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家族が自転車事故にあって死亡|加害者に請求できる賠償金を解説

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リーガライフラボ

警察庁の統計では、2020年に起きた自転車による事故は2634件、そのうち歩行者が死亡、または重傷を負った人数は306人になります(※)。

(※)警察庁「令和2年における交通事故の発生状況等について」「自転車関連交通事故の状況」より。

近年、健康志向などから自転車利用者が増加しているといわれ、自転車事故の危険は今後ますます高まることも考えられます。
では、自転車に衝突され、被害者が死亡した場合、加害者に対してどのような賠償金を請求できるのでしょうか。

自転車事故により被害者が死亡した場合、被害者の相続人(遺族)が被害者に代わって加害者に対し賠償金を請求することになります。

そして、被害者が死亡した場合、加害者に対し請求できる賠償金は、例えば、次のものが挙げられます。

  • 死亡慰謝料
  • 葬儀関係費用
  • 死亡による逸失利益

死亡事故の場合、一般的に賠償金の金額も高額となります。

適切な額の賠償金を受け取るためにも、どういった賠償金が請求できるのか、自転車事故特有の問題などについて知っておきましょう。

この記事では、次のことについて、弁護士がくわしく解説します。

  • 被害者が請求できる賠償金
  • 死亡事故の場合、損害賠償金の請求は誰が行うか
  • 自転車事故に特有の問題
  • 自転車事故で弁護士に相談するメリット
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

自転車事故の被害者が受け取れる賠償金

交通事故や自転車事故で相手にケガをさせたり、死亡させたりする行為は民法709条の不法行為にあたります。そして、被害者は加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。

(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法709条

そして、加害者が自動車に乗っていても、自転車に乗っていても、被害者が請求できる損害賠償の内容は変わりません。

自転車事故で得られる賠償金の内訳

自転車事故で被害者が死亡した場合、被害者は加害者に対して主に、次のような賠償金を請求できます。

  1. 死亡慰謝料
  2. 葬儀関係費用
  3. 死亡による逸失利益
  4. 治療関係費

それぞれ説明します。

(1-1)死亡慰謝料

死亡慰謝料とは交通事故の被害者の方が死亡した場合、死亡させられたことに対して請求できる慰謝料のことをいいます。
被害者の方の遺族にも被害者の慰謝料とは別に、近親者独自に、被害者を亡くしたことによる精神的苦痛に対する慰謝料が認められています。

死亡慰謝料の相場は3つの算定基準のうち、どの算定基準を使うかによって違ってきます。3つの算定基準とは次のとおりです。

慰謝料算定基準概要
自賠責の基準自賠責の基準は、自動車保有者が加入を義務付けられている「自賠責保険」で採用されている基準です。
自賠責の基準は被害者への最低限の補償を目的として設けられているので、慰謝料の基準額は基本的に3つの算定基準のうち最も低くなります。
ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。
任意保険の基準任意保険の基準は、各保険会社が独自に設定している非公開の算定基準です。
加害者側の任意保険会社は、通常は任意保険の基準をもとにして慰謝料を提示してきます。基準額は、自賠責の基準と同程度か、やや高い程度であると推測されます。
弁護士の基準
(裁判所の基準)
弁護士の基準は、過去の裁判例をもとに設定された基準です。弁護士に示談交渉を依頼した場合などに使われる算定基準です。
弁護士の基準による慰謝料金額(目安)は3つの算定基準のうちでは基本的に最も高額となります。

3つの基準の金額(目安)を比べると、次のようになることが一般的です(一部例外あり)。

実際、死亡慰謝料の相場(目安)について自賠責の基準と弁護士の基準を比べると、次のとおりになります。

自賠責の基準弁護士の基準
自賠責の基準では、被害者本人に対する死亡慰謝料として400万円、被害者の近親者に対しては、次の金額の死亡慰謝料が支払われることになります。

・近親者が1人の場合:550万円
・近親者が2人の場合:650万円
・近親者が3人の場合:750万円
また、被害者に被扶養者がいる場合には、上記金額に200万円を加算して計算します。
弁護士の基準では、被害者本人と近親者に対する慰謝料を合わせて計算します。
弁護士の基準では、自賠責の基準と違い、近親者の人数ではなく、被害者本人が家族の中でどのような立場であったかで金額が変わります。

・一家の支柱(家族を経済的に支えている):2800万円
・母親や配偶者:2500万円
・その他の家族(子供など):2000万~2500万円

※ここでいう「近親者」とは、被害者の父母(養父母を含む)、配偶者と子(養子、認知した子、胎児を含む)をいいます。
※自賠責保険の支払基準改正により、2020年4月1日以降に発生した事故については、死亡した本人への慰謝料額は400万円に変更となりました。なお、2020年3月31日以前に発生した事故については、従前のとおり、死亡した本人への慰謝料額は350万円のままとなります。

【具体例1】被害者本人に妻と扶養する子が2人いる場合
<自賠責の基準> 1350万円(400万円+750万円+200万円)
<弁護士の基準> 2800万円

【具体例2】被害者本人に夫がいる場合
<自賠責の基準> 950万円(400万円+550万円)
<弁護士の基準> 2500万円

死亡慰謝料の相場(目安)は自賠責の基準よりも弁護士の基準の方が高額となっていることがわかります。

弁護士の基準を使うには弁護士へ依頼することがおすすめです。
被害者本人が、加害者側の保険会社に対し、自賠責の基準や任意保険の基準での示談金から弁護士の基準への増額を求めても、なかなか応じてくれいないでしょう。
これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉を行う場合は、訴訟も辞さない態度で交渉を行い、加害者側の保険会社も弁護士の基準もしくはそれに近い金額での示談が期待できます。

弁護士への依頼について詳しくは、こちらをご覧ください。

(1-2)葬儀関係費用

葬儀関係費とは、葬儀(遺体の処置も含みます)やその後の法要・供養等を執り行うために要する費用、仏壇・仏具購入費、墓碑建立費等のことをいいます。

自賠責の基準では、100万円が認められます。弁護士の基準では、原則150万円が上限となっています。現実の支出額が150万円を下回る場合、実際の支出額の範囲内で賠償額が決められます。

(1-3)死亡による逸失利益

交通事故による死亡のため得られなくなった将来の収入を賠償するものです。

例えば、一家の稼ぎ頭であった夫が事故で亡くなった場合には、急に一家の収入が途絶えてしまうことになります。
このような場合に、本来夫が生きていれば、夫が稼ぐはずであった収入を計算して、加害者が残された家族に対して支払うことになります。

死亡による逸失利益の増額に成功した事例についてはこちらをご覧ください。

(1-4)治療関係費

治療のためにかかった治療費や薬代・通院交通費・付添看護費・入院雑費なども賠償金として請求することができます。

自転車の死亡事故で、どれくらいの賠償金となっているのか

では、自転車の死亡事故では実際にどれくらいの賠償金の支払いが命じられているのでしょうか。
ここでは、過去にあった自転車での死亡事故について判断した裁判例を紹介します。自転車事故といえども死亡という極めて重大な結果が生じていることから、高額な賠償金となることがわかります。

【裁判例1】
成人男性が自転車で信号無視して高速で交差点に進入し、横断歩道を横断中の55歳女性と衝突。女性が11日後に死亡したケース
→賠償金 5438万円(東京地裁判決平成19年4月11日)

【裁判例2】
男子高校生が自転車で横断歩道から交差点に無理に進入し、保険勧誘員の女性が運転する自転車と衝突。女性が頭蓋骨骨折のケガを負い9日後に死亡したケース
→賠償金 3138万円(さいたま地裁判決平成14年2月15日)

自転車事故の死亡事故により約9520万円という高額賠償金が認められた裁判例もあります。この裁判例について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

自転車事故の損害賠償最高額はどれくらい?自転車事故に関する注意点

死亡事故の場合、損害賠償金の請求は相続人が行なう

自転車事故にあった被害者が死亡した場合、加害者に対して損害賠償金を請求する権利は被害者の遺族(=配偶者・子など)に相続されます。
したがって、加害者との示談交渉や損害賠償金の請求手続きについては、死亡した本人の代わりに、相続人である遺族が行うことになります。

死亡事故の遺族がすべきことや相続の流れなどを詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

交通死亡事故で賠償請求できる相続人とは?ご遺族がやるべきことも解説

自転車事故の被害者が知っておくべき4つの問題

自転車事故には、自動車事故にはない特有の問題が生じます。
小規模な事故でケガも軽く、加害者側も賠償にきちんと応じる場合はあまり大きな問題になることはありません。

しかし、死亡など重大な事故になり賠償金額が大きくなると、加害者が任意保険に入っておらず賠償金を支払ってもらえないケースがでてきます。

この点について、次に挙げる4つの問題があります。

  1. 相手が自動車のとき以外、自動車保険は使えない
  2. 保険未加入で、十分な賠償金が受け取れない可能性がある
  3. 過失割合の算定が難しい
  4. 裁判になってしまうケースも少なくない

それぞれ説明します。

(1)相手が自動車のとき以外、自動車保険は使えない

自転車同士あるいは自転車と歩行者の事故では、自動車保険は使えません。

通常、交通事故の加害者側が自動車であれば、加害者が加入している自賠責保険や任意の自動車保険から被害者に対して賠償金が支払われます。一方、自転車事故の場合は自動車保険からの賠償金の支払いは期待できません。

また、自転車には自動車の自賠責保険のような強制加入の保険がありません。そこで、加害者が自転車保険などの任意保険に加入していない限り、加害者本人に直接支払ってもらうしかなくなります。そして、賠償額などについての示談交渉も、加害者本人と直接行うことになります。

(2)保険未加入で、賠償金を十分受け取れない可能性がある

加害者が自転車保険に入っていない場合や、加入している保険の補償上限額が低い場合は、加害者自身に資力がない限り、十分な賠償金を得られない可能性があります。

しかし、自転車保険は自治体によっては加入が義務付けられていることもあり、自転車保険の加入率は高まっています。そのため、自転車事故だからといってあきらめる必要はありません。

なお、加害者が未成年の場合には、加害者自身に賠償金を払うだけのお金がないなど加害者自身が責任をとれないという問題も生じます。未成年者が自転車事故を起こした場合の責任について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

【自転車事故】未成年の加害者の責任とは?責任能力と損害賠償請求

(3)過失割合の算定が難しい

自転車事故の場合で、加害者が自転車保険などに加入していない場合は、過失割合を当事者どうしで算定をしなければなりませんが、交通事故についての専門知識がなく、正確に算定するのは難しいケースもあります(特に死亡事故の場合、被害者が死亡しているため、事故状況がはっきりしないことがあります)。

そもそも、過失割合とは、事故が発生したことについての各当事者の過失(=不注意・ミス)の割合をいいます。

例えばある交通事故について、被害者の過失が2割、加害者の過失が8割の場合に、事故により被害者に生じた損害額が100万円だとすると、100万円のうち20万円は被害者自身が負担し、加害者は80万円を被害者に支払うことになります。

過失割合をどのくらいにするかによって賠償金総額が大きく変わってくるため、当事者間において過失割合をどれくらいにするか揉めるケースも少なくありません。

(4)裁判になってしまうケースも少なくない

自転車事故で加害者が任意保険に加入していないケースの場合、示談交渉は加害者本人と直接行うことになります。その結果、賠償金について裁判となってしまうことが少なくないのです。

どういうことかというと、加害者と直接交渉したくても、そもそも交渉に応じない(または、連絡がとれない)ことが多いうえ、交渉できたとしても、直接の加害者・被害者という関係ではお互い冷静に話し合うことも難しくなります。

そのため、自転車事故では自動車事故に比べ、示談交渉では解決せずに訴訟(裁判)を提起せざるを得なくなることがあるのです。

自転車による死亡事故にあったときに弁護士に依頼する3つのメリット

自転車事故は自動車事故と比べ、加害者側と示談交渉したり、適正な後遺障害・過失割合を主張したりするのが難しいという特徴があります。そこで、自転車事故にあったときは、早めに弁護士に相談してサポートを受けることをおすすめします。

弁護士に依頼した場合のメリットとしては、次の3つのメリットがあります。

弁護士に依頼する3つのメリット

適切な賠償金を受けとれるように交渉してもらえる

弁護士に示談交渉を依頼することで、被害者の受けた損害を法的根拠に基づいて主張し交渉を有利に展開するだけでなく、上でご紹介した弁護士の基準による慰謝料などの算出により、適正な賠償金を得られやすくなります。

示談交渉や裁判などを弁護士に任せることができる

弁護士に依頼すると示談交渉や裁判などを弁護士に任せることができます。示談交渉や裁判にかかる負担やストレスを軽減し、ご遺族が自分の生活を取り戻すことに集中する時間を確保することができます。

弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用の心配がなくなる可能性がある

弁護士費用が心配なときであっても、被害者本人またはご遺族が加入している自動車保険の弁護士費用特約(保険会社が弁護士費用を一定の範囲内で負担してくれる特約)が使えることがあります。

弁護士費用特約は自動車事故しか使えないとのイメージをお持ちかもしれませんが、弁護士費用特約が「日常生活事故型」「自転車事故型」となっている場合は、自転車事故でも弁護士費用特約が使える可能性があります。

弁護士費用特約について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

交通事故の弁護士費用を安く抑えたい人が知っておきたい基礎知識

【まとめ】死亡事故の相手方に対し、死亡慰謝料・葬儀費用・逸失利益が請求可能!

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 死亡事故の被害者(被害者の相続人)は、加害者に対して死亡し慰謝料、葬儀関係費用、死亡による逸失利益、治療関係費などが請求できます。

  • 死亡慰謝料の相場(目安)(弁護士の基準)
    • 被害者が一家の稼ぎ頭である場合 2800万円
    • 被害者が母親・配偶者である場合 2500万円
    • 上記にあてはまらない場合 2000万~2500万円
  • 葬儀関係費用の相場(目安)は原則150万円が上限となっています。現実の支出額が150万円を下回る場合、実際の支出額の範囲内で賠償額が決められます。

  • 自転車事故の被害者が知っておくべき問題点
    • 相手が自動車のとき以外、自動車保険は使えない
    • 保険未加入で、十分な賠償金が受け取れない可能性がある
    • 過失割合の算定が難しい
    • 裁判になってしまうケースも少なくない

自転車事故により重大な被害が生じるケースがあることを考慮して、複数の自治体は、自転車保険への加入を義務付けたり、努力義務としたりしています。この動きは、今後も拡大していくことが予想されます。

ご家族が自転車事故の被害で亡くなられた場合には、加害者が自転車保険に加入しているかなどを確認しましょう。示談交渉でお悩みの際には、自転車事故による損害賠償請求を取り扱っている弁護士に相談することをお勧めします。

この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年3月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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