交通事故でケガを負い、縫うほどの傷を負ってしまったら、その治療や通院には時間もお金もかかります。さらに、傷跡が残ってしまったら、心にも大きな負担がかかるでしょう。
しかし、このようなケガを負った場合、加害者に対して治療費だけでなく、精神的な苦痛に対する慰謝料や、仕事を休んだ分の収入など、さまざまな賠償金を請求できる可能性があります。
この記事では、縫うほどのケガを負った場合に請求できる賠償金の種類から、傷跡が残ってしまった場合に受け取れる可能性のある「後遺症慰謝料」について、その相場や請求のポイントまで詳しく解説します。ぜひ、最後まで読んで適切な賠償を受け取るための参考にしてください。
ここを押さえればOK!
適切な額の賠償金を受け取るためには、次の3つに気を付ける必要があります。
・医師の指示にしたがいきちんと通院を続ける
・3つの賠償基準のうち通常最も高額になりやすい「弁護士基準」を利用する
・後遺障害等級の認定の申請には手間がかかるものの、「被害者請求」を行う
交通事故の被害に遭い、通院や後遺障害等級、保険会社との交渉でお悩みの方は、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。
弁護士による交通事故被害の無料相談はアディーレへ!
費用倒れの不安を解消!「損はさせない保証」あり
ご相談・ご依頼は、安心の全国対応。国内65拠点以上(※1)
自宅でらくらく「おうち相談」
「ケガの治療中で相談に行くのが難しい」
アディーレならお電話・スマホでいつでも・どこからでも気軽に無料相談!
縫うほどのケガを負ったら賠償金を請求できる
交通事故でケガを負った被害者は、加害者に対してケガの治療費のような実際にかかった費用のほかに、慰謝料や事故にあったことで働けなくなった分の収入など賠償金を請求できます(民法第709条)。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:民法第709条
縫うほどのケガを負ったら、請求できる賠償金の内訳とは?
交通事故によってケガを負い、傷口を縫う治療を受けた被害者は、加害者に対して次のような損害賠償を請求できます。
- 入通院が必要となったことへの慰謝料
- 実際にかかった治療費や通院交通費など
- 治療のため働けなかった分の損害
それぞれ説明します。
(1)入通院が必要となったことへの慰謝料
交通事故の被害者は、ケガを負って入通院が必要になったことによる精神的苦痛について、加害者に対して慰謝料を請求できます。これを入通院慰謝料(傷害慰謝料)といいます。
交通事故の入通院慰謝料には3つの算定基準がある
交通事故の入通院慰謝料を算定する基準には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあります。
| 慰謝料算定基準 | 概要 |
|---|---|
| 自賠責の基準 | 自賠責の基準は、自動車保有者が加入を義務付けられている「自賠責保険」で採用されている基準です。自賠責の基準は被害者への最低限の補償を目的として設けられているので、慰謝料の基準額は基本的に3つの算定基準のうち最も低くなります。 |
| 任意保険の基準 | 任意保険の基準は、各保険会社が独自に設定している非公開の算定基準です。 加害者側の任意保険会社は、通常は任意保険の基準をもとにして慰謝料を提示してきます。基準額は、自賠責の基準と同程度か、やや高い程度であると推測されます。 |
| 弁護士の基準 | 弁護士の基準は、過去の裁判例をもとに設定された基準です。弁護士に示談交渉を依頼した場合などに使われる算定基準です。弁護士の基準による慰謝料金額(目安)は3つの算定基準のうちでは基本的に最も高額となります。 |
では、入通院慰謝料の目安額を自賠責基準と弁護士基準を比較してみましょう。例えば、交通事故で10針縫う切り傷を負い、1ヶ月通院治療(実通院日数は10日間)の場合の入通院慰謝料を比較してみます。
この場合の入通院慰謝料の金額(目安)は、自賠責の基準では8万6000円、弁護士の基準では28万円(別表Ⅰ)となります。どの基準を使うかで約20万円も変わってくるのです。
あなたが受け取れる慰謝料額(弁護士の基準)を計算してみませんか?
慰謝料計算機では、本来受け取れるはずのおおよその慰謝料金額(弁護士の基準)を知ることができます。
「保険会社から慰謝料を提示されたけれど、本当にこれで示談していいのだろうか?」といった疑問をお持ちであれば、まずは慰謝料計算機を使ってみていただければと思います。
軽症の場合の慰謝料計算
死亡の場合の慰謝料計算
(2)実際にかかった治療費や通院交通費など
通院時にかかった治療費や交通費など、実際にかかった実費を請求できます。
- 治療費
- 通院交通費(公共交通機関の料金のほか、自家用車のガソリン代など)
- 入院雑費(入院中の日用品の購入費など)
請求できるかどうか判断が難しいものもあるので、加害者側との示談が成立するまでは、入通院に関するあらゆる領収書を保管しておくことをおすすめします。
(3)治療のため働けず得られなかった収入
交通事故でケガを負ったことにより働けない日が発生し、本来なら得られるはずだった収入を得られなくなった場合、その分を損害として加害者に請求できます。これを「休業損害」といいます。
休業損害の額は、事故直前の給与額などから算定します。
専業主婦などの家事従事者が事故にあい、家事ができなくなった場合にも休業損害の賠償請求が可能です。
縫った傷あとが大きく残ってしまった場合は、どうなる?
交通事故によるケガで傷口を縫う治療を受けた後、その傷跡が人目に付く部分に大きく残ってしまうことがあります。
この場合、傷あとにつき後遺障害として認定を受けることで、これまで説明した賠償金に加えて、後遺症が残ったことについての賠償金を請求できる可能性があります。
(1)後遺障害とは
「後遺障害」とは、所定の機関(損害保険料率算出機構など)の審査により後遺障害と認定されたものをいいます。
後遺障害は1~14級(および要介護1級・2級)の等級に分かれており、1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。各等級で障害の認定基準が定められています。
(2)後遺障害認定を受けるための2つの方法
後遺障害の認定を受けるための方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。
- 事前認定:加害者側の任意保険会社に申請を依頼する方法
- 被害者請求:被害者自身が全ての手続きを行う方法

被害者請求は、全ての手続きを自分でしなければならないため手間はかかりますが、必要な資料を被害者自身がチェックできるため、適切な等級が認定される可能性が高くなります。
(3)縫った傷あとにより認定される可能性がある後遺障害等級
ここで、縫った傷あとにより認定される可能性のある後遺障害等級について、顔や頭・首に傷あとが残った場合と腕や足に残った場合で分けて説明します。
(3-1)顔・頭・首に傷あとが残った場合
顔面部や頭部、頸部(首)に傷跡が残った場合、後遺障害7級・9級・12級が認定される可能性があります。
| 等級 | 部位 | 認定基準 |
|---|---|---|
| 7級12号 「外貌に著しい醜状を残すもの」 | 頭部 | 頭部に残った手のひら大(指の部分は含まない。以下同じ)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損 |
| 顔面部 | 鶏卵大面以上の瘢痕または10円玉大以上の組織陥没 | |
| 頸部 | 手のひら大以上の瘢痕 | |
| 9級16号 「外貌に相当程度の醜状を残すもの」 | 顔面部 | 長さ5cm以上の線状痕 |
| 12級14号 「外貌に醜状を残すもの」 | 頭部 | 頭部に残った鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損 |
| 顔面部 | 10円玉大以上の瘢痕または長さ3cm以上の線状痕 | |
| 頸部 | 鶏卵大面以上の瘢痕 |
【後遺障害7級12号 著しい醜状】

【後遺障害9級16号 相当程度の醜状】

【後遺障害12級14号 単なる醜状】

(3-2)腕や足に傷跡が残った場合
下肢(足)や上肢(腕)に傷跡が残った場合、後遺障害14級が認定される可能性があります(性別による差はありません)。
| 等級 | 部位 | 認定基準 |
|---|---|---|
| 14級4号 「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」 | 上肢 | 腕の露出面に手のひら大の醜いあと |
| 14級5号 「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」 | 下肢 | 足の露出面に手のひら大の醜いあと |
【後遺障害14級4号】

【後遺障害14級5号】

(4)縫った傷あとの後遺症慰謝料の相場(目安)とは?
傷あとによる後遺症慰謝料の目安について、自賠責の基準と弁護士の基準を比較すると次のようになります(2020年4月1日以降に起きた事故の場合)。
| 自賠責の基準 | 弁護士の基準 | |
|---|---|---|
| 7級12号 | 419万円 | 1000万円 |
| 9級16号 | 249万円 | 690万円 |
| 12級14号 | 94万円 | 290万円 |
| 14級4号・5号 | 32万円 | 110万円 |
この表のとおり、保険会社が提示する金額よりも弁護士の基準の方が高額になりやすい傾向にあります。つまり、弁護士の基準を使うことにより後遺症慰謝料の増額が期待できます。
弁護士の基準を利用した後遺症慰謝料を請求するためには、弁護士への依頼を検討ください。
被害者本人が加害者側の保険会社と示談交渉しても、加害者側の保険会社は自賠責の基準や任意保険の基準による低い慰謝料額から弁護士の基準の増額に応じてくれることはなかなかないでしょう。これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉や裁判を行う場合は、訴訟も辞さない態度で交渉を行うため、弁護士の基準もしくはそれに近い金額での示談が期待できます。
交通事故の賠償で適切な額を受け取るための3つのポイント
交通事故によって縫うほどのキズが残った場合、適切な賠償を受けるためにはこれまで説明を踏まえて、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 医師の指示にしたがいきちんと通院を続ける。
- 3つの賠償基準のうち通常最も高額になりやすい「弁護士基準」を利用することで賠償額を増額できる可能性がある。
- 後遺障害等級の認定の申請には手間がかかるものの、「被害者請求」がおすすめ。
加害者側の任意保険会社が示談交渉において提示する賠償金額に納得できない場合や後遺障害の認定についてアドバイスを受けたい場合には弁護士に相談するのがおすすめです。
【まとめ】縫うほどのケガを負い、さらに傷あとが残った場合には後遺症慰謝料も請求できる可能性あり
交通事故で縫うほどのケガを負った場合、治療費や通院交通費、仕事を休んだ分の休業損害、そして入通院による精神的苦痛に対する慰謝料などを加害者に請求できます。特に、慰謝料には複数の算定基準があり、どの基準を用いるかで金額は大きく変わります。
また、ケガの傷跡が残ってしまった場合は、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺症に対する慰謝料も請求できる可能性があります。適切な賠償金を受け取るためには、通常最も高額になりやすい「弁護士基準」を利用することや、後遺障害の申請方法として「被害者請求」を選択することが重要です。
加害者側の保険会社から提示された賠償金額に納得がいかない場合や、後遺障害の認定について不安がある場合は、弁護士に相談することを検討してみてください。
弁護士に依頼すれば、交渉のプロとしてあなたに代わり、より適切な賠償額の獲得を目指します。まずは一度、アディーレ法律事務所にご相談ください。






























