「病院に勤務しているけれど、オンコール待機の機会が定期的にある。
呼び出されたらすぐ病院に行かなければならないのに、オンコール待機時間は労働時間ではないとされて、残業代が出ないのはなんだか納得がいかないな。
医師のオンコール待機って、本当に残業代は出ないのかな……」
勤務先の病院の指示でオンコール待機をしている医師の方は少なくないでしょう。
また、オンコール待機の時間は、通常は自宅などにいるため、労働時間ではないとして残業代を支払ってもらえていない医師の方も多いようです。
しかし、オンコール待機であるから一律に残業代を支払わないという取り扱いは誤りです。オンコール待機の時間であっても、労働時間であると認められれば、残業代をもらえる可能性はあります。
この記事を読んでわかること
- 医師のオンコール待機(宅直)とは何か
- 医師のオンコール待機は「労働時間」にあたるか
- 医師のオンコール待機について残業代をもらえるのはどのような場合か
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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医師のオンコール待機(宅直)とは
オンコール待機(宅直)とは、所定労働時間外に、自宅などで待機して、病院からの呼び出しがあればすぐに病院に赴いて医療行為などの業務を行う勤務形態です。
これは、患者の急変等の緊急事態に対応するために行われるものです。オンコール待機では、通常、勤務時間外の医師に携帯電話を持たせたうえで自宅などでも連絡が取れる状態にして、必要に応じて病院からの呼び出しに応じることが求められます。
医師であっても残業代をもらうことができる
そもそも、医師(勤務医や研修医)であっても、雇用されて働いているのであれば、時間外労働・休日労働・深夜労働に対して、それぞれ残業代(割増賃金)をもらうことができます。
「医師だから残業代は出ない」ということはありません。
ただし、オンコール待機(宅直)の時間帯が労働時間に該当するのかが問題となることはあります。
これは、オンコール待機の時間帯は基本的には病院内におらず、自宅などの病院側の支配の及ばない場所におり、プライベートで自由のある場所で待機をしていることになるからです。
現実には、オンコール待機の時間について、残業代をもらうことができていない医師の方が多くいます。
しかし、これからご説明するように、オンコール待機であっても残業代をもらえる可能性はあります。
ぜひ諦めずにオンコール待機の時間について残業代をもらえないか検討してみてください!
医師のオンコール待機は「労働時間」にあたるか
医師のオンコール待機の時間について残業代がもらえるかは、オンコール待機の時間が「労働時間」にあたるかによって決まります。
そこで、まずは「労働時間」の考え方などについてご説明します。
(1)「労働時間」にあたれば残業代がもらえる!「労働時間」の考え方とは?
医師のオンコール待機の時間が「労働時間」にあたるのであれば、オンコール待機の時間についても残業代をもらうことができます。
これに対して、オンコール待機の時間が「労働時間」にあたらないのであれば、病院はその時間については給与を支払う義務がなく、残業代をもらうことはできません。

ある時間が「労働時間」にあたるかどうかは、「客観的に見て労働者が使用者の指揮命令下に置かれているといえるか」という観点から判断します。
そして、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれているといえるか」は、個別具体的な事案に応じて判断することとされています。
(2)オンコール待機が労働時間にあたり得る場合
オンコール待機の時間について、「病院側の指揮命令下にある」と考えることができる内容や状況としては、例えば次のようなものがあります。
- 飲酒を控えて待機するなど精神的な緊張を強いられていること
- 自宅など一定の場所から離れることができないなど場所的な拘束を受けていること
- 病院からの連絡があれば、直ちに病院に向かわなければならないこと
- 病院からの連絡が入る頻度が非常に多く、その都度病院に向かっていること
- 病院からの連絡に応じて病院に向かわなかった場合には不利益な処分を受けるとされていること
オンコール待機時間がこのような内容・状況であれば、医師が労働から完全に解放されているとまでは言い難くなるでしょう。
そのため、たとえオンコール待機の時間であったとしても、なお病院の指揮命令下にある=労働時間であると認められて、残業代を請求できる可能性があります。
逆に、ここまでにご説明したような内容・状況がないときには、オンコール待機の時間が労働時間と認められない場合もあります。
例えば、次のような内容・状況があるときです。
- オンコール待機中はどこにいてもよいとされていて、実際に自宅だけでなくそれ以外の場所にも自由に出かけられている
- 病院からの連絡が入る頻度が非常に少なく、呼び出しに応じる機会も少ない
- 仮に病院からの連絡があったとしても、自分の裁量で自由に出勤を断ることができる
このような内容・状況だと、オンコール待機であっても病院の指揮命令下にあるとは言いづらくなってくるため、残業代をもらえる可能性が低くなります。
実際には、オンコール待機の時間が労働時間にあたるとして残業代を請求できる可能性かあるのかどうかは、オンコール待機の具体的な内容や運用に応じて異なってきます。
そのため、オンコール待機であれば一律に残業代がもらえる・もらえないと考えるのではなく、個別の事情に応じて判断することが必要になります。
オンコール待機であっても、状況によっては残業代をもらえるかもしれないってことですね?
それなら残業代の請求もしてみたいです。
そうです。あなたのオンコール待機の内容・状況等、個別具体的な事情に応じて、残業代をもらえる可能性が変わってきます。残業代請求を取り扱う弁護士であれば、あなたの場合にオンコール待機の残業代を請求できる可能性があるのか的確に判断してくれます。
そのため、残業代請求を取り扱う弁護士に相談・依頼し、残業代請求ができるかどうかを検討するのがおすすめです。
未払い残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場や流れについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】医師のオンコール待機の時間についても残業代を請求できる可能性がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 医師のオンコール待機(宅直)とは、所定労働時間外に、自宅などで待機して、病院からの呼び出しがあればすぐに病院に赴いて医療行為などの業務を行う勤務形態のこと。
- 医師のオンコール待機も、労働時間にあたれば残業代をもらうことができる。
- 医師のオンコール待機の時間が、病院側の指揮命令下にあるのであれば、労働時間に該当するといえる。
- オンコール待機の時間について残業代を請求できる可能性があるのか否かは、個別の事情に応じて判断することが必要。
オンコール待機であれば一律に残業代がもらえる・もらえないというわけではない。
この記事でご説明したとおり、オンコール待機であっても残業代がもらえる可能性があります。オンコール待機をして自分の職責を果たしたのですから、その分の残業代はきっちりともらわないと納得できませんよね。
オンコール待機であっても残業代をもらえる可能性があるということをしっかりと頭に入れたうえで、残業代を請求することを検討されると良いでしょう。
もっとも、オンコール待機であれば一律に残業代がもらえる・もらえないというわけではなく、個別の事情に応じて判断しなければなりません。
残業代請求を取り扱っている弁護士であれば、残業代請求の見込みがあるかどうかをアドバイスすることができます。
また、弁護士に任せれば、医師として忙しく勤務しているあなたの代わりに、弁護士が残業代請求の手続きを代わりに行ってくれます。
オンコール待機の残業代請求は、弁護士に依頼すると良いでしょう。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2023年8月時点
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