交通事故によりむち打ち症となり、発熱などが後遺症として残ってしまった場合、後遺障害12級もしくは14級に認定される可能性があります。
むち打ち症による後遺症を理由に後遺障害に認定されると、賠償金額が高額になる可能性があります。
また、12級か14級のどちらに認定されるかによっても、最終的に受け取れる賠償金額に影響を受けます。例えば、後遺障害12級と14級の後遺症慰謝料の相場(弁護士の基準)は、次のとおりです。
- 後遺障害12級:290万円
- 後遺障害14級:110万円
むち打ち症による発熱で後遺障害に認定される条件や、後遺障害12級と14級の違いについて知っておきましょう。
この記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。
- 交通事故が原因で発熱が起こる原因
- 交通事故による発熱で認定される可能性がある後遺障害等級
- 後遺障害認定の申請を弁護士に依頼するメリット

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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交通事故で熱が出るケースとは

交通事故のケガによって発熱が発生する原因としては、次の3つのケースが考えられます。
【交通事故のケガによって発熱する原因と症状】- むち打ち症による首の熱感
- むちうち症による自律神経失調症
- バレリュー症候群
それぞれ見ていきましょう。
(1)むちうち症による首の熱感
むち打ち症とは、事故の衝撃で首がしなり、筋肉や筋が損傷したころで、首の部分に熱感や腫れ、痛みなどが生じる症状のことをいいます。
むちうち症による発熱の原因としては、まずこのようにむちうち症から直接生じる首の部分の熱感が考えられます。
(2)むちうち症による自律神経失調症
交通事故でむちうち症になると、自律神経失調症を発症し、全身または体の一部が発熱する場合があります。
自律神経失調症とは、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、正常に機能しないことによって起こるさまざまな症状の総称をいいます。
本来、人の身体は、交感神経(主に活動中に働くもの)と副交感神経(主に眠っている時や休息時に働くもの)が入れ替わることにより体温、発汗、血圧、心拍数、血糖値、内臓の活動などのバランスが保たれています。
しかし、むちうち症により交感神経や副交感神経に何らかの異常が生じ、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、体温調節機能に異常が起こることにより発熱が起こると考えられています。
なお、むちうち症で自律神経が乱れると、発熱の他、いらいらしたり頭がぼんやりしたりすることもあります。めまいや耳鳴りも同時に生じることがあります。
(3)バレリュー症候群
バレリュー症候群とは、むちうち症によって交感神経が異常をきたす症状をいい、別名「後部頚交感神経症候群」ともいいます。
こちらも自律神経失調症の一種であり、上記(2)で述べた自律神経失調症とはっきりとした区別があるわけではありません。
バレリュー症候群では、事故から2~4週間ほど経過すると交感神経が興奮状態になり、頭痛やめまい、耳鳴り、吐き気、全身の倦怠感、微熱などの症状が起こると言われています。
通常のむちうち症は受傷後3~6ヶ月で症状が改善するとされていますが、その後も発熱などの症状が改善しない場合はバレリュー症候群の可能性があります。
むち打ち症によって後遺症が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級とは
では次に、後遺障害の意味と認定される可能性のある後遺障害等級について説明します。
(1)後遺障害とは
交通事故でケガを負った場合、治療してもこれ以上回復できない状態で症状が残ることがあります。これを「後遺症」といいます。
そして、「後遺障害」とは、このように交通事故で負った後遺症のうち、所定の機関(損害保険料率算出機構など)により障害を認定されたものをいい、1~14級(および要介護1級・2級)の等級があります(1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級…と等級が下がっていきます)。
後遺症が後遺障害として認定を受けるためには、どの等級かに関わらず、次の3つの条件を満たす必要があります。
【後遺症が後遺障害として認定されるための条件】
- 交通事故と後遺症の間に因果関係があること
- 医師により、症状固定(=これ以上治療しても改善も悪化もしないこと)の診断を受けること
- 医師により後遺障害診断書を作成してもらうこと
特に、交通事故と後遺症の間に因果関係があることの条件は重要です。
例えば、骨折など外から見えるケガの場合は事故が原因でケガをしたことが明らかですが、一方発熱などの外から見えないケガの場合には事故が原因とは明らかであるとはいえず、因果関係が認められないことがあります(発熱が交通事故以外の原因である可能性が疑われることがあります)。
交通事故によるケガが後遺障害として認定されると、被害者は加害者に対し、治療費などに加え、後遺症が残ったことに対する賠償金として後遺症慰謝料や逸失利益も請求できるようになります。

(2)認定される可能性のある後遺障害等級とは?
むち打ち症によって発熱などの後遺症が残った場合、認定される可能性のある後遺障害等級は、次のとおりです。
- 後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの
後遺障害12級13号と後遺障害14級9号に認定されるケースについて説明します。
(2-1)12級13号の場合
後遺障害12級13号の認定を受けるためには、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に当てはまる必要があります。
そして、むち打ち症によって発熱などの後遺症が残った場合に「局部に頑固な神経症状を残すもの」に当てはまるためには、自覚症状(発熱)があることの他にレントゲンやMRI検査、CT検査などによる、症状の原因となる画像所見など(=他覚症状)があることが必要になります。
むち打ち症によって発熱などの後遺症が残った場合に、交通事故との間の因果関係を証明するためには、交通事故の直後から通院し、定期的に撮影するのがポイントになります。
交通事故直後の後遺症の原因と思われる画像所見があれば、後遺症と交通事故の因果関係を証明しやすくなります。
(2-2)14級9級の場合
後遺障害14級9号の認定を受けるためには「局部に神経症状を残すもの」に当てはまる必要があります。
そして、むち打ち症によって発熱などの後遺症が残った場合に「局部に神経症状を残すもの」に当てはまるためには、交通事故を原因とする発熱について医学的な説明ができることが必要になります。
ここでいう「医学的な説明できる」というのは、交通事故により生じた症状が一貫して継続していることなどをいいます。
(2-3)いずれの等級にも認定されない場合もある
発熱といった後遺症の症状が自覚症状によるだけで、レントゲンやMRI、CTなどの精密検査で神経組織に異常が見られず、また医学的な説明もできない場合、残念ながらいずれの後遺障害等級にも該当しない(=非該当)ということになります。
また、治療期間が短かったり(6ヶ月未満)、通院を長期間(4週間以上)中断している場合、症状の程度が足りない場合(労働能力喪失が伴わない場合)にも非該当とされる可能性があります。
後遺障害等級認定を受ける2つのポイント
むち打ち症よる後遺症は、MRI検査などで原因となる画像所見が見つかりにくいケースもあり、後遺障害の等級認定を受けることが難しい場合もあります。
ここでは、むち打ち症による後遺症で後遺障害等級認定を受ける次の2ポイントを説明します。
- 認定のカギは後遺障害診断書にあり!
- 後遺障害認定は被害者請求がおすすめ!
それぞれ説明します。
(1)認定のカギは後遺障害診断書にあり!
むち打ち症による後遺症で後遺障害の等級認定を受けるにあたっては、担当医が作成する後遺障害診断書の内容が十分かどうかがポイントになります。
後遺障害診断書に十分な記載をしてもらうためには、医師に症状が一貫してあることや、悪天候の日に症状が重くなるなど、医師に症状を具体的かつ正確に伝えることが重要です。
日によっては症状が良くなるという場合でも、「治った」と自己判断せず、長期的な症状を医師に伝えましょう。また、症状を通院の都度カルテに記載してもらうといったことも大切です。
【後遺障害診断書】

(2)後遺障害等級認定の申請方法にも注意
後遺障害等級認定を受けるためには、所定の機関(損害保険料率算出機構など)に対して申請をする必要があります。
この申請の方法には、次の2つの方法があります。
【後遺障害等級認定の申請方法】
- 事前認定:加害者が加入する任意保険会社を通じて申請を行う方法
- 被害者請求:被害者自身が自ら申請を行う方法
事前認定と被害者請求の違いをまとめると次のようになります。

適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、担当医に後遺障害診断書の必要事項を漏れなく書いてもらい、その他必要な書類をきちんと添付して提出しなければなりません。
ただ、事前認定の場合には、手続きを加害者側の任意保険会社に任せてしまうため、診断書や添付書類に不備があっても被害者本人に特に知らされず、そのまま手続きが進んでしまうことがあります。
その点、被害者請求では、申請手続きを被害者自身でしなければならず、手間はかかりますが、等級認定に有利な資料を追加で提出したりすることが自由にできるため、事前認定に比べ、より納得のいく審査を受けることができます。
「被害者請求」は資料集めなどを被害者自身で行わなければならず、被害者に負担がある制度といえます。しかし、弁護士に依頼すると、後遺障害等級認定手続に必要な資料の内容を弁護士がチェックするなど、弁護士が後遺障害認定手続をトータルサポートします。
交通事故による発熱での後遺障害認定を弁護士に依頼する5つのメリット

交通事故による発熱で後遺障害等級認定の申請をしたり、加害者に対して慰謝料などの損害賠償を請求する場合には、次の5つのメリットから弁護士に相談するのがおすすめです。
【弁護士に依頼するメリット】- 後遺障害診断書の内容についてアドバイスを受けられる
- 面倒な手続きを弁護士に任せられる
- 慰謝料などの増額ができる可能性がある
- 認定結果に不満がある場合に、異議申立ても任せられる
- 弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用をまかなえる可能性がある
それぞれ説明します。
(1)後遺障害診断書の内容についてアドバイスが受けられる
弁護士に依頼すれば、後遺障害診断書を書いてもらう際に、等級認定に有利なポイントについて弁護士からアドバイスを受けることができ、後遺障害認定の可能性を高めることができます。
また、症状固定前に弁護士と医師とが連携することで、等級認定に必要な検査や治療を受けることができ、後遺障害等級の申請に必要な資料を的確に収集できます。
(2)面倒な手続きを弁護士に任せられる
後遺障害等級認定の申請手続きや加害者側との示談交渉には、多くの時間と労力を要しますが、弁護士に面倒な手続きを任せることで、被害者は治療に専念することが可能になります。
特に、被害者請求で後遺障害等級認定を行う場合には、被害者が申請書類の作成や収集を行う必要があります。

(3)慰謝料などの増額が期待できる
弁護士に依頼することで慰謝料などの賠償金の増額が期待できます。
保険会社から提示された示談金(賠償金)の金額であれば適正な金額だろうと思われているかもしれません。
しかし、保険会社が提示する示談金(賠償金)の金額は弁護士が基準とする金額よりも低いことも多いです。
どういうことかというと、示談金(賠償金)の算定基準は、実は、「自賠責の基準」「任意保険の基準」「弁護士の基準」の3つがあり、「自賠責の基準」や「任意保険の基準」は「弁護士の基準」よりも低いことが多いのです。
算定基準 | 基準の内容 |
---|---|
自賠責の基準 | 自賠責保険により定められている賠償基準です。必要最低限の救済を行うことを目的としており、一般的に支払額は3つの基準の中でもっとも低く設定されています。 ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、加害者側になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。 |
任意保険の基準 | 各損害保険会社が定めている自社独自の支払基準です。保険会社によってその内容は異なり、正式には公表されていません。一般的に自賠責の基準以上ではありますが、弁護士の基準と比べると、かなり低く設定されています。 |
弁護士の基準 | これまでの裁判所の判断の積み重ねにより認められてきた賠償額を目安として基準化したものです。一般的に、自賠責の基準や任意保険の基準と比べて高額になります。 |
上でご紹介した3つの基準の金額を比べると、基本的には次のようになります。

実際、それぞれの等級における後遺症慰謝の金額の目安は次のとおりになります。

上の表のとおり、一般的に自賠責の基準よりも弁護士の基準のほうが金額は高くなりやすくなります。そのため、慰謝料の増額を目指すためには弁護士の基準を使うことをおすすめします。
ただ、被害者が自分自身で(または加入している保険会社の示談代行サービスにより)示談交渉を行うと、加害者側の保険会社は、自賠責の基準や任意保険の基準に基づく低い金額を提示してくることが通常です。
これに対し、被害者に代わって弁護士が示談交渉を行う場合、訴訟も辞さない態度で交渉し、最も金額の大きい基準(通常は弁護士の基準)での金額もしくはそれに近い金額での示談が期待できます。
弁護士への依頼でもらえる示談金について詳しくは、こちらをご覧ください。
(4)認定結果に不満がある場合に、異議申立ても任せられる
後遺障害等級の認定結果に不満がある場合には、異議申立てをすることができます。
ただ、一度認定された結果を覆すことは難しく、異議申立てを成功させるためには、その認定結果となった理由を知り、不十分であった点について資料を収集し、意見書を準備するなどして異議申立てをする必要があります。
異議申立てを成功させるためにも、専門的な知識をもつ弁護士に依頼し、アドバイスをもらうことをおすすめします。
後遺障害等級認定の異議申立てについては、こちらもご参照ください。
(5)弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用をまかなえる可能性がある
弁護士に依頼するとなると、弁護士費用を心配されるかもしれません。
しかし、被害者が「弁護士費用特約」に加入していれば、保険会社が弁護士費用を負担してくれますので、実質的な弁護士費用の負担なく弁護士に依頼することができる可能性があります。
弁護士費用の上限はありますが(通常は300万円)、300万円を超えることは稀ですし、弁護士費用が300万円を超えるような場合には死亡事故など重大な結果が発生しているケースだと考えられますので、弁護士費用を負担したとしても増額できる割合の方が高いことがほとんどです。
まずは、自身が加入している保険に弁護士費用特約の付帯がないか確認してください。
また、自身は保険に加入していなくても、あなたの配偶者や同居の親族、別居の両親(自身が未婚に限る)、事故車両の所有者が弁護士費用特約の付帯する任意保険に加入していれば、その弁護士費用特約を利用できる可能性がありますので、ご家族の保険も確認してみましょう。
弁護士費用特約が利用できない場合であっても、「自分で交渉しよう」と思うのは早いです!
交通事故の被害についての相談料がかからず、報酬について成功報酬制(最終的に受け取る示談金額から弁護士費用を支払う)を採用している法律事務所に依頼すれば、弁護士費用で赤字になったり、経済的に苦しいのに示談成立前に弁護士費用を支払ったりする必要はありませんので、安心です。
弁護士費用特約についてさらにくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】発熱で認定される可能性のある後遺障害は12級と14級
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 交通事故のケガによって発熱する原因と症状
- むち打ち症による首の熱感
- むちうち症による自律神経失調症
- バレリュー症候群
- 交通事故による発熱で認定される可能性のある後遺障害等級
- 後遺障害12級13号:自覚症状(発熱)があることの他にレントゲンやMRI検査、CT検査などによる、症状の原因となる画像所見(=他覚症状)があることが必要
- 後遺障害14級9号:交通事故を原因とする発熱について医学的な説明ができることが必要
- 交通事故による発熱での後遺障害認定を弁護士に依頼する5つのメリット
- 後遺障害診断書の内容についてアドバイスを受けられる
- 面倒な手続きを弁護士に任せられる
- 慰謝料などの増額ができる可能性がある
- 認定結果に不満がある場合に、異議申立ても任せられる
- 弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用をまかなえる可能性がある
後遺症があれば必ず後遺障害認定されるわけではありません。
実際、後遺障害認定の申請をしても「非該当」とされるケースも多くあります。
しかし、弁護士に相談することで後遺障害等級認定に向けた手続のアドバイスをもらうことができ、等級認定の可能性を高めることができます。
賠償金請求や後遺障害等級認定にお悩みの方は、一度弁護士への相談をしてみることをおすすめします。
交通事故の被害による賠償金請求や後遺障害等級認定をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年3月時点)
交通事故の被害にあい、加害者側の保険会社に対する賠償金請求や後遺障害等級認定でお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
