「お客様は神様」だからと、暴言や理不尽な要求を我慢していませんか?
しかし、それは単なるクレームではなく、法的に許されない「カスハラ」かもしれません。
2026年、労働施策総合推進法の改正により、企業のカスハラ防止対策が義務化されます。
この記事では、具体的なカスハラ事例や法改正のポイントを解説します。
ここを押さえればOK!
過度の暴言や人格否定発言は、脅迫罪や侮辱罪などの犯罪行為になり得ます。
そして、会社には従業員をカスハラから守る「安全配慮義務」があります。
しかし、2026年施行予定の法改正(防止措置の義務化)にもかかわらず、現場を放置する企業も少なくありません。
もし会社が対策を講じず、あなたが精神的な限界を感じているなら、無理をして働き続ける必要はありません。弁護士によるサポートを含め、自分の身を守るための正しい逃げ道を知っておきましょう。
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我慢しなくていい!「カスハラ」と「正当なクレーム」の境界線
まず、どのような場合であれば、カスハラといえるのでしょうか。
ポイントは、たとえこちらにミスや落ち度があったことは事実でも、悪質な行為が許されるようになるわけではないという点です。
(1)ただのクレームと「違法行為」の違い
厚生労働省では、カスタマーハラスメントを「要求内容の妥当性に欠けるもの」または「手段・態様が社会通念上不相当なもの」などとしています。
判断のポイントは、「主張が正しいか」だけでなく「やり方が常識の範囲内か」という点です。
ここが非常に重要ですが、仮に店側にミスがあり、お客様の主張自体は正しかったとしても、土下座を強要したり、大声で威嚇したりすれば、その時点で「正当なクレーム」の枠を超えた「違法行為(カスハラ)」になり得ます。
「お客様は神様」という言葉を盾にした攻撃は、クレームの範囲を逸脱しています。たとえミスがあったとしても、あなたが人格まで否定される理由はどこにもありません。
参考:ハラスメントの定義|厚生労働省
参考:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル|厚生労働省
(2)心身に不調をきたすなら、それはもう「被害」かも
「まだ頑張れる」「自分が弱いだけ」と無理をしていませんか?
法律上の定義も大切ですが、何より重要な基準は「あなたの心身の状態」です。もし、出勤前に動悸がする、夜眠れない、ふとした瞬間に涙が出るといった症状があるなら、それは体が発している危険信号です。
業務によって健康を損なうことがあってはなりません。
心身に不調をきたしている時点で、それはもう我慢すべき仕事の範囲を超えており、何らかの対処をすべきといえるでしょう。
【事例】あなたは当てはまる?よくあるカスハラ被害
あなたが顧客から受けている攻撃は、カスハラに当たるでしょうか?
よくある被害の内容を見てみましょう。
(1)暴言・人格否定(「辞めろ」「役立たず」等)
「殺す」「役立たず」「辞めろ」といった暴言は、商品への不満ではなく、あなた個人の尊厳を傷つける攻撃です。これらは刑法上の「侮辱罪」や「脅迫罪」に該当し得る、立派な犯罪行為です。
たとえ業務上のミスがあったとしても、客にあなたの人格まで否定する権利はありません。クレームや要望の範囲を逸脱した言葉の暴力は、決して我慢すべきことではなく、法的措置も検討できる許されざる行為です。
(2)執拗な連絡・居座り
断っているのに「上司を出せ」と何時間も居座る、毎日何十回も電話をかけてくる。こうした執拗な行為は、もはや正当なクレームの域を超えています。
法的には「業務妨害罪」や、退去要求に従わない場合の「不退去罪」に該当する可能性があります。
「お客様が納得するまで話さなければ」と自分を追い込む必要はありません。あなたの時間を不当に奪い、業務に支障を来たす行為には、警察への通報を含めた毅然とした対処を
するべきです。
(3)SNSでの晒し行為・ネット中傷
スマートフォンを向けられ「ネットに晒すぞ」と脅される、名札や顔写真を無断でSNSに投稿される。これらは現代型の極めて悪質なハラスメントです。
投稿内容によっては「名誉毀損罪」に当たりますし、民法上の不法行為である「プライバシー侵害」となる可能性もあります。
ネット上の誹謗中傷は、一度拡散されると消えにくい「デジタルタトゥー」としてあなたを苦しめます。
決して軽視せず、プロバイダ責任制限法に基づく削除請求や発信者情報開示といった法的措置を視野に入れてもよいでしょう。
ネット中傷の被害についてはこちらの記事をご覧ください。
カスハラの具体的な事例についてはこちらの記事もご覧ください。
本来、会社にはあなたを守る義務がある
カスハラ被害に遭ったとき、「うまく対応できなかった自分が悪い」と自分を責めていませんか?
お客様と直接対峙するのは現場の従業員ですが、その従業員を守る環境を整える責任は、会社にあります。
(1)会社が負う「安全配慮義務」とは
会社と従業員が結ぶ労働契約において、会社は「安全配慮義務(労働契約法第5条)」を負っています。これは、「労働者が生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする義務」のことです。
カスハラ対策において言えば、会社は単に商品を売るだけでなく、理不尽な攻撃から従業員を守る体制(相談窓口の設置、マニュアルの整備、複数名での対応など)を作ることが求められているといえるでしょう。
もし会社が「現場でなんとかしろ」とカスハラを放置し、その結果あなたが心身の不調に陥った場合、会社は「安全配慮義務違反(債務不履行)」として、責任を問われる可能性もあるのです。
(2)2026年施行予定「カスハラ防止義務化」の流れ
この「会社が従業員を守る責任」は、今後さらに厳格化されます。 政府は労働施策総合推進法等を改正し、2026年を目処に、企業に対してカスハラ防止対策を義務付ける方針を固めました(※)。
この流れを受けてすでに、多くの企業はマニュアル作成や研修等の準備を進めています。
もしあなたの職場が、法改正が迫る現在になっても「我慢しろ」の一点張りであれば、それは時代の流れに逆行する「従業員を使い捨てにする企業」だと言わざるを得ません。
自分の身を守るために、今の会社で働き続けるべきか、冷静に見極めるべきでしょう。
※執筆時点での情報です。今後の国会審議等により時期や内容が変更となる可能性があります。
参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の概要|厚生労働省
会社が守ってくれない時に取るべきアクション
会社に相談しても「うまくあしらえ」「我慢しろ」と突き放されてしまった場合、あなたは孤立無援の状態で戦わなければなりません。
しかし、そこで諦めて泣き寝入りする必要はありません。会社が動かないのであれば、自分自身の身を守るために、具体的なアクションを起こしましょう。
(1)証拠を残す(録音・メール・メモ)
法的な判断をする際、強力な武器になるのが「客観的な証拠」です。
カスハラ行為の録音・録画はもちろん、メールやチャットの履歴は消さずに保存してください。
また、重要なのが「会社に相談したが、対応してくれなかった記録」です。
「〇月〇日、上司に相談したが却下された」といった業務日報やメモ、送信メールの控えを残してください。
これらは後々、会社側の「安全配慮義務違反」を主張し、労災申請や損害賠償請求を行う際の証拠となり得ます。
(2)これ以上耐えられないなら「退職」も正当な権利
証拠を集める気力すらない、明日会社に行くことを考えると吐き気がする。そこまで追い詰められているなら、「退職」を選ぶことは決して逃げではありません。
民法などの法律上、労働者には退職の自由が保障されています。
民法では退職の申し入れをしてから2週間後に退職できるとされますが(民法第627条)、カスハラ被害で心身に支障をきたしているような場合は「やむを得ない事由(民法第628条)」として、直ちに退職できる可能性があります。
「人手不足だから」「後任がいない」といった会社の都合で、あなたの人生を犠牲にする必要はありません。心身が壊れる前に環境を変えることは、あなたが持つ正当な権利です。
辞めさせてもらえない・言い出せない方へ
「辞めたいと言ったら怒鳴られる」「人手不足を理由に拒否された」。
そんな状況であれば、無理に一人で戦う必要はありません。自分を守るために、専門家である弁護士を頼ってください。
弁護士に退職代行を依頼すれば、退職の連絡から手続きまで代行するため、あなたが上司と顔を合わせたり、電話で話したりする必要はなくなります。
さらに、弁護士なら「ただ辞める」だけでなく、未消化の有給休暇の交渉や、未払いになっている残業代の請求、労災申請のサポートも可能です。
会社側の理不尽な引き留めを断ち切り、新しい人生の一歩を踏み出しましょう。
【まとめ】
カスハラの被害に遭いながら、会社にも守ってもらえない状況は、あなたの責任ではありません。
心身が壊れてしまう前に、場合によってはその環境から離れることも選択肢の一つです。
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