後遺障害7級12号が認定される症状とはどういった症状でしょうか?
後遺障害7級12号とは、「外貌に著しい醜状を残すもの」をいいます。
簡単に言うと、顔にニワトリの卵程度以上の大きな傷あとが残ってしまった場合をいいます。
交通事故により顔に傷あとが残ってしまったケースでは、全く同じ傷あとでも、逸失利益が認められるか認められないかにより最終的に受け取れる賠償金額が大きく変わってしまうことがあります。
少しでも多くの賠償金を受け取るために、後遺障害等級の判断基準や逸失利益が認められるケースについて知っておきましょう。
この記事では、
- 後遺障害等級とは
- 後遺障害7級12号の具体的な症状・判断基準
- 後遺障害7級12号の慰謝料の相場
- 後遺障害7級12号の逸失利益とその注意点
について弁護士が詳しく解説します。

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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「後遺障害」とは?
「後遺障害」とは、交通事故で負った後遺症のうち、自賠責保険の基準に基づき、障害を認定されたものをいいます。
後遺障害は1~14級(および要介護1級・2級)の等級に分かれており、1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。
後遺障害が認定されると、被害者は加害者に対し、治療費や休業損害(ケガのために仕事を休んだことによって失った収入)などに加え、後遺症慰謝料や、一定の場合には後遺障害逸失利益も請求できるようになります。
後遺障害7級12号に認定される症状とは?
後遺障害7級12号とは、「外貌に著しい醜状を残すもの」をいいます。
つまり、交通事故により、外貌(=見た目)に人目につく程度の大きな傷あとが残ってしまったことをいいます。
例えば、次のイラストのような傷あとが残った場合をいいます。

- 頭部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 頭蓋骨に手のひらの大きさ以上の欠損
- 顔面にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 顔面に10円玉の大きさ以上の組織陥没
- 頸部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 耳介軟骨部の2分の1以上の欠損
- 鼻軟骨部の全部または大部分の欠損
2個以上の傷あとが近くにあって、それらの傷あとがまとめて1個の傷あとに見えてしまうような場合は、1個の傷あととして等級を認定することになります。
なお、後遺障害認定の対象となるのは、人の目につく程度以上のものであることが前提であるため、傷あとが眉毛、頭髪で隠れてしまう場合には、後遺障害認定を受けることができないことに注意が必要です。
<コラム> 外貌の傷あとについて、女性より男性の方が後遺障害等級が低いとされていた?
かつて7級12号は、「女子の外貌に著しい醜状を残すもの」と定められており、7級の後遺障害等級は女性にしか後遺障害が認められていませんでした(なお、男性の外貌に著しい醜状を残した場合は12級とされていました)。
しかし、男性であっても、女性と同様に外貌に傷あとが残ったことによってショックを受けることには変わりません。そこで、2010年6月10日以降に発生した事故からは男女の差なく、外貌に対する後遺障害が認められるようになりました。
顔に傷あとが残った場合の他の等級との違い
交通事故により顔に傷あとが残った場合には、後遺障害7級12号の他に、9級16号、12級14号に認定される可能性があります。
ここでは、後遺障害7級12号と9級16号、12級14号の違いについて見ていきましょう。
後遺障害9級16号、12級14号の認定要件については、次のとおりです。
等級 | 後遺障害の認定要件 |
---|---|
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
それぞれ具体的に見ていきます。
(1)9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とは、原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状の傷あとで、人の目につく程度以上のものをいいます。
例えば、次のイラストのような傷あとが残った場合をいいます。

(2)12級14号 外貌に醜状を残すもの
「外貌に醜状を残すもの」とは、原則として、人目につく程度以上のものをいいます。
例えば、次のイラストのような傷あとが残った場合をいいます。

- 頭部にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 頭蓋骨にニワトリの卵の大きさ以上の欠損
- 顔面に10円玉の大きさ以上の傷あと
- 顔面に長さ3センチメートル以上の線状の傷あと
- 頸部にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 顔面麻痺による口のゆがみ
- 耳介軟骨部の一部の欠損
- 鼻軟骨部の一部または鼻翼の欠損

後遺障害認定に必要な2つの手続
後遺障害認定の手続きは、次の二つの方法があります。
- 被害者請求
- 事前認定
それぞれ説明します。
(1)被害者請求
被害者自身が、病院からケガについての画像等(レントゲン写真、CT、MRI等)や、医師記載の後遺障害診断書を、加害者が加入している自賠責保険会社に提出する方法です。
流れとしては、次のようになります。

(2)事前認定
加害者の任意保険会社に後遺障害診断書を提出し、認定の手続きを依頼する方法です。
流れとしては、次のようになります。

事前認定と被害者請求の違いをまとめると次のようになります。

事前認定は被害者の負担が少ない一方で、被害者自身が提出する資料を選べないため、後遺障害等級認定が不利にすすんでしまう可能性があります。
後遺障害等級認定を有利に進めたい方は、「被害者請求」がおすすめです。
被害者請求に必要な書類や手順を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
後遺障害7級12号の後遺障害慰謝料の相場
次に、後遺障害慰謝料の相場についてご説明します。
後遺障害等級7級の慰謝料及び賠償金には、「自賠責の基準」、「任意保険の基準」、「弁護士の基準」の3つの基準があります。
3つの基準のうち、どれを採用するかによって、請求できる金額が大きく変わってきます。
3つの基準の具体的な内容は次のとおりです。
算定基準 | 基準の内容 |
---|---|
自賠責の基準 | 自賠責保険が慰謝料の算定に使用している基準 |
任意保険の基準 | 任意保険会社が慰謝料の算定に使用している基準 |
弁護士の基準 | 過去の交通事故の裁判例を基にして作成された、弁護士が使用している慰謝料の算定基準 |
例えば、後遺障害7級12号の後遺障害慰謝料(目安)は次のようになります。

後遺障害7級12号の後遺障害慰謝料(目安)は、「自賠責の基準」では419万円である一方で、「弁護士の基準」では、1000万円となります。
後遺症が重篤な後遺障害等級7級12号の場合には、特に「自賠責の基準」、「任意保険の基準」と「弁護士の基準」で慰謝料や賠償金の総額に大きな差がつきますので、「弁護士の基準」を使用することをおすすめします。
弁護士の基準を使うには弁護士への依頼することがおすすめです。
被害者本人が加害者側の保険会社と示談交渉すると、加害者側の保険会社は自賠責の基準や任意保険の基準による低い慰謝料額を提示してくるのが通常です。これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉を行う場合は、基本的に最も高額となる弁護士の基準に近い金額での示談が期待できます。
後遺障害7級12号における逸失利益
次に逸失利益について説明します。
「逸失利益」とは、後遺症が残った被害者の方が、後遺症があるために仕事に行くことができず、将来にわたって得られるはずであった利益のことをいいます。
逸失利益の計算方法などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
(1)顔の傷あとは逸失利益が認められない!?
交通事故で顔に傷あとが残りました。ところが、加害者側の保険会社から「身体は動かすことができるために、労働能力の喪失がありませんので、逸失利益は認められません」と言われました。加害者側の保険会社が言っていることは本当でしょうか?
保険会社の言葉を鵜呑みにしてはいけません。顔の傷あとについても逸失利益が認められた裁判例は多数存在します。
確かに、顔の傷あとが残ったケースでは、逸失利益が認められにくいことは否定できませんが、逸失利益が認められるケースも多数存在します。保険会社からの話をそのまま信じてしまうと、本来もらえたはずの逸失利益が永久にもらえなくなってしまうおそれがあります。
保険会社の話を鵜呑みにする前に、一度弁護士へ相談されることをおすすめします。
(2)逸失利益に関する裁判例
後遺障害7級12号にあたる顔の傷あとについても労働能力の喪失が認められ、逸失利益も賠償金に含むと判断した裁判例について、いくつか紹介します。
裁判の日付 | 結論 | 判断のポイント |
---|---|---|
東京地裁判決平成23年3月29日 | 外貌醜状による労働能力の喪失が認められる。 | ・職業生活において不可欠なコミュニケーションの上で外貌が果たす役割も無視できないことを考えると、外貌醜状が労働能力に影響を与えることは否定できない。 ・営業担当社員として稼働していた被害者が、現在は、不動産管理会社へ転職を余儀なくされている。 |
東京地裁判決平成22年8月31日 | 外貌醜状による労働能力の喪失が認められる。 | ・醜状の形状・程度・部位に鑑みて、本件事故の被害者の外貌醜状の程度は著しい。 ・被害者は飲食店を経営しており、接客もあることからすれば、業務の遂行に与える影響も大きい。 |
大阪地裁判決平成20年10月28日 | 外貌醜状による労働能力の喪失が認められる。 | ・判決時点において26歳(症状固定時25歳)の女性であり、原告の外貌および足に残る傷あとなどに鑑みれば、その大きさや他人に見られたくないという思いから生じる精神的負担や仕事に対する萎縮効果についてはこれを過少に評価することはできない。 ・被害者が未婚女性であることも考慮すると、被害者に残る醜状は、労働能力に影響しているというべき。 |
後遺障害7級12号の賠償金請求を弁護士に依頼する4つのメリット
後遺障害等級の賠償金請求を弁護士に依頼するメリットとしては、次の点が挙げられます。
- 被害者請求で行う場合、弁護士に依頼すれば、弁護士が、本人の代わりに後遺障害認定を目指して必要な書類を作成・選定することができる(その結果、後遺障害認定される可能性を高めることができる)
- 慰謝料や賠償金の基準について、基本的に一番高額な「弁護士の基準」を適用される可能性
- 加害者側保険会社のいいなりになって、貰えるはずの賠償金が貰えなくなること防ぐことができる
- 加害者側保険会社との面倒な交渉について弁護士に丸投げし、治療に専念できる
もっとも、弁護士に依頼するとなると、弁護士費用もかかってしまいます。しかし、あなたが加入する自動車保険に弁護士特約が入っていれば、弁護士費用は保険会社が負担することとなります(保険会社が負担する金額には限度額あり)。そのため、基本的に、あなたには経済的負担がかかる心配はありません。
【まとめ】後遺障害7級12号は顔に鶏卵以上の大きな傷あとが残った場合|逸失利益が認められた裁判例も
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 後遺障害7級12号が認定される場合
- 頭部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 頭蓋骨に手のひらの大きさ以上の欠損
- 顔面にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 顔面に10円玉の大きさ以上の組織陥没
- 頸部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 耳介軟骨部の2分の1以上の欠損
- 鼻軟骨部の全部または大部分の欠損
- 後遺障害認定に向けた手続きには「被害者請求」と「事前認定」の2つの方法がある。後遺障害等級認定を有利に進めたい方は、「被害者請求」がおすすめ。
- 後遺障害7級12号の後遺障害慰謝料(目安)は、「自賠責の基準」では419万円である一方で、「弁護士の基準」では、1000万円。
- 顔の傷あとについては、逸失利益が認められにくいことは否定できないが、逸失利益が認められた裁判例は多数存在。
後遺障害等級認定の手続を被害者請求で行う場合、書類の作成や選定が必要なので手間と時間がかかりますが、弁護士に依頼すれば、その負担を軽減することができます(その結果、後遺障害認定される可能性を高めることができます)。
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
アディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです(上限を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へお尋ねください)。
(以上につき、2022年2月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
