 過失割合は、示談金に影響するので安易に自分に不利な修正に応じない
- 交渉による増額可能性があるかどうか弁護士に相談する
(1)自分が請求できる損害をもれなく請求する
交通事故の被害者が受けた損害の内容は、人によって異なります。
なので、自分が受けた損害について、その内容を一つ一つ把握して計算したうえで、もれなく請求する必要があります。
被害者が請求できる損害の内訳には、次のようなものがあります。
【ケガ・後遺障害を負った場合 】
- 治療に関する損害 (治療費、交通費、付添看護費、入院雑費など)
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 後遺症による逸失利益
- 後遺症慰謝料 など
【被害者が死亡した場合 】
- 葬儀関係費
- 死亡慰謝料
- 死亡による逸失利益 など
もちろん、被害者の方が死亡するまでに治療を受けた場合には、治療費や入通院慰謝料なども請求することができます。
【物損のある場合】
- 車両の修理費
- 代車使用料 など
加害者側の保険会社の示談金提案額は、弁護士が交渉して請求する金額よりも、低いことがほとんどです。また、加害者側が被害者の立場に立って、被害者が請求できる項目をもれなく調べて対応してくれるかと言ったら、そうではありません。請求できる項目がもれているケースも少なくありません。
適切な金額を受け取るためには、自分が請求できる損害について一つ一つ確認し、適切な方法で計算し、増額交渉する必要があります。
(2)過失割合は示談金に影響するので、安易に自分に不利な修正に応じない
過去の交通事故の紛争解決の積み重ねにより、実務上、交通事故の態様別に「基本的な過失割合」が決まっています。
「基本的な過失割合」は、あくまで基本的な過失割合ですので、事故が発生した具体的状況や被害者の属性などにより、5~20%程度過失割合が修正されることがあります。
例えば極端なケースですが、運転者に無免許運転や酒酔い運転、居眠り運転などの重大な過失がある場合には、基本的な過失割合は修正され、過失割合は重くなります。
過失割合が自分に不利に修正されると、それだけ自分が受け取れる示談金額は少なくなり、一報で、自分が加害者側に支払う示談金額は増えてしまいます。
<具体例>
- 事故当事者はX、Y
- 損害額は、Xが40万円、Yが60万円
<過失割合X:Y=90:10で示談をした場合>
XがYに対して支払う賠償額=60万円(Yの損害額)×90%=54万円
YがXに対して支払う賠償額=40万円(Xの損害額)×10%=4万円
Yが最終的に獲得する賠償金額=50万円
<過失割合X:Y=80:20で示談をした場合>
XがYに対して支払う賠償額=60万円(Yの損害額)×80%=48万円
YがXに対して支払う賠償額=40万円(Xの損害額)×20%=8万円
Yが獲得できる賠償金額=40万円
この場合、被害者の過失割合が1割増えると、もらえる賠償金が減り、かつ自分が支払う賠償金が増えたことにより、10万円も獲得できる金額が減ってしまうことが分かります。
損害額が大きければ大きいほど、過失割合の修正による影響は多額になります。
加害者側の保険会社から提案された過失割合については、修正要素も含めて適正なものかどうかをチェックする必要があります。
提案を受けた場合には、どうしてこの過失割合になるのか理由を聞いて、回答に納得ができない場合には弁護士に相談することをお勧めします。
過失割合の修正要素について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

(3)交渉による増額可能性があるのか弁護士に相談する
ご説明したように、加害者側の保険会社からの提案額は、弁護士が交渉して請求する金額よりも低額であることがほとんどです。
低額となる理由は、請求できる項目にもれがある、過失割合が被害者側に不利になっているなど様々です。
ただ低額になる一番大きな理由は、保険会社と弁護士では、賠償金の計算基準が違う点にあります。
例えば慰謝料の計算基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類ありますが、どの基準で計算するかにより慰謝料額は異なります。
通常、自賠責保険基準が一番低額になります。
任意保険基準は公開されていませんが、自賠責保険基準と同程度か少し上乗せされた程度であることが多いです。
基本的に、被害者にとって一番有利で高額になる可能性があるのが弁護士基準ですが、初めから保険会社が弁護士基準で計算して示談金を提案してくることはまずありません。
ですので、適切な額の示談金を受け取るためには、示談前に、増額可能性があるのか弁護士に相談するようにしましょう。弁護士は、あなたの状況を把握して、あなたの利益を一番に考え、法的知見や経験を踏まえて適切なアドバイスをしてくれます。
アディーレ法律事務所では、交通事故の被害者の方からのご相談は何度でも無料ですので、1人で悩まずにぜひご連絡ください。
【まとめ】バック事故の過失割合は、事故の状況次第で双方に過失があるとされるケースも
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- バック事故の過失割合は、事故の状況によって異なる。自分が停止していたら基本的に過失割合ゼロだが、徐行していたり進行中の場合には過失が生じる。
- バック事故で加害者側から「警告のクラクションを鳴らさなかったそっちが悪い」などの反論を受けることがある。事実と異なる場合は、証拠を集めて毅然と再反論する必要がある。
- 過失割合が被害者に不利に修正されると、受け取れる賠償金に影響するため安易に応じない。
- 加害者側の保険会社からの提案額をそのままうのみにせず、交渉により増額可能性があるのか弁護士に相談する。
加害者側の保険会社の担当者は、交通事故の示談交渉を行う仕事をしています。
「こっちの過失割合が高すぎる」「慰謝料額が低い」と思って交渉して修正しようとしても、交渉力の違いにより自分の希望が通らないこともあります。
交渉に疲れてしまい、結局自分に不利な内容で示談してしまうことは避けなければなりません。
弁護士であれば、過失割合が適切か、示談金額が不当に低くないかなどを検討して、あなたの代わりに毅然とした態度で保険会社と増額交渉をすることができます。
1人で悩まず、一度相談だけでもしてみませんか。
交通事故の被害者の方がアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2024年12月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
