「残業代が支払われてないけど、どうしたらいいんだろう?」
残業しているにもかかわらず、会社が残業代を支払っていないのであれば、違法である可能性があります。
この記事を読んでわかること
- 残業代が払われないよくあるケース
- 残業代が払われない場合の罰則
- 残業代が払われないときの対処法
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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残業代が払われないケースとは?
まず、違法に残業代が払われないケースや、雇用形態が理由で残業代が払われないケースについて説明します。
(1)違法に残業代が払われないケース
違法に残業代が払われないケースとしてよくあるものは、次のようなものです。
(1-1)ケース1|残業するのにタイムカードを定時で打刻させる
実際には残業しているのに、会社が労働者に指示してタイムカードを定時で打刻させ、打刻後に残業させるケースがあります。
会社はタイムカードどおりに給料を支払うので、定時で打刻しているのだから残業をしていないと主張して残業代が払われないのです。
また、定時の打刻後も業務が残っていて残業した場合であっても、会社の指示ではなく、労働者が勝手に残業したと主張して残業代が払われないケースもあります。
このような残業代の不払いは労働基準法37条に反し違法です。
タイムカード打刻後のサービス残業について、詳しくはこちらをご覧ください。
(1-2)ケース2|「名ばかり管理職」として残業代が払われない
「名ばかり管理職」とは、労働基準法41条2号の「管理監督者」の要件を満たしていないのに管理監督者であると扱われて、残業代が払われないもののことを言います。
しかし、「管理監督者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるもののことであり、名称にとらわれず実態に即して判断すべきものとされ、肩書きが管理職だからと言ってただちに管理監督者にあたるわけではありません。
管理監督者にあたるかは、具体的には、次のポイントを総合的にみて、実態に即して判断されます。
- 経営者と一体的な立場で仕事をしているか
経営方針の決定への関与の有無、経営会議への出席の有無、人事権の有無など - 労働時間や業務量の裁量の有無
労働時間についての裁量の有無、タイムカードで時間管理をしていないかなど - 地位にふさわしい待遇であるか
職務の重要性に見合う賃金等が支給されているか
会社が、管理監督者の要件を満たさないのに「店長」などの管理職の肩書を付けただけで労働基準法の「管理監督者」だと主張して、残業代は支払わないと主張するケースは少なくありません。
「名ばかり管理職」については、こちらもご覧ください。
(1-3)ケース3|「勝手に残業した」と主張する
残業をするにあたり、会社側の指示を必要とする旨の規則等を定めている会社もあります。
この場合、会社側は、労働者に対し、「残業の指示を出していない。労働者が勝手に残業をしただけだから、残業代を支払う義務はない」と押し通すケースがあります。
たしかに、会社が残業を禁止しているのに、労働者が勝手に残業した場合には、残業代請求が難しいこともあります。
しかし、残業をしなければ到底処理できないほど業務量が膨大な場合や、会社が具体的な指示を出さないものの残業を黙認している場合には、残業代を請求できる可能性があります。
(2)労働時間制度を理由に残業代が払われないケース
次に、特定の労働時間制度があるから残業代が出ない、といわれるケースを説明します。
(2-1)ケース1|固定残業代制(みなし残業代制)
固定残業代制は、一定時間の残業をしたものとあらかじめみなしておき、その時間分の残業代を固定額で給料に含めて支払う制度です。
固定残業代としてすでに残業代を払っているため、もはやそれ以上の残業代が払われないケースがあります。
しかし、固定残業代制でも残業代がもらえるケースはあります。就業規則や労働契約において明示している規定の残業時間(固定残業代に対応する残業時間)を超えて残業をした場合には、別途残業代が発生するため、その超えた分についての残業代を払ってもらえます。
この超えた分の残業代を払わない会社の対応は、違法です(※そもそも固定残業代制が無効というケースもあります。)。

固定残業制については、こちらもご覧ください。
(2-2)ケース2|みなし労働時間(裁量労働制)
裁量労働制は、実労働時間の長さによらずに賃金の支払いを可能とする特殊な労働時間制度の一つです。
実際に働いた時間ではなく、労使協定や労使委員会の決議で決められた時間だけ労働したものとみなされます。
裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つがあります。
専門業務型裁量労働制の対象となる業務は限定されており、「新聞・出版の取材・編集」や「コピーライター」、「弁護士」などの業務が該当します。
企画業務型裁量労働制の対象となる業務とは、「業務の性質上、業務の遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し、使用者が労働者に具体的な指示をしない業務」のことをいいます(労働基準法38条の4第1項第1号)。
この対象業務を適切に遂行するための知識・経験等を有する労働者にのみ、企画業務型裁量労働制が適用されます(同項2号)。
この裁量労働制は、みなし労働時間を働いたとみなすため、残業代が出ないのが原則です。
しかし、みなし労働時間(実際に働いた時間ではありません)が法定労働時間を超えた場合や、深夜・休日労働した場合は所定の割増賃金が発生します。
裁量労働制についてはこちらもご覧ください。
(2-3)ケース3|フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、始業と終業時間を自由に決められる働き方です。
フレックスタイム制は週単位や月単位(3ヶ月以内)など一定期間(清算期間)と総労働時間を決定します。
1日8時間以上働いたとしても、清算期間内で総労働時間を超えなければ残業代は発生しません。
つまり、総労働時間を超えると残業代が発生するため、フレックスタイム制=残業代なしというのは誤りです。
フレックスタイム制についてはこちらもご覧ください。
(2-4)ケース4|年俸制
年俸制は給与の額を1年単位で決める制度です。
法定労働時間を超える労働は残業代が発生することになります。
年俸制を採用しているからといって、残業代を支払わないのは違法である可能性があります。
ただし、年俸制と固定残業制の両方を採用している場合、実際の残業時間が、固定残業代に対応する労働時間を上回ることが、残業代が追加で発生するための条件となります。
年俸制についてはこちらもご覧ください。
(2-5)ケース5|歩合制
歩合制は仕事の成果に比例して給料が高くなるのが特徴です。
歩合制でも法定労働時間を超えたり、深夜や休日出勤したりすると、残業代が発生します。
歩合制を理由に残業代を支払わないことは労働基準法に違反し、違法である可能性があります。
歩合制については、こちらもご覧ください。
残業代が払われない場合の罰則とは?
残業代が払われないことの違法性、罰則を解説します。
(1)残業代が払われない=労働基準法違反の可能性あり
これまでにご説明したように、原則として法定労働時間を超える労働、深夜や休日の労働に対しては割増賃金が発生します。
また、特殊な労働時間制を採用していても、それぞれの労働時間制に応じて残業代が発生するケースはあり得ます。
会社が、労働者に対して支払うべき残業代を払わない行為は、基本的には労働基準法違反です。
私はアルバイトですが、正社員と同じように法律が適用されるのですか?
アルバイトであっても、労働基準法が適用されることについては正社員と変わりません。
労働基準法は、正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、アルバイトなどの雇用形態を問わず、全ての労働者の給料について適用されます。契約社員だから、派遣社員だから、アルバイトだから、などという理由で残業代が発生しないということはありません。
(2)残業代に関する労働基準法違反への罰則
次に、労働基準法違反における罰則が科せられるケースを解説します。
(2-1)罰則は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」
時間外労働や深夜労働、休日労働の割増賃金を支払わなかった場合、6ヶ月以下の懲役(※)または30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法119条1号)。
罰則を受けるのは会社や、経営者だけでなく、直接指揮命令をする責任者が罰則を受けるケースもあります。
また、変形労働時間制の協定届、裁量労働制に関する労使協定の届け出をしていない場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労働基準法120条1号)。
※2022年6月の刑法改正によって、懲役刑と禁錮刑は廃止され、拘禁刑に一本化されました。改正刑法は2025年頃までに施行される予定です。
(2-2)36協定違反の罰則
法定労働時間を超えて残業させる場合、いわゆる36協定の締結・労働基準監督署への届出が必要です。
この36協定を締結もせずに時間外労働させた場合、残業代を支払わないときと同様の罰則が科せられます。
(3)未払い残業代で会社が罰則を受けるまでの流れ
会社から残業代が払われない場合には、労働基準監督署に通報、申告することができます。
労働基準監督署は、残業代を払っていないかどうか、実態について会社に調査、申告させ、残業代を支払っていない場合には、会社に指導し、是正させる効果が期待できます。
概略は次のとおりです。

残業代が支払われない場合は弁護士に相談
労働基準監督署は労働基準法違反に対応する機関であり、未払い残業代に対しては捜査を行い送検する権限も持っています。
しかし、労働基準監督署は、労働者のために民事裁判を起こして、強制的に残業代を払わせることまではできません。
労働基準監督署の指導や是正勧告で残業代が支払われない場合、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
残業代請求には、通常、残業をしたことを示す証拠が必要になります。弁護士に相談・依頼すれば、証拠収集についての的確なアドバイスが期待できます。
また、未払い残業代を計算するのは複雑で、場合によっては法律や判例などの知識が必要です。
さらに、弁護士に依頼すれば、精神的な負担になる会社との交渉も、弁護士が代理してくれますし、会社との交渉がまとまらず、労働審判や訴訟を提起する場合にも、スムーズな対応が期待できます。
【まとめ】残業代の未払いは会社側に刑罰が科されることも!残業代を請求したいなら弁護士への相談がおすすめ
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- タイムカード打刻の強制や残業禁止など、会社から残業代が出ないといわれるケースがある
- 月給制と異なる特殊な労働時間制や給与計算制度の場合、支払われるべき残業代が払われていない可能性あり
- 残業代の未払いは労働基準法違反。労働基準監督署の通報・申告により捜査が開始され、最終的に会社側が刑罰を科されることもある
- 労働基準監督署は未払い残業代の請求まではできないため、弁護士に相談・依頼すると良い
残業代が払われないと、不安になりますよね。
本来もらえるはずの残業代は、しっかりと会社に請求するようにしましょう。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からのお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2023年9月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。