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工場型アスベスト訴訟とは?被害者が賠償金をもらえる救済制度を解説

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「昔、アスベスト工場で働いていて、そのせいで肺に病気を患ってしまった。国から賠償金を受け取ることができると聞いたんだが、本当だろうか?」

いわゆる工場型アスベスト(石綿)訴訟では、厚生労働省が和解要件を公表しています。
アスベスト工場での労働が原因で健康被害に遭われた元工場労働者またはそのご遺族は、所定の和解要件を満たし、国との和解を成立させた場合、最大1300万円の賠償金を受け取ることが可能です。

この記事では、

  • 工場型アスベスト訴訟の概要
  • 和解要件
  • 賠償金額

について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 大西 亜希子

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。東京弁護士会所属。

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アスベストの概要と健康被害

ここでは、アスベストについての基礎知識とその健康被害について解説します。

(1)アスベストの基礎知識

アスベストとは、繊維状鉱物の総称で、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト等に分類されます。
アスベストは、ほぐすと綿のようになり、その繊維は極めて細かく、耐熱性、耐久性、耐摩耗性、耐腐食性、絶縁性等の特性に優れています。このようなアスベストの特性はアスベスト以外の単一の天然鉱物や人工物質にはほとんどみられないことから、昔は、「奇跡の鉱物」と呼ばれることもありました。

アスベストは工業製品の原材料として優れた適格性を有していると考えられ、建材や、摩擦材、断熱材等の様々な工業製品の原材料に使用されていました。

参考:アスベスト(石綿)とは?|独立行政法人環境再生保全機構

(2)アスベストによる健康被害

アスベストの繊維は非常に細かいため、研磨機や切断機による作業や、吹き付け作業等を行う際に、所要の措置を行わないと容易に飛散、浮遊し、人体に吸引されやすいという性質を有しています。

そして、人体にいったん吸引されると、肺胞に沈着し、その一部は肺の組織内に長期間滞留することになります。この肺に長期間滞留したアスベストが要因となって、次のようなアスベスト関連疾患を引き起こすと考えられています。

  • 石綿肺
  • 肺がん(原発性肺がん)
  • 悪性中皮腫
  • びまん性胸膜肥厚
  • 良性石綿胸水

かつて、多くのアスベスト工場では、労働者への健康被害を防止するための適切な措置が長年採られておらず、その結果として、アスベスト工場の元労働者にアスベスト関連疾患が多発しました。

また、日本に輸入される多くのアスベストは、建材に使用されていました。その結果、アスベストが含まれている建材を用いて建設作業に従事した元建設作業員にも、アスベスト関連疾患が多発したとされています。

参考:(2)石綿が原因で発症する病気は?|厚生労働省

工場型アスベスト訴訟とは

国は、アスベストの危険性を把握して規制すべきだったと言えます。
工場型アスベスト訴訟とは、アスベスト関連疾患に罹患したアスベスト工場の元労働者等やそのご遺族が、国がアスベストを規制すべきだったのに規制しなかったのは違法だとして、その賠償を求める訴訟をいいます。
ここでは、工場型アスベスト訴訟の経緯や和解要件について解説します。

(1)工場型アスベスト訴訟の経緯

大阪泉南地域には、戦前戦後を通じて多数のアスベスト工場が存在していました。
泉南地域におけるアスベスト製品の製造等の工程では、大量のアスベスト粉じんが発生していましたが、アスベスト工場に従事する労働者が、粉じんを吸引してしまうことを防止するための適切な措置は採られていませんでした。
また、国もそのような状況を認識していましたが、工場側に適切な措置を義務付ける等の規制を施すこともしていなかったとされています。
その結果、労働者は、作業中に相当量のアスベスト粉じんを吸入してしまい、アスベスト関連疾患に罹患することになりました。

そこで、大阪泉南地域にあるアスベスト工場の元労働者やその遺族は、国に対して、適切な規制権限を行使するなどしなかったことを理由に、アスベスト関連疾患に罹患したことについてその賠償を求める訴訟を提起しました。
2014年10月9日、最高裁は、国の賠償責任を認める内容の国側敗訴の判決(以下、この判決を「泉南アスベスト訴訟判決」といいます)を出しました。

現在、この判決をもとに、同様の状況にあるアスベスト工場の元労働者及びそのご遺族については、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起し、所定の要件を満たすことが確認されれば、国と裁判上の和解をすることにより賠償金を受け取ることが可能となっています。

参考:アスベスト訴訟(工場労働者型)|法務省

(2)工場型アスベスト訴訟で和解するための要件

賠償金を受け取るためには、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起し、和解を成立させる必要があります。
工場型アスベスト訴訟における和解要件は次のとおりで、すべての要件を満たす必要があります。

  1. 1958年5月26日~1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。
  2. その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと。
  3. 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。

参考:石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々との和解手続について|厚生労働省

それぞれの要件について詳しく説明します。

(2-1)1958年5月26日~1971年4月28日までに局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内においてアスベスト粉じんばく露作業に従事したこと

大阪泉南判決では、1958年5月26日~1971年4月28日までの間について、国の責任が生じる期間とされました。

そのため、この期間内に局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内においてアスベスト粉じんばく露作業に従事したことが要件となります。
この要件を証明するための資料として、日本年金機構発行の被保険者記録照会回答書(当時の勤務先等が記載されている)などが必要とされています。そのために、実際の手続きでは、労働基準監督署が保管している調査内容や資料をまとめた調査復命書という書類を集めることから始めます。

(2-2)(2-1)の結果として、一定の健康被害を被ったこと

賠償の対象は、あくまでアスベスト工場内においてアスベスト粉じん暴露作業に従事したことによってアスベスト関連疾患に罹患した方です。ですから、その他の原因によって肺がんなどの病気を発症した方は対象外となります。

したがって、先ほどご説明した1.1958年5月26日~1971年4月28日までに局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内においてアスベスト粉じんばく露作業に従事した結果として、一定の健康被害を被ったことが要件となります。
ここでいう一定の健康被害とは、

  • アスベスト肺(石綿肺)
  • 肺がん
  • 中皮腫
  • びまん性胸膜肥厚

をいいます。

(2-3)提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること

アスベスト粉じんばく露作業に従事したことを理由として、国に対してその賠償を求める場合、消滅時効に注意が必要です。
消滅時効とは、一定期間行使されない権利を失効させ、法的安定性を維持する制度です。国家賠償法4条により、消滅時効について民法724条が準用されます。
損害賠償請求権の消滅時効は、次のいずれか早い方となります。

(A)被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間
(B)不法行為の時から20年間

ただし、民法724条の2により、「人の生命または身体を害する」不法行為に基づく損害賠償請求権の(A)の消滅時効は、「5年間」とされています(アスベスト訴訟の場合、「人の生命または身体を害する」不法行為に基づく損害賠償請求権となります)。改正民法施行日(2020年4月1日)の時点で、改正前民法の(A)の消滅時効(3年間)が完成していない場合には、改正民法の規定が適用され、(A)の消滅時効は「5年間」となるとされます。

民法の改正があり、消滅時効の期間が複雑となっていますが、次のように、(A)の消滅時効は、2017年3月31日以前に被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った場合には3年で、2017年4月1日以降に知った場合には5年となります。

被害者が「加害者を知った時」とは、具体的にどのような時ですか?
働いていたので、勤務先はずっと昔から知っているんですが。

被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれを知った時を意味すると裁判例上解釈されています(最高裁第二小法廷判決昭和48年11月16日)。つまり、単に加害者を知っているだけでは消滅時効は進行しません。

この点について、建設型アスベスト訴訟の裁判例があります。大阪高判平成30年8月31日判決は、労災認定を受けることができた時点において、「損害及び加害者を知った時」にはあたらないとして、労災認定を受けることができた時点から消滅時効が進行するとした被告側の主張を退けました。

アスベストが原因の疾患があり、最近より重い症状があることがわかりました。はじめの疾患が明らかになってから、もう20年を経過してしまったのですが、重い症状について賠償金は受け取れませんか?

アスベスト訴訟の場合、時効起算点は、症状が新たに見つかった時点を指すとされています。したがって、重い症状が明らかになった場合は、その時点から新たに時効期間が始まりますので、賠償金を請求することができます。

例えば、疾患について、後でお示しする表の「管理2」の区分を受けても、その後症状が重症化し、新たに「管理3」の区分を受けた場合には、新たな区分を受けた時点から時効期間を数えることになります。

また、神戸地裁平成30年2月14日判決は、大手タイヤメーカーに従事したことで石綿被害にあった元労働者等が同社を相手にその賠償を求めた事件ですが、被告側の消滅時効の主張について、「権利の濫用として許されない」として、時効主張を認めませんでした。
被害者らは、法律や医学についての専門的知識を持ち合わせていることは多くはないため、被害者らが、病気の原因が就労時のアスベストばく露によるものであり、国や企業に対してその責任を法的に追及することができるものだと早期に知ることは大変困難です。

そのため、上記の裁判例のようなかたちで、消滅時効をなるべく被害者に有利な方向で解釈するのが妥当であるといえるでしょう。

(3)工場型アスベスト訴訟で受け取れる賠償金額

厚生労働省が公表している賠償金(和解金)額は次のとおりです。

病態
賠償金額
石綿肺(じん肺管理区分の管理2)550万円(合併症がない場合)
700万円(合併症がある場合)
石綿肺(じん肺管理区分の管理3)800万円(合併症がない場合)
950万円(合併症がある場合)
石綿肺(じん肺管理区分の管理4)、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚
1150万円
上記疾病による死亡
症状に応じて
1200万~1300万円
※上記の表にある「じん肺管理区分」とは、じん肺健康診断の結果を基に、じん肺を区分したものです(じん肺法4条2項)。
じん肺とは、「粉じんを吸入することによって肺に生じた繊維増殖変化を主体とする疾病」(同法2条1項1号)をいい、アスベスト粉じんを吸入したことによる石綿肺もこのじん肺の一つとなります。
粉じん作業に従事した事業場に勤務している間は、事業者によりじん肺健康診断が行われ、じん肺管理区分の決定申請等についても事業者が行うこととなっています。
これに対して、離職後にじん肺管理区分の決定を受けるためには、ご自身でじん肺健康診断を受けて、お住まいの労働局へ申請をする必要があります。
じん肺管理区分の決定申請をお考えの方は、お住まいの労働局へお問い合わせください。

参考:石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々との和解手続について|厚生労働省

(4)工場型アスベスト訴訟は弁護士に依頼すべき?

工場型アスベスト訴訟において、国と和解を成立させるためには、国を被告として国家賠償請求訴訟を提起し、証拠を提出して、和解手続を進める必要があります。
手続上、弁護士に依頼することは必須ではありませんので、個人で行うことも可能です。個人で行った場合は、弁護士費用の節約となります。

しかしながら、個人で、ご説明したような資料収集、国を被告とした国賠訴訟の提起、裁判所への出廷などを行うには多大な労力が必要です。また、訴訟を提起するので、専門的知識が必要となる場合も少なくありません。

弁護士に依頼するかどうか迷っている方は、こちらの記事をご覧ください。

アスベスト訴訟を弁護士に依頼するメリットとは?費用と選び方のポイント

アスベスト訴訟について、相談料無料とする法律事務所もありますので、まずはご相談してみてはいかがでしょうか。

【まとめ】石綿工場の元労働者・ご遺族は工場型アスベスト訴訟により賠償金を受け取ることができる可能性あり

本記事のまとめは次のとおりです。

  • アスベストは様々な工業製品の原材料として用いられ、人体に吸入されるとアスベスト関連疾患の原因となる
  • アスベスト工場でアスベスト粉じんばく露作業に従事していた方及びそのご遺族については、一定の要件を満たすことで国と和解をして賠償金を受け取ることが可能
  • 賠償金を受け取るためには、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起する必要がある

かつて、アスベスト工場で働いていたために、肺がんなどのアスベスト関連疾患に罹患された方は多いです。
アスベストのせいで病気になってしまった…そんな方は体調や今後の生活について不安でいっぱいかもしれません。
アスベストのせいで病気になってしまった場合、要件を満たせばもらえるお金があります。
今後の心配を少しでも減らすために、まずは弁護士への相談をご検討ください。

アディーレ法律事務所では、工場型アスベスト訴訟の手続きに関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した賠償金や給付金からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。

また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2023年1月時点

現在、アディーレ法律事務所では、アスベスト被害に悩まれておられる方を一人でも多く救いたいとの想いから、アスベスト被害についての相談をお待ちしております。
アスベスト被害にあわれた方およびそのご遺族は、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。

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