「手当を毎月支払う」「秘密を守る」という愛人契約。契約書を作れば安心だと思っていませんか?
実は、その契約は法的に「無効」となる可能性が高く、逆に不貞の証拠となってしまうリスクがあります。
この記事では、愛人契約の効力やそれにまつわる金銭トラブルについての正しい知識を弁護士が解説します。
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つまり、契約書を作成しても、相手に約束通りの手当支払いを法的に強制することは原則できません。
また、既に支払われた手当については「不法原因給付」となり、支払った側からの返還請求も認められないのが原則です。
愛人契約書を作成するリスクは、相手の配偶者から高額な慰謝料を請求された際、不貞行為(不倫)の決定的な証拠となる可能性があることです。
トラブルになった際は速やかに弁護士へ相談し、解決を図ることが重要です。
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愛人契約書は法的に「有効」か「無効」か?
「毎月の生活費として〇〇万円を支払う」など、お互いが納得して締結した契約であれば、法的に守られると考える方は少なくありません。
しかし、結論から申し上げますと、愛人関係(不貞関係)を維持することを目的とした契約は、法律上、原則として「無効」となります。
なぜ愛人契約は無効となるのか、無効であることによって具体的にどのようなリスクが生じるのかについて、法的な観点から解説します。
(1)原則として契約は「無効」になる(公序良俗違反)
日本の法律には、「公序良俗(こうじょりょうぞく)」という重要なルールがあります。
民法第90条では、「公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は無効とする」と定められています。
愛人契約(いわゆる妾契約)は、本質的に「性的な関係を持つ対価として金銭を受け取る」という内容を含みます。これは、社会の倫理的秩序や婚姻制度の尊重という観点から「公序良俗に反する行為」とみなされます。
そのため、どれほど詳細に条件を記載し、書面などで体裁を整えたとしても、その契約自体の効力が無いもの(無効)として扱われてしまうのです。
(2)契約が無効だと何が起きるのか
「契約が無効」であるということは、すなわち「法的な拘束力がない」ことを意味します。 契約書はお互いの約束を守らせるための武器ですが、公序良俗に反する契約は無効であるため、その契約書には意味がありません。
たとえば、相手が「やっぱり今月から手当は払わない」と支払いをストップした場合や、一方的に連絡を絶った場合であっても、契約書を根拠に支払いを強制することや、裁判を起こして請求することはできません。
「契約書を交わしたから安心」というのは大きな誤解であり、いざトラブルになった際、その書面は法的な「守り」としては機能しないのが現実です。
愛人手当における金銭トラブル
愛人契約において、最もトラブルになりやすいのがお金の問題です。
相手の心変わりや経済状況の変化により、約束されていた手当が支払われなくなったり、逆に「別れるなら今まで渡した金を返せ」などと詰め寄られたりするケースは後を絶ちません。
このような金銭トラブルにおいて、法律はどのように判断するのかを解説します。
(1)払ってもらえない手当は請求できる?
結論から申し上げますと、未払いの愛人手当を法的に請求することは極めて困難です。 前の項目で解説した通り、愛人契約自体が「公序良俗に反し無効」であるため、その契約に基づいた「手当を支払う義務」も法的には存在しないことになります。
たとえ「月額〇〇万円を支払う」という契約書や覚書があったとしても、裁判所がその履行を相手に命じることは原則としてありません。
相手が任意で支払わない限り、法的な強制力をもって回収することはできないのが現実です。
(2)既にもらったお金は返さなければならない?
では逆に、相手から「契約が無効なのだから、今まで渡した手当やマンションの購入資金を返せ」と要求された場合、返す必要はあるのでしょうか。
これについては、原則として返還する義務はありません。
民法第708条には「不法原因給付(ふほうげんいんきゅうふ)」という規定があります。これは、「不法な原因(愛人関係など公序良俗に反する行為)のために給付したものは、返還を請求できない」というルールです。
つまり、愛人契約の対価として既に受け取った金品は、基本的には返す必要はないのです。
ただし、借用書が存在する場合は、「単にお金を貸していただけ」という反論が成立し、返済義務が認められる可能性があるため注意が必要です。
(3)相手から「手切れ金」を提示された場合
愛人関係を解消する際に、相手から「手切れ金」の支払いを提示されることがあります。
愛人関係の「維持」を目的とした契約は無効ですが、関係を「清算(終了)」するための合意として金銭を支払うことは、公序良俗に反せず、法的に有効と判断されるケースがあります。
しかし、提示された合意書に安易にサインするのは危険です。その書面が「不貞行為を自白する証拠」となり、後日、相手の配偶者から手切れ金を上回る慰謝料を請求されるリスクがあるからです。
サインする前に、条項の内容に問題がないか専門家に確認してもらってもよいでしょう。
手切れ金について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
愛人契約書を作成する重大なリスク
契約書を作成する最大の動機は「約束を守ってほしい」「安心したい」という思いからでしょう。
しかし、これまで解説した通り法的に無効である愛人契約書は、あなたを守る盾になるどころか、ひとたびトラブルになればあなたを窮地に追い込むものになりかねません。
ここでは、契約書が手元にあることで生じてしまうリスクについて解説します。
(1)相手の配偶者にバレた際の「決定的な証拠」になる
もし、この契約書が相手の配偶者の目に触れてしまったらどうなるでしょうか。
不倫慰謝料の裁判や交渉において、最も重要な争点は「不貞行為(基本的には肉体関係)があったかどうか」です。
LINEやメールのやり取りだけでは「冗談だった」「食事に行っただけ」などと言い逃れできる場合もあります。
しかし、「性交渉を伴う関係」を明記した契約書があれば、言い逃れはできないと考えられます。
これにより、不貞行為の事実認定が容易になり、慰謝料請求が認められる可能性が高くなります。安心のために作ったはずの書類が、皮肉にもあなたを法的に追い詰める材料となってしまうこともあるのです。
(2)脅迫や恐喝のネタに使われる危険性
愛人関係は、いつまでも良好とは限りません。別れ話が出た際や、相手が経済的に困窮した際に、態度が急変するケースは非常に多いものです。
その際、契約書が存在していると、「この契約書を会社に送る」といった脅迫の材料に使われるリスクがあります。
口約束だけであれば「言った、言わない」の水掛け論で済むかもしれませんが、書面として残っている事実は重く、コピーを取られれば回収も困難です。
「別れるなら会社にバラす」などと理不尽な要求を突きつけられ、精神的に追い詰められてしまうケースも少なくありません。
トラブルなく関係を解消するために
愛人関係の解消は、単に「別れる」だけでは終わりません。曖昧な終わらせ方をすると、後日、相手の配偶者から突然慰謝料を請求されたり、相手から執拗な復縁を迫られたりするリスクが残ります。
将来的な不安を軽減するためには、法的に有効な「清算条項」や「口外禁止条項」を含んだ書面を取り交わすことが重要です。
当事者同士では感情的になりがちですので、不安がある場合は、専門家に書面のチェックや作成を依頼するとよいでしょう。
【まとめ】
愛人契約書は、法的に「無効」であるばかりか、不貞行為の証拠としてあなたを窮地に追い込むリスクの高いものです。契約書があるからといって安心せず、むしろトラブルの火種になり得ると認識しましょう。
もし、相手方との金銭トラブルや、関係解消のこじれ、配偶者からの慰謝料請求にお悩みの場合は、個別の事情に応じた法的判断が必要です。一人で抱え込まず、早めに弁護士へご相談ください。
不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されてお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

























