顔に大きな傷あとが残ってしまった場合、精神的ショックを大きく、また、普段の職業などにも影響を与える場合もあります。
そのため、顔の大きな傷あとについては、重篤な後遺症であるとして後遺障害7級12号が認定されることになります。
7級12号に認定された場合、被害者は加害者に対して、顔の傷あとにつき、後遺症慰謝料などの賠償金を請求することができます。
この記事では、
- 後遺障害等級とは
- 後遺障害7級12号の具体的な症状・判断方法
- 後遺障害7級12号の他の等級との違いとは
- 後遺障害7級12号の慰謝料の相場
- 後遺障害7級12号の逸失利益とその注意点
- 後遺障害7級12号の賠償金請求を弁護士に依頼するメリット
について弁護士が詳しく解説します。
岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
後遺障害等級とは?
後遺障害等級とは、後遺障害の慰謝料や賠償金の算定の目安となるものです。
後遺障害の内容に応じて、重いものから順に1~14級が認定されます。
顔のキズや後遺症について慰謝料や賠償金を受け取るためには、後遺障害等級の認定を受けることが必須となります。
後遺障害7級12号の具体的な症状とは?
後遺障害7級12号とは、「外貌に著しい醜状を残すもの」をいいます。
つまり、交通事故により、外貌(=見た目)に大きな傷あとが残ってしまったことをいいます。
見た目に傷あとが残ってしまった場合に、一番重い等級が7級12号になります。
(1)後遺障害7級12号の症状・判断方法
外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。
- 頭部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 頭蓋骨に手のひらの大きさ以上の欠損
- 顔面にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 顔面に10円玉の大きさ以上の組織陥没
- 頸部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 耳介軟骨部の2分の1以上の欠損
- 鼻軟骨部の全部または大部分の欠損
2個以上の傷あとが近くにあって、それらの傷あとがまとめて1個の傷あとに見えてしまうような場合は、1個の傷あととして等級を認定することになります。
※昔は、外貌の傷あとについては、女性より男性の方が後遺障害等級が低いとされていました。
かつて7級12号は、「女子の外貌に著しい醜状を残すもの」と定められており、7級の後遺障害等級は女性にしか後遺障害が認められていませんでした(なお、男性の外貌に著しい醜状を残した場合は12級とされていました)。
しかし、男性であっても、女性と同様に外貌に傷あとが残ったことによってショックを受けることには変わりません。そこで、2010年6月10日以降に発生した事故からは男女の差なく、外貌に対する後遺障害が認められるようになりました。
「外貌に醜状を残す」他等級との違い
「外貌に醜状を残す」他の等級は次のとおりです、
等級 | 後遺障害の認定要件 |
---|---|
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
さらに、外貌(頭・顔・首)ではないもの、腕や足の露出面に傷あとが残った場合の後遺障害等級は次のとおりです。
等級 | 後遺障害の認定要件 |
---|---|
14級4号 | 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの |
14級5号 | 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いものを残すもの |
(1)9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とは、原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状の傷あとで、人の目につく程度以上のものをいいます。
(2)12級14号 外貌に醜状を残すもの
「外貌に醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。
- 頭部にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 頭蓋骨にニワトリの卵の大きさ以上の欠損
- 顔面に10円玉の大きさ以上の傷あと
- 顔面に長さ3センチメートル以上の線状の傷あと
- 頸部にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 顔面麻痺による口のゆがみ
- 耳介軟骨部の一部の欠損
- 鼻軟骨部の一部または鼻翼の欠損
なお、後遺障害認定の対象となるのは、人の目につく程度以上のものであることが前提であるため、傷あとが眉毛、頭髪で隠れてしまう場合には、後遺障害認定を受けることができないことに注意が必要です。
(3)14級4号 上肢の露出面の手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
「上肢の露出面」とは、肩より下の腕の部分のことをいいます。
肩より下の腕の部分に手のひらの大きさほどの傷あとが残ってしまった場合には、14級4号にあたります。
(4)14級5号 下肢の露出面の手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
「下肢の露出面」とは、股関節より下の部分のことをいいます。
股関節より下の部分に手のひらの大きさほどの傷あとが残ってしまった場合には、14級5号にあたります。
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後遺障害7級12号の後遺症慰謝料の相場
後遺障害等級7級の慰謝料及び賠償金には、「自賠責の基準」、「任意保険の基準」、「弁護士の基準」の3つの基準があります。
例えば、後遺障害7級の後遺症慰謝料は次のようになります。
自賠責の基準 | 419万円(2020年4月1日以降の事故に適用) 409万円(2020年3月31日までの事故に適用) |
任意保険の基準 | 原則、自賠責の基準と同等か少し上乗せした程度 (非公開) |
弁護士の基準 | 1000万円 |
ここでいう「自賠責の基準」、「任意保険の基準」、「弁護士の基準」とは、
自賠責の基準:自賠責保険が慰謝料や賠償金の算定に使用している基準
弁護士の基準:過去の交通事故の裁判例を基にして作成された、弁護士が使用している慰謝料や賠償金の算定基準
任意保険の基準:任意保険会社が慰謝料や賠償金の算定に使用している基準
のことをいいます。
もっとも、上記図からもわかるように慰謝料や賠償金の金額は、一般的に「自賠責の基準」、「任意保険の基準」<「弁護士の基準」となります。
「弁護士の基準」を使用するためには、弁護士に交渉を依頼する必要があります。個人では、保険会社が「弁護士の基準」に応じてくれることはほとんどありません。
しかし、今回のように後遺症が重篤な後遺障害等級7級12号の場合には、特に「自賠責の基準」、「任意保険の基準」と「弁護士の基準」で慰謝料や賠償金の総額に大きな差がつきますので、慰謝料や賠償金の交渉を弁護士に依頼することをおすすめします。
後遺障害7級12号における逸失利益
後遺症が残った被害者の方が、後遺症があるために仕事に行くことができず、将来にわたって得られるはずであった利益のことをいいます。
顔の傷あとについても職業を続けることができない、また、希望する職業への就職が断たれてしまったということもあるため、顔の傷あとについても逸失利益が認められます。
(1)逸失利益の計算方法
一人一人、将来実際にどれくらいの収入を失うのかを正確に計算することはできません。
将来のことであり、失う収入額については不確かであるからです。
そのため、後遺症による逸失利益は、基礎となる事故前の収入額(「基礎収入額」に、今後どの程度労働能力を失うのかという「労働能力喪失率」と「労働能力喪失期間」の中間利息控除のためのライプニッツ係数を掛けて計算します。
後遺症による逸失利益の計算方法は、次のようになります。
後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
ちなみに、後遺障害7級の労働能力喪失率は、56%であるとされています。
(2)後遺障害7級12号における逸失利益の注意点
顔に傷あとが残ってしまった場合、身体は動かすことができるために、加害者側保険会社の担当者から「顔の傷あとについては、労働能力の喪失がありませんので、逸失利益は認められません」などと言われることがあります。
労働能力の低下の程度については、労働能力喪失率表を参考とし、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体的にあてはめて評価するものと言われており、外貌醜状による労働に対する支障が、ほかの7級の後遺障害と比較して少ないケースが多いことは否定できません。
しかし、顔の傷あとについても逸失利益が認められた裁判例は多数存在します。中には、労働能力喪失表通りの56%の労働能力の喪失が認められたものも存在します。
保険会社からの話をそのまま信じて、損害項目に逸失利益が含まれていない免責証書にサインしてしまうと、本来もらえたはずの逸失利益が永久にもらえなくなってしまいます。
(3)逸失利益に関する裁判例
後遺障害7級12号にあたる顔の傷あとについても労働能力の喪失が認められ、逸失利益も賠償金に含むと判断した裁判例について、いくつか紹介します。
裁判の日付 | 結論 | 判断のポイント |
---|---|---|
東京地裁判決平成23年3月29日 | 外貌醜状による労働能力の喪失が認められる。 | ・ 職業生活において不可欠なコミュニケーションの上で外貌が果たす役割も無視できないことを考えると、外貌醜状が労働能力に影響を与えることは否定できない。 ・ 営業担当社員として稼働していた被害者が、現在は、不動産管理会社へ転職を余儀なくされている。 |
東京地裁判決平成22年8月31日 | 外貌醜状による労働能力の喪失が認められる。 | ・ 醜状の形状・程度・部位に鑑みて、本件事故の被害者の外貌醜状の程度は著しい。 ・ 被害者は飲食店を経営しており、接客もあることからすれば、業務の遂行に与える影響も大きい。 |
大阪地裁判決平成20年10月28日 | 外貌醜状による労働能力の喪失が認められる。 | ・
判決時点において26歳(症状固定時25歳)の女性であり、原告の外貌および足に残る傷あとなどに鑑みれば、その大きさや他人に見られたくないという思いから生じる精神的負担や仕事に対する萎縮効果についてはこれを過少に評価することはできない。 ・ 被害者が未婚女性であることも考慮すると、被害者に残る醜状は、労働能力に影響しているというべき。 |
逸失利益についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
後遺障害7級12号の賠償金請求を弁護士に依頼するメリット
後遺障害等級の賠償金請求を弁護士に依頼するメリットとしては、
- 慰謝料や賠償金の基準について一番高額な「弁護士の基準」を適用される
- 加害者側保険会社のいいなりになって、貰えるはずの賠償金が貰えなくなること防ぐことができる
- 加害者側保険会社との面倒な交渉について弁護士に丸投げし、治療に専念できる
という点が挙げられます。
もっとも、弁護士に依頼するとなると、弁護士費用もかかってしまいますが、あなたが加入する自動車保険に弁護士特約が入っていれば、弁護士費用は保険会社が負担することとなりますので、あなたには経済的負担がかかる心配はありません。
なお、弁護士費用特約は一定の親族が加入していれば、利用可能なことが通常です。
弁護士費用特約を利用しても、等級や保険料は変わりません。
【まとめ】後遺障害7級12号の賠償金請求はアディーレ法律事務所にご相談ください
後遺障害7級12号が認定される場合は、次のとおりです。
- 頭部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 頭蓋骨に手のひらの大きさ以上の欠損
- 顔面にニワトリの卵の大きさ以上の傷あと
- 顔面に10円玉の大きさ以上の組織陥没
- 頸部に手のひらの大きさ以上の傷あと
- 耳介軟骨部の2分の1以上の欠損
- 鼻軟骨部の全部または大部分の欠損
後遺障害7級12号の後遺症慰謝料は、「弁護士の基準」では、1000万円になりますが、「弁護士の基準」が適用されるためには、慰謝料や賠償金を弁護士に依頼する必要があります。
弁護士に任せるメリットとしては、さらに、
- 加害者側保険会社のいいなりになって、貰えるはずの賠償金が貰えなくなること防ぐことができる
- 加害者側保険会社との面倒な交渉について弁護士に丸投げし、治療に専念できる
ということも挙げられます。
なお、弁護士に依頼するとなると、弁護士費用もかかってしまいますが、あなたが加入する自動車保険に弁護士特約が入っていれば、弁護士費用は保険会社が負担することとなりますので、あなたには経済的負担がかかる心配はありません。
後遺障害7級12号の慰謝料や賠償金請求は、アディーレ法律事務所にご相談ください。