交通事故で負った後遺症について、後遺障害等級が「非該当」とされてしまうことがあります。
なぜ、後遺症があるにもかかわらず、『非該当』になってしまうのでしょうか?
非該当となる代表的な理由は次の3つです。
1.後遺症を裏付ける客観的な医学的な所見がない
2.通院が足りていない
3.交通事故と後遺症の間に因果関係が認められない
非該当となった場合は、異議申立て等をすることも可能です。もっとも異議申立て等する際、非該当となった理由を打ち消す新しい資料などを提出しないと、非該当の結果を覆すことは難しいです。
そのため、
非該当の結果となってしまった場合には、その理由を把握することが大切です。
今回の記事では、
- 後遺障害認定で非該当となってしまう理由
- 「非該当」の結果に納得できない時の対処法
について、弁護士が解説します。
岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
弁護士による交通事故被害の無料相談はアディーレへ!
費用倒れの不安を解消!「損はさせない保証」あり
ご相談・ご依頼は、安心の全国対応。国内65拠点以上(※1)
交通事故の後遺障害に非該当となる3つの理由
交通事故の後遺障害認定申請の結果、「後遺障害に該当しない」=「非該当」と判断されてしまう代表的な3つの理由は次のとおりです。
1.後遺症を裏付ける客観的な医学的な所見がない
2.通院が足りていない
3.交通事故と後遺症の間に因果関係が認められない
順に説明します。
(1)後遺症を裏付ける客観的な医学的所見がない
後遺障害認定を受けるためには、後遺症を裏付ける客観的な医学的所見や、医学的な整合性があることが必要です。
非該当の結果となるケースでは、申請書類中に自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見がないケースがあります。
その主な原因としては、次に挙げるものが考えられます。
- 医師への説明があいまい
- 必要な検査をしていない
それぞれ説明します。
(1-1)医師への説明があいまいである
被害者は、自覚している症状について、具体的かつ正確に、医師に伝えたうえで、医師に後遺障害診断書(※)に記載してもらう必要があります。
※ 「後遺障害診断書」とは、後遺障害等級認定の申請に必要な書類です。後遺障害等級認定の結果を左右する重要な書類となります。
後遺障害等級の認定のためには、自覚症状が、受傷直後から一貫・継続して存在することが必要ですので、「毎回言わなくてもわかるだろう」「勘違いかもしれない」と思ったりせず、具体的な症状を診察の度にしっかり伝える必要があります。
例えば、次のようなことを意識して伝えるようにするとよいでしょう。
具体例 |
・ 痛みを感じる場所・頻度 ・ どのようなときに特に痛みを感じるのか ・ しびれを感じる場所 ・ めまいの有無 ・ どのような時に特にめまいを感じるのか ・ 耳鳴りの有無 など |
自分の身体の自覚症状について一番わかるのは自分自身ですので、しっかりと医師に伝えるようにします。
後遺障害診断書について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
(1-2)必要な検査を受けていない
必要な検査が足らずに、後遺症を裏付ける医学的な所見が不十分となっているケースがあります。
例えば、頚椎捻挫(むち打ち)で首から肩への痛みがあるのであれば、通常はMRIや首・肩のX線写真を撮るなどして診察・治療することになります。
しかし、MRIでヘルニアが確認できず、X線写真も異常なしとなった上、ジャクソンテスト、スパークリングテストなどの神経学的検査もしていないとなると、後遺障害診断書に「首、肩の痛み」との記載があったとしても、首・肩の痛みを裏付ける客観的な医学的所見や、医学的整合性があるとは判断されません。
後遺障害等級の認定のためには適切な検査と、検査結果により後遺症が医学的に裏付けられていることが必要です。
後遺障害等級の認定のために必要な検査としては、次のものがあります。
必要な検査の例 |
• レントゲン・CT・MRIなどの画像診断 • ジャクソンテスト(神経根障害を調べる神経学的テスト、痛みやしびれを調べる) • スパーリングテスト(神経根障害を調べる神経学的テスト、痛みやしびれを調べる) • 腱反射テスト(運動系の障害や末梢神経の障害の有無を調べる) • 握力テスト(頚椎の神経異常の有無を調べる) • 筋萎縮テスト(むち打ちなどの症状で筋肉がやせ細っていないかを調べる) |
(2)通院が足りていない
通院期間に対して通院回数が少ない、治療中に通院していない期間があるなどの場合、後遺障害等級「非該当」とされる場合があります。
すなわち、後遺障害認定を受けるためには、将来も「回復困難と見込まれる精神的または身体的な障害」である必要があります。受傷直後から継続して通院している場合には、そうでない場合に比べて、残存した症状が将来も回復困難と認められやすくなります。
一方、通院回数が1~2週間に1回とか、1ヶ月に1回と少なく、通院の継続性がない場合には、残存した症状が将来も回復困難な症状とは認められず、「非該当」となることがあります。
(3)交通事故と後遺症の間に因果関係が認められない
後遺障害等級の認定を受けるためには、「交通事故によって生じた後遺症」であることが必要です。つまり、交通事故と後遺症の間に因果関係が認められない場合には後遺障害等級「非該当」となってしまいます。
例えば、交通事故後特段の理由もなく4日以上通院せずに、その後、痛みがあるとして病院に診てもらって「頸椎捻挫(むち打ち)」と診断されたとします。
仮に事故直後から痛みがあったとしても、通院していないとすれば、事故のせいで痛みが生じたことを証明することは困難です。
したがって、現在の症状は事故によるものとは言えないとして、相当因果関係が否定されることがあります。
また、交通事故の態様と症状に矛盾がある場合にも、因果関係が否定されることがあります。
例えば、駐車場で徐行中の車両同士が衝突し、車両の傷も数センチの傷だけといったような場合は、頸椎捻挫(むち打ち)となるほどの衝撃があったとは考えられないとして、交通事故と後遺症の因果関係が認められないとの判断がされることがあります。
「非該当」に納得できない場合の3つの対処法
交通事故の後遺障害認定で「非該当」とされ納得できない場合にも、すぐに諦める必要はありません。
「非該当」に納得できない場合、次の3つの対処法があります。
1.後遺障害非該当の判断に対して異議を申立てる
2.紛争処理機関に申請する
3.裁判を起こす
それぞれ説明します。
(1)後遺障害非該当の判断に対して異議を申立てる
後遺障害の認定結果に納得ができない場合には、再度審査するよう申立てることができる制度があります。これを「異議申立て」といいます。
異議申立ての方法は、後遺障害の認定の申請方法と同様に、相手方加入の任意保険会社に手続きを依頼する「事前認定」と、自分で手続きを行う「被害者請求」があります。
事前認定
被害者は、加害者側の任意保険会社に異議申立書を提出します。異議申立てに必要な手続きは任意保険会社に任せることができます。
被害者
任意保険会社(加害者側)
損害保険料率算出機構の審査
被害者請求
被害者は、加害者側の自賠責保険会社に異議申立書を提出します。異議申立てに必要な手続きは被害者自身が行う必要があります。
後遺障害等級の認定の際に「事前認定」の方法であったとしても、異議申立ては「被害者請求」で行うことができます。
被害者
自賠責保険会社(加害者側)
損害保険料率算出機構の審査
後遺障害等級の認定結果を覆すためには、その結果となった理由を知り、不十分であった点について資料を収集し、意見書を準備するなどして異議申立てをする必要があります。そして、異議申立てで提出された資料が不十分なものだと、結果が覆りません。
この点、事前認定の方法で異議申立てをすると、十分な資料が提出されているのかどうか被害者が確認することができないまま手続きが進んでしまいます。そのため、資料の選定を自分で行うことができる「被害者請求」をお勧めします。
なお、異議申立ては、何度でも行うことができます。
(2)紛争処理機構に申請する
後遺障害等級の認定結果に納得ができない場合には、自賠責保険・共済紛争処理機関に審査を申請することができます。
自賠責保険・共済紛争処理機構とは、保険金・共済金に関して発生した紛争を解決するための第三者機関です。紛争処理の申請を受けた場合には、医師や弁護士などの専門家が書面による審査を行います。
調停結果については、保険会社は順守義務がありますが、申請者(被害者)は受諾する必要はありません。
なお、審査結果に納得ができない場合であっても、紛争処理機関に対する申請は一度きりです。
参照:調停(紛争処理)事業とは?|指定紛争処理機関 一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
(3)裁判を起こす
裁判を起して、裁判所に後遺障害の認定や等級を判断してもらう方法もあります。
もっとも、これはあくまでも最後の手段になります。
裁判では、判例や実務の認定等級の基準を理解したうえで、等級認定を受けられるのかどうかをしっかり見通しを立て、効果的な主張・立証をする必要があります。そのため、被害者が自分で裁判を起こして、対応するのは難しいことが多いです。
裁判を起こす場合には、交通事故の経験豊富な弁護士に相談し、対応を依頼した方がよいでしょう。
交通事故の後遺障害認定の非該当に対する異議申立てに時効(期限)がある
異議申立てについて回数制限はありませんが、異議申立てをするには時効(期限)があることに注意が必要です。
異議申立ては自賠責保険に対する異議申立ての制度であるため、自動車損害賠償保障法19条により3年の時効が適用されます。そのため、すでに症状固定日から3年を経過している場合、被害者請求としての異議申立ては出来ません。
なお、一定の行為を取ることで時効の完成を阻止することができますので、時効完成が近づいていてもあきらめずに、速やかに弁護士に相談して対処してもらうとよいでしょう。
交通事故の後遺障害非該当に対する異議申立てのポイント
非該当に対する異議申立てのポイントは次のとおりです。
- 非該当になった原因を分析する。
- 後遺障害診断書の記載内容や提出資料が不十分な場合には、不十分なところを補う新たな後遺障害診断書や資料を提出する。
- 必要な検査がなされていない場合には、必要な検査を受ける。
そもそも、異議申立ては、認定が覆りそうな新たな医学的資料を提出しない限り、「非該当」が覆る可能性は低いのが実情です。
弁護士に依頼することで、説得的な異議申立書を書いてもらえるほか、足りない資料について把握し、揃えるべき資料、医師の意見書などを効率的に集めることができます。
そのため、異議申立ては、弁護士に依頼することがおすすめです。
【まとめ】「後遺障害非該当」の場合、医学的な所見を裏付ける資料や検査が不足している可能性がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 交通事故の後遺障害に非該当となる3つの理由
- 後遺症を裏付ける客観的な医学的な所見がない
(1)医師への説明が曖昧、(2)必要な検査が足りない - 通院が足りていない
- 交通事故と後遺症の間に因果関係が認められない
- 「非該当」に納得できない場合の3つの対処法
- 後遺障害非該当の判断に対して異議を申立てる
- 紛争処理機関に申請する
- 裁判を起こす
- 非該当に対する異議申立てのポイント
- 非該当になった原因を分析する。
- 後遺障害診断書の記載内容や提出資料が不十分な場合には、不十分なところを補う新たな後遺障害診断書や資料を提出する。
- 必要な検査がなされていない場合には、必要な検査を受ける。
「非該当」に対する異議申立ては、認定が覆りそうな新たな医学的資料を提出しない限り、覆る可能性は難しいのが実情です。
弁護士に依頼することで、説得的な異議申立書を書いてもらえるほか、足りない資料について把握し、揃えるべき資料、医師の意見書などを効率的に集めることができ、「非該当」を覆せる可能性を高めることができます。
交通事故の被害に遭った方が、賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2021年9月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、アディーレ法律事務所にご相談ください。