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ニックネームのみ。マッチングアプリ経由の不倫で相手を特定するには?

弁護士 池田 貴之

監修弁護士:池田 貴之

(アディーレ法律事務所)

特に力を入れている分野:家事事件(不貞慰謝料請求や離婚などの男女トラブル全般)

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

配偶者のスマートフォンから発覚した不倫(不貞行為)。 しかし、相手はマッチングアプリやSNSで知り合った人物で、判明しているのは「ニックネーム」だけ——。

「どこの誰かわからない状態では、慰謝料請求はできない」と諦めてはいませんか?

実務上、相手の氏名や住所が不明でも、一定の情報さえあれば、法的な手続きを用いて相手を特定できる可能性があります。ただし、デジタルの痕跡を辿るには、「スピード」が重要です。

本記事では、相手の素性がわからない事案において、どのように相手を特定し、法的責任を追及すべきか、その実務的な手法と注意点について解説します。

なぜ「ニックネーム」だけでは請求できないのか? 法的な壁

不貞の証拠(メッセージのやり取りや写真)が手元にあっても、相手の「氏名」と「住所」が不明な状態では、弁護士であっても直ちに慰謝料請求を行うことはできません。

まず、不倫相手に対して慰謝料を請求する際、第一段階として、内容証明郵便などで慰謝料を請求する書面を送付するのが一般的です。
しかし、郵便というシステム上、送付先の住所と受取人の氏名がわからなければ、書面を届けることすらできません。

また、話合いで解決せず裁判(訴訟)を行う場合も同様です。
訴状には被告の氏名と住所を記載して特定する必要があり、「氏名不詳(ハンドルネームのみ)」のままでは、原則として訴えを提起することができないのです。

さらに、マッチングアプリやSNSのアカウントは、本人の意思一つで簡単に削除(退会)したり、特定のアカウントをブロックしたりすることが可能です。デジタル上の繋がりは非常に脆く、相手と連絡が取れなくなってしまえば、追及の糸口は途絶えてしまいます。

したがって、泣き寝入りを避けるためには、デジタル上の曖昧な情報を、現実世界の「個人の特定」に結びつける手続きが不可欠となります。

「電話番号」が突破口に。弁護士による調査手法「弁護士会照会」とは

では、相手を特定するために最も重要な情報とは何でしょうか。 それは、相手の「携帯電話番号」です。
もし、配偶者のスマホの着信履歴やメッセージ、あるいはアプリの登録情報などから、相手の携帯電話番号が判明していれば、そこから氏名や住所を割り出せる可能性が大幅に高まります。
ここで用いられるのが、弁護士法第23条の2に基づく「弁護士会照会」という制度です。
これは、弁護士が受任している事件の証拠収集などのため、弁護士会を通じて企業や公的機関に情報の開示を求める制度です。
具体的には、以下のような流れで調査を行います。

  1. 判明した電話番号をもとに、その契約している携帯電話会社(キャリア)を特定する。
  2. 弁護士会を通じて、その携帯電話会社に対し、契約者の「氏名」や「住所」などの開示を求める照会をかける。
  3. 携帯電話会社が回答に応じれば、契約者情報が開示され、相手の特定に至る。

※ただし、近年はプライバシー保護の観点から、弁護士会照会だけでは回答を拒否する通信事業者も増えています。その場合は、訴訟手続きの中で行う裁判所を通じた「嘱託調査」など、より強力な法的手段を検討する必要があります。

SNSのアカウント名やLINE IDしかわからない場合でも、調査の手立てがないわけではありませんが、調査の難易度は上がります。
一方、携帯電話番号は契約時に本人確認書類の提出が義務付けられているため、情報の確度が高く、特定への「最短ルート」となり得るのです。

※なお、格安SIMの一部や、契約状況によっては回答が得られないケースもあります。必ず特定できるわけではない点はご留意ください。

やってはいけない!リスクの高い「自分で特定」する行為

配偶者の裏切りを知れば、感情的になり、「なんとしてでも相手を突き止めたい」と焦るのは無理もありません。しかし、独自の判断で無理な調査を行うことは、法的にも実務的にも極めて高いリスクを伴います。

1.法的リスクや証拠能力への悪影響
たとえば、配偶者のスマホのパスコードを勝手に入力してロックを解除したり、中身を盗み見たりする行為は、「プライバシー権の侵害」として民事上の損害賠償請求の対象となるだけでなく、「不正アクセス禁止法違反」という犯罪に該当するリスクもあります。
また、配偶者のSNSアカウントのID・パスワードを勝手に入力してログインする行為も、同法違反となる可能性が高い危険な行為です。
さらに、不当な手段で入手した証拠は、あとで裁判になった場合に証拠として認められにくくなるリスクがあることも忘れてはいけません。

2.証拠が隠滅される「実務上」のリスク
焦って配偶者のスマホから相手にメッセージを送ったり、「不倫に気づいている」と告げてしまったりすると、相手から警戒されます。
マッチングアプリの退会、SNSアカウントの削除、LINEのブロックなどをされてしまえば、そこから繋がる「デジタル上の糸口」は消滅します。一度消されたデータを復元し、個人の特定まで繋げるのは極めて困難です。

相手に勘づかれないよう、水面下で証拠を保全するのが得策です。ご自身の判断で動く前に、まずは専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

 【まとめ】

マッチングアプリやSNSを介した不倫トラブルは、相手の匿名性が高いゆえに、被害者が泣き寝入りを強いられやすい傾向にあります。
しかし、「相手の名前がわからない」というだけで、受けた精神的苦痛に対する賠償請求を諦める必要はありません。

  • 「電話番号」などの断片的な情報からでも、弁護士会照会で特定できる可能性があること
  • 自己流の調査はリスクが高く、証拠隠滅を招くおそれがあること

この2点を押さえ、冷静かつ迅速に行動することが、解決への第一歩となります。
不倫された事実に向き合うことは辛い作業ですが、法的な手続きを通じて事実を明らかにし、適切な責任追及を行うことは、あなたの気持ちに区切りをつける第一歩にもなるはずです。

不倫の慰謝料請求でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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