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内縁の妻に相続権はない?財産を受け取る4つの方法と居住権の守り方

弁護士 重光 勇次

監修弁護士:重光 勇次

(アディーレ法律事務所)

特に力を入れている分野:相続、アスベスト救済、インターネット権利侵害等

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

長年連れ添っても、法律上の妻ではない「内縁の妻」には相続権が一切ありません。
しかし、遺言書や生前贈与など、正しい対策を行えば内縁の夫の死後の生活や住まいを守ることは可能です。
本記事では、内縁の妻が財産を受け取るための方法と、居住権を確保する手段を分かりやすく解説します。

ここを押さえればOK!

内縁の妻に相続権はなく、遺産はすべて法定相続人に渡ります。
二人の間に認知された子がいても、相続するのは子のみで内縁の妻に権利はありません。

財産を受け取るためには、元気なうちに以下の対策が必要です。

①遺言書の作成(遺贈)
②生前贈与
③生命保険の受取人指定
④(法定相続人がいない場合)特別縁故者制度の活用

特に持ち家の場合、内縁の妻には「配偶者居住権」が適用されないため、相続人から退去を求められる危険があります。
生活基盤を守るためにも、口約束ではなく、遺言書や不動産の共有名義化といった手段を講じておくことが大切です。
生前対策でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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「内縁の妻」に相続権はない

結論からお伝えすると、どれだけ長年連れ添い、互いに協力して財産を築いていたとしても、内縁の妻(事実婚)に相続権はありません。

日本の民法は、婚姻届を提出している「戸籍上の配偶者」のみを相続人として認めるルール(法律婚主義)をとっているためです。
そのため、亡くなった側が生前に遺言書などの対策をしていない場合、遺産はすべて法律上の権利を持つ「法定相続人」に渡ります。

具体的には、パートナーに前妻(あるいは前夫)との子がいればその子が、子がいなければ親や兄弟姉妹が相続人となります。
つまり、突然現れた疎遠な親族から、預貯金や家の引き渡しを求められるリスクが存在するのです。

二人の間に子どもがいる場合はどうなる?

では、二人の間に子どもがいる場合はどうでしょうか。
あなたが内縁の妻、パートナーが内縁の夫というケースで考えてみましょう。
もし、内縁の夫がその子を法的に「認知」していれば、子どもは「第一順位の相続人」として遺産を受け継ぐ権利を持ちます。

戸籍上の配偶者がいないため、基本的には子どもが全財産を相続することになります。
しかし、ここでも注意が必要です。相続人はあくまで「子ども」だけであり、母親である内縁の妻は、相続人ではありません。

子どもが未成年の場合、母親が親権者として遺産を管理することにはなりますが、それはあくまで「子どもの財産」です。
内縁の妻自身の財産になるわけではない点を理解しておく必要があります。

内縁の妻が財産を受け取るための4つの方法

前述の通り、内縁の妻には法的な相続権がありません。
しかし、生前に対策を講じておくか、あるいは特定の条件を満たすことで、財産を受け取る方法はあります。
ここでは、内縁関係でも財産を受け継ぐための4つの主要な方法について解説します。

(1)「遺言書(遺贈)」による財産の取得

相続において非常に重要な対策としてまず挙げられるのが、遺言書の作成でしょう。
「全財産(または一部)を内縁の妻である〇〇に遺贈する」という内容の遺言書を作成してもらえば、内縁の妻であっても財産を受け取ることができます。
これを法律用語で「遺贈(いぞう)」と呼びます。

ただし、注意点があります。
内縁の夫に子どもや親などの法定相続人がいる場合、彼らには最低限の遺産取得分である「遺留分(いりゅうぶん)」が認められています。
遺言書にすべての財産をあなたに譲ると書いてあっても、あとから相続人に「遺留分侵害額請求」をされると、遺留分に当たる金額を支払わなければなりません。
トラブルを防ぐためには、遺言を遺留分に配慮した内容にすることをおすすめします。
なお、内縁の夫に子どもがおらず、両親ともに亡くなっていて(※)、法定相続人が兄弟姉妹のみである場合には、遺留分を考慮する必要はありません。
遺留分が認められる法定相続人は子どもと直系尊属だけで、兄弟姉妹には遺留分が認められていないからです。
※直系尊属である祖父母もすでに亡くなっているものとします。

遺留分について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

「遺留分」とは?公正な相続を実現するためのポイントを弁護士が解説

(2)「生前贈与」で早めに財産を移転する

内縁の夫が元気なうちに、財産の名義をあなたに移してしまうのが「生前贈与」です。
預貯金の振込や不動産の名義変更を行うことで、確実に財産を渡すことができます。

とはいえ、贈与には贈与税がかかります。
一般的に、相続税よりも贈与税の方が税率は高く設定されており、一度に多額の財産を移すと高額な税金が発生します。
そのため、年間110万円までの基礎控除枠を利用して数年かけて贈与する(暦年贈与)などの対策を検討してみましょう。

ただし、生前贈与で財産を受け取る場合は注意が必要です。
亡くなる数年以内(※)に受けた贈与は「相続財産」の一部とみなされ、相続税の計算対象に加えられるルール(生前贈与加算)があるためです。
内縁の妻であっても、生前贈与で財産をもらう場合はこのルールが適用される可能性があるため、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
※加算される期間は、執筆時点において「7年以内」となっています。

(3)生命保険の受取人に指定してもらう

生命保険(死亡保険金)を活用するのも有効な手段です。
死亡保険金は、原則として遺産分割協議の対象となる「相続財産」ではなく、受取人固有の財産として扱われます。
つまり、ほかの相続人と話し合うことなく、現金を受け取ることができるのです。

かつては戸籍上の配偶者しか受取人にできない保険会社が多かったですが、現在は内縁関係(事実婚)でも受取人に指定できる保険商品が増えています。
加入時には「同居期間の証明」や「生計を共にしている実態」などの申告が必要ですが、手元に当面の生活資金を残すために非常に適した方法といえるでしょう。

(4)相続人が誰もいない場合の「特別縁故者」制度

内縁の夫に子どもも親も兄弟姉妹もおらず、法定相続人が一人もいない場合に限り使えるのが「特別縁故者」という制度です。

遺言書がない状態で相続人がいない場合、基本的に遺産は最終的に国庫(国)に帰属します。
もっとも、その前に家庭裁判所へ申し立てを行うことで、内縁の妻が「被相続人と生計を同じくしていた者」として財産の分与を受けられる可能性があるのです。
ただし、認められるまでに時間がかかる(1年程度かかることもある)というハードルがあります。あくまで遺言書がない場合の最終手段と考えておいたほうが無難でしょう。

【要注意】住み慣れた「家」はどうなる?居住権のリスクと対策

現金や預金以上に切実なのがこれからの住む場所の問題です。
内縁の夫名義の家に二人で住んでいる場合、死後にその家を追い出されてしまうリスクはあるのでしょうか。

(1)賃貸物件の場合と持ち家の場合の違い

賃貸の場合、内縁の妻が保護される制度があります。
まず、内縁の夫に相続人が誰もいない場合、借地借家法という法律により、内縁の妻が権利を引き継いで住み続けることが認められています。
相続人がいる場合は、賃借権も相続の対象となりますが、過去の裁判例では、相続人が内縁の妻に対して「自分たちが相続したから出ていけ」と請求することは権利の濫用として認められないケースが多く、基本的には住み続けられる可能性が高いでしょう。
それでもトラブルを防ぐために、名義変更などについて大家さんや管理会社に相談しておくと安心です。

一方で、内縁の夫名義の持ち家の場合、その家はそのまま相続人の所有物になります。
そのため、もし相続人が「家を売りたいから出て行ってほしい」などと主張した場合、立場が弱くなってしまうリスクがあります。
過去の裁判では、内縁の妻が住み続けられるよう保護したケースもありますが、裁判で争うこと自体が大きな精神的・金銭的負担となってしまうでしょう。
「配偶者居住権」も内縁の妻には適用されないため、やはり事前の対策が大切です。

配偶者居住権について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

夫の死後も今の家に住める?配偶者居住権の意味とメリット(1)

(2)住居を守るために今からできること

路頭に迷うといった最悪の事態を防ぐためには、内縁の夫が元気なうちに対策を講じることが必要です。

特に有効なのは、やはり遺言書を作成し、家をあなたに遺贈すると明記してもらうことでしょう。
また、家の権利の一部だけでも生前に贈与してもらい「共有名義」にしておくことも、相続人による一方的な売却や退去請求を防ぐ手段になり得ます(ただし、後に他の相続人(共有者)との間で共有物分割のトラブルのリスクをもたらすことになる点には注意が必要です)。
「俺が死んでも、ずっとここに住んでいいよ」という口約束は、法的には何の役にも立ちません。
あなたが内縁の夫の死後も家に住み続けられるよう、遺言書の作成について、早めに話し合っておくことが大切です。

【まとめ】

法的に不利な立場にある内縁の妻だからこそ、事前の準備や正しい知識が不可欠です。
「うちは事実婚だから」と諦めず、まずは現状でどのような権利主張が可能か確認しましょう。
一人で悩まず、専門家の力を借りて将来の安心を確保してください。

生前対策でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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