「美容師として長時間働いているけれど、残業代をもらったことなんて一度もない。
美容師は残業代をもらえないものだと思っているから、しかたないのかな、とも思うけれど、でもやっぱりちょっと納得いかないところもある……。
美容師は残業代をもらえないのか知りたい!」
実は、美容師であっても残業代を請求することができる場合はあります。
美容師の残業代に関しては、さまざまな問題があります。
例えば、カット・スタイリングの練習時間については一切残業代をもらえないのかという問題などがあります。
カット・スタイリングの練習のための時間であっても、残業代をもらえることはあります。
また、それ以外にも残業代をもらえるケースはいくつかあります。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 美容師の残業時間の実態
- 美容師の残業・残業代に関する6つの問題
- 未払い残業代の請求方法
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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美容師の残業時間の実態について
美容師の残業時間の実態についてご説明します。
(1)美容師の残業時間はどれくらい?
ある大手転職サイトの調査によれば、美容師の平均残業時間は「月23.9時間」という結果でした。
また、平均残業時間が最も長い教育職は「38.6時間」、最小の営業事務アシスタントは「9.2時間」という結果でした。
この調査での平均残業時間は「月20.6時間」でした。
これらのことからすれば、美容師は平均よりも残業がやや多いといえます。
(2)美容室は営業時間が長く休日が少ない
厚生労働省の調査によると、美容室の平均営業時間は「9.4時間」です。
割合が最も多い「9~10時間未満」で44.5%、次いで「10~11時間未満」が42.1%となっています。
これらのことからすれば、全体の9割以上が労働基準法で定める法定労働時間(1日8時間)を超えているといえます。
もちろん、全ての美容師が美容室の営業時間の最初から最後まで働いているわけではありません。
実際に働く美容師は、フルタイムではなくシフト制が採用されることが多いです。
それでも、一部の方は営業時間の最初から最後まで働いていることもあり得ます。
また、シフトの都合で1日8時間以上働くことになる場合もあり得ます。
これらが原因で、残業が発生することも多くあります。
美容師の残業や残業代に関する6つの問題点
美容師の残業や残業代には、さまざまな問題点があります。
ここでは、次の6つの問題点についてご紹介します。
- 開店前の準備・閉店後の片付け
- 短い休憩時間
- カット・スタイリングの練習
- 管理監督者を理由にした残業代未払い
- 経営苦を理由にした残業代未払い
- 面貸しにおける残業代
(1)開店前の準備・閉店後の片付け
美容師は、店舗の実際の営業時間だけでなく、開店前の準備や閉店後の片付けといった業務をこなさなければなりません。
開店前の準備や閉店後の片付けも、労働の一部です。
開店前の準備や閉店後の片付けなども含めると、1日の労働時間は8時間を超えることも多くなります。
美容室は、法律上、営業時間中だけでなく、開店前の準備や閉店後の片付けについても、労働への対価を支払わなければなりません。
しかし、美容師の業界では、「営業時間が労働時間」という間違った認識で開店前の準備や閉店後の片付けに対して残業代が支払われないことがあります。
このため、開店前の準備・閉店後の片付けに対して残業代を支払わないことは、残業代の未払いにつながるのです。
(2)短い休憩時間
労働基準法では、1日6時間から8時間までの労働をした労働者に対しては、45分以上の休憩を与えることが義務付けられています。
また、1日8時間を超える労働をした労働者に対しては、1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています。
休憩が所定の時間確保されない場合には、労働基準法に違反することになります。
しかし、予約が立て続けに入っている場合など、十分な休憩を取れないことも多いです。
カラーやパーマなどの施術の合間に休憩を取るということも多く行われています。
予約が少なければ30分程度の休憩がとれることもありますが、45分や1時間といった法律上要求されているだけの十分な休憩時間を取ることは難しいというのが美容師の実情です。
本来の休憩時間にも労働していた場合には、その時間分の給与を請求することが可能になります。
もっとも、実際には休めていないにも関わらず、その分の給与が支払われていないことも多くあります。
(3)カット・スタイリングの練習
カット・スタイリングの練習時間について残業代が出ないことがあるという問題があります。
美容師のキャリアは、誰でも初めはアシスタントから始まります。
そして、技術を磨くためにはカットやスタイリングなどの練習が欠かせません。
このカット・スタイリングの練習は、通常の業務時間とは別に行われるため、練習時間が残業時間になり得るのです。
そもそも、カット・スタイリングの練習はスキルアップのためにやっているのだから、残業代はもらえないんじゃないの?
たしかに、直感的には練習の時間について残業代をもらえないということも自然に思えるかもしれません。
しかし、法律上は練習の時間であっても残業代をもらえることはあるというのが正しいところです。
法律上、練習の時間であっても残業代がもらえる「残業」となるのは、雇用主から練習をするように指示がある場合です。
これに対して、雇用主の指示とは全く関係なしに自主的に練習をする場合には、残業とはなりません。
雇用主から練習をするように直接的な指示があるケースでは、残業と認められやすくなります。
しかし、雇用主からの直接的な指示がない場合であっても、練習をせざるを得ない環境に置かれている具体的な事情によっては、雇用主から黙示の指示があったものとして残業と認められる可能性があります。
雇用主からの直接的な指示がない場合であっても、さまざまな事情を総合的に考慮して、残業と認められるかを判断します。
直接的な指示がなかったとしても、すぐに諦めるのではなく、残業と認められる可能性がないかを弁護士に相談してみましょう。
残業代がもらえる残業にあたるかどうかについて、適切な判断をしてくれます。
(4)管理監督者を理由にした残業代未払い
なかには、「管理監督者」にあたることを理由に残業代が支払われないケースがあります。
「管理監督者」とは、経営者と一体的な立場にある労働者のことであり、経営者と同じような責任や権限があり、それにふさわしい待遇を得ている人のことです。
管理監督者にあたる場合には、労働基準法上の労働時間などの制限を受けることがなく、残業代を支払う必要もありません。
特に、美容室の店長になった場合には、店長であることを理由に「店長は管理監督者にあたる」として残業代が支払われないケースがあります。
もっとも、店長だからといって必ず管理監督者にあたるわけではありません。
管理監督者にあたるかどうかは、権限や裁量の具体的な内容・程度、待遇などの観点から総合的に判断する必要があります。
「店長」といっても、新しい人を雇い入れる権限や備品等の買い入れについて決定する権限などがなかったり、待遇も通常の労働者とあまり変わらないものであったりすれば、管理監督者にあたらないとされる場合も多いです。
実際には管理監督者にあたらないのに、残業代が支払われていない場合には、その分の未払いになっている残業代を請求することができます。
実際のところ、管理監督者にあたると認められるケースは少ないです。
管理監督者であることを理由に残業代が支払われていないのであれば、積極的に弁護士に相談して、残業代を請求できないか検討してみてください!
(5)経営状況の悪化を理由にした残業代未払い
複数の従業員を抱えている美容室では、残業代を法律の定めのとおりに支払っていると、人件費が膨らんでしまい経営を圧迫してしまいます。
美容室の経営がうまくいっている間は残業代を支払っても差し支えないのですが、経営が悪化した場合には残業代の支払が苦しくなるということもあります。
このように、経営状況の悪化を理由として、残業代を支払ってくれないケースもあります。
もちろん、経営状況の悪化は、残業代を支払わなくてよい理由にはなりません。
経営状況の悪化を理由に残業代を支払わないケースでは、積極的に残業代を請求していくとよいでしょう。
(6)面貸しにおける残業代
美容師の残業代特有の問題として、「面貸し」において残業代を請求できるかという問題があります。
「面貸し」とは、他人が経営する店舗の一角を間借りして美容室を営み、そこで得た売上の一部をその他人に場所代として支払う営業形態のことを言います。
美容師の業界にはよくある働き方で、「ミラーレンタル」と呼ばれることもあります。
面貸しで働いている場合に、場所の貸主に残業代を請求できるのかということが問題となるのです。
この場合、一般的には残業代を請求することはできません。
なぜなら、面貸しは、貸主との関係では場所を借りているだけであり、貸主との間で雇用契約の関係にないからです。
あくまでも自分ひとりで働いている以上、いくら残業をしたからといって、貸主に残業代を請求する理由がないということになります。
面貸しなら残業代を請求できないのは、なんとなく分かる。
面貸しなら残業代請求は諦めるしかないってことだね。
基本的にはそうなりますね。
ただ、「面貸し」というのは名前ばかりで、実際には場所の貸主の指揮命令に従ってその貸主の従業員と同じように働いているケースもあり得ます。
場所の貸主から、業務の開始時間・終了時間や業務内容についてまで指揮命令を受けており、監督下で働いている場合には、労働者性が認められる可能性があり、結論が変わってくる場合も一応あり得ます。
「面貸し」が名ばかりであって、実際には従業員と同じように働いている場合には、弁護士に相談してみることも考えてみてください。
未払い残業代は美容院に請求できる!
美容師の残業代未払い問題には、ここまでご紹介したように美容師特有の問題もあります。
また、管理監督者性の問題など美容師特有の問題ではないものであっても、法律のプロでなければ残業代請求ができるかどうかの判断が難しいです。
このため、美容師の残業代未払い問題については、積極的に弁護士に相談することがおすすめです。
美容師の残業代未払い問題について弁護士に相談するメリットには、次のようなものがあります。
- 弁護士が事実関係を詳しく聴き取り、法律に照らして残業代が発生するかどうかを検討してくれる
- 請求できる残業代の額について、証拠に基づいて正確に計算してくれる
- 弁護士があなたに代わって美容室との間で残業代を支払うように交渉を行ってくれるので、あなたが美容室との間で直接交渉を行う負担が軽減される
【まとめ】美容師の未払い残業代問題には美容師特有の問題もあるので弁護士に相談するのがおすすめ
この記事のまとめは次のとおりです。
- ある調査によれば、美容師の平均残業時間は月23.9時間。
これは平均よりもやや多い数字。 - 美容室は営業時間が長く休日が少ないという特徴がある。
このことが、残業の発生につながる原因となる。 - 美容師の残業や残業代については、さまざまな問題点がある。
例えば、カット・スタイリングの練習時間が残業時間になるのかという問題や、「面貸し」において残業代を請求できるかという問題などがある。 - 残業代の未払いは美容院に請求できる。
残業代未払い問題についての判断は、法律のプロでなければ難しい点もあるため、積極的に弁護士に相談することがおすすめ。 - 美容師の残業代未払い問題について弁護士に相談するメリットには、弁護士があなたに代わって美容室との間で残業代について交渉を行ってくれるので、あなたが美容室との間で直接交渉を行う負担が軽減されるなどのものがある。
美容師の残業代問題には、さまざまなものがあります。
自分には残業代請求は関係ないかも、と思っていても、意外なところで残業代を請求できる可能性があります。
ぜひ、あなたも残業代を請求できないか、確認してみてください。
「美容師は残業代をもらえないもの」と思っていたとしても、法律上はそれは間違いです。
美容師であっても残業代をもらえることはあります。
少しでも残業代をもらえるかもと思ったら、弁護士に相談してみましょう。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した残業代からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年8月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。