「後遺障害14級に認定された!逸失利益としてどのくらいもらえる?計算方法は?」
逸失利益とは、交通事故によって後遺症が残らなければ、将来得られたはずの収入のことをいいます。
そして、逸失利益は、計算方法次第で金額が大きく変わる可能性があります。
逸失利益で損をしないためにも、逸失利益の相場・計算方法や増額のポイントを知っておきましょう。
この記事を読んでわかること
- 後遺症による逸失利益の内容
- 後遺症による逸失利益の計算方法
- 後遺症による逸失利益を増額するポイント

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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逸失利益とは
逸失利益とは、交通事故によって後遺症が残らなければ、将来得られたはずの収入のことをいいます。
たとえば、調理師であった被害者の手首に痛みやしびれが残り、調理師として働くことが難しくなった場合、事故に遭わなければ得られたはずの収入を得られなくなってしまいます。
このように、交通事故に遭わなければ得られたはずの収入のことを「逸失利益」といい、被害者は加害者に対して、この逸失利益を請求することができます。
なお、交通事故で死亡した場合にも逸失利益を請求することができますが、ここでは後遺症による逸失利益について説明します。
専業主婦であっても逸失利益は請求できる!
「専業主婦は逸失利益を請求できない」と保険会社から言われることがあるかもしれません。
しかし、専業主婦であっても逸失利益を請求することは可能です。
専業主婦は家族のために家事労働をしても給料を受け取ることがないため、交通事故で家事ができなくなっても、金銭的な損害が発生していないように思えるかもしれません。
しかし、実務においては、家事労働もきちんと金銭的に評価し、逸失利益を請求できるとすべきであると考えられています。
なお、「家族のために」とは自分以外の家族、つまり他人のために家事を行うものと理解されているため、自分のための家事について逸失利益は認められません。
後遺症による逸失利益の計算方法
後遺症による逸失利益は、次のように計算します。

適切な逸失利益を計算するには、それぞれの項目に適切な値を入れて計算することがポイントです。そのため、それぞれの項目の意味やどういった数値を入れるのが適切なのかを理解しておく必要があります。
では、それぞれの項目について説明します。
(1)基礎収入
「基礎収入」とは、逸失利益を算出するための元となる収入です。
働いて給与所得や事業所得を得ている方であれば、基本的に交通事故前の収入が基礎収入となります。
一方、専業主婦の場合には、原則、賃金センサスを参考に女性の全年齢平均賃金を基礎収入として計算します。
また、学生の場合には、原則、賃金センサスを参考に全年齢平均賃金を基礎収入として計算することになります。被害者の方が大学進学前であっても、諸般の事情から大学進学が見込まれる場合には、大卒の賃金センサスによる基礎収入の算定が認められる場合があります。
なお、賃金センサスとは、厚生労働省が毎年調査する賃金に関する調査結果のことで、日本の労働者の雇用形態・年齢・性別などの属性における賃金を知ることができる資料です。
(2)労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺症によって失われる労働能力を数値化したものです。
実務では、労働能力喪失率表という、後遺障害の等級に応じた労働能力の喪失率を定めた表を参考に、被害者の方の後遺症の程度、性別、年齢、職業その他諸般の事情を考慮して、労働能力喪失率を算定しています。
後遺障害の等級別による労働能力の低下率(以下、「喪失率」といいます)は、次のとおりです。
【労働能力喪失率表】
第 1 級 | 第 2 級 | 第 3 級 | 第 4 級 | 第 5 級 | 第 6 級 | 第 7 級 | 第 8 級 | 第 9 級 | 第 10 級 | 第 11 級 | 第 12 級 | 第 13 級 | 第 14 級 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
100% | 100% | 100% | 92% | 79% | 67% | 56% | 45% | 35% | 27% | 20% | 14% | 9% | 5% |
なお、被害者の職業や後遺症の部位・程度によっては、労働能力喪失率表に定められた喪失率を下回る労働能力喪失率が認定されることもあります。
(3)労働能力喪失期間
後遺症によって労働能力が失われてしまう期間のことを、「労働能力喪失期間」といいます。
労働能力喪失期間は、原則として症状固定日から67歳までの期間とされます。被害者の方が未就労者である場合は、労働能力喪失期間の始期は症状固定日ではなく、18歳または22歳(大学卒業を前提とする場合)となります。
ただし、むち打ち症の場合には通常12級の場合は10年以内、14級の場合は5年以内に労働能力喪失期間が制限される事例が多いです。
(4)ライプニッツ係数
逸失利益は、「将来」得られたであろう利益であって、逸失利益を「現在」受け取ると、その将来の利益すべてを先に受け取れることになり、被害者は今すぐそのお金を運用できるため、被害者にとって得になると考えられています。
そこで、その得をする分(中間利息)を減らすことになっており、ライプニッツ係数を利用し、この中間利息が控除されることになります。
ライプニッツ係数は、労働能力喪失期間によって変わります(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)。
労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 |
---|---|
1年 | 0.9709 |
2年 | 1.9135 |
3年 | 2.8286 |
4年 | 3.7171 |
5年 | 4.5797 |
6年 | 5.4172 |
7年 | 6.2303 |
8年 | 7.0197 |
9年 | 7.7861 |
10年 | 8.5302 |
15年 | 11.9379 |
30年 | 19.6004 |

後遺障害14級における逸失利益の計算例【職業別】
では、被害者の職業別に逸失利益を計算してみましょう。
ここでは、次の3つの職業の場合で計算してみます。
(後遺障害14級9号、労働能力喪失期間を5年とする場合の計算例)
- サラリーマン(基礎収入500万円)
- 専業主婦
- 大学生
(1)サラリーマンの場合(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)
- 基礎収入:500万円
- 後遺障害等級:14級9号→労働能力喪失率5%
- 労働能力喪失期間:5年→ライプニッツ係数4.5797
【計算式】
後遺症による逸失利益
=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
=500万円×5%×4.5797
=114万4925円
(2)専業主婦の場合(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)
- 基礎収入:385万9400円(令和3年全年齢女性平均賃金)
- 後遺障害等級:14級9号→労働能力喪失率5%
- 労働能力喪失期間:5年→ライプニッツ係数4.5797
【計算式】
後遺症による逸失利益
=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
=385万9400円×5%×4.5797
≒88万3745円(端数は四捨五入)
なお、専業主夫の場合であっても、賃金センサスは、女性のものを基準にします。
なぜなら、家事労働をする者が男性であっても、女性が主に担っている家事労働の経済的価値は変わらないと考えられているからです。
(3)大学生(男性20歳)の場合(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)
- 基礎収入:631万400円(令和3年男性の大卒平均賃金)
- 後遺障害等級:14級9→労働能力喪失5%
- 労働能力喪失期間:5年→ライプニッツ係数2.6662
→22歳から働くと仮定し、労働能力喪失期間5年のライプニッツ係数から2年のライプニッツ係数を差し引く
4.5797(5年のライプニッツ係数)-1.9135(2年のライプニッツ係数)=2.6662
【計算式】
後遺症による逸失利益
=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
=631万400円×5%×2.6662
≒84万1239円(端数は四捨五入)
なお、大学生の場合で就職先の内定を得ているなど就職先が決まっている場合には、実際の就職先の年収を基礎収入とすることもあります。
逸失利益を増額する3つのポイント

逸失利益を適切な金額で請求するためには、次の3つのポイントを押さえておく必要があります。
- 適切な後遺障害等級を獲得する
- 適切な労働能力喪失期間で計算する
- 適切な労働能力喪失率で計算する
それぞれ説明します。
(1)適切な後遺障害等級を獲得する
適切な逸失利益を獲得するためには、後遺症について「適切な後遺障害等級の認定」を受けなければいけません。
そして、適切な逸失利益を獲得するためには、後遺障害等級申請の段階で書類をきちんと準備し、適正な後遺障害等級を認定してもらう必要があります。
後遺障害等級の認定申請の方法や認定のポイントについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)適切な労働能力喪失期間で計算する
適切な逸失利益の算定のためには、適切な労働能力喪失期間で計算することもポイントになります。
労働能力喪失期間は、説明したとおり、原則「67歳まで」です。
ただし、後遺症の症状や程度、被害者の職業によって「67歳まで」よりも短い期間になることがあります。実際、むち打ち症の場合には、10年から5年以下に制限される事例が多いことは、これまで説明したとおりです。
しかし、保険会社は本来認定されるべき労働能力喪失期間よりも短い期間を主張してくることがあります。
この場合に、保険会社の主張を鵜呑みにしてしまうと、本来あなたが受けとるべき金額の賠償金が受け取れなくなるおそれがあります。
このような保険会社の主張に対しては、あなたの後遺症の症状や内容が重いものであると反論し、適切な労働能力喪失期間を認定してもらう必要があります。
(3)適切な労働能力喪失率で計算する
適切な逸失利益の算定のためには、適切な労働能力喪失率で計算することもポイントです。
例えば、顔にキズあとが残った場合などには、身体は動かすことができるために、加害者側保険会社の担当者から「顔の傷あとについては、労働能力の喪失がありませんので、逸失利益は認められません」などと言われることがあります。
そもそも労働能力喪失率は、これまで説明した労働能力喪失率表を参考にしながら、実際の被害者の職業や後遺症の部位、程度などによって判断されます。
そして、顔のキズあとは、例えば手足のしびれや痛みと比べて、労働に対する支障が少ないとされ、労働能力喪失率が低い、もしくは、労働能力喪失がないと判断されることもあるのは事実です。
しかし、被害者が接客業やサービス業など人と対面する仕事についている場合など、顔のキズあとが仕事に影響を与えることは少なくありません。
そのため、こういった場合には、労働能力喪失を認める裁判例もあります。
逸失利益の請求は弁護士への相談がおすすめ!
これまで説明したとおり、保険会社が提示する金額は、実は、あなたが本来受けとるべき金額よりも低くなっていることが多くあります。
そこで、適切な逸失利益を受け取るためには、保険会社の提示する金額が、本来あなたが受けとるべき逸失利益の金額よりも低くなっていないかを弁護士にチェックしてもらうと良いでしょう。
弁護士は、逸失利益に限らず、保険会社が提示する賠償金の金額が適正な金額になっているかをチェックします。そして、増額できる可能性がある場合には、加害者側の保険会社と増額に向けた交渉を行います。
【まとめ】逸失利益は交渉次第で増額の可能性あり!交渉は弁護士に依頼するのがおすすめ
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 専業主婦の家事労働もきちんと金銭的に評価すべきと考えられており、逸失利益を請求することができる。
- 後遺症による逸失利益は、基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数で計算する。
- 専業主婦の場合は、女性の平均給与額(賃金センサス)を基礎収入として計算する。
- 逸失利益を増額する3つのポイント
1. 適切な後遺障害等級を獲得する
2. 適切な労働能力喪失期間で計算する
3. 適切な労働能力喪失率で計算する
保険会社が提示してくる逸失利益の金額は、実はあなたにとって不利な方法で計算されている可能性があります。
弁護士が交渉することで、逸失利益を増額できる可能性がありますので、逸失利益の金額に納得できない方は、一度弁護士に相談してみてはいかかでしょうか。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、弁護士費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様にあらかじめご用意いただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。
弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2023年8月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
