交通事故により高次脳機能障害が生じた場合、被害者は加害者に対して慰謝料を請求できます。
高次脳機能障害の後遺症慰謝料は等級別に、690万~2800万円程度となるのが相場です(「弁護士の基準」の場合)。
弁護士の基準というのは、一般的に弁護士が交渉する際に用いる金額です。他方で、任意保険会社が、弁護士をつけていない方に提示してくる金額はもっと低いことが多いです。
高次脳機能障害は、日常生活に大きな影響を与える後遺症ですので、少しでも多くの慰謝料を獲得するために、慰謝料増額のポイントを知っておきましょう。
この記事では、
- 高次脳機能障害を負った際に請求できる慰謝料額
- 金額を増額するためのポイント
を弁護士が解説します。

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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- 高次脳機能障害とは
- 高次脳機能障害の3つの症状
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高次脳機能障害の後遺障害等級認定
- (1)後遺障害等級認定の2つの手順
-
(2)高次脳機能障害の場合に認定される可能性がある障害等級
- (2-1)1級1号(要介護)「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
- (2-2)2級1号(要介護)「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
- (2-3)3級3号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
- (2-4)5級2号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
- (2-5)7級4号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
- (2-6)9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
- 等級ごとの高次脳機能障害の慰謝料金額
- 【まとめ】弁護士に依頼すると高次脳機能障害の後遺症慰謝料が増額される可能性あり
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高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、交通事故で頭部を強打するなどにより脳の一部が損傷し、脳の機能に障害が生じることをいいます。
脳の機能には、
- 呼吸や循環といった「生きていくために不可欠な機能」
- 視覚・聴覚などの「基本的機能」
- 知識に基づいて行動を計画、実行する「高度な機能」
があります。
高次脳機能障害とは、このうち「高度な機能」に障害が生じることをいい、認知や行動に障害が生じたり、性格に変化が起きることもあります。
もっとも、高次脳機能障害は、外見上には変化が見られないため、気づきにくい障害といわれています。
障害の内容はケースによって異なり、判断が難しいこともあります。
高次脳機能障害の3つの症状
高次脳機能障害には様々な症状がありますが、代表的な症状を3つに分けて解説します。
分類 | 具体的な症状 |
1.認知障害の症状 | • 新しいことが覚えられない • 覚えたことを忘れてしまう • 交通事故前の記憶がない • 時間や場所がわからなくなる • 約束を忘れる • 同じことを繰り返し質問する • 目の前にあるものを認識できない • 空間の感覚をとらえにくい |
2.行動障害の症状 | • 注意力が落ちる • 落ち着きがなくなる • 集中力が続かない • 我慢することができない • 言葉が出にくい、字が書けない • ぼんやりしてミスが多い • 周囲の状況を見て適切に振る舞えない • 段取りをつけて物事を行うことができない • やる気が出ない |
3.性格の変化 | • 怒りっぽくなる • すぐに興奮する、暴力をふるう • 自己中心的な性格になる |
このように、高次脳機能障害の症状は、日常生活において大きな支障をもたらします。
高次脳機能障害の後遺障害等級認定
高次脳機能障害の後遺障害等級認定を受けるための手順と、どのような後遺障害等級認定を受けられるのかについて説明します。
(1)後遺障害等級認定の2つの手順
交通事故による高次脳機能障害で後遺障害等級認定を受けるためには、次の2つの手順が必要となります。
医師による高次脳機能障害の診断
後遺障害等級認定の申請
それぞれ説明します。
(1-1)医師による高次脳機能障害の診断
交通事故により頭部を強打した場合は、病院で早めにCT検査やMRI検査などの精密検査を受けることをおすすめします。
高次脳機能障害が認定されるためには、交通外傷によって脳に損傷が生じたことが画像上判断できる必要がありますので、自覚症状がない場合でも、これらの精密検査を受診してください。
(1-2)後遺障害等級認定の申請
医師による精密検査の結果、高次脳機能障害と診断された場合は、所定の機関(通常は損害保険料率算出機構)に後遺障害等級の認定を申請します。
等級認定の審査は、通常2~3ヶ月で結果が出ることが多いですが、高次脳機能障害は慎重に審査する必要性から、審査に4ヶ月以上かかることもあります。その結果、症状に応じて後遺障害等級が認定されますが、高次脳機能障害は見過ごされやすいという特性があります。
特に、性格の変化については、それが高次脳機能障害によるものか、単なる気分の変化なのか、判断するのが難しい場合があります。医師の診断に加え、画像上脳の損傷がみられるのか、事故当時意識障害があるのか、症状の推移等を踏まえて高次脳機能障害として後遺障害を認定するのか判断されます。
高次脳機能障害は、判断が難しく、不利な等級認定を受けてしまうことも珍しくありません。適正な等級認定を受けるためには、早めの弁護士への相談をおすすめします。
というのも交通事故案件の経験が豊富な弁護士は、適正な等級認定を受けるために、どんな資料を集めればより効果的かを知っているからです。
(2)高次脳機能障害の場合に認定される可能性がある障害等級
高次脳機能障害の場合に認定される可能性がある障害等級は、次のとおりです(自動車損害賠償保障法施行令 別表第1・第2)。
(2-1)1級1号(要介護)「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
- 高度の痴呆があるために、食事、入浴、用便、着衣など、生命維持に必要な行動すべてについて、常に介護を有する状態
- 神経や精神に重い障害があり、働くことは不可能
(2-2)2級1号(要介護)「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
- 一人で外出することが出来ず、排せつや食事などの活動を行うことが出来ても、生命維持に必要な身体動作に全面的に介護が必要な状態
- 神経や精神に重い障害があり、働くことは不可能
(2-3)3級3号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
- 自宅周辺を一人で外出することが出来、また、生命維持に必要な日常行動をある程度一人でできる。しかし、記憶や注意力、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があり、一般就労が全くできないか、困難な状態
(2-4)5級2号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
- 神経や精神に重い障害があり、ごく簡単な仕事しかできない状態
- ごく簡単な仕事でも、一般平均人に比べて作業能力が著しく制限される
- 就労を維持するためには周囲の理解と援助が必要
(2-5)7級4号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
- 神経や精神に障害があり、簡単な仕事以外はできない状態
- 簡単な仕事でも、作業の手順が悪かったり、ミスが多いなどのことから、一般平均人と同等の作業をすることができない
(2-6)9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
- 神経や精神に障害があり、就労できる仕事に制限がある状態
- 一人で仕事を進めることも可能だが、作業効率などに問題がある

等級ごとの高次脳機能障害の慰謝料金額
高次脳機能障害の後遺障害等級が認定されたら、加害者に対して後遺症慰謝料を請求することになります(なお、慰謝料の他に入通院慰謝料や逸失利益なども請求できます)。
等級ごとの高次脳機能障害の後遺症慰謝料の金額は、次のとおりです。
自賠責の基準 | 弁護士の基準 | |
---|---|---|
1級1号 (要介護) | 1650万円 | 2800万円 |
2級1号 (要介護) | 1203万円 | 2370万円 |
3級3号 | 861万円 | 1990万円 |
5級2号 | 618万円 | 1400万円 |
7級4号 | 419万円 | 1000万円 |
9級10号 | 249万円 | 690万円 |
(2020年4月1日以降に起きた事故による場合)
さて、「自賠責の基準」「弁護士の基準」という言葉が出てきましたが、ここでこれらの基準について説明します。
慰謝料の金額を算定するにあたって、次の3つの基準があります。
- 自賠責の基準……自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令で定められた、必要最低限の賠償基準
- 任意保険の基準……各保険会社が独自に定めた賠償基準
- 弁護士の基準・・・弁護士が、加害者との示談交渉や裁判で用いる賠償基準(「裁判所基準」ともいいます)
3つの基準による賠償額のイメージは、一般的に、次のようになります。

基本的に、自賠責の基準よりも弁護士の基準の方が高額となります。
(ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、過失が70%以上になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。)。
慰謝料を増額する要点(ポイント)とは何でしょうか?
示談交渉や慰謝料請求を弁護士に依頼することで、加害者側の保険会社が提示してきた慰謝料額を増額できる可能性があります。
被害者が慰謝料について交渉すると、加害者側の保険会社は、一般的に金額の低い自賠責の基準や任意保険の基準で金額を提示してきます。
これに対し、弁護士が交渉する場合には、一般的に金額が最も高い弁護士の基準を用います。
そのため弁護士が交渉を行うことで、加害者側の保険会社が提示してきた慰謝料額よりも増額することが期待できるのです。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
【まとめ】弁護士に依頼すると高次脳機能障害の後遺症慰謝料が増額される可能性あり
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 高次脳機能障害とは、脳の一部が損傷し、認知や行動に障害が生じたり、性格に変化が起きたりする症状が出ること。
- 高次脳機能障害は、判断するのが難しい場合があり、不利な等級認定を受けて、正当な補償が受けられない場合も少なくない。
- 等級ごとの高次脳機能障害の後遺症慰謝料の金額
1級1号 自賠責の基準:1650万円/弁護士の基準:2800万円
2級1号 自賠責の基準:1203万円/弁護士の基準:2370万円
3級3号 自賠責の基準:861万円/弁護士の基準:1990万円
5級2号 自賠責の基準:618万円/弁護士の基準:1400万円
7級4号 自賠責の基準:419万円/弁護士の基準:1000万円
9級10号 自賠責の基準:249万円/弁護士の基準:690万円
- 弁護士は、一般的に3つの基準の中で最も金額が大きくなりやすい弁護士基準により交渉や請求を行うため、後遺障害の慰謝料を請求する際は、弁護士に依頼するのがおすすめ。
交通事故の被害に遭われた方がアディーレ法律事務所に賠償額のご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので(※)、やはりお客様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。上限を超えた場合の弁護士費用の取り扱いについては、各法律事務所にお問い合わせください。
(以上につき、2021年9月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
