現在プログラマーとして働いている方は、
「プログラマーは残業が多すぎる……」
「こんなに働いているのに、残業代がきちんと払われていない」
といった悩みを持っていないでしょうか。
実際、プログラマーの業界は、残業が少ないホワイトな会社もある一方で、月80時間といった過労死ラインを超える時間の残業をしている会社もあります。
そして、残業がこれほどまでに多くなっているにもかかわらず、未払い問題が多く発生しているのもプログラマーの業界の問題となっています。
残業が多く困っている方、残業代がきちんと支払われずにお困りの方、プログラマーの業界の残業の実態と未払い残業代の請求の方法について知っておきましょう。
これらの知識を身に着けておくことで、会社にいいようにこきを使われてしまう事態を防ぐことができます。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- プログラマーの残業の実態
- プログラマーの残業が多い理由
- プログラマーの残業代が支払われない理由
- 未払い残業代請求をする手順・方法
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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プログラマーの残業の実態
厚生労働省による賃金構造基本統計調査によれば、プログラマーの残業時間(超過実労働時間数)は次のようになっています。
企業規模 | 10人以上 | 1000人以上 | 100~999人 | 10~99人 |
---|---|---|---|---|
プログラマーの超過実労働時間数(月) | 13時間 | 22時間 | 14時間 | 9時間 |
この調査結果だけをみると、プログラマーの残業って実は少ないのではと思われるかもせん。
しかし、これはあくまで厚生労働省が行った調査です。
そのため、会社が労働時間の長いことを隠すために、実際の労働時間よりも少ない時間で申告していることもあり、実際の労働時間を反映していないと言われています。
参考:賃金構造基本統計調査令和元年以前 職種DV第1表|統計表・グラフ表示|政府統計の総合窓口(e-Stat)
プログラマーの残業が多い5つの理由
プログラマー業界に残業が多いと言われる理由はプログラマーの仕事の内容や環境が原因となっていると考えられます。
プログラマーの残業が多い理由は、主に、次の5つが考えられます。
- 想定外のバグの対応
- 顧客の突然の要望への対応
- 残業前提で納期が決められている
- 仕事のための勉強は仕事とみられていない
- 残業が多い会社にいる
それぞれ説明します。
(1)想定外のバグの対応
プログラマーはプログラムにバグが発生すると、これに対応する必要があります。
ただし、バグがどれくらい発生するかは、想定することができません。
想定よりもバグが発生した場合には、残業してでも対応しなければならなくなることもあります。
(2)顧客の突然の要望への対応
顧客の要望で「プログラムの仕様が変わる」または、「機能が追加される」など急な仕様変更や機能の追加修正を求められることがあり、そういった突然の要望にもプログラマーは対応しなければなりません。
このように、追加の業務が増えたことで、納期までのスケジュールが厳しくなるなど、顧客に振り回され、残業が多くなってしまうということもよくあります。
(3)残業前提で納期が決められている
売上アップのため、残業前提の無理なスケジュールであるにもかかわらず、仕事受注するケースもあります。
この場合、残業前提のスケジュールとなっているため、プログラマーにかかる負担が大きくなります。
また、このケースの場合には、人員にも余裕がないため、病気になっても休めない、有給休暇も取れないなどの弊害もあります。
(4)仕事のための勉強は仕事とみられていない
プログラマーは専門的な知識が求められる仕事であるため、特定の案件を遂行する上で特殊な知識が必要とされることもあり、業務上そうした知識を習得しながら仕事をすることも求められることもあります。
しかし、このような仕事のための勉強であるにもかかわらず、この勉強時間は仕事としてみられておらず、仕事のための勉強で会社に遅くまで残らされるケースもあります。
(5)残業が多い会社にいる
プログラマーといっても、「どういった企業に所属するか」、「どういった仕事をしているか」によって残業の有無・残業時間の長さは違ってきます。
いわゆるブラック企業に所属した場合には、残業ありきの仕事を割り振られることなり、その結果残業時間が長くなるということがあります。
プログラマーの残業代が支払われない3つの理由
プログラマーの残業代が支払われない時に、会社側が剤業代を支払わない理由として、主に次の3つの理由を挙げます。
- 裁量労働制だから残業代を支払わなくてもよい
- 年俸制だから残業代を支払わなくてもよい
- 固定残業制だから残業代を支払わなくてもよい
これらの理由は正当なものとして認められるのでしょうか、それぞれ説明します。
(1)裁量労働制だから残業代を支払わなくてもよい
会社が残業代を支払わない理由として主張する理由の一つとして「うちの会社は裁量労働制だから残業代を支払わなくてもよい」というものがあります。
そもそも裁量労働制は、実労働時間の長さによらずに賃金の支払いを可能とする特殊な労働時間制度の一つです。裁量労働制の場合、実際に働いた時間ではなく、労使協定や労使委員会の決議で決められた時間だけ労働したものとみなされることになります。
確かに、裁量労働制は、実際の労働時間ではなく、労使協定等で決められた労働時間だけ働いたとみなすため、その労働時間が法定労働時間内(労働基準法第32条)に止まるのでありましたら、残業代が出ないのが原則になります。
しかし、みなし労働時間が法定労働時間を超えた場合や深夜・休日労働した場合は割増賃金(残業代)が発生します。
裁量労働制についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(2)年俸制だから残業代を支払わなくてもよい
最後に、会社が残業代を支払わない理由として主張する理由の一つとして「うちの会社は年俸制だから残業代を支払わなくてもよい」というものがあります。
そもそも年俸制とは給与の額を1年単位で決める制度です。
しかし、年俸制とはあくまで給与の決め方の一つでしかありませんので、月給制などの他の賃金制と同じく、法定労働時間を超える労働は残業代が発生することになります。
年俸制を採用しているからといって、残業代を支払わないのは違法である可能性があります。
ただし、年俸制と固定残業制の両方を採用している場合、固定残業代を上回ることが別途の残業代の発生条件となります。
年俸制についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(3)固定残業制だから残業代を支払わなくてもよい
次に、会社が残業代を支払わない理由として主張する理由の一つとして「うちの会社は固定残業制だから残業代を支払わなくてもよい」というものがあります。
そもそも固定残業制は、一定時間の残業代をあらかじめ給料に含んで支払う制度で、基本給などに組込んで支給する場合と、特定の手当として支給する場合があります。
そのため、すでに残業代を払っているとして、残業代が出ないといわれるケースがあります。
しかし、就業規則や労働契約において明示している規定のみなし残業時間を超えた場合には、残業代が発生します(みなし残業時間との差額分を請求できます)。
固定残業制についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
残業代が支払われないケースや対処法についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
未払い残業代を請求する手順・方法

未払いの残業代を請求するには、まずは、残業をしたことがわかる証拠集めが必要です。
証拠が集まったら、未払いの残業代を請求するという流れになります。
なお、残業代の計算方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(1)証拠を集める
残業代請求で集めるべき証拠には、大きく分けて、主に次のようなものがあります。
具体例 | |
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雇用契約の内容が分かる証拠 |
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就業規則に関する規定の写し |
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賃金の支払いが分かる証拠 |
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労働時間が分かる証拠 |
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その他の証拠については、それ単独だと証拠としての価値が低い場合がありますが、複数の証拠を組み合わせることにより、証拠としての価値を高めることができる場合もありますので、可能な限り集めておきましょう。
残業代請求で集めるべき証拠についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(2)未払い残業代の請求
できる限りの証拠を準備したら、残業代請求をすることになります。
残業代請求をする場合には、次の3つの方法をとることになります。
- 会社に直接請求する
- 労働基準監督署に申告する
- 裁判手続をする
それぞれ説明します。
(2-1)会社に直接請求する
残業(時間外労働、休日労働、深夜労働)をしたという事実を証明する証拠を揃え、その証拠をもとにして請求できる残業代を計算した上で、まずは会社と直接交渉を行うことになります。
直接交渉する際には、未払い残業代を請求するという旨を記載した内容証明郵便を送るとよいでしょう。
内容証明郵便を送ったことで会社が話し合いの場を設けてくれた場合、そこで残業代の支払いを認めるよう求めていきます。
<補足>内容証明郵便ってなに?
内容証明郵便とは、送付した文書について、「送付日時」「文書内容」「送付者」「文書の受け取り手」を日本郵便株式会社が証明してくれるサービスです。
内容証明郵便を送ることで、文書の内容や送付した事実を証明できるほか、裁判でも証拠とすることができます。
内容証明郵便による残業代請求の方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(2-2)労働基準監督署に申告する
会社にプレッシャーを与える方法として、労働基準監督署に給料の未払いを労働基準法違反として申告する方法もあります。
労働者からの申告を受けた後、労働基準監督官は使用者からの事情聴取をしたり、事業場へ立ち入り調査するなどして、労働者・会社双方の主張の整理・確認をします。
給料未払いの事実が確認されれば、是正や改善の指導などがされます。
ただし、労働基準監督署には、労働者から相談を受けたからと言って、必ずしも、調査等の措置を取る義務はありません(東京労基局長事件(東京高裁判決昭和56年3月26日))。また、労働基準監督署は、あくまで会社に労働基準法などの法規を遵守させることを目的とする機関であり、特定の労働者が未払い残業代の支払いを受けることができるまで対応してくれるとは限りません。
労働基準監督署に申告に行く際、給料未払いの証拠を持参すると、労働基準書に動いてもらいやすくなりますので、申告の際は証拠を持参することをおすすめします。
参考:賃金不払いが発生したら、迷わず労働基準監督署に相談、申告してください!|厚生労働省
参考:相談機関のご紹介|厚生労働省
(2-3)裁判手続をする
交渉がうまくいかない、労働基準監督署も動いてくれないというような場合には、裁判手続をすることになります。
労働審判手続を利用して未払いの残業代を請求することが多いです。
労働審判手続は、労働者と事業主との間で起きた労働トラブルに対し、裁判官1名と労働関係の専門家2名(労使それぞれから1名ずつ)が間に入って、話合いによって調停を成立させたり、審判(判断を下すこと)をしたりする制度です。
この手続きは、裁判所へ行く必要があるものの、原則として期日は3回以内で終了します(通常の訴訟よりは短い手続きになります)。
ただし、相手方が労働審判の手続による解決を望まないとして出廷しないときには手続が終了してしまうことがありますし、審判が下されたとしても、相手方からこれに対する異議が出されることがあります。このような場合、通常の裁判に移行します。
参考:労働審判手続|裁判所 – Courts in Japan
未払い残業代を請求する方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
未払い残業代請求は弁護士への相談・依頼がおすすめ!
未払い残業を会社に請求する場合、弁護士に依頼すると残業代を取り戻せる可能性が高くなり、早期解決が期待できます。
証拠集めのアドバイスを得ることができますし、複雑になりがちな未払い残業代の適切な計算や、会社との交渉を任せることができます。
また、個人で請求した場合、無視したり、不誠実な対応をされることも多くありますが、弁護士を通じて交渉をすることで会社の態度も変わってきます。
会社との交渉がうまくいかず裁判となった場合でも、弁護士に依頼しておけば最後までサポートを受けることができます。
労働基準監督署に相談するだけは、ここまでの対応をしてくれません。
また、残業代請求を弁護士に相談する前に不安や疑問を解消したい方はこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】プログラマーの残業が多い理由は仕事の内容や環境が原因!未払い残業代は請求を!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- プログラマーの残業が多い5つの理由
- 想定外のバグの対応
- 顧客の突然の要望への対応
- 残業前提で納期が決められている
- 仕事のための勉強は仕事とみられていない
- 残業が多い会社にいる
- プログラマーであっても残業代請求はできる!
- 裁量労働制→みなし労働時間が法定労働時間を超えた場合には残業代が発生する
- 年俸制→法定労働時間を超えた場合には残業代が発生する
- 固定残業制→みなし残業時間を超えた場合には残業代が発生する
- 残業代請求は証拠集めをしてから!残業代請求は、1.会社に直接請求する、2.労働基準監督署に申告する、3.裁判手続をする、の3つの方法で行う。
会社に対して残業代を請求することに対して、うまくいくのか、何か報復されないか、不安を感じられているかもしれません。
しかし、一人では会社に立ち向かうことは難しくても、弁護士が味方になることで、残業代を取り戻すことができる可能性を高めることができます。
弁護士が入ると大ごとになると思われているかもしれませんが、弁護士はプロですので、一人で残業代請求をするよりもかえってスムーズに進むこともあります。
会社には働いた分をきちんと支払う義務があります。会社だけが得をしたままで終わらせるのはよくありません。一人で悩まれる前に弁護士への相談をおすすめします。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した経済的利益から頂戴しますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年8月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。