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アスベスト訴訟等で受け取った賠償金や給付金には税金がかかる?

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yamazaki_sakura

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「アスベスト訴訟等で受け取った賠償金や給付金には税金はかからないの?」

工場型アスベスト被害について受け取った賠償金(和解金)には、所得税や相続税はかからないと考えられます。
また、建設型アスベスト訴害について受け取った給付金は、『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律』第15条に規定があり、非課税とされています。

本記事では、

  • アスベスト訴訟とは?
  • 工場型アスベスト被害に対する賠償金(和解金)に税金はかかる?
  • 建設型アスベスト被害に対する給付金に税金はかかる?

について解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 大西 亜希子

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。東京弁護士会所属。

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アスベスト訴訟とは?

アスベスト訴訟とは、工場での労働や、建設現場での労働が原因で、アスベスト粉じんにばく露し、アスベスト関連疾患を発症してしまった方またはその遺族が、国ないしは企業にその賠償責任を求めて提起する訴訟のことをいいます。
アスベスト訴訟は、大別して、工場型アスベスト訴訟と、建設型アスベスト訴訟に分類されます。
ここでは、工場型アスベスト訴訟と建設型アスベスト訴訟について解説します。

(1)工場型アスベスト訴訟とは?

まずは、工場型アスベスト訴訟について説明します。

(1-1)工場型アスベスト訴訟の概要

工場型アスベスト(石綿)訴訟とは、アスベスト(石綿)工場での労働によってアスベスト(石綿)粉じんにばく露し、これによってアスベスト(石綿)関連疾患を発症してしまった元工場労働者やその遺族が、適切な規制権限を行使しなかった国を相手に賠償を求める訴訟をいいます。

アスベスト(石綿)製品の製造・加工工場では、アスベスト(石綿)による健康被害を防止するための効果的な措置が長らくとられておらず、その結果として、アスベスト(石綿)工場の労働者に深刻な健康被害が生じていました。国はこのような健康被害の実態を把握していたにもかかわらず、健康被害を防止するために必要となる措置を工場に義務づける等の適切な対応を取っていませんでした。

このような国の規制権限の不行使は違法であるとして、アスベスト(石綿)工場の元労働者やその遺族によって、国の責任を追及する国賠請求訴訟が提起されるに至りました。そして、2014年10月9日、最高裁は、国側敗訴の判決(以下、この判決を「泉南アスベスト(石綿)訴訟判決」といいます。)を言い渡しました。

この判決を受けて、この裁判の原告と同様の被害を受けた方々については、国を被告とする裁判において一定の要件を満たすことが確認されれば、国との間で裁判上の和解をして一定額の賠償金(和解金)が支払われることになりました。

参考:泉南アスベスト(石綿)訴訟判決|裁判所 – Courts in Japan
参考:石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々との和解手続について|厚生労働省

(1-2)賠償金(和解金)額

厚生労働省が公表している賠償金(和解金)額は以下のとおりです。

じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合 550万円
管理2で合併症がある場合 700万円
管理3で合併症がない場合 800万円
管理3で合併症がある場合 950万円
管理4、肺がん、中皮腫、びまん性硬膜肥厚の場合 1150万円
アスベスト(石綿)肺(管理2・3で合併症なし)による死亡の場合 1200万円
アスベスト(石綿)肺(管理2・3で合併症あり又は管理4)肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合 1300万円

(2)建設型アスベスト訴訟とは?

建設型アスベスト訴訟について解説します。

(2-1)建設型アスベスト訴訟の概要

建設型アスベスト訴訟とは、アスベスト含有建材を用いて建設作業に従事したことが原因で、アスベスト粉じんにばく露し、アスベスト関連疾患を発症した元建設作業員またはその遺族が、国及び建材メーカーに対してその賠償責任を求める訴訟をいいます。

2021年5月17日、4つの建設型アスベスト(石綿)訴訟について、国と建材メーカーを敗訴とする最高裁判決が言い渡され、国及び建材メーカーの責任が確定するに至りました。

そして、2021年6月9日、この最高裁判決を受けて、『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(以下、「給付金法」といいます。)』が成立しました。
給付金法は、建設業務に従事したことによってアスベスト(石綿)にばく露し、中皮腫や肺がん等の疾病にかかった方に対して、訴訟手続によらずに、最大1300万円の給付金を支給するというものです。
これまで、建設業務に従事したことによるアスベスト(石綿)被害について国の責任を問うためには、国を被告とする損害賠償請求訴訟を起こす必要がありました。

しかし、給付金法の成立によって、このような損害賠償請求訴訟を起こすことなく、被害者の金銭的な救済が図られることとなります。

(2-2)給付金額

給付金額については、『疾病の類型によって基本的な給付金額を算出→減額事由の有無により減額』というプロセスで決定されます。

基本的な給付金額は以下のようになります。

[疾病] [金額]
(a) じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者 550万円
(b) じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者 700万円
(c) じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者 800万円
(d) じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者 950万円
(e) 中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺にかかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水にかかった者 1150万円
(f) (a)又は(c)により死亡した者 1200万円
(g) (b)(d)(e)により死亡した者 1300万円

減額事由は、石綿ばく露期間による減額、喫煙習慣による減額の2つです。

【石綿ばく露期間による減額(給付金法4条2項)】
下記表の石綿ばく露期間を下回る場合には、100分の90に減額されます。

[疾病] [石綿ばく露期間]
肺がん又は石綿肺 10年
びまん性胸膜肥厚 3年
中皮腫又は良性石綿胸水 1年

減額後の給付金額は下記表のようになります。

[疾病] [金額]
(a) じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者 495万円
(b) じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者 630万円
(c) じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者 720万円
(d) じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者 855万円
(e) 中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺にかかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水にかかった者 1035万円
(f) (a)又は(c)により死亡した者 1080万円
(g) (b)(d)(e)により死亡した者 1170万円

【喫煙習慣による減額(給付金法4条3項)】
肺がんにかかった特定石綿被害建設業務労働者等で、喫煙習慣がある者については、100分の90に減額されます。なお、石綿ばく露期間による減額事由も認められる場合、石綿ばく露期間による減額により算出された金額に、100分の90を乗じた金額が給付金額とされます。

[疾病] [ばく露期間減額の有無] [減額後の金額]
肺がんによる死亡 ばく露期間による減額なし 1170万円
ばく露期間による減額あり 1053万円
肺がん ばく露期間による減額なし 1035万円
ばく露期間による減額あり 931万5000円

工場型アスベスト訴訟で受け取った賠償金(和解金)に税金はかかる?

工場型アスベスト訴訟で受け取った賠償金(和解金)には、所得税や相続税はかかるのでしょうか。

【所得税について】
所得税法9条1項17号後段では、「損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の法令で定めるもの」については、「所得税を課さない」とされています。
そのため、工場型アスベスト訴訟によって賠償金(和解金)の支払いを受けても、所得税はかかりません。

【相続税】
相続税については、国税庁のウェブサイトでは、

被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償金は相続税の対象とはなりません。この損害賠償金は遺族の所得になりますが、所得税法上非課税規定がありますので、原則として税金はかかりません

とされています。

上記の見解に従えば、アスベスト(石綿)関連疾患によりすでにお亡くなりになった被害者の遺族が、アスベスト(石綿)訴訟を提起して、賠償金を受け取った場合、相続税はかからないという結論になる可能性が高いと考えられます。

参考:No.4111 交通事故の損害賠償金|国税庁

建設型アスベスト被害について受け取った給付金に税金はかかる?

給付金法15条において、給付金について非課税とすることが規定されています。

(非課税)
第十五条 租税その他の公課は、給付金等を標準として課することができない。

引用:給付金法15条

そのため、建設型アスベスト訴訟で受け取った給付金には税金はかかりません。

【まとめ】アスベスト訴訟等で受け取った賠償金(和解金)や給付金に税金はかからない

本記事をまとめると以下のようになります。

  • 工場型アスベスト(石綿)訴訟とは、アスベスト(石綿)工場での労働によってアスベスト(石綿)粉じんにばく露し、これによってアスベスト(石綿)関連疾患を発症してしまった元工場労働者やその遺族が、適切な規制権限を行使しなかった国を相手に賠償を求める訴訟をいう
  • 工場型アスベスト被害に対する賠償金(和解金)の金額は、病態の種類によって異なり、550万~1300万円
  • 建設型アスベスト訴訟とは、アスベスト含有建材を用いて建設作業に従事したことが原因で、アスベスト粉じんにばく露し、アスベスト関連疾患を発症した元建設作業員またはその遺族が、国及び建材メーカーに対してその賠償責任を求める訴訟をいう
  • 建設型アスベスト被害については、給付金法の成立によって、裁判を起こすことなく、給付金を請求できるようになる。
  • 建設型アスベスト被害に対する給付金の金額は、疾病の種類によって異なり、495万~1300万円となる
  • アスベスト訴訟等で受け取った賠償金(和解金)や給付金に税金はかからない

アディーレ法律事務所では、アスベスト(石綿)被害に悩まれておられる方を一人でも多く救いたいとの想いから、アスベスト(石綿)被害についてのご相談もお待ちしております。

アスベスト(石綿)被害にあわれた方またはそのご遺族は、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。

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