あなたの法律のお悩み一発解決サイト
リーガライフラボ

通勤時の交通事故で補償額を増やす方法は?労災保険と自賠責保険の関係について解説

作成日:
リーガライフラボ

自動車で通勤途中に交通事故にあって負傷した場合には、通勤災害として、労災保険が適用され休業給付などを受け取ることができます。
また、自動車の関係する交通事故で負傷していますので、自賠責保険も適用され保険を受け取ることができます。
このように、双方の保険を利用できる場合には、どちらの保険を利用すべきでしょうか。
今回の記事では、労災保険と自賠責保険の関係や、双方の制度の比較などについて、弁護士が解説します。

通勤時の交通事故で適用される保険は?

通勤途中や業務中の事故であれば、労災保険を利用してケガを治療することができます。
労災保険が適用されれば、健康保険のような自己負担分(通常3割)はありません。
ただし、労災保険を利用できる場合には、健康保険を利用することはできませんので注意が必要です。
また、労災保険には様々な給付内容があり、自賠責保険の保証内容と一部重なる部分があります。
例えば、労災保険でも自賠責保険でも、ケガのために働くことができず収入を失ったときは、賃金の一部相当額が給付されますが、双方の保険から2重にこの休業補償を受け取ることはできません。
ただし、後述する労災保険の「給付基礎日額の2割をもらえる休業特別支給金」については、自賠責保険で休業損害を受け取った場合でも受け取ることができます。

労災保険と自賠責保険の違いについて、次で簡単に説明します。

(1)労災保険とは?

労災保険とは、「労働者災害補償保険」の略であり、労働者が業務上の理由や通勤中に事故や災害にあって負傷・病気になった場合や、死亡した場合などに、労働者や遺族に対して補償を行う保険制度のことをいいます。
自賠責保険と同じく、被害者(労働者)保護を目的とした国による強制加入保険です。
労働者(労働の対価として賃金を受領している人のこと。正社員だけではなく、パート、アルバイトを含む)を一人でも雇用すれば、事業所は労災保険に加入します(労災保険法3条1項)。

労災保険には、「業務災害」(業務上の理由で負傷、疾病、障害、死亡したケース)と「通勤災害」(通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡)の2種類があります(労災保険法7条1項1号・3号)。
通勤時の交通事故で負傷した場合には、通勤災害として労災保険が適用されます。
通勤災害の保障内容は、次の通りです(労災保険法21条)。

  • 療養給付
  • 休業給付
  • 障害給付
  • 遺族給付
  • 葬祭給付
  • 傷病年金
  • 介護給付

(2)自賠責保険とは?

自賠責保険とは、自動車の保有者に法律上加入が義務付けられている保険です。
交通事故の被害者に対して最低限の補償を行うことを目的としており、補償対象となるのは人的な損害(ケガの治療費や、休業損害など)だけで、物的損害(車の修理代など)は対象となりません。

通勤時の交通事故で労災保険が適用されるための要件は?具体例も解説

労働者の通勤中の交通事故が、通勤災害として労災保険が適用されるためには、一定の要件が必要です。

労災保険が適用される「通勤」とは、「就業に関し」、次の移動を、「合理的な経路及び方法」により行うことをいい、「業務の性質を有するものを除く」とされています(労災保険法7条2項1~3号)。

  1. 住居と就業の場所との間の往復
  2. 就業の場所から他の就業の場所への移動
  3. 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

しかし、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません(同法7条3項本文)。したがって、その間及びその後に交通事故にあったとしても、労災保険は利用できません。
ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむをえない事由により行うための最小限度のものである場合には、逸脱または中断の間を除き「通勤」とみなされます(同法7条3項但書、施行規則8条)。

法律上の要件は抽象的でわかりにくい面がありますので、具体例で、労災保険の対象となるのかどうかを見ていきたいと思います。

参考:労災保険の通勤災害保護制度が変わりました|厚生労働省
参考:業務災害について|厚生労働省
参考:通勤災害について|東京労働局

(1)自宅から、仕事をするために職場に車で向かっている途中に交通事故にあった場合

通勤とされるためには、「就業に関し」という要件が必要ですが、これは、業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるものであることが必要です。
この具体例の場合、業務に就くために移動していますので、この要件を満たします。

また、自宅からの移動ですので、通勤とされるためには、その移動が「住居と就業の場所との間の往復」である必要があります。
「住居」とは、労働所が居住して日常生活を送っている場所のことをいい、「就業の場所」とは、業務を開始し、又は終了する場所をいいます。
この具体例の場合、自宅から職場へ移動していますので、この要件を満たします。

したがって、この具体例のケースは通勤災害として労災保険の適用対象となります。

(2)勤務先から社用車で取引先に向かう途中で交通事故にあった場合

就業の場所から他の就業の場所への移動であっても、「業務の性質を有するもの」は除かれて、通勤とはなりません。
「業務の性質を有するもの」とは、具体的には、事業主の提供する専用交通機関を利用する出退勤などが該当します。
具体例では、勤務先が提供する社用車により、就業の場所から他の就業の場所へ移動していますので、業務の性質を有するものとして除かれ、通勤とはなりません。

したがって、この具体例のケースは通勤災害とはなりませんが、業務災害として労災保険の適用対象となります。

(3)勤務先を体調不良で早退し、最寄りの病院に寄った後に自宅に帰る途中で交通事故にあった場合

勤務先から自宅への移動ですので、「住居と就業の場所との間の往復」中の交通事故です。
しかしながら、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはならないことから、帰宅途中に病院に寄ったことが、「逸脱又は中断」となるかどうかが問題になります。

「逸脱」とは、通勤途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、「中断」とは、通勤経路上で通勤と無関係な行為を行うことをいいます。
ただし、日常生活上必要な行為であって、次のように労災保険法施行令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の場合を除き、合理的な経路に服した後は再び通勤となります(施行規則8条)。

  1. 日用品の購入その他これに準ずる行為
  2. 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
  3. 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  4. 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
  5. 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続して又は反復して行われるものに限る)

具体例では、上記4.のケースに当たり、体調不良で早退したのですから、最寄りの病院に寄って帰宅することは、やむを得ない事由により必要最小限度の中断といえるでしょう。

したがって、この具体例のケースは通勤災害として労災保険の適用対象となります。

労災保険と自賠責保険の違いを解説

労災保険と自賠責保険の具体的な補償内容の違いについて解説します。

(1)休業損害(休業給付)の補償額

交通事故のケガにより働けず収入を失った場合には、自賠責保険も労災保険でも補償を受けることができます。
自賠責の基準では、基本的に1日あたりの休業損害の額が6100円(2020年4月1日以降の交通事故)と定められています。
証拠により1日についての損害額が6100円を超えることが明らかな場合には、1万9000円を限度として受け取ることができます(自動車損害賠償法施行令第3条の2)。
また、休業日数は、実休業日数を基準とし、ケガの態様、実治療日数(実際に病院で治療した日数)その他を考慮して、治療期間の範囲(治療開始日から完治した日、または症状固定日までの期間)で決められますが、休業1日目から対象となります。
したがって、自賠責保険の休業損害の計算式は次のようになります。

休業損害=6100円(最高1万9000円)×休業日数

一方、労災保険では、休業給付として給料基礎日額(※)の60%、休業特別支給金として給付基礎日額の20%が、休業4日目から支給されます(労災保険法14条、22条の2第2項)。
したがって、労災保険の休業給付及び休業特別支給金の計算式は次のようになります。

休業給付=給付基礎日額の80%×休業日数(休業4日目以降)
休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数(休業4日目以降)

※給付基礎日額とは、平均賃金のことをいい、事故直前3ヶ月間に支払われた賃金総額(ボーナスは除く)を、その期間の日数で割った1日当たりの給付額です。

参考:休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続き|厚生労働省

(2)入院費等の補償額

自賠責保険では、交通事故のケガにより入通院した場合、入通院にかかった次のような費用について、保険金を受けることができます。

  • 治療関係費(応急手当、診察、入院、投薬、手術、処置、通院、転院、看護などにかかる費用)
  • 雑費(入院1日1100円※)
  • 入通院慰謝料(1日4300円※)
    ※2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合

一方、労災保険では、入通院した場合には次の場合に限って療養給付がなされますが、自賠責保険と異なり、入院中の雑費や慰謝料は対象となりません(労災保険法13条2項、22条)。

  • 診察
  • 薬剤又は治療材料の支給
  • 処置、手術、その他の治療
  • 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の監護
  • 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の監護
  • 移送

(3)補償の限度額

自賠責保険では、交通事故による傷害を理由として受け取ることのできる保険金額の上限が、120万円と決まっていますが、労災保険では給付金の上限はありません。

(4)労災保険には休業特別支給金があり、自賠責保険とも併用可能

自賠責保険で休業損害を受け取った場合でも、労災保険の休業特別支給金(給付基礎日額の20%)については、別途受け取ることができます。
通常は、労災保険の休業給付支給の請求と同時に、休業特別支給金の支給申請を行いますが、自賠責保険で休業損害を受け取っている場合には、休業特別支給金の支給申請のみを行うことになります。

通勤時交通事故で労災保険と自賠責保険のどちらを選べば良い?7つのパターンを紹介

交通事故に遭って負傷し、労災保険と自賠責保険を利用できる場合、どちらを利用すればよいのでしょうか。
7つのパターン別に双方の保険を比較してみますので、参考にしてください。

(1)1日あたりの休業補償をできるだけ多くもらいたいとき

1日あたりの休業補償をできるだけ多くもらいたいときは、自賠責保険の方にメリットがあります。
労災の休業給付は、休業特別支給金を合わせても事故前の給付基礎日額の80%ですが、自賠責保険であれば、証拠をもって証明できれば事故前の日額基礎収入が満額支給されるためです。
自賠責保険で休業損害を受け取っても、特別支給金(給付基礎日額の20%)は別途受け取ることができますので、忘れずに申請するようにしましょう

(2)補償金が120万円をこえるとき

交通事故で傷害を負った場合、労災で受けとることのできる給付金が120万円を超えるときは、労災保険の方にメリットがあります。
自賠責保険では、傷害に対する保険金は合計120万円という限度がありますが、労災保険にはそのような上限額が存在しないためです。

(3)自分自身の過失が7割以上のとき

交通事故の過失割合について、自分自身の過失が7割以上のとき(加害者側)は労災保険の方にメリットがあります。
自賠責保険は、交通事故の被害者保護を目的とした制度ですので、過失が7割以上あると受け取ることのできる保険金額が2~5割減額されてしまいますが、労災保険ではそのような減額はなされないためです。

(4)入院中の雑費をもらいたいとき

入院が長引き、雑費をもらいたいときは自賠責保険の方にメリットがあります。
自賠責保険は、入院中の雑費として日額1100円を受け取ることができますが、労災保険では補償されません。
ただし、日額1100円ですので、あまり重視すべきポイントではなさそうです。

(5)長めの通院になりそうなとき

はっきりとした原因が不明で通院が長引きそうなときには、労災保険の方にメリットがあります。
事故の状況や受傷の程度等を考慮して、事故と関係ない治療とされる場合には、自賠責保険は治療費として認定されないケースがあります。

(6)後遺障害が残ったとき

通勤時交通事故により身体に障害が残ったときには、労災保険の方にメリットがあります。
自賠責保険では、後遺障害として認定された障害について、障害等級別に後遺障害慰謝料を受け取ることができますが、一時金であり生涯にわたって受け取れるものではありません。
一方、労災保険では、7級以上の障害等級が認定されれば、障害一時金の支給を受けるか、障害年金の支給を受けるかを選ぶことができます。
障害年金は、障害状態が認定基準に該当し続ける限り、死亡するまで支給を受けることができます(労災保険法15条、22条の3)。

(7)死亡したとき

通勤時交通事故により、被害者が死亡したときには、労災保険の方にメリットがあります。
自賠責保険では、死亡による損害に対して支払われる保険金の上限は3000万円であり、一時金として支払われますが、労災保険では一定の条件を満たせば遺族への年金が支給されるためです(労災保険法16条の2~9、22条の4)。

【まとめ】通勤時の交通事故に関してお困りの方は弁護士に相談

通勤時の交通事故により受けた損害については、自賠責保険と労災保険を利用して保険金や給付を受けることができますが、双方の制度の調整のため、一方から損害の補填を受けると、一方の同じ趣旨の補償を受けられないことがあります。
損害の適切な補償を受けるためには、自賠責保険と労災保険の制度の違いを理解し、併用できる部分については忘れずに併用することが大切です。
また、通勤時の交通事故については、加害者側の任意保険会社に請求できるケースもあり、制度を比較しながらうまく使い分けて請求することが必要となります。
通勤時の交通事故の被害に遭い、どの保険を利用してよいのかわからないかたは、一度弁護士事務所に相談することをお勧めします。

交通事故に関するメリット満載

よく見られている記事

弁護士による交通事故
ご相談は何度でも無料

メールでお問い合わせ

ご来所不要お電話や、オンラインでの法律相談を実施しておりますご相談の際、ご来所いただく必要はありません!
お電話、もしくはテレビ電話などのオンライン環境を使って、ご自宅からご相談できます。
外出が困難な方・新型コロナウイルス感染への不安で外出を控えていらっしゃる方も、ご安心ください。
ご相談方法については、お気軽にお問い合わせください。
※オンライン相談をご希望の方は、カメラ付きのパソコンやスマートフォン、タブレットなどが必要です。

0120-250-742

朝9時〜夜10時・土日祝も受付中