「働く時間がとても長いのに、残業代を支払ってもらえてない。病院に確認してみたところ、『固定残業代制』だから別途残業代を支払う必要はないと言われた。
確かに契約書には固定残業制と記載はあるけど、固定残業代制なら、これだけたくさん働いたとしても、追加で残業代をもらうことはできないの?
残業代が支払われないのが納得できない。固定残業代制だと本当に別途残業代が支払われないのか、知りたい!」
固定残業代制を理由に、働いた分の残業代を支払ってもらえていないという医師の方は多くいます。固定残業代制とは、あらかじめ一定の時間働いたとみなして、定額の残業代を基本給に含めるなどして支払う残業代の支払い方のことです。
固定残業代制は、有効な残業代の支払と認められることもあります。他方で、適切に運用されていなければ、残業代の支払としては無効と判断されることもあります。
固定残業代制による残業代の支払が無効であれば、別途残業代の支払を請求することができます。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 医師の固定残業代制とは何か
- 固定残業代の支払として認められない3つのケース
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
残業代請求・退職代行・不当解雇に関するご相談は何度でも無料!
会社とのやり取りは弁護士におまかせ!
些細な疑問や不安、お気軽にご相談ください!
医師の固定残業代制とは
「固定残業代制」とは、あらかじめ一定の時間残業をしたとみなすこととし、残業代を基本給に含めて支給したり特定の手当として支給したりすることを言います。
医師は、一般的な労働者と比べて基本給が高めであることから、病院が「あらかじめ基本給に残業代を含めている」「あらかじめ残業代を特定の手当として支給している」と主張することがあります。
このように、医師の残業代について固定残業代制が採用されている場合には、実際の残業時間に応じた残業代が別途支払われることはないというケースが多くあります。
固定残業代が認められない場合も多くある
固定残業代制は、契約で定めればどんな場合でも有効であるわけではありません。
病院側が固定残業代制を採用していると主張するケースであっても、固定残業代が無効なものであるとして認められないケースも多くあります。
(1)固定残業代として認められない3つのケース
医師の場合、雇用主からのあるお金の支払が有効な固定残業代の支払として認められないケースには、主に次の3つがあります。
- 固定残業代であることが明示されていない
- 固定残業代がいくらかはっきり分からない
- 固定残業代の内訳が明示されていない
固定残業代の支払が有効な残業代の支払として認められないケースについて、詳しくはこちらをご覧ください。
(1-1)固定残業代であることが明示されていない
「あるお金が残業に対する固定残業代として支払われていること」がはっきりと示されていなければ、固定残業代の支払とは認められません。
例えば、基本給の中に固定残業代が含めて支払われるという場合があります。この場合には、単に給与明細などで「基本給」という名目しか示されていないのであれば、いったいどれだけの固定残業代が含まれているのか分かりません。
したがって、固定残業代の支払としては無効だということになります。
(1-2)固定残業代がいくらかはっきり分からない
病院があるお金について固定残業代の支払だと主張したとしても、次のような場合には、固定残業代がいくらかはっきり分からないので、固定残業代の支払としては認められません。
- いくらが残業代であるのかはっきりと示されていない
- いくらが残業代であるのか簡単に判別することができない
例えば、基本給の中に固定残業代が含まれている場合、いったいいくらが固定残業代なのか示されていなければ、通常の労働に対する賃金と残業代とを識別することができませんし、働いている医師としても、残業代を追加でもらえる権利があるのかどうか判断できません。
このようなことから、固定残業代がいくらかはっきりと分からないような場合には、固定残業代の支払としては無効だということになります。
(1-3)固定残業代の内訳が明示されていない
時間外労働・休日労働・深夜労働は、割増賃金が支払われますが、それぞれ割増率が異なることがあり、別個に計算します。
このような割増率の異なる複数の種類の割増賃金を固定残業代で支払っているのに、その内訳がどうなっているのかはっきりと示されていないことがあります。固定残業代の内訳がはっきり示されていなければ、医師としては追加でいくらの割増賃金を受け取る権利を有しているのか判断できません。
例えば、「基本給には、40時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対する固定残業代を含む」という労働契約が結ばれることがあります。この場合には、固定残業代のうち、いくらが時間外労働に対する手当であり、いくらが深夜労働・休日労働に対する手当なのか、はっきりと判断することができません。
そうすると、固定残業代の内訳が不明であるものとして、固定残業代の支払としては無効となる可能性があります。
時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金の割増率について、詳しくはこちらをご覧ください。
(2)固定残業代が残業代の支払として無効である場合には残業代請求ができる
病院から「固定残業代制」と言われても、固定残業代の支払が有効な残業代の支払として認められない場合には、あらためて残業代の支払を求めることができます。
また、たとえ固定残業代の定めが有効であっても、あらかじめみなされた残業時間を超えて残業をするという場合もあります。そのような場合には、その超えた残業時間について別途残業代の支払を求めることができます。
固定残業代の定めがあるからと言って、全く残業代請求ができなくなるということはありません。
固定残業代の定めがある場合であっても、残業代請求ができる場合は多くあります。
あなたの場合には残業代請求ができるのか、しっかりと見極めることが大切です。
【まとめ】固定残業代制でも残業代請求できる場合がある
この記事のまとめは次のとおりです。
- 固定残業代制とは、あらかじめ一定の時間残業をしたとみなすこととして、残業代を基本給に含めるなどして支給すること。
- 固定残業代制は、契約で定めればどんな場合でも有効であるわけではない。
- 固定残業代として認められないケースには、固定残業代であることが明示されていないケースなどがある。
- 固定残業代が残業代の支払として認められない場合には、あらためて残業代の支払を求めることができる。
固定残業代によって残業代が支払われているからと言って、どんな場合でも残業代請求ができなくなるわけではありません。
せっかく頑張って残業したのに、その分の残業代を支払ってもらえないのはとてももったいないことですよね。残業代請求が可能な場合には、しっかりと残業代を請求することが大切です。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した残業代からのお支払となり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年11月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。