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「慰謝料500万」は払いすぎ?示談書に潜む落とし穴と自分を守る盾

弁護士 池田 貴之

監修弁護士:池田 貴之

(アディーレ法律事務所)

特に力を入れている分野:家事事件(不貞慰謝料請求や離婚などの男女トラブル全般)

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

深夜、家族が寝静まったリビング。ポストに届いた一通の「内容証明郵便」が、あなたのそれまでの穏やかな日々に、波紋を広げていきます。

「不貞行為に対する慰謝料として、金500万円を請求する」

心臓が早鐘を打ち、目の前が暗くなる。職場にバラされたら、家族に知られたら……。

「今すぐ全額払って終わらせたい」という衝動が、あなたを突き動かしているはずです。しかし、その焦りや不安こそが、相手方の「思うツボ」だとしたらどうでしょうか?

パニックに陥り、法外な額の支払いに同意してしまう前に、冷静にこの記事を読み、「自分を守る盾」を手に入れましょう。

【架空事例】とりあえず早く終わらせようとして自滅した、ある40代男性の悲劇

架空の事例として、Aさん(45歳・大手メーカー勤務)の間違った防衛法を紹介します。

知らない電話番号からの電話に出たAさん。
なんと相手は、すでに別れた不倫相手の夫でした。不倫の慰謝料として500万円の請求を受けたのです。

電話で、「家族に話す」「会社にも伝える」と言われてしまい、その言葉に怯えたAさんは、どうしていいかわからず、悩みながらもしばらく放置していました。
しばらくすると、自宅に「内容証明郵便」が届きました。
その書面には、「不倫の慰謝料として500万円を支払ってほしいこと」「決められた期日までに支払わなければ法的手段を検討する」と書かれていました。

「裁判になったら大変だ…!家族にもばれてしまう」

そう思ったAさんは、不倫相手の夫に連絡を取り、「慰謝料全額を支払う」と回答してしまいました。
ほどなくして送られてきた、示談書にも署名押印して送り返し、慰謝料を支払ってしまったのです。

結果、何が起きるのでしょうか。

(1)相場以上の高額な支払い

不倫慰謝料の裁判上の相場は、相手夫婦が離婚した場合で100万円~300万円程度。
離婚しなければ数十万円~100万円程度です。
様々な要素を考慮し田植えで、不倫がどの程度悪質で、被害者がどの程度精神的苦痛を受けたといえるかで、慰謝料の金額は変動しますが、一番大きい考慮要素は、「離婚」の有無です。

今回、Aさんの不倫相手は離婚したかどうか不明です。Aさんは、その事実を聞くこともしませんでした。

もし、離婚していなければ、裁判上の慰謝料相場は数十万円~100万円程度ですので、相場の最高額の5倍も高い慰謝料を払ったことになります。

離婚していたとしても、相場の上限は300万円程度です。500万円は、その1.6倍以上にもなります。

相手方が提示した「500万円」という金額は、基本的に相場よりも極めて高額です。
このように相場より高い慰謝料を請求してくる理由は、減額交渉を見越して高めに請求するか、あなたの「不安」や「不知」に便乗して高額の慰謝料を回収したい、といった戦略のためです。

「払いすぎた・・・落ち着いて減額交渉すべきだった」と気づいたAさん、「時すでに遅し」でした。

(2)求償権を放棄してしまっていた

肉体関係を伴う不倫をした当事者は、いずれも、被害者(不倫をされた側の配偶者)に対して、基本的に、慰謝料の全額を支払う義務があります。

ただし、本来自分が負担すべき部分を超えて慰謝料の支払いをした場合、支払っていない方に対して、相手が本来負担すべき分の支払いを求めることが可能です。これを、「求償権を行使する」といいます。

500万円を支払ったAさん、求償権を行使できれば、不倫相手に対して一部支払いを求めることができそうです。自己負担も軽くなります。

しかし、Aさんは「求償権を放棄する」旨記載された示談書に署名・押印してしまっていました。その場合、不倫相手に支払い求めることのできる権利を放棄していますので、自己負担分を超えて払いすぎた慰謝料を取り戻すこともできません。

「パニックになっていて、書面をしっかり確認しなかった。求償権の意味を、しっかり調べるべきだった…。」

Aさんは、ここでも後悔するほかありませんでした。

(3)会社へリークされるリスク

Aさんは、そのほかにも、示談を成立させた際にミスがなかったかどうか、ネットを調べ始めました。

「どれどれ…口外禁止条項ってなんだ?」

Aさんは、不倫の慰謝料の示談の合意書には、不倫の事実について、インターネットによる書き込みや、第三者へみだりに公開しないことを約束する、「口外禁止」という条項を設けられることを知りました。

慌てて示談書を確認するAさん。不倫相手の夫から送られてきた示談書には、口外禁止に関する記載は一切なかったのです。

Aさんは、不倫相手の夫から「会社に不倫をバラす」と言われたことがあったのですが、言われた金額を支払ったので、すでにその心配はないと思っていました。

しかし、口外禁止が定められていない以上、不倫相手の夫が会社にリークするリスクが付きまといます。

「いつ会社にバラされるか、不安な毎日を送らなきゃいけないのか…」

あなたが今日からすべき「防衛リスト」

相手から不倫の慰謝料を請求するという連絡が来たその瞬間から、法的な戦いは始まっています。冷静にしっかりと事実を分析したうえで、対策を練る必要があります。
まずは、以下の3点を整理しましょう。

(1)「事実」と「誇張」を分離する

  • 肉体関係は本当にあったか?(食事だけやデートだけなら不貞行為ではない)
  • 相手が「既婚者であること」を知っていたか?知らないことに過失があったか?(既婚者であることを知らず、知らないことに過失もなかった場合、法律上は慰謝料を支払う義務を負わない)
  • 不倫相手との関係はどちらが主導したか?(不倫相手が強く主導したのであれば、減額事由として考慮されることも)
  • 不貞行為の期間や肉体関係の回数は正しいか?(期間が短く、回数が少ないときは減額事由として考慮されることも)

(2)相手の「落ち度」を記録する

  • 脅迫的な文言(「払わないなら会社に言う」「家に行って家族にばらす」)はないか。
  • 職場への執拗な電話や、SNSでの晒し行為はないか。
  • 録音したり、スクショを保存したりして証拠を残す。
    (こちらから損害賠償が可能な事由となったり、「脅迫」や「恐喝未遂」、「名誉棄損」などで被害届を提出したりすることも)

(3)絶対に「即答」しない

  • 「弁護士に相談してから回答します」の一言で十分。
    (その場で支払いに同意したり、示談書にサインをしたり、一部でも支払ったりしないように)

【最後に】法律は「過剰な攻撃」からあなたを守る盾

不倫は決して褒められる行為ではありません。

しかし、だからといって相手の法外な怒りを、言い値のままに引き受ける必要はないのです。法的に妥当な範囲で、責任を取れば十分です。
過剰な請求に屈することは、あなたのこれからの人生、そして守るべき家族の未来を切り売りすることに他なりません。

不倫の慰謝料請求を受けてお悩みの方は、一人で悩まず、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。弁護士はあなたの「正当な防衛」を全力で支援します。

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