進路変更による事故の被害に遭った場合、過失割合はどのくらいになるのでしょうか?
結論から言いますと、進路変更による事故の過失割合は、進路変更した車の過失が重くなるのが原則です。
ただし、被害者側にも一定の過失が認められ、事故の状況次第では、被害者側の過失が大きくなるケースもあります。
賠償金で損をしないためには、被害者自身も過失割合がどのくらいになるのかの目安を知っておくことが重要です。
この記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。
- 進路変更と車線変更の違い
- 進路変更による事故の過失割合(パターン別)
- 進路変更による事故で過失割合が修正されるケース
- 弁護士に相談するメリット
ここを押さえればOK!
・進路変更により後続車が追突した事故は、進路変更した車両:後続車両=70%:30%
・進路変更によるバイクと車の事故
四輪車が進路変更したことにより発生した事故は、四輪車:バイク=80%:20%
バイクが進路変更したことにより発生した事故は、バイク:四輪車=60%:40%
ただし、この過失割合は、進路変更の合図を出さなかったなどの事情で修正されることがあります。
過失割合の考え方は難しい点もあります。交通事故の被害に遭い、過失割合でお悩みの方は、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。。
東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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進路変更と車線変更の違い
進路変更と車線変更は、一般的に、次のように解釈されています。
- 進路変更…同一車線内において左右に方向を変えることと
- 車線変更…車両通行帯(車線)がある道路で車線をまたぐ進路変更をすること(進路変更の一種)
つまり、車線変更は、あくまでも進路変更に含まれるものです。
図にすると、次のようになります。

進路変更は、車両通行帯や車線変更の有無とは関係ありません。車幅により一概に言えませんが、四輪車の場合、従来の進路を大部分(半分以上)変えれば進路変更したとみなされます。
つまり、車線変更をしなくても、進路を変えると「進路変更」とみなされます。
車線変更における道交法上の3つのルール
車線変更については道路交通法(道交法)上、次の3つのルールがあります。
- 特別な理由がない限りみだりに進路変更してはならない(26条の2第1項)
- 後続車の妨げとなる進路変更はしてはならない(26条の2第2項)
- 進路変更する場合は3秒前にウインカーで合図する(53条1項および道交法施行令21条)
このルールに違反した進路変更は、後続車が進路変更の予測することが難しくなるため、後続車との衝突事故の原因になりやすくなります。
過失割合とは「どっちがどのくらい悪いか」
次に、過失割合の基本について知っておきましょう。
過失割合とは、簡単に言えば、「事故が発生したことについてどのくらいの責任があるのか」を示す割合をいいます。
仮に、自分側に一切過失がなければ、生じた損害の全額を相手側に請求できますが、少しでも自分側に過失があった場合、その分が賠償額から差し引かれ、全額は請求できなくなってしまいます。
例えば、交通事故により、自分側に生じた損害額が100万円で過失割合が自分:20%・相手:80%である場合には、100万円×20%=20万円は自分で負担しなければなりません。

過失割合についてさらにくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
進路変更による事故の過失割合(目安)
では、進路変更が原因で起こる事故のパターンと、各パターンにおける基本の過失割合(目安)について見てみましょう。
ここでは、次の3つの進路変更による事故の過失割合について説明します。
- 進路変更により後続車が追突した事故
- 進路変更によるバイクと車の事故
- 四輪車が進路変更したことにより発生した事故
- バイクが進路変更したことにより発生した事故
それぞれ説明します。
(1)進路変更により後続車が追突した事故
2台の車両が同方向を走行中、進路変更した前方車両に後続車両が追突したケースです。

このケースの基本の過失割合は、次のとおりです。
進路変更した車両:70%
後続車両:30%
そもそも、進路変更する際は、運転者は後続車両などに十分注意を払う必要があります。進路変更する車両の運転者が後続車両にきちんと注意を払うことを怠ったため、後方から追突された場合は進路変更した車両側の過失割合が7割と高くなるのです。
他方、後続車両は前方車両のウインカーによりその進路変更を予測できたことから、それにもかかわらず追突してしまった場合は前方の確認不足という理由で3割の過失となります。
(2)進路変更によるバイクと車の事故
バイクは四輪車よりも立場が弱いため、一般的に過失割合が低くなります。
ただし、四輪車かバイクかどちらが進路変更したかどうかで、過失割合は変わってきます。
(2-1)四輪車が進路変更したことにより発生した事故
四輪車が進路変更し、前方の四輪車に後続のバイクが追突したケースです。

このケースの基本の過失割合は、次のとおりです。
四輪車:80%
バイク:20%
(2-2)バイクが進路変更したことにより発生した事故
バイクが進路変更し、前方のバイクに後続の四輪車が追突したケースです。

このケースの基本の過失割合は、次のとおりです。
バイク:60%
四輪車:40%
進路変更による四輪車どうしの事故と比較すると、いずれもバイクの過失割合は10%減算されています。
進路変更事故の過失割合が修正される7つのケース

一口に進路変更による事故といっても、事故や道路の状況次第では、必ずしも進路変更した側の責任の方が重いとは言い切れません。
そこで、事故や道路の状況次第では、追突した側の責任の方が重くなるケースもあります。
例えば、次の7つのケースでは、進路変更事故の過失割合が修正される可能性があります。
- 進路変更したことにより駐停車中の車に衝突したケース
- 進路変更禁止区間で進路変更したケース
- 進路変更の合図を出さなかったケース
- 後続の直進車両がゼブラゾーンを進行中だったケース
- 後続の直進車両がスピード違反をしていたケース
- 後続の直進車両が初心者マークをつけていたケース
- 進路変更車両に著しい過失・重過失があったケース
それぞれのケースについて説明します。
(1)進路変更したことにより駐停車中の車に衝突したケース
進行変更車両が信号待ちなどで駐停車中の車両に追突したケースです。

このケースの過失割合は、次のように修正されます。
進路変更した車両:100%
追突された車両:0%
停車中の車は、後方車両の追突を回避するのが通常はできませんので、過失割合ゼロとなります。
(2)進路変更禁止区間で進路変更したケース
黄色い線の進路変更禁止区間で進路変更した車両に後方車両が追突したケースです。
このケースの過失割合は、次のように修正されます。
進路変更した車両:90%
追突した車両:10%
進路変更が禁止されているにもかかわらず進路変更した車両には、基本パターンの70%よりも過失割合が20%加算されます。逆に、追突した車両は、進路変更禁止区間で前方車両が進路変更するとは通常予測できないため、前方を注視する義務が軽減され、10%の過失割合にとどまります。
(3)進路変更の合図を出さなかったケース
合図(ウインカー)を出さずに進路変更した車両に後方車両が追突したケースです。

このケースの過失割合は、次のように修正されます。
進路変更した車両:90%
追突した車両:10%
合図を出さずに進路変更した場合、後方車両はその進路変更を予測することが難しくなります。そこで、合図を出さずに進路変更した車両の過失割合は基本パターンの70%より20%加算され、90%になります。
(4)後続の直進車両がゼブラゾーンを進行中だったケース
直進車両がゼブラゾーンを走行中、進路変更車両に追突したケースです。

このケースの過失割合は、次のように修正されます。
進路変更した車両:50~60%
ゼブラゾーン走行車両:40~50%
ゼブラゾーン(導流帯)とは、白線が縞模様になっている区画で、事故や渋滞が多い交差点などで車が安全・円滑に走行することを誘導するために設けられたものです。ゼブラゾーンを走行すること自体は問題ありませんが、みだりに進入してはならないとされており、ゼブラゾーンから直進車がくることを予測することは難しいでしょう。
そのため、今回のケースのように、ゼブラゾーンを走行していた車両に衝突された場合には、ゼブラゾーンを進行側の過失が基本の過失割合よりも加算されることになります。
(5)後続の直進車両がスピード違反をしていたケース
直進車が法定速度に違反する速度で走行中、進路変更した車両に追突したケースです。

このケースの過失割合は、次のように修正されます。
【15km以上の速度超過の場合】
進路変更した車両:40%
スピード違反した直進車両:60%
【30km以上の速度超過の場合】
進路変更した車両:50%
スピード違反した直進車両:50%
(6)後続の直進車両が初心者マークをつけていたケース
初心者マークが付いている車両が進路変更車両に追突したケースです。

このケースの過失割合は、次のように修正されます。
進路変更した車両:80%
初心者マークの直進車両:20%
初心者マークの直進車両の過失割合は、基本パターンの70%よりも10%減算されます。これは、後続車両に初心者マークが付いている場合、前方で進路変更する車両は、より注意を払わなければならないためです。
(7)進路変更車両に著しい過失・重過失があったケース
進路変更した車両に著しい過失、または重過失があったケースです。

「過失」とは、不注意やミスのことをいいます。
著しい過失と重過失の具体例は、次のとおりです。
具体例 | |
---|---|
著しい過失 |
|
重過失 |
|
このケースの過失割合は、次のように修正されます。
【進路変更した車両に「著しい過失」があった場合の過失割合】
進路変更した車両:80%
追突した後方車両:20%
【進路変更した車両に「重過失」があった場合の過失割合】
進路変更した車両:90%
追突した後方車両:10%
過失割合が納得できない場合には弁護士に相談するメリット
保険会社から提示された過失割合に納得できない場合には、弁護士への相談がおすすめです。
そもそも、加害者側の提示する過失割合は、事故の被害者にとって不利な形になっているケースも多いです。
例えば、事故当事者の主張が異なる場合には、被害者の主張ではなく、加害者の主張する事実に基づいて過失割合を提案してきている可能性があります。
【例】- 信号が赤で加害者が交差点を進入してきたのに、加害者が青で進入したと主張している
- 本来徐行すべきところを徐行せずに進行していたのに、加害者は徐行していたと主張している など
過失割合について検討せずに示談を成立させてしまうと、事故被害者が本来受けとるべき賠償金を受け取れなくなるおそれがあります。
交通事故の経験が豊富な弁護士に示談交渉を依頼したりすると、弁護士は、道路状況や車や自転車の損傷部分や程度などのさまざまな証拠をもとに正しい事故状況を検討します。そして、弁護士はその結果を基に保険会社と交渉します。これにより、妥当な過失割合で保険会社と示談できる可能性が高まります。
さらに、弁護士に依頼することで保険会社が提示する示談金額よりも増額できる可能性があります。「保険会社が提示する示談金額が妥当かどうか判断できない」「示談金額に納得ができない」という方も弁護士へ相談されることをおすすめします。
弁護士への依頼でもらえる示談金が増える可能性について詳しくはこちらをご覧ください。
【まとめ】進路変更による事故は、進路変更した方の過失が重いのが原則!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 進路変更による事故の過失割合(目安)
- 進路変更により後続車が追突した事故
→進路変更した車両:後続車両=70%:30% - 進路変更によるバイクと車の事故
- 四輪車が進路変更したことにより発生した事故
→四輪車:バイク=80%:20% - バイクが進路変更したことにより発生した事故
→バイク:四輪車=60%:40%
- 四輪車が進路変更したことにより発生した事故
- 進路変更事故の過失割合が修正される7つのケース
- 進路変更したことにより駐停車中の車に衝突したケース
- 進路変更禁止区間で進路変更したケース
- 進路変更の合図を出さなかったケース
- 後続の直進車両がゼブラゾーンを進行中だったケース
- 後続の直進車両がスピード違反をしていたケース
- 後続の直進車両が初心者マークをつけていたケース
- 進路変更車両に著しい過失・重過失があったケース
示談交渉は保険会社に任せておけば大丈夫と思っている方もいるかもしれません。
しかし、保険会社の提示する過失割合が、加害者の主張(例えば、相手の停車位置が悪かったなど)に基づいて認定されているケースがあります。
この場合には、あなたからも適切な反論をしなければなりません。保険会社に任せたままにしていると、あなたが損をしてしまっている可能性もあります。
弁護士に相談することで、保険会社から提示された過失割合が適正か、また、賠償金額に増額ができる余地がないか検討します。
弁護士に相談し、保険会社が提示した過失割合が修正され、賠償金が増額した解決事例もありますので、保険会社に示談交渉を任せてしまうのではなく、一度弁護士への相談をおすすめします。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年1月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。