Q相談者 40代 男性
車を運転していたら、後方で二輪車が転倒しました。
二輪車の運転者は、ケガをしたようです。
私の車は、二輪車と接触していません。
それでも私は、二輪車が事故を起こした責任を負うのでしょうか。
A
相談者の運転に問題があり、その結果後方の二輪車が転倒したような場合には、事故の責任を負う場合があります。
ポイントは、相談者の運転する車の運行(行為)と、相手方がケガを負ったこと(損害)の間に、相当因果関係があるかどうかです。
相当因果関係があるとされれば、事故の責任を負います。
接触のない事故(非接触事故)の考え方
交通事故の多くは、お互いの車両が接触し、衝突することよって損害が生じています。
その場合、通常は、「事故によってケガを負った」「事故によって車両が壊れた」ということができます。
車の運行による接触(行為)と、相手方がケガを負ったこと(損害)の間には、相当因果関係が認められるからです。
車の行為 → 接触 → ケガ
→ 相当因果関係の判断が容易
しかし、接触がない場合には、車の運行(行為)と相手方がケガを負ったこと(損害)の間の因果関係の判断が難しくなります。
車の運行 →→接触なし→→ ケガ??
→ 相当因果関係の判断が困難
接触がないと、相手方の転倒の原因が何なのか、簡単には判断できません。
単なる相手方の運転ミスかもしれません。
ただ、因果関係の判断は難しくなりますが、接触していないからといって、直ちに因果関係は存在せず、責任もない、ということにはなりません。
非接触事故でも、責任を負う場合がある
接触していなくても、車の運行者が責任を負う場合があります。
最高裁判所は、次のように述べて、接触しない場合であっても、車の運行者が責任を負う場合があることを認めています。
車両の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係があるとされる場合は、車両が被害者に直接接触したり…するときが普通であるが、これに限られるものではなく、このような接触がないときであっても、車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであって、歩行者がそれによって危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合には、その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認める
最高裁判所判決(昭和47年5月30日)
簡単にいうと、衝突していなくても、「衝突にも比すべき事態」によってケガを負った場合には、相当因果関係が認められ、責任を負う、ということです。
どのような場合が「衝突にも比すべき事態」にあたるのかどうかは、ケースバイケースの判断となります。
今回のケース
相談者の運転の状況の詳細はわかりませんが、交通ルールを守って道路を走行中に、相談者の運転とは無関係に、後方の二輪車が転倒したのであれば、相当因果関係はないとされる可能性が高いです。
一方で、相談者が、特段の事情がないのに急ブレーキをしたり、ウィンカーを付けずに突然左折したりしたために、後方の二輪車が衝突を避けるために運転を誤り転倒したような場合には、相当因果関係が認められることになるでしょう。
非接触の場合に、相当因果関係が認められるかどうかの判断は、難しい場合があります。
相当因果関係が認められ、責任があるとされることに納得できない場合には、弁護士に相談するとよいでしょう。