相続が発生した際、誰がどのように遺産を相続するのかは、多くの人にとって大きな関心事です。
実際、親や配偶者が亡くなったときに、残された家族がどのように遺産を分け合うのか、具体的な手続きやルールを知っておくことは、予期せぬトラブルを防ぐために非常に重要です。
このコラムでは、相続に関する基本的な知識から具体的な例まで、くわしく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 誰が相続人となって、法定相続分はどれくらいになるのか
- 相続人が死んでいた場合には、その子が代襲相続をする
- 遺産分割協議では相続順位の変更はできないが、相続分の変更はできる
- 遺言があれば、その内容を優先する(相続順位や法定相続分よりも優先する)
ここを押さえればOK!
配偶者は常に法定相続人であり、相続順位はありません。子供は第1順位、親は第2順位、兄弟姉妹は第3順位です。
配偶者がいる場合、法定相続分は次の通りです。
配偶者と子供がいる場合、配偶者が1/2、子供が残りの1/2を分け合います。
配偶者と親がいる場合、配偶者が2/3、親が残りの1/3を分け合います。
配偶者と兄弟姉妹がいる場合、配偶者が3/4、兄弟姉妹が残りの1/4を分け合います。
遺産分割協議では相続順位は変えられませんが、法定相続分は相続人全員の合意があれば変更可能です。また、遺言がある場合、その内容が法定相続順位や法定相続分よりも優先されますが、遺留分は保護されます。
アディーレ法律事務所
同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属
相続順位とは
相続順位とは、相続が発生した際に誰が相続権を持つかを決める優先順位のことです。
先順位の人が1人でもいる場合、後順位の人は相続人にはなれません。
例えば、亡くなった人(被相続人)に子どもがいる場合には、亡くなった人(被相続人)の親や兄弟姉妹は相続人になることはできません。
相続順位を理解しておくと、誰が相続人になるか、そして遺産をどのように分割するかがわかるようになります。
法定相続人とは
法定相続人は、亡くなった人(被相続人)の財産を相続する権利を持つ人々のことです。
そして法定相続人になるのは、基本的に配偶者、子供、親、兄弟姉妹などです。
一方、法定相続人がいない場合、遺産は最終的に国庫に帰属することになります。
(1)配偶者の相続順位
亡くなった人(被相続人)に配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人となります。
配偶者は常に法定相続人になるため、相続順位はありません。
(2)子どもの相続順位
亡くなった人(被相続人)の子どもは、第1順位の法定相続人です。
例えば、亡くなった人(被相続人)の配偶者がいれば、配偶者とともに相続します。
亡くなった人(被相続人)に配偶者がいない場合(死亡、離婚など)には、全遺産を子どもで分け合うことになります。
一方、亡くなった人(被相続人)に子供がいない場合でも、亡くなった時点で妊娠中の妻がいる場合には胎児も相続権を持ち、生まれた後に正式な相続人となります(死産の場合には相続人にはなれません)。
(3)親の相続順位
亡くなった人(被相続人)の親は、第2順位の法定相続人です。
亡くなった人(被相続人)に子どもがいない場合、相続権を持つことになります。
例えば、亡くなった人(被相続人)の配偶者がいれば、配偶者とともに相続します。
亡くなった人(被相続人)に配偶者も子どももいない場合、全遺産を親で分け合うことになります。
一方、亡くなった人(被相続人)の親がいない場合でも、祖父母が生きていれば、祖父母が第2順位の法定相続人となります。
(4)兄弟姉妹の相続順位
亡くなった人(被相続人)の兄弟姉妹は、第3順位の法定相続人です。
亡くなった人(被相続人)に子どもも親(祖父母)もいない場合、相続権を持つことになります。
例えば、亡くなった人(被相続人)に配偶者がいれば、配偶者とともに相続します。
亡くなった人(被相続人)に配偶者や子ども、親もいない場合、全遺産を兄弟姉妹で分け合うことになります。
法定相続分とは
法定相続分とは、法律で定められた各相続人が受け取る遺産の割合のことです。
ここでは、配偶者がいる場合といない場合の法定相続分について解説します。
(1)配偶者がいる場合の法定相続分
亡くなった人(被相続人)の配偶者は常に法定相続人となり、他の相続人とともに遺産を相続します。
- 配偶者と子どもがいる場合: 配偶者が1/2、子どもが残りの1/2を分け合います。
- 配偶者と親がいる場合: 配偶者が2/3、親が残りの1/3を分け合います。
- 配偶者と兄弟姉妹がいる場合: 配偶者が3/4、兄弟姉妹が残りの1/4を分け合います。
(2)配偶者がいない場合の法定相続分
亡くなった人(被相続人)に配偶者がいない場合、遺産は法定相続人である子ども、親、兄弟姉妹が相続します。
- 子どもがいる場合: 全遺産を子どもが均等に分け合います。
- 子どもがいない場合: 親が遺産を均等に分け合います。
- 子どもも親もいない場合: 兄弟姉妹が遺産を均等に分け合います。
代襲相続とは
代襲相続とは、本来相続人であった人が相続発生前に死亡するなど相続権を失った場合、その子供が相続権を引き継ぐことです(相続放棄の場合は、代襲相続しません)。
例えば、亡くなった人(被相続人)の子供がすでに亡くなっている場合、その子どもの子(亡くなった人から見て孫)が代襲相続人となります。
また、亡くなった人(被相続人)の兄弟姉妹が相続人となっていて、その兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合も、その兄弟姉妹の子ども(亡くなった人から見て甥や姪)が代襲相続人となります。
相続順位と法定相続分の具体例
ここでは、一般的な家族構成と複雑な家族構成の例として、具体的に相続順位と法定相続分がどうなるのかを見ていきましょう。
(1)一般的な家族構成の場合(配偶者がいる場合)
まず、亡くなった人(被相続人)に配偶者がいる場合を見ていきましょう。
【配偶者と2人の子どもがいる場合】
- 配偶者の相続分:1/2
- 子どもの相続分:残り1/2を均等に分ける
具体例:1000万円の遺産がある場合、配偶者が500万円、子ども2人がそれぞれ250万円ずつ相続します。
【配偶者と両親がいる場合】
- 配偶者の相続分:2/3
- 両親の相続分:残り1/3を均等に分ける
具体例: 900万円の遺産がある場合、配偶者が600万円、両親がそれぞれ150万円ずつ相続します。
【配偶者と兄弟姉妹がいる場合】
- 配偶者の相続分:3/4
- 兄弟姉妹の相続分:残り1/4を均等に分ける
具体例: 800万円の遺産がある場合、配偶者が600万円、兄弟2人がそれぞれ100万円ずつ相続します。
(2)複雑な家族構成の場合(再婚している・養子、内縁の妻がいる場合)
次に、亡くなった人が再婚した場合や養子、内縁の妻がいる場合を見ていきましょう。
【再婚しており、前妻の子供がいる場合】
- 現在の配偶者の相続分:1/2
- 前妻の子供と現在の子供の相続分:残りの1/2を均等に分ける(前妻は相続人にはなれません)
具体例: 1200万円の遺産がある場合、配偶者が600万円、前妻の子供1人と現在の子供1人がそれぞれ300万円ずつ相続します。
【養子がいる場合(養子は実子と同じ相続権を持つ)】
配偶者、実子1人、養子1人がいる場合、配偶者が1/2、実子と養子が1/2を均等に分ける
具体例: 1600万円の遺産がある場合、配偶者が800万円、実子と養子がそれぞれ400万円ずつ相続します。
【内縁の妻とその子がいる場合(内縁の妻には法定相続権なし。子供が認知されていれば子供に相続権あり。)】
配偶者、認知された子供2人がいる場合、子供が均等に分ける
具体例: 1000万円の遺産がある場合、子供がそれぞれ500万円ずつ相続します。
遺産分割協議とは
遺産分割協議は、相続人が集まって遺産の分け方を話し合う重要な手続きです。
ここでは、遺産分割協議で決められることについて解説します。
(1)相続順位は変えられない
法定相続順位は法律で厳格に定められており、遺産分割協議で変更することはできません。
(2)法定相続分は変更できる
法定相続分は遺産分割協議で変更することが可能です。
法定相続分とは、法律で定められた各相続人が受け取る遺産の割合ですが、相続人全員の合意があれば変更できます。
例えば、母親と二人の子どもが法定相続人の場合であっても、全員が合意すれば、母親がすべての遺産を相続することも可能です。
このように、遺産分割協議で法定相続分を変更することにより、相続人全員の意向を反映させることができます。
寄与分と特別受益とは
寄与分や特別受益は、相続人間の公平を図るために存在する制度です。
ここでは、寄与分と特別受益の基本とその修正方法について解説します。
(1)寄与分とは
寄与分とは、相続人の中で被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した人が受け取る追加の相続分のことです。
【寄与分の要件】
- 財産の増加や維持に特別な貢献があったこと
- 貢献の程度が具体的に証明できること
【具体例】
- 亡くなった人(被相続人)の事業をともに行っていた場合
- 長期間にわたり亡くなった人(被相続人)の介護を行った場合
例えば、亡くなった人に対して無償で看護を行い、亡くなった人の財産の維持や増加に貢献した場合、その相続人は寄与分を認められる可能性があります(看護がなければ看護施設に預け、看護施設に払うお金が発生していた)。
(2)特別受益とは
特別受益とは、相続人の中で被相続人から生前に特別な利益(贈与)を受けた人のことを指します。特別受益がある場合には、特別受益を受けた者が受けとるべきたった相続分から特別受益を引いた分がその者の相続分となります。
【特別受益の要件】
- 生前贈与や結婚資金、学費などが対象
- その価値が相続財産に対して特別に大きいこと
【具体例】
- 被相続人から自宅の購入資金として多額の贈与を受けた場合
- 結婚時に高額な持参金をもらった場合
具体例として、被相続人から子供の一人が住宅購入資金として1,000万円の贈与を受けた場合、その1,000万円は特別受益として相続財産に加算され、他の相続人との公平を図ります。
遺言がある場合の相続順位とは
遺言がある場合はその遺言書の内容が法定相続順位に優先されます。
遺言書は、亡くなった人(被相続人)の意思を明確に反映させるための重要な文書です。
亡くなった人(被相続人)の意思を尊重し、遺言書で法定相続人や相続分を変更することができます。
例えば、被相続人が遺言書で「友人A(仮名)に遺産の1/4を渡す」と指定した場合、その友人A(仮名)は法定相続人でなくても遺産を受け取ることができます。
ただし、遺言書がある場合でも、遺留分(法定相続人が最低限受け取るべき遺産の割合)は保護されます。
【まとめ】相続順位とは誰が相続権を持つかを決める優先順位のこと
相続が発生した際には、法定相続人や相続順位、法定相続分を正確に理解することが重要です。これにより、遺産分割がスムーズに進み、相続トラブルを防ぐことができます。
また、遺言書の作成や寄与分・特別受益の考慮により、公平な遺産分配が可能です。
相続問題でお困りの場合や詳細な手続きを知りたい方は、ぜひ相続問題を扱う弁護士に相談してみてください。早めの対応が、家族間の争いを未然に防ぐ最善の策です。
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すなわち、アディーレ法律事務所では、弁護士にご依頼いただいたにもかかわらず、結果として一定の成果を得られなかった場合、原則としてお客さまの経済的利益を超える費用はご負担いただいておりません。
なお、ご依頼いただく内容によって、損はさせない保証の内容は異なりますので詳細はお気軽にお問い合わせください(以上につき2024年11月時点)。
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