「有給休暇って、なんだか取りにくい…」
「本当は心身を休めたいけれど、会社に迷惑がかかるのでは?」
有給休暇(年次有給休暇)の取得に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
有給休暇は、法律で定められた働く人の大切な権利です。しかし、その条件や付与日数、取得ルールについて、正確に理解できていないと、権利を行使できずに損をしてしまうかもしれません。
このコラムでは、有給休暇をもらうための条件や、取得する際の基本的なルール、さらに、会社から取得を断られた場合の対処法も分かりやすくご紹介します。
本記事を読んで、ご自身の有給休暇に関する正しい知識を身につけ、心置きなく有給休暇の計画を立ててみましょう。
ここを押さえればOK!
会社側から有給休暇の取得を拒否することは、原則できません。会社は、有給の取得自体を拒否することはできないものの、例外的に、あなたが希望する日から有給取得日を別の時期に変更することができるに過ぎません。これは時季変更権といわれ、その行使は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。
もし有給休暇の取得を会社に拒否された場合には、社内の相談窓口や労働基準監督署などに相談もしくは退職・転職することを検討してみてもいいかもしれません。退職前に有給休暇を使い切りたいとお考えの方は、退職代行を依頼いただければ弁護士が有給消化の交渉も行います。退職代行はアディーレへご相談ください。
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休暇に関するお悩み解決!有給休暇の基本(条件・付与日数)とは
有給休暇(年次有給休暇)は、心と体の疲れを癒し、健康的に働くために働く人に与えられた大切な権利です。
有給休暇を使ううえで知っておきたい正しい知識を身につけておきましょう。
(1)有給休暇をもらうための3つの条件(雇用・勤続期間・出勤率)
あなたが有給休暇をもらうためには、正社員かパート・アルバイトかといった雇用形態にかかわらず、3つの条件を同時に満たす必要があります。
- 雇用関係にある
- お仕事を始めてから6ヶ月間、継続して勤務していること
- 6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤していること
請負など雇用関係にない労働者は、年次有給休暇が付与されません。これらの条件をクリアしている場合、会社は原則有給休暇を与える必要があります。
(2)勤続年数によって変わる!もらえる日数のルール
有給休暇をもらえる日数は、あなたの勤続年数に応じて法律で決まっています。条件を満たして働き続ける限り、勤続年数が長くなるほど、もらえる日数は次第に増えていきます。
ただし、この日数はあくまで法律で定められた最低ラインですから、会社が独自にこれより多い日数を設定してもまったく問題ありません。
(2-1)フルタイムで働く方の付与日数と最大日数
フルタイムで働く方(正社員や、それに準ずる働き方をしている契約社員など)は、働き始めて6ヶ月が経った時点でまず10日間の有給休暇をもらえます。
その後は、1年6ヶ月、2年6ヶ月と勤続年数が経過するたびに日数が加算され、最長で6年6ヶ月以上働き続けた場合に、年間20日が上限となります。
| 雇入日からの勤続日数 | 付与される年次有給休暇の日数 |
| 6ヵ月 | 10日 |
| 1年6ヵ月 | 11日 |
| 2年6ヵ月 | 12日 |
| 3年6ヵ月 | 14日 |
| 4年6ヵ月 | 16日 |
| 5年6ヵ月 | 18日 |
| 6年6ヵ月 | 20日 |
育児休業や介護休業といったお休みを取っている期間は、有給休暇の付与に必要な出勤率を計算する際には「出勤したもの」として扱われます。
つまり、育児休業中や介護休業中に有給休暇の付与日を迎えたとしても、出勤率が8割を下回ることはありませんので、引き続き有給休暇をもらえることになります。
(2-2)パートタイムで働く方の付与日数と最大日数
週4日以下で週所定労働時間30時間未満のパートタイム労働者は、フルタイムの労働者とは異なる計算が適用されます。
| 週の所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 雇入日からの勤続日数に応じた年次有給休暇の日数 | ||||||
| 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月 | ||
| 4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | 3日 |
気持ちよく有給休暇を取得するための8つの基本ルールとは
トラブルなく円満に有給休暇を取得するためにも、有給休暇の理由やタイミング、取得の基本ルールを知っておきましょう。
(1)有給休暇の理由を会社に伝える必要はありません
あなたが有給休暇を取るときに、その理由を会社に伝える義務は一切ありません。もし会社に理由を聞かれたとしても、「私用のため」と答えるだけで大丈夫です。
会社は、あなたが伝えた理由によって「休ませる」「休ませない」を決めることはできません。
(2)有給休暇を取得するタイミングはあなたが自由に決められます
自分でタイミングを指定して有給休暇を取得すことができます。なぜなら、会社は労働者が指定する日に有給休暇を与えなければならないとされているからです。
ただし、指定したタイミングで休んでしまうと、「会社の事業の正常な運営が難しくなる場合」に限り、会社は例外的にそのタイミングを変更してもらう権利(時季変更権)を行使できることになっています。
(3)有給休暇は「1日単位」が基本です|例外的に時間・半日取得も
有給休暇は、原則として1日単位でお休みを取るのがルールです。
しかし、会社と労働者の間で労使協定が結ばれている場合は、年間5日を上限として、1時間単位で取得することも認められています。また、労使協定がなくても、会社と労働者互いの合意があれば半日単位で取得することも可能です。
(4)いつまでに申請するかは就業規則に従いましょう
法律には、「何日前に申請しなければならない」という明確な決まりはありません。会社の就業規則に有給休暇の申請期限が定められていればそれを目安に事前に申請する必要があります。
就業規則に有給休暇の申請期限が定められていない場合でも、申請があまりにも直前だと、会社側も業務調整をする時間的余裕がなくってしまいますので、できる限り余裕をもって申請するようにしましょう。
(5)有給休暇は2年でなくなります|繰り越しのルールとは
付与された有給休暇は、付与された日から2年の間に使う必要があります。なぜなら、付与された有給休暇は2年で時効(リミット)となってしまうからです。
しかし、付与された日から2年の間は、未消化の有給休暇を翌年度に繰り越すことができます。例えば、今年度もらった10日のうち5日が残った場合、その5日は翌年度にもらえる有給休暇日数に加算されることになります。
ただし、その加算された分も付与されてから2年が経つと消えてしまうため、有給休暇は計画的に使うようにしましょう。
(6)有給休暇を取得しことで減給・降格をされることはありません
有給休暇を取ったことを理由として、会社が従業員(労働者)に対して給料を減らしたり、降格させられたりすることは禁止されています(労働基準法第136条)。逆に、有給休暇を取得しないことを理由に昇進を早めたり、査定の評価をよくしたりすることなども禁止です。
もし有給休暇を取得したことで減給・降格された場合には、なぜ減給・降格されたのかの理由を聞きましょう。不当な減給・降格は無効になる可能性があります。
(7)有給休暇の買取りは原則できません|買取りが許される場合とは
有給休暇の買い取りは、「心と体の疲れを癒し、健康的に働くため」という法律の本来の目的に反するため、原則として禁止されています。
しかし、次の3つのケースでは、例外的に買い取りが許される場合があります。
- 時効でなくなってしまう有給休暇を買い取る場合
- 法律で定められた日数を超えて会社が独自に与えていた有給休暇を買い取る場合
- 退職時に残っていた有給休暇を会社が円満な退職のために買い取る場合
ただし、これらの場合でも、会社には買い取りをする法的な義務はありません。労働者が買い取りを請求する権利があるともされておりません。会社と労働者との合意によって買い取りがなされます。会社が買い取りを行っているかどうかは就業規則などをみて確認しましょう。
(8)会社には最低5日間の有給休暇を取らせる義務があります
有給休暇の取得率アップを目指して、2019年4月より、年10日以上の有給休暇がある労働者を対象に年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。
もしあなたが年5日の有給休暇を取得していない場合には、会社はあなたの意見を聞いて取得する日を指定し、有給休暇を取得させる必要があります。
有給休暇を取った日のお給料はどうなるの?3つの計算方法とは
有給休暇を取った日でもお給料は支払われますが、その金額の計算方法は、会社の就業規則などによって、一般的に次の3つのパターンの中から選ばれています。
(1)パターン1|通常通り働いた場合に支払われるお給料
多くの会社で採用されている最も一般的な計算方法です。あなたが休まず、いつも通り所定の労働時間働いた場合に支払われるはずのお給料が、そのまま支給されます。
(2)パターン2|過去3ヶ月の平均のお給料
過去3ヶ月間に支払われたお給料の総額を、その期間の総日数で割って算出した「平均賃金」に基づいて支給する方法です。
- 過去3ヶ月間の賃金総額÷過去3ヶ月の休日を含む全日数
- 過去3ヶ月間の賃金総額÷過去3ヶ月間の労働日数×60%
基本的には(1)を使って計算します。しかし、(1)で計算した額が(2)を下回る場合には(2)で計算する必要があります。
(3)パターン3|標準報酬月額の30分の1に相当するお給料
健康保険料の基準になる「標準報酬月額の30分の1に相当する金額」を支給する方法です。
この計算方法を会社が採用するためには、事前に会社と過半数労働組合または過半数を代表する従業員との間で書面による「労使協定」を締結していることが必要な条件となります。
会社から有給休暇の取得を断られたときの対処法
有給休暇(年次有給休暇)は、働く人にとって法律で認められた大切な権利です。会社から「休むのは困る」と断られたとしても、すぐに「仕方がない」と諦める必要はありません。
(1)「時季変更権」が認められるケースなのかを確認する
もし有給休暇の取得を拒否された場合には、有給休暇の取得を拒否する具体的な理由を確認してみましょう。
会社があなたの有給取得を拒否できるとして、それは有給の取得自体ではなく、あくまで希望する日での有給の取得であり、その時期を変更できるに過ぎません。会社が有給取得の時期を変更できるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。この時期を変更できる権利を、「時季変更権」と呼びます。
単なる「ただ忙しいから」「人手が足りない」といった理由だけでは会社側は労働者の希望する日での有給休暇の取得を拒否できません。
時季変更権が認められるためには、「労働者が有給休暇を取ろうとしている日に予定されている仕事が、その労働者の担当業務やその所属する課や係等の運営にとって不可欠である場合」と「代替要員を確保するのが困難な場合」の2つの条件を満たす必要があります。
例えば、記者が1ヶ月の有給休暇を取得しようとした際に、記者の仕事の専門性や代替要因を確保することが困難であることを理由に時季変更権が認められた判例があります。
| <判例(最高裁平成4年6月23日判決)を紹介(時事通信社事件)> |
| 科学技術庁の記者クラブに単独配置されている通信社の社会部記者が、使用者との事前の十分な調整を経ることなく、始期と終期を特定して休日等を含め約一箇月の長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をしたのに対し、使用者が右休暇の後半部分について時季変更権を行使した場合において、当時、社会部内において専門的知識を要する右記者の担当職務を支障なく代替し得る記者を長期にわたって確保することが困難であり、また、右単独配置は企業経営上のやむを得ない理由によるものであったなど判示の事情があるときは、右時季変更権の行使は適法である。 |
(2)社内の相談窓口(コンプライアンス部・人事部など)に相談する
もし直属の上司が、「誰もが忙しく働いているのに、1人だけ有給を取るのはけしからん」といった個人的な感情や思い込みで有給の取得自体を拒否する、あるいは時季変更権を行使している可能性があるなら、社内の相談窓口(コンプライアンス部・人事部など)に相談するようにしましょう。
コンプライアンス部や人事部といった部署は、労働基準法や会社の就業規則に詳しいことが多く、法律に沿った正しい対応を上司に促してくれるかもしれません。
(3)労働基準監督署に相談する
社内での話し合いや相談窓口を通じても、納得のいかない拒否が続くようであれば、労働基準監督署などの外部の窓口への相談を考えてみましょう。
労働基準監督署は、労働基準法などの違反を是正して労働者の権利を守るための公的機関です。相談すると、ケースによっては調査して会社に対して指導や勧告を行ってくれることもあります。
ただし、労働基準監督署はあくまで中立的な立場であるため、個人の労働問題について労働者の代理人となって解決してくれるわけではありません。
(4)弁護士に相談する
労働基準監督署に相談しても状況が改善しない、あるいは会社との交渉がこじれてしまった場合は、弁護士に相談することを検討しましょう。
弁護士に依頼すると、弁護士があなたの代理人として会社と交渉したり、話し合いで解決しない場合に労働審判や訴訟といった法的な手続きの準備を進めたりすることが可能になります。
(5)会社を辞める
有給休暇が使えない会社に不満があれば、その会社を退職するという選択肢もあります。会社に不満を抱えたまま働き続けて体を壊してしまっては元も子もないからです。
ただし、退職することになったとしても、残りの有給休暇の消化や買取りの交渉を忘れないようにしましょう。
退職前に残っている有給休暇を使い切る方法
退職を決めた方が、残りの有給休暇をすべて消化したいと考えるのは自然なことです。退職前に残っている有給休暇を使い切る方法を見ていきましょう。
(1)ご自身で交渉する
まずは、退職日までの残りの日数を確認し、残っている有給休暇が何日あるかを計算しましょう。その上で、「いつからいつまで有給休暇を取得する」ということを、会社に伝える必要があります。
退職日までの有給休暇を希望している労働者に対し、「時季変更権」を行使することはできません。会社が有給休暇の取得を妨げるようであれば、違法である可能性が高いでしょう。
会社が有給休暇の取得を拒否する場合には、まずは直属の上司と話し合います。それでも解決しない場合、人事部門やさらに上級の管理職に相談するようにします。
(2)弁護士による退職代行を依頼する
「会社との直接のやり取りで揉めたくない」「会社が強硬な態度で有給消化を認めようとしない」といった場合には、弁護士による退職代行サービスの利用も検討しましょう。
弁護士は、あなたの代わりに、退職の手続きと同時に、残りの有給休暇の消化などの交渉を合わせて行ってくれます。弁護士による交渉の結果、有給消化後の退職を認めてくれる会社が多いです。
【まとめ】有給休暇は働き始めて6ヶ月が経ってから|計画的なご利用を
有給休暇は、雇用形態にかかわらず、一定の条件(雇用、6ヶ月以上の継続勤務、8割以上の出勤率)を満たした全ての労働者に与えられる、心身を休めるための大切な権利です。
もし会社から取得を断られた場合は、社内の相談窓口や労働基準監督署などに相談もしくは退職・転職することを検討してみてもいいかもしれません。
退職前に有給休暇を使い切りたいとお考えの方は、自分で会社と交渉する以外に、弁護士へ退職代行を依頼し、有給消化の交渉をしてもらうという選択肢があることも、覚えておくとよいでしょう。
「辞めたいけど自分で言い出しにくい」とお悩みの方は、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。



























