交通事故の示談交渉がうまくいかない場合、解決に導いてくれる機関の一つとして、「交通事故紛争処理センター」という存在を聞いたことはないでしょうか。
交通事故紛争処理センターとは、正式名称を「公益財団法人交通事故紛争処理センター」といい、交通事故の示談交渉の橋渡しをしてくれます。
利用料金もかからず、気軽に利用できるというメリットがあります。一方で、あくまで中立的な立場からの橋渡ししかしてくれませんので、あなたの手助けはしれくれません。
ここでは、交通事故紛争処理センターの利用を検討されている方に向けて、交通事故紛争処理センターでできることや利用の流れを説明します。
この記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。
- 交通事故紛争処理センターでできること
- 交通事故紛争処理センターの利用方法
- 弁護士に依頼する4つのメリット
岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
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交通事故紛争処理センターとは
交通事故紛争処理センターとは、自動車事故の被害者と加害者(または加害者が契約する保険会社等)との示談をめぐる紛争を解決するため、中立的な立場からサポートしてくれる機関です。
東京本部を中心に、支部が7つ(札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・高松・福岡)、相談室が3つ(さいたま・金沢・静岡)あります。
交通事故紛争処理センターが行う3つのこと
交通事故紛争処理センターは、交通事故をめぐる紛争を解決するため、基本的に次の3つのことを行います。流れとしては次のようになります。
- 交通事故の法律相談
- 和解あっ旋(せん)
- 審査手続
では、これら時系列順に見ていきましょう。
なお、交通事故紛争処理センターが取り扱う紛争は、加害者が自動車(原動機付自転車を含む)の事案であり、自転車と歩行者、自転車どうしの事故による紛争は取り扱いませんので、注意が必要です。
(1)交通事故の法律相談
交通事故紛争処理センターの相談担当弁護士が、中立的な立場から交通事故に関する法律相談に乗ってくれます。
被害者は、初回相談時に事故の状況やこれまでの示談交渉の経過などについての資料を提出します。相談担当弁護士は、提出された資料を確認し、問題点を整理したり、アドバイスを行ったりします。
ここで、交通事故紛争処理センターでの法律相談と弁護士事務所での弁護士相談との違いについて説明します。
交通事故紛争処理センターでの法律相談は、弁護士事務所での弁護士への法律相談と同じでしょうか?
弁護士事務所での相談と交通事故紛争処理センターでの相談は違います。
弁護士事務所での法律相談は、あなたの味方としてアドバイスをします(法律相談を聞き、弁護士へ依頼するかを決めます)。
一方、交通事故紛争処理センターはあくまで中立的な立場の機関であり、相談担当弁護士は必ずしも被害者の手助けをしてくれるわけではないという点に注意が必要になります。
なお、交通事故紛争処理センターには、相談担当弁護士として合計187名の弁護士が委嘱されています(2019年4月現在)。
(2)和解あっ旋
初回の法律相談で、被害者が和解あっ旋の申立てをした場合に、「和解あっ旋」に入ります。
「和解あっ旋」とは、センターの相談担当弁護士が当事者双方から話を聞き、中立公正な立場から、争点・賠償額など、和解ができるように和解案を提案してくれます。
和解あっ旋によって合意に至った場合は、相談担当弁護士の立ち会いのもと、示談書または免責証書を作成します。
和解あっ旋は、和解が成立した場合の他、次のような場合に終了します。
- 相談担当弁護士が和解の成立の見込みがないと判断し、和解あっ旋が不調となった場合
- 申立人(被害者)が和解あっ旋を取り下げた場合
- 相手方から訴訟による解決の要請が出され、センターで訴訟移行の要請が承認された場合など
資料がきちんと揃っていれば、多くのケースで和解が成立しています。
例えば、人身事故の場合、通常は3回で70%以上、5回までのあっ旋で90%以上の和解が成立しています。
なお、あっ旋手続は、1回につき1時間以内をめどに行われます。
(3)審査手続
和解あっ旋で和解が成立する見込みがない場合、当事者からの申立てにより、審査手続に移行します(ただし、相手方保険会社等(加害者側)が審査を申立てるには、被害者側の同意が必要となります)。
審査手続きは、法律学者や裁判官経験者、弁護士などから選ばれた3人の審査員による審査会で行われます。
審査手続では、審査員が争点や事故の内容について当事者双方それぞれに説明を求め、主張を聴きます。そして、審査の結果、結論を示す裁定が行われます。
被害者側が裁定に同意すれば、示談が成立することになります(加害者側の保険会社は被害者と審査会の裁定を尊重するとされています)。
示談が成立した場合は、裁定の内容に基づき、示談書または免責証書が作成され、それに基づいて保険会社等からの支払手続が行われます。
一方、被害者が同意せず、示談が成立しない場合は、センターでの手続は終了し、裁判などに移行することになります。
交通事故紛争処理センターの利用の流れ
交通事故紛争処理センターの3つの手続を利用する流れをまとめます。
電話予約
送られてきた利用申込書に必要事項を記入
交通事故紛争処理センターの支部(または相談室)に申込書や資料などを提出
【法律相談】担当弁護士による法律相談(法律相談のみの場合、ここで終了)
【和解あっ旋】担当弁護士が双方にヒアリングを実施
【和解あっ旋】担当弁護士が和解案を提示
(和解成立となれば、示談書を作成して終了)
【和解不成立】和解不成立の通知から14日以内に審査の申立てを行う
(審査の申立てがなされない場合、ここで終了)
【審査手続】審査が受理されると、被害者・加害者双方出席で審査が開始
【審査手続】審査会が裁定を行う
【審査手続】審査会の裁定を受け入れるかどうかは被害者に選択権があるため、被害者が受け入れれば和解が成立し終了
受け入れない場合には訴訟などによる解決へと移行
交通事故紛争処理センターを利用する3つのメリット
交通事故紛争処理センターを利用するメリットは、主に次の3つです。
- 裁判に比べ、手間や時間がかからない
- 裁判に比べ、費用がかからない
- センターの裁定(審査)に従うかは被害者に委ねられている
それぞれ説明します。
(1)裁判に比べ、手間と時間がかからない
裁判をすると、解決するまでに長い時間がかかりますが(通常1~2年)、交通事故紛争処理センターの手続では3~6ヶ月で解決できるケースが多く、裁判ほど時間はかかりません。
また、準備すべき資料も、裁判よりは少なくて済みます。
(2)裁判に比べ、費用がかからない
裁判では訴訟費用などがかかりますが、交通事故紛争処理センターの手続を利用するためには料金はかかりません。
(3)被害者側は、センターの判断に従う必要はない
裁判では、被害者側も判決に従う必要がありますが、交通事故紛争処理センターの手続では、加害者側の保険会社はセンターの最終判断である審査の裁定に拘束されるものの、被害者側は従う必要はありません。
交通事故紛争処理センターを利用する場合に弁護士に依頼する4つのメリット
交通事故紛争処理センターの手続は、基本的に弁護士に依頼しなくても利用は可能です。
しかし、交通事故紛争処理センターを利用する場合であっても弁護士への依頼がおすすめです。
交通事故紛争処理センターはあくまでも、中立的な立場である以上、あなたの手助けはしてくれません。
そのため、例えば、あなたの資料に不足があったり、本当は賠償金の増額可能性があったりする場合でも、交通事故紛争処理センターから指摘されないこともあります。そして、知らず知らずのうちに、あなたが損してしまっていることも少なくなくありません。
交通事故紛争処理センターを利用する場合に弁護士へ依頼するメリットは次の4つです。
- 弁護士が味方になってくれる
- 書類の準備などを弁護士に任せることができる
- 代わりに期日に出席してくれる
和解あっ旋や審査会の期日には、原則として被害者本人が出席する必要がありますが、弁護士に依頼すれば、弁護士が代わりに出席してくれます。 - その後の手続についても安心
センターの手続で最終的に和解が成立しなかった場合、その後の訴訟などの対応もそのまま弁護士に任せることができます。
なお、最初の段階から弁護士に依頼できない場合でも、例えば審査会の裁定案が出てから、その結果を持ち込んで弁護士に相談することも可能です。
【まとめ】交通事故紛争処理センターとは、紛争解決のために中立的な立場からサポートしてくれる機関
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 交通事故紛争処理センターが行う3つのこと
- 交通事故の法律相談
- 和解あっ旋(せん)
- 審査手続
- 交通事故紛争処理センターの利用の流れ
- 電話予約
- 送られてきた利用申込書に必要事項を記入
- 交通事故紛争処理センターの支部(または相談室)に申込書や資料などを提出
- 【法律相談】担当弁護士による法律相談(法律相談のみの場合、ここで終了)
- 【和解あっ旋】担当弁護士が双方にヒアリングを実施
- 【和解あっ旋】担当弁護士が和解案を提示
(和解成立となれば、示談書を作成して終了) - 【和解不成立】和解不成立の通知から14日以内に審査の申立てを行う(審査の申立てがなされない場合、ここで終了)
- 【審査手続】審査が受理されると、被害者・加害者双方出席で審査が開始
- 【審査手続】審査会が裁定を行う
- 【審査手続】審査会の裁定を受け入れるかどうかは被害者に選択権があるため、被害者が受け入れれば和解が成立し終了
受け入れない場合には訴訟などによる解決へと移行
- 交通事故紛争処理センターを利用する3つのメリット
- 裁判に比べ、手間や時間がかからない
- 裁判に比べ、費用がかからない
- センターの裁定(審査)に従うかは被害者に委ねられている
- 弁護士に依頼する4つのメリット
- 弁護士が味方になってくれる
- 書類の準備などを弁護士に任せることができる
- 代わりに期日に出席してくれる
- その後の手続についても安心
交通事故紛争処理センターは公益機関だから、任せておけば大丈夫と思われているかもしれません。
しかし、あくまでも交通事故紛争処理センターは中立の立場であって、被害者だからといってあなたに肩入れすることはできません。
例えば、あなたの主張を通すには資料が足らない、賠償金の増額の可能性がある、などしても、あえてあなたにアドバイスしたりするようなことは難しいといえます。
そのため、交通事故紛争処理センターを利用する場合であっても、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談することで、今後の流れを説明し、どういった資料が必要か、保険会社や交通事故紛争処理センターからの提案や提示があなたにとって不利なものになっていないかをチェックしてくれます。
アディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという完全成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。
弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2021年12月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。