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建設アスベスト被害者に対する給付金に関する法律が参院本会議で可決

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2021年(令和3年)6月9日、『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(以下「給付金法」といいます)』が成立しました。

給付金法は、建設業務に従事したことによってアスベスト(石綿)にばく露し、中皮腫や肺がん等の疾病にかかった方に対して、訴訟手続によらずに、最大1,300万円の給付金を支給するというものです。
これまで、建設業務に従事したことによるアスベスト(石綿)被害については、主に、国や建材メーカーを被告とする損害賠償請求訴訟を提起することで、金銭的な救済が目指されていました。

 上記の法律案が成立することによって、このような損害賠償請求訴訟を提起することなく、金銭的な救済が図られることとなります。  
本記事では、これまでの建設アスベスト(石綿)訴訟や、給付金法の内容等について解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 大西 亜希子

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2012年弁護士登録。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

建設アスベスト(石綿)訴訟とは?

  アスベスト(石綿)は、その特性から、工業製品の原材料として優れた適格性を有していると考えられていました。そのため、吹き付け材、保温材、断熱材、耐火被覆板、成形板等の建材に多くのアスベスト(石綿)が使用されていました。平成7年ころには、日本のアスベスト(石綿)消費量のうち、なんと約9割を建材製品が占めるようになっていました。  もっとも、アスベスト(石綿)には人体に対する有害性が非常に高く、アスベスト(石綿)含有建材を用いて作業に従事していた建設作業員らにアスベスト(石綿)被害が多発するようになりました。このようなアスベスト(石綿)の有害性を知り又は知ることができたのに、建材メーカーはその有害性について十分な警告をせず、アスベスト(石綿)含有建材を製造・販売して利益を上げ続け、国もこれらに十分な規制も課しませんでした。
 このような国と建材メーカーの責任を問うため、2008年に東京地裁で集団訴訟が提起され、これを皮切りに、横浜、京都、大阪、福岡、札幌、さいたま、仙台の各地の地方裁判所で同様の提訴がなされるに至りました。

最高裁判決により国および建材メーカーの責任が確定、基本合意書の締結

 2021年(令和3年)5月17日、最高裁判所第一小法廷により、4つの建設アスベスト(石綿)訴訟(横浜訴訟、東京訴訟、京都訴訟、大阪訴訟)について、国及び建材メーカーの責任を認める判決が言い渡されました。  
また、同月18日、この最高裁判決を受け、建設アスベスト(石綿)訴訟の原告団・弁護団等と国との間で基本合意書が締結されました。今回可決された給付金法の内容は、主に、この最高裁判決や基本合意書の内容がベースとされています。

参照:基本合意書|厚生労働省

給付金法の内容について

 それでは、今回可決された給付金法の内容とはどのようなものなのでしょうか。以下では、要件、被害者死亡の場合の取り扱い、給付金額、減額事由について解説していきます。

要件について

 給付金の支給要件は、特定石綿被害建設業務労働者等であること、および、期間制限を経過していないことの2つです。

特定石綿被害建設業労働者であること

期間制限を経過していないこと

特定石綿被害建設業務労働者等であること

 『特定石綿被害建設業務労働者等であること』とは、労働基準法9条に規定される「労働者」やいわゆる一人親方等であって、特定石綿ばく露建設業務に従事することにより石綿関連疾病にかかったものをいいます(給付金法2条3項)。

【特定石綿ばく露建設業務について】
特定石綿ばく露建設業務については、給付金法2条1項に規定されています。

日本国内において行われた石綿にさらされる建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業若しくはこれらの作業の準備の作業に係る業務又はこれに付随する業務をいう)のうち、以下の(1)(2)の業務

(1)石綿の吹付けの作業に係る業務(昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの間に行われたものに限る)

(2)屋内作業場であって厚生労働省令で定めるものにおいて行われた作業に係る業務
※昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間に行われたものに限る
※屋内での石綿吹付作業に係る業務もふくまれます含まれます

【石綿関連疾病について】
石綿関連疾病については、給付金法2条2項に規定されています。

石綿を吸入することにより発生する次に掲げる疾病
(ア) 中皮腫
(イ) 気管支又は肺の悪性新生物(肺がん)
(ウ) 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
(エ) 石綿肺(じん肺管理区分の管理2、管理3、管理4、またはこれに相当するものに限る)
(オ) 良性石綿胸水

期間制限を経過していないこと

 給付金の請求には期間制限があります。そのため、期間制限を経過していないことも給付金の支給要件となります。期間制限については、給付金法5条2項に規定されています

疾病起算日
(i)じん肺管理区分管理2、管理3及び管理4と決定された石綿肺管理区分の決定があった日から20年
(ii)(i)以外の石綿関連疾病羅患者※石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断があった日から20年
(iii)死亡死亡日から20年

※じん肺管理区分管理2以上の石綿肺に相当するものの、じん肺管理区分の決定を受けていない石綿肺の起算日ついては、(i)ではなく、(ii)となると考えられます。

特定石綿被害建設業務労働者等が死亡した場合について

 特定石綿被建設業務労働者等が死亡した場合、遺族が自己の名で給付金を請求することができます(給付金法3条2項)。
遺族が複数いる場合における、給付金の支給を受けることができる順位については、給付金法3条3項、同条4項に規定されています。

1位配偶者(事実婚の配偶者を含む)
2位
3位父母
4位
5位祖父母
6位兄弟姉妹

遺族が請求する場合について、注意点が3点あります。

まず1点目は、同順位の遺族が複数いた場合、1人の請求が同順位の遺族全員の請求とみなされるという点です。給付金法3条5項では、「給付金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人がした請求は、その全額について全員のためにしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす」とされており、例えば、配偶者が存在せず、子が2人以上いる場合、複数の子のうち1人が給付金を請求した場合、子の全員が請求したものとみなされます。

2点目は、給付金の支給を受けることができる順位が民法の相続法の規定と若干異なっている点です。民法では、配偶者と子がいる場合、それぞれ法定相続人となり、2分の1ずつの法定相続分を有していることになります。
給付金法では配偶者の方が子よりも順位が上になっています。そのため、配偶者がいる場合には、たとえ子がいたとしても、給付金の請求権を有するのは配偶者のみということになります。

給付金額について

給付金額については、『疾病の類型によって基本的な給付金額を算出→減額事由の有無により減額』というプロセスで決定されます。

基本的な給付金額について

給付金額については、給付金法4条1項に規定されています。

疾病金額
(a)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかっていない者
550万円
(b)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかった者
700万円
(c)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかっていない者
800万
(d)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかった者
950万
(e)中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性
胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺に
かかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水
にかかった者
1,150万
(f)(a)又は(b)により死亡した者1,200万
(g)(b)(d)(e)により死亡した者1,300万

なお、遅延損害金及び弁護士費用については支給されませんので、注意が必要です。

減額事由について

 減額事由は、石綿ばく露期間による減額、喫煙習慣による減額の2つです。

【石綿ばく露期間による減額(給付金法4条2項)】  
下記表の石綿ばく露期間を下回る場合には、100分の90に減額されます。

疾病石綿ばく露期間
肺がん又は石綿肺10年
びまん性胸膜肥厚3年
中皮腫又は良性石綿胸水1年

減額後の給付金額は下記表のようになります。

疾病金額
(a)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかっていない者
495万円
(b)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかった者
630
(c)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかっていない者
720
(d)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で
指定合併症にかかった者
855万円
(e)中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性
胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺に
かかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水に
かかった者
1,035万円
(f)(a)又は(c)により死亡した者1,080万円
(g)(b)(d)(e)により死亡した者1,170万円

【喫煙習慣による減額(給付金法4条3項)】
肺がんにかかった特定石綿被害建設業務労働者等で、喫煙習慣がある者については、100分の90に減額されます。なお、石綿ばく露期間による減額事由も認められる場合、石綿ばく露期間による減額により算出された金額に、100分の90を乗じた金額が給付金額とされます。

疾病ばく露期間減額の有無減額後の金額
肺がんによる死亡ばく露期間による減額なし1,170万円
肺がんによる死亡はく露期間による減額あり1,053万円
肺がんばく露期間による減額なし1,035万円
肺がんばく露期間による減額あり931万5,000円

【まとめ】参院本会議で建設アスベスト(石綿)被害者に対する給付金の支給に関する法律が可決。これにより、被害者は訴訟によらずに給付金の支給を受けることが可能に

 本記事をまとめると以下のようになります。

  • 2021年(令和3年)6月9日、参院本会議で、『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律案(以下「給付金法」といいます)』が可決された
  • この法律によって、建設アスベスト(石綿)被害者は、訴訟によらずに、最大1,300万円の給付金の支給を受けることが可能となる
  • 給付金の要件は、「特定石綿被害建設業務労働者等であること」と「請求期間を経過していないこと」の2つ
  • 被害者がすでに亡くなっていても、遺族による請求が可能
  • 給付金額は、疾病の種類によって異なり、495万円~1,300万円となる
  • 石綿ばく露期間、および、(肺がんの場合)喫煙習慣による減額がある

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この記事の監修弁護士
弁護士 大西 亜希子

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2012年弁護士登録。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

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