アルコールハラスメント、通称アルハラは、職場や社会で深刻な問題となっています。
飲み会での飲酒の強要や、酔った上での迷惑行為など、アルハラは多岐にわたります。
この記事では、アルハラの定義や具体的な事例、法的責任、そして職場での対策について詳しく解説します。
アルハラを理解し、適切な対策を講じることで、職場や社会での人間関係を円滑に保ち、メンタルヘルスを守ることができるでしょう。
この記事を読んでわかること
- アルハラとは?
- アルハラの具体例
- アルハラが実際に問題になった事例
- 職場でできるアルハラ対策
ここを押さえればOK!
アルハラとは、飲酒に関連する嫌がらせ行為を指し、被害者の身体的・精神的な健康を害し、職場や社会での人間関係を悪化させる原因となります。特に注意すべきは急性アルコール中毒で、毎年一定数の方が亡くなっている深刻な症状です。
アルハラの具体例としては、飲酒の強要、イッキ飲ませ、酔いつぶし、飲めない人への配慮を欠くこと、酔った上での迷惑行為があります。
アルハラの法的責任については、アルハラを行った上司や会社は不法行為の責任を負い、被害者から損害賠償を請求されることがあります。
職場でのアルハラをなくすためには、アルハラの定義や具体例を周知し、アルハラ防止のルールを策定し、相談窓口を設置することが重要です。また、定期的な研修や教育を実施し、社員の意識を高めることも必要です。
アルハラは被害者の健康や人間関係に深刻な影響を与える問題です。企業や組織が積極的に対策を講じ、1人1人がアルハラを理解し行わないよう注意することが求められます。アルハラ防止の周知やルール策定、研修の実施を通じて、社員が安心して働ける環境を作りましょう。
アルハラとは?
アルハラ(アルコールハラスメント)とは、飲酒に関連する嫌がらせ行為のことを指します。アルハラは、被害者の身体的・精神的な健康を害するだけでなく、職場や社会での人間関係を悪化させる原因となりますので、絶対にしないようにしましょう。
特に注意すべきは、一時的に多量の飲酒をすることでおきる急性アルコール中毒です。毎年一定数の方が亡くなっているほど、深刻な症状です。特に若者が急性アルコール中毒で救急搬送されることが多く、新人歓迎会などで行き過ぎた飲酒をしている実態があるようです。
参考:急性アルコール中毒 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
アルハラの具体例
アルハラの典型例を5つ紹介します。
参考:飲酒ガイドライン作成検討会|厚生労働省
参考:アルハラの定義5項目|特定非営利活動法人ASK(https://www.ask.or.jp/article/527)
(1)飲酒の強要
飲酒の強要は、他人に無理やり酒を飲ませる行為です。
飲酒は、体にも様々な影響を及ぼすリスクのある行為です。
したがって、飲酒するかしないかは個人の判断にゆだねられるべきであり、飲酒の強要は厳に控えなければなりません。
例えば、上司が部下に「飲めないと出世できない」と圧力をかける場合や、ゲームなどで負けた者に罰として飲酒を強いる場合などがあります。
(2)イッキ飲ませ
イッキ飲ませは、一時に大量の酒を飲ませる行為です。
一時に多量の飲酒をすることは、急性アルコール中毒のリスクがあり大変危険です。
「イッキイッキ」などと周りがはやし立てて、アルコールの一気飲みを誘導することがあります。
大学のサークル活動や職場の飲み会で見られるケースがありますが、非常に危険です。急性アルコール中毒のリスクがありますし、酔ったために転倒してケガをしたりするリスクもあります。
(3)酔いつぶし
酔いつぶしは、他人を意図的に酔わせる行為です。
例えば、飲み会で特定の者にお酒を強く勧めて飲ませ、相手がアルコールの影響で酔いつぶれてしまうまで飲ませる行為がこれに該当します。
ひどい時には、特定の被害者をターゲットにして、飲酒を逃れられない状況にして繰り返し強い酒を飲ませることもあるようです。
急性アルコール中毒のリスクがあり、被害者の健康を害しますので、非常に危険な行為です。
(4)飲めない人への配慮を欠くこと
飲めない人に対して無理に酒を勧める行為も、アルハラに該当します。
例えば、体質的にアルコールを受け付けない人や、健康上や宗教上な理由で飲めない人に対して、しつこく飲み会に誘ったり、飲まないことを侮辱したり、繰り返しお酒を勧めたりすることは、飲めない人への配慮を欠くアルハラです。
(5)酔った上での迷惑行為
酔った状態で他人に迷惑をかける行為もアルハラの一種です。
例えば、酔って暴言を吐いたり、暴力を振るったりする行為がこれに該当します。
アルハラに関する法的責任
アルハラは、単なるいやがらせで済む問題ではありません。
仕事に関連して上司が部下に対してアルハラを行った場合、アルハラを行った上司は、被害者の人格権を侵害したり、健康や生命を害するものとして、不法行為の責任を負い、被害者から損害賠償を請求されることがあります。
また、会社側は、アルハラが防止できなかったことや、アルハラ発生後の対処などについて、使用者固有の不法行為責任や、使用者責任などから、被害者に対し損害賠償義務を負うことがあります。
アルハラが実際に問題になった事例
実際に裁判でアルハラが争われた事例を紹介します。
飲酒強要が不法行為とされた事例(東京高等裁判所平成25年2月17日判決)
従業員が、上司からのパワハラが原因で精神疾患となり休職、退職したとして、損害賠償や地位の確認を求めた事例です。
裁判所は、被害者が酒を断ったのに対して、上司が「少しくらいなら大丈夫だろ」「俺の酒は飲めないのか」などと語気を荒げ執拗に飲酒を要求し、飲酒のため吐いた被害者に対して「酒は吐けば飲めるんだ」などと飲酒を強要したことなどについて、不法行為であると認め、上司と会社に150万円の支払いなどを命じました。
ただし、精神障害がパワハラ行為によるものだとは認めず、休職からの退職に不当な点はないとして、地位の確認や退職後の給与支払いまでは認めませんでした。
アルハラをなくすためにできること
企業や大学などでは、アルハラをなくすために次のような対策をすることが考えられます。
(1)アルハラについて周知
アルハラの定義や具体例を周知することが重要です。
例えば、研修やポスター、メールなどを活用して、アルハラのリスクや防止策を広く伝えます。
(2)アルハラ防止のルール策定
アルハラを防止するためのルールを策定し、周知します。
具体的には、飲み会での飲酒強要を禁止する規定や、アルハラの具体例の説明、アルハラにあったときには毅然と断ることなど、ルールを具体的に策定して周知します。
(3)相談窓口設置
アルハラに関する相談窓口を設置し、被害者が安心して相談できる環境を整えます。
例えば、人事部や外部の専門機関と連携し、相談が可能な体制を整えます。
(4)定期的な研修や教育
アルハラ防止のための研修や教育を定期的に実施します。
例えば、時期的に飲み会が多くなる、新年や年末に合わせて、社内通知を行う、Eラーニングシステムにより教育活動を行うなどして、社員の意識を高める方法があります。
【まとめ】
アルハラは、被害者の健康に深刻な影響を与えうる問題です。
アルハラを防ぐためには、企業や組織が積極的に対策を講じると同時に、1人1人がアルハラを理解したうえで行わないよう注意することが必要です。
アルハラ防止の周知やルール策定、研修の実施を検討し、社員が安心して働ける環境を作るようにするとよいでしょう。