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交通事故の治療でも健康保険を利用できる?高額療養費制度も解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

「交通事故でけがをした…。病院で治療するときに健康保険を使っても良いの?」

交通事故によってけがをした場合、基本的には健康保険を使って治療をすることができます。
加害者が任意保険に加入している場合、通常は保険会社が直接病院に治療費を支払い、健康保険の利用を意識されない方も多いかもしれませんが、場合によっては、健康保険を使って治療費を低額に抑えるべきケースもあります。
また、交通事故によるけがの治療についても、「高額医療費制度」(医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関などに支払う医療費が1ヶ月で上限額を超えた場合、その超えた額が支給される制度)を利用することができます。

今回の記事では、次のことについて弁護士がご説明します。

  • 交通事故のけがの治療に健康保険を利用できること
  • 交通事故のけがの治療に健康保険を利用すべき3つのケース
  • 健康保険と「高額医療費制度」
  • 交通事故のけがの治療に健康保険が使えない4つのケース
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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交通事故の治療でも健康保険を利用できる

交通事故の治療には、健康保険を利用できないと勘違いしている人がいます。
第三者に殴られけがをした場合のように、けがについて全面的に責任を負う人がいる場合、原則として治療費はその加害者の負担で支払われるべきで、健康保険を使用することはできないと考えられているためです。
しかし、厚生労働省による通達(「犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて」)では、自動車事故などによってけがをした場合も医療保険の給付の対象であることが明示されています。

ですから、加害者に全面的に責任のある交通事故を含め、交通事故の治療でも健康保険を利用することができます。

ただし、交通事故によるけがの治療に健康保険を使った場合、保険が適用される分の治療費は保険者が加害者の代わりに一時的に立て替えるという建付けになります。
健康保険組合が立て替えた分は、後日、健康保険組合から加害者に請求することになります。

参照:○犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて|厚生労働省

健康保険を利用する場合の流れ

健康保険を利用する場合の流れは、次のとおりです。

加入する健康保険の保険者(健康保険組合など)に、事故発生の日時や治療を受ける病院などを知らせる

治療を受ける病院で健康保険証を提示して健康保険を使う旨を伝える

事故発生状況報告書など必要書類を保険者に提出する

交通事故で健康保険を利用する場合、保険者から「第三者行為による傷病届」などの各書類の提出が求められます。

通常のけがや病気の場合に比べて手続きが煩雑にはなりますが、提出しないと保険給付が制限されますので、注意してください。

交通事故のけがの治療で健康保険を使うべき3つのケース

交通事故のけがの治療について、加害者やその任意保険会社から「健康保険を利用してほしい」と言われることがあります。
しかし、被害者自身にメリットがなければ、あえて健康保険を利用しなくても構いません。
例えば、健康保険を利用できる治療(保険診療)には制限があるため、けがの治療に適した診療が自由診療で受けられるのであれば、自由診療を受けたほうがいいこともあります。

他方、交通事故のけがの治療で積極的に健康保険を使うべきケースもあります。
今回は、交通事故のけがの治療で健康保険を使うべき3つのケースについてご説明します。

(1)加害者が任意保険に加入していないケース

交通事故の加害者が任意保険に加入している場合には、通常、治療費は保険会社から病院に直接支払われることが多いです(これを「一括対応」と言います)。
しかし、加害者が強制加入である自賠責保険しか加入しておらず、任意保険に加入していなければ、一括対応はありません。

このような場合、被害者は治療費について自賠責保険に請求しなければいけませんが、自賠責保険から支払われる保険金には、次のような上限があります。

自賠責保険の限度額
けがによる損害上限120万円
後遺障害による損害
(※後遺障害等級によって限度額が変わります)
75万~4000万円
死亡による損害3000万円

「けがによる損害」には、治療費などの治療関係費のほか、休業損害や入通院慰謝料(傷害慰謝料)などが含まれていますので、けがが重いとあっというまに120万円の上限を超えてしまいます。

そこで、このような場合には、健康保険を利用して治療費を減らすことが必要となります。

例えば、治療費が50万円、休業損害が10万円、入通院慰謝料(傷害慰謝料)が100万円という事例でご説明します(※被害者が健康保険を利用した場合には3割負担とします)。

この場合、健康保険を利用しない場合には、治療費・休業損害・入通院慰謝料の合計は160万円ですが、自賠責保険から補償されるのは120万円だけですので、被害者は40万円分を自分で負担しなければいけません。

他方、健康保険を利用した場合には治療費を15万円(50万円の3割分)に抑えられますので、治療費・休業損害・入通院慰謝料が125万円分になります。

このうち、自賠責保険から120万円分の補償を受けると、結局、被害者が負担すべき金額は合計20万円(健康保険を利用した場合の15万円と自賠責の上限を超えた5万円の合計)となります。

しかも、健康保険を用いる場合の医療費の計算は1点10円と決められていますが、自由診療の場合には1点当たりの医療費の計算は、通常、それ以上になります。
ですから、健康保険を用いると、そもそもの医療費を縮減することができます。

もちろん、自賠責保険から補償を受けられない分について被害者は加害者に請求できますが、任意保険に加入していない加害者から十分な補償を受けられるとは限りません。

加害者から賠償金を受けられないリスクに備えて、加害者が任意保険を加入していない場合には、健康保険を利用して治療を受けるべきといえるのです。

そもそも加害者が自賠責保険にすら加入していなかった場合にも、加害者本人から賠償を受けられないリスクが高いので、積極的に健康保険を利用すべきです!

(2)被害者の過失割合が大きいケース

一般的に、交通事故では加害者だけではなく被害者にも過失(不注意や落ち度)があると判断されることも多いです。

被害者にも過失がある場合、その過失割合に応じて、被害者が受け取るべき賠償金が減額されます。これを「過失相殺」と言います。

例えば、被害者の損害額が100万円であったとして、被害者に1割の過失が認められる場合には、被害者が受け取る賠償金は1割分(10万円)が減額された90万円になります。

そこで、治療費が100万円・被害者の過失割合が2割という事例で、被害者が自分で負担しなければいけない治療費を検討してみましょう(被害者が健康保険を利用する場合3割負担とします)。

【健康保険を使わない場合の被害者の負担】

  • 被害者が病院に支払った治療費…100万円
  • 被害者の過失割合による過失相殺分…20万円
  • 被害者が加害者から受け取れる治療費…80万円
➡この場合、被害者は20万円分の治療費を負担しなければいけません。

【健康保険を使った場合の被害者の負担】

  • 被害者が病院に支払った治療費…30万円(100万円の3割分)
  • 被害者の過失割合による過失相殺分…6万円
  • 被害者が加害者から受け取れる治療費…24万円
➡この場合、被害者は6万円分の治療費を負担しなければいけません。

このケースでは、健康保険を使って治療をした方が、被害者の負担が14万円分、低額で済みます。
さらに、被害者の過失割合が3割だとすると、健康保険を利用しない場合の被害者負担は30万円、利用する場合は9万円になりますので、基本的には被害者の過失が大きくなればなるほど、健康保険を利用するメリットは大きくなると言えるでしょう。

(3)保険会社から治療費の支払いを打ち切られたケース

一括対応がなされている場合であっても、治療が長期間になる場合には加害者の任意保険会社から治療費の支払いを打ち切られることがあります。

保険会社から治療費の打ち切りを打診された場合には、保険会社の言うままに治療を終了せず、まずは医師に治療を継続する必要があるかどうか確認してください。

その後の流れは、大きく分けると次のとおりです。

医師が治療を継続する必要があると判断した場合、保険会社と治療費の支払いの継続を求めて交渉すべきですが、どうしても治療費の支払いを打ち切るという場合には、健康保険を利用して治療を継続すべきです。

治療が必要であるにもかかわらず、途中で治療を打ち切ってしまうと、十分な治療を受けられないばかりか、のちのち適切な慰謝料を受け取れない可能性もあります。入通院慰謝料は、基本的に入院・通院日数によって決まるため、途中で治療を打ち切ると、慰謝料も低額になってしまうというわけです。

健康保険を利用して治療を続けた場合、その分の治療費(自己負担分)はどうなるのですか?最終的には加害者の保険会社に負担してもらえますか?

後々、示談をする際、必要な治療であったと認められる場合には、加害者の保険会社に負担をしてもらうことができます。

「高額療養費制度」について

健康保険には、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月の上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」があります。

1ヶ月の上限額は、年齢や所得によって変化します。

高額医療費制度で支給されるのは、1つの医療機関に支払った金額の合計ではなく、複数の医療機関に対して支払った医療費を合計して計算します(※月の初めから終わりまでの1ヶ月分の合計です)。

ただし、高額医療費制度は、一旦、各医療機関に医療費を全額支払った上で申請し、後から上限額を超える分が還付されるという仕組みですので、一時的に立て替える負担が大きくなります。

そこで、一時的であれ支払いが難しい方は、限度額適用認定証の利用を検討してください。

医療費が高額になりそうな場合には、健康保険などの保険者に申請すれば、「限度額適用認定証」が交付されます。

この限度額適用認定証を医療機関の窓口に提示すれば高額療養費制度の自己負担限度額を支払うだけで治療を受けることができます(※保険適用の治療に限ります。また、保険適用外の差額ベッド代などは自己負担です)。

限度額適用認定証の申請には条件があるため、あらかじめ確認しておきましょう。

限度額適用認定証は、既に支払った医療費には使えません。
医療費が高額になることが見込まれる場合には、早めに申請するよう注意してください!

参照:高額な外来診療を受ける皆さまへ|厚生労働省

交通事故の治療で健康保険を利用するときに知っておくべきこと

交通事故の治療で健康保険を使う際に覚えておきたいことをお伝えします。

(1)交通事故の治療で健康保険を利用するときは申請が必要

先ほど簡単にご説明しましたが、交通事故の治療で健康保険を利用する場合は、保険者(健康保険組合など)に「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。

第三者行為による傷病届は、後日保険者から相手方の保険会社へ、健康保険給付をした費用を請求するために必要となる重要な書類で、交通事故の被害者が健康保険を利用するときには、提出する法律上の義務があります(健康保険法施行規則65条)。

また、交通事故によるけがで健康保険を利用した場合には、どのような経緯でけがをしたのかを保険者から尋ねられることになります。この調査には誠実に応じなければなりません(健康保険法59条)。

保険者に第三者行為による傷病届を提出する前に示談をしてしまうと、加害者に治療費を請求できなくなることもあるので、示談をする前に必ず加入している保険者に相談しましょう。

(2)示談の内容によっては健康保険による治療が受けられなくなる

健康保険を利用して治療中に加害者と示談をする場合、示談後の治療費を含めて示談をして賠償金を受け取ると、それ以上健康保険を利用できなくなる可能性があります。

先ほどご説明したとおり、健康保険を利用した場合に保険者が負担する部分は、後日保険者から加害者に請求されます。

被害者が加害者に対する治療費の請求権を放棄した場合、保険者からも加害者に治療費の負担分の請求ができなくなるため、このようなケースでは健康保険が使えなくなってしまいます。そうなると、治療費が全額被害者の負担となりますので、示談の際は注意が必要です。

(3)自由診療から健康保険に切り替えも可能

健康保険の適用される範囲内の治療に関しては、自由診療から健康保険を利用した治療に切り替えるためには医療機関の協力が必要です(例外的に医療機関側の経理の手続き上、健康保険への切り替えが難しいこともあります)。

加害者の任意保険会社から治療費を打ち切られて健康保険が使えないと思っている方は、医療機関に健康保険へ切り替えできないか確認してみましょう。

健康保険を使えない4つのケース

交通事故によるけがの治療でも健康保険を使えますが、健康保険を使えないケースもあるので、注意してください。

(1)被害者が故意の犯罪行為をしていた場合

健康保険法116条は、故意の犯罪行為による場合などの保険給付を否定しています。

ですから、被害者が交通事故当時、飲酒運転や無免許運転をしていた場合などは、健康保険を使えない可能性があります。

(2)健康保険適用外の医療行為を受ける場合

保険適用外の医療行為を受ける場合は、健康保険が使えません。

健康保険での治療で問題ない場合もありますが、けがの内容によっては、自由診療で保険適用外の先進医療や薬を使ったほうが良いこともあるので、医師と相談し、状況に合わせて選択することをおすすめします。

(3)健康保険に対応していない医療機関で治療する場合

本来、交通事故によるけがの治療でも健康保険を利用することができますが、病院によっては交通事故の治療に健康保険を利用できないこともあるので、注意しましょう。

そもそも交通事故で健康保険を利用できることを知らない病院もあれば、手続きが煩雑であるため健康保険の利用を断っている病院もあります。

「第三者行為による傷病届を提出します」と伝えてもなお健康保険の利用を断られた場合には、健康保険の利用を諦めるか、別の病院に切り替えることを検討しましょう。

さらに、整骨院や接骨院は病院ではないため、施術の内容によっては健康保険が使えない場合があります。

また、整骨院や接骨院で施術を受ける場合は、加害者の保険会社からも支払われない可能性があるので、医師の指示のもと整骨院や接骨院に通うようにしてください。

(4)労災保険が適用される場合

通勤途中や業務中の交通事故には、労災保険を利用できるため、健康保険を利用することはできません(健康保険法1条、55条)。

労災保険を利用できる場合には、被害者の過失割合に関係なく労災保険から全額支払われるため、被害者の負担はありません(ただし、通勤災害の場合には、200円の自己負担金が生じます)。
パートやアルバイトであっても労災保険に必ず加入しているため、会社に交通事故の詳細を連絡しましょう。

健康保険か労災保険かを選択できるわけではなく、健康保険を利用することはできません。
誤って健康保険を使用した場合は、医療機関において労災保険に切り替える手続きを行いましょう。もし診療を受けた医療機関で切り替え手続きができない場合には、健康保険で立て替えた金額を保険者に返済したうえで、労災保険が支払われるのを待ちます。経済的に大きな負担を負うことになるので、間違えないようにしてください。

参照:労災補償|厚生労働省

【まとめ】交通事故によるけがの治療でも、基本的には健康保険を利用できる!

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 交通事故によるけがの治療についても、基本的に健康保険を利用できる。
  • 次の3つのケースでは、健康保険を利用して治療を受けるべき。
    1. 加害者が任意保険に加入していない場合
    2. 被害者の過失が大きい場合
    3. 任意保険会社から治療費の支払い(一括対応)を打ち切られた場合
  • 交通事故によるけがについても、健康保険の「高額医療費制度」を利用できる。
  • ただし、高額医療費制度は一時的に医療費を負担しなければいけない。医療費が高額で負担が大きい場合には「限度額適用認定証」の交付を受ければ自己負担額の上限を支払うことで治療を受けられる。
  • 交通事故のけがの治療で健康保険を利用できないのは次のようなケース。
    1. 被害者が故意の犯罪行為により交通事故にあった場合
    2. 健康保険適用外の医療行為を受ける場合
    3. 健康保険に対応していない医療機関で治療する場合
    4. 労災保険が適用される場合

健康保険による治療を検討するケースというのは、加害者の任意保険会社から治療費を打ち切られたというケースが多いです。
今回の記事でもご説明しましたが、保険会社が治療費を打ち切ったとしても、治療が必要であれば治療を継続すべきです。
ご自身では保険会社に対応できない場合には、弁護士にご相談ください。
次の解決事例のように、弁護士が保険会社と交渉することによって、治療費の支払いが継続されるケースもあります。

交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。

すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという完全成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。

また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。

実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。

(以上につき、2022年8月時点)

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