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アスベストによる労災保険の要件は?給付の要件・内容・申請方法について解説

作成日:
kiriu_sakura

「過去に仕事でアスベスト(石綿)を取り扱ったことがあって、そのせいで肺に病気を患っているのだけど、労災保険を受けることはできるんだろうか。」

労災保険給付を受けるためには、アスベスト(石綿)によって発症した疾病が業務上疾病であると認められる必要があります。そして、業務上疾病であると認められるためには、疾病ごとにあらかじめ定められている認定基準を満たす必要があります。
そのため、発症している業務上疾病の認定基準をクリアしなければ、労災保険給付を受けることはできません。

本記事では、労災保険給付の要件、給付内容、申請方法や、労災保険給付以外の救済方法等について解説します。

アスベストによる健康被害について

アスベスト(石綿)は、繊維状鉱物の総称であり、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライト、アンソフィライト、アクチノライトの6種に分類されます。
アスベスト(石綿)は、耐熱性や耐久性等の特性に優れていますが、その繊維は極めて細かいため、研磨機や切断機による作業や、吹付け作業等を行う際に、所要の措置を行わないと容易に飛散、浮遊し、人体に吸引されやすいという性質があります。

そして、人体に吸引された場合、肺胞に沈着し、その一部は体外に排出されずにそのまま肺の組織内に長期間滞留し続けることによって、これが原因となり、石綿肺や肺がん等の疾病を発症させると考えられています。
アスベスト(石綿)が原因となって発症する疾病として以下の5つの疾病が挙げられます。

  • 石綿肺
  • 肺がん
  • 中皮腫
  • びまん性胸膜肥厚
  • 良性石綿胸水

アスベスト(石綿)による労災保険給付

アスベスト(石綿)を取り扱う仕事などをしていた関係で、アスベスト粉じんにばく露し、疾病を発症した方は、後述する業務上疾病であることの要件を満たすことによって、労災保険給付を受けることが可能です。
労災保険とは、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な給付を行う公的保険制度のことをいいます。

原則として労働者を一人でも使用する事業所は適用事業所とされ、労災保険の加入義務が事業者に課されます(労働者災害補償保険法3条1項)。
労災保険給付を受けることができるのは、このような適用事業所で使用される労働者や、労災保険に特別加入している方等です。

(1)労災認定の要件|業務上疾病であること

労災保険給付を受けるためには、石綿肺・中皮腫・肺がん・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚を発症していて、これらが労働者としてアスベスト(石綿)ばく露作業に従事していたことが原因である(業務上疾病)と認められることが必要となります。

『石綿ばく露作業』とは以下のものをいいます。

  • 石綿鉱山またはその附属施設において行う石綿を含有する鉱石または岩石の採掘、搬出または粉砕その他石綿の精製に関連する作業
  • 倉庫内などにおける石綿原料などの袋詰めまたは運搬作業
  • 石綿製品の製造工程における作業
  • 石綿の吹付け作業
  • 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱もしくは保温のための被覆またはその補修作業
  • 石綿製品の切断などの加工作業
  • 石綿製品が被覆材または建材として用いられている建物、その附属施設などの補修または解体作業
  • 石綿製品が用いられている船舶または車両の補修または解体作業
  • 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)など)などの取り扱い作業

これらのほか、上記作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業や上記作業の周辺などにおいて、間接的なばく露を受ける作業も該当します。

石綿ばく露作業に従事しているか、または、従事したことがある労働者を石綿ばく露労働者といい、業務上疾病であると認められるためには、石綿ばく露労働者が発症した各疾病について、具体的要件を満たす必要があります。

(2)業務上疾病|石綿肺

石綿肺が業務上疾病であると認められるためには、以下の(ア)または(イ)のいずれかに該当することが必要になります。

(ア)管理4の石綿肺(石綿肺によるじん肺症)
(イ)管理2、管理3、管理4の石綿肺に合併した疾病
合併した疾病とは、次の疾病をいいます。
・肺結核
・結核性胸膜炎
・続発性気管支炎
・続発性気管支炎拡張症
・続発性気胸

この「管理」とは、『じん肺管理区分』に基づく区分であり、この『じん肺管理区分』とは、じん肺健康診断に基づいて、じん肺を区分したものです(じん肺法4条2項)。
つまり、石綿肺で労災認定を受けるためには、まずこのじん肺管理区分の決定を都道府県労働局長により受ける必要があります。

じん肺法4条2項において、じん肺管理区分は以下のように定められています。

じん肺管理区分
じん肺管理健康診断の結果
管理1
じん肺の所見がないと認められるもの
管理2
エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理3エックス線写真の像が第2型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
エックス線写真の像が第3型または第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の、3分の1以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理4
1.エックス線写真の像が第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1を超えるものに限る。)と認められるもの
2.エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型または第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)で、じん肺にとよる著しい肺機能の障害があると認められるもの

じん肺法4条1項において、じん肺管理区分の決定の際に用いられるエックス線写真の像の区分は以下のように定められています。

エックス線写真の像
第1型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第2型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第3型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第4型大陰影があると認められるもの

じん肺管理区分の決定を受ける方法ですが、粉じん作業に従事した事業場に勤務している間は、事業者によりじん肺健康診断が行われ、じん肺管理区分の決定申請等についても事業者が行うこととなっていますが、離職後については、ご自身でじん肺健康診断を受けて、お住まいの労働局へ決定申請をする必要があります。

以上が、石綿肺で労災保険給付を受けるための要件となります。
要件が複雑なので以下には要件の簡単なまとめを記します。業務上疾病と認められるためには以下のすべての要件を満たす必要があります。

(3)業務上疾病|中皮腫

中皮腫が業務上疾病であると認定されるためには、胸膜、腹膜、心膜または精巣鞘膜の中皮腫であって、以下の(ア)または(イ)のいずれかに該当することが必要になります。

ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限りません)を開始した時から10年未満で発症した中皮腫は除かれます。

【(ア)じん肺法に定める胸部エックス線写真で、第1型以上の石綿肺所見があること】
じん肺法4条1項において、じん肺管理区分の決定の際に用いられるエックス線写真像の区分が以下のように定められており、これに基づき石綿肺所見の有無が判断されます。

エックス線写真の像
第1型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第2型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第3型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第4型大陰影があると認められるもの

【(イ)石綿ばく露作業従事期間1年以上であること】

(4)業務上疾病|肺がん

肺がんが業務上疾病であると認定されるためには、原発性肺がんであって、以下の(ア)~(カ)のいずれかに該当することが必要になります。ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限られない)を開始したときから10年未満で発症した原発性肺がんは除かれます。

【(ア)石綿肺所見がある(じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺所見)】
じん肺法4条1項において、じん肺管理区分の決定の際に用いられるエックス線写真像の区分が以下のように定められており、これに基づき石綿肺所見の有無が判断されます。

エックス線写真の像
第1型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第2型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第3型両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第4型大陰影があると認められるもの

【(イ)胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間が10年以上ある】
「石綿ばく露作業」のうち、「石綿製品の製造工程における作業」については、1996年以降の従事期間を実際の従事期間の2分の1として算定することとなっています。

【(ウ)広範囲の胸膜プラーク所見がある+アスベストばく露作業従事期間1年以上】
「広範囲の胸膜プラーク」とは、

  • 胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、胸部CT画像によりその陰影が胸膜プラークとして確認される場合
  • 胸部CT画像で、胸膜プラークの広がりが胸壁内側の4分の1以上ある場合

をいいます。

【(エ)石綿小体または石綿繊維の所見+石綿ばく露作業従事期間1年以上】
石綿小体または石綿繊維の所見については、以下のいずれかであることが必要です。

  • 石綿小体が乾燥肺重量1g当たり5000本以上ある
  • 石綿小体が気管支肺胞洗浄液1ml中に5本以上ある
  • 5μmを超える大きさの石綿繊維が乾燥肺重量1g当たり200万本以上ある
  • 1μmを超える大きさの石綿繊維が乾燥肺重量1g当たり500万本以上ある
  • 肺組織切片中に石綿小体または石綿繊維がある

【(オ)びまん性胸膜肥厚に併発】
びまん性胸膜肥厚が業務上疾病であるとの認定要件を満たす必要があります。びまん性胸膜肥厚の場合の認定要件については、『業務上疾病|びまん性胸膜肥厚』をご参照ください。

【(カ)特定の3作業に従事+石綿ばく露作業従事期間5年以上】
「特定の3作業」とは、

  • 石綿紡織製品製造作業
  • 石綿セメント製品製造作業
  • 石綿吹付作業

また、「従事期間」とは、上記の「特定の3作業」のいずれかに従事した期間、またはそれらを合算した期間をいいます。ただし、1996年以降の従事期間は、実際の従事期間の2分の1として算定します。

(5)業務上疾病|良性石綿胸水

良性石綿胸水が業務上の疾病として認定されるためには、石綿以外の胸水の原因が全て除外されることが必要となります。

胸水は、石綿以外にも、結核性胸膜炎、リウマチ性胸膜炎など様々な原因で発症する疾病であり、良性石綿胸水の診断は非常に困難であることから、労働基準監督署長が厚生労働本省と協議をした上で、業務上の疾病として認定するか否かについて判断することになります。

(6)業務上疾病|びまん性胸膜肥厚

びまん性胸膜肥厚が業務上の疾病として認定されるためには、以下の(ア)~(ウ)すべてを満たすことが必要になります。

【(ア)石綿ばく露作業3年以上】
石綿ばく露作業期間が3年以上あること
【(イ)著しい呼吸機能障害がある】

  • パーセント肺活量(%VC)が60%未満である場合など

【(ウ)一定以上肥厚の広がりがある】
胸部CT画像上に

  • 片側のみ肥厚がある場合には側胸壁の2分の1以上の肥厚の広がりがあること
  • 両側に肥厚がある場合には側胸壁の4分の1以上の肥厚の広がりがあること

労災保険給付の内容

労災保険には、療養補償給付や休業補償給付等、給付内容等によって複数の保険給付があります。また、それぞれについて、異なる時効が規定されており、保険給付を受けようとする際は注意が必要です。

保険給付の種類保険給付を受けられる場合保険給付の内容時効
療養補償給付業務上疾病等により療養する場合治療費、入院の費用、看護料、移送費等通常療養のために必要なもの療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
休業補償給付傷病の療養のため、労働することができず賃金を受けられない場合休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
傷病補償年金療養開始後1年6ヶ月経っても傷病が治らず、障害の程度が障害等級(1~3級)に該当する場合障害の程度に応じ、給付基礎日額の313~245日分の年金
第1級 313日分
第2級 277日分
第3級 245日分
監督署長の職権により移行されるため請求時効はない。
障害補償給付傷病が治って身体障害が残った場合障害等級にしたがって、第1~7級までは、給付基礎日額の313~131日分の年金。
第8~14級までは、給付基礎日額の503~56日分の一時金。
傷病が治癒した日の翌日から5年
介護補償給付傷病年金または障害年金の対象となる障害により、介護を受けている場合常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、16万6950円を上限とする)。
親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合、または支出した額が7万2990円を下回る場合は、7万2990円。
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、8万3480円を上限とする)。
親族等により介護を受けており、介護費用を支出していない場合または支出した額が3万6500円を下回る場合は3万6500円。
介護を受けた月の翌月の1日から2年
遺族補償給付労働者が死亡した場合遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245~153日分の年金。
1.遺族(補償)等年金を受け得る遺族がないとき、または、
2.遺族(補償)等年金を受けている人が失権し、かつ、他に受け得る人がいない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないときは、給付基礎日額の1000日分の一時金(2の場合は、すでに支給した年金の合計額を差し引いた額)
被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
葬祭料労働者が死亡した場合31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分)被災労働者が亡くなった日の翌日から2年

労災保険への申請方法

労災保険給付が支給されるまでの流れは、

  1. 申請窓口に所定の請求書と必要な添付資料を提出する
  2. 労働基準監督署によって給付対象かどうかの調査が行われる
  3. 労働基準監督署によって給付対象と認められた場合、支給決定通知がなされる
  4. 請求した内容の労災保険給付が支給される

となります。

労災保険給付を受けるための請求書の様式と提出先は以下の通りです。
療養(補償)等給付については、労災病院や労災保険指定医療機関等で療養を受ける場合、療養を受ける労災病院や労災保険指定医療機関へ所定の請求書を提出することに注意しましょう。

給付の種類
請求書の様式
提出先
療養(補償)等給付【必要な療養の給付の場合】
療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書(5号)
療養給付たる療養の給付請求書(16号の3)
療養を受けた医療機関
【必要な療養の費用の支給の場合】
療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(7号)
療養給付たる療養の費用請求書(16号の5)
所轄労働基準監督署長
休業(補償)等給付
休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書(8号)
休業給付支給請求書(16号の6)
障害(補償)等給付
障害補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書(8号)
障害給付支給請求書(16号の7)
遺族(補償)等給付遺族(補償)等年金の場合】
遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書(12号)
遺族年金支給請求書(16号の8)
【遺族(補償)等一時金の場合】
遺族補償一時金・複数事業労働者遺族一時金支給請求書(15号)
遺族一時金支給請求書(16号の9)
葬祭料等
葬祭料又は複数事業労働者葬祭給付請求書(16号)
葬祭給付請求書(16号の10)
介護(補償)等給付
介護補償給付・複数事業労働者介護給付・介護給付支給請求書(16号の2の2)

労災保険以外のアスベスト(石綿)被害者に対する救済

アスベスト(石綿)被害者は、労災保険給付を受けられない場合であっても、「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下、「石綿健康被害救済法」といいます。)に基づく給付を受けることができる可能性があります。

また、労災保険給付を受けている場合であっても、アスベスト(石綿)訴訟によって司法的な救済を受けることができる可能性があります。
ここでは、労災保険以外のアスベスト(石綿)被害者に対する救済を解説します。

(1)石綿健康被害救済法に基づく給付

「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下、「石綿健康被害救済法」といいます。)とは、日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病にかかった方またはその遺族に対して、医療費等の給付をすることを内容とする法律です。

石綿健康被害救済法は、労災給付の対象とならない方(アスベスト(石綿)工場の周辺住民等)や、労災保険の対象であったが時効によって労災給付を受けることができなくなった方について、その迅速な救済を図るために制定されました。

そのため、労災保険の対象とならない方であっても、以下にある要件を満たすことによって石綿健康被害救済法に基づく給付を受けることが可能です。
なお、労災保険給付と石綿健康被害救済法に基づく給付を同時に受けることはできません。労災保険の対象となる方については、同法に基づく給付の対象とはなりませんのでご注意ください。

【要件について】
「日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病にかかった旨の認定を受けた」こと(石綿健康被害救済法4条1項)、または、指定疾病にかかって死亡した者の遺族である旨の認定を受けること(同法5条1項)です。

そして、「指定疾病」とは、アスベスト(石綿)を吸入することにより発症する疾病であって、次の4種類の疾病をいいます(同法2条1項)。

  • 中皮腫
  • 肺がん
  • 著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺
  • 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚

【給付内容について】
遺族が受け取ることができる石綿健康被害救済制度の給付内容は、指定疾病で療養中に機構による認定後に死亡した場合、救済制度に申請する前に死亡した場合で異なります。

また、救済制度に申請する前に死亡した場合については、指定疾病の種類によって、時効期間が異なります。

【指定疾病で療養中の方が救済制度で認定後に死亡した場合の給付】

給付の種類請求できる場合給付内容請求期限
葬祭料死亡した被認定者の葬祭を行う場合19万9000円被認定者が死亡した被の翌日から2年以内
未支給の医療費・療養手当死亡した被認定者に支払うべき医療費・療養手当で、被認定者に未支給のものがある場合、被認定者が死亡した当時、被認定者と生計を同じくしていた二親等以内の親族のうち最優先順位の者に支給される。医療費については、死亡した被認定者が、療養を開始した日以降にかかった認定疾病にかかる保険医療費の自己負担分のうち、医療費として被認定者に支給していないもの。
療養手当については、対象月のうち、未支給となっているもの。
医療費の支払いを行った日の翌日から2年以内。
ただし、療養を開始した日から申請日の前日までの医療費については、申請日から2年以内。
救済給付調整金被認定者に支給された医療費と療養手当および遺族に支給した未支給の医療費・療養手当の合計金額が280万円に満たない場合、その差額を、被認定者が死亡した当時、被認定者と生計を同じくしていた二親等以内の親族のうち最優先順位の者に支給される。被認定者に対して支給された医療費、療養手当および未支給の医療費・療養手当の合計金額が280万円に満たない場合、その差額。
なお、医療費には、石綿健康被害医療手帳を医療機関に提示することにより支給された医療費を含む。
被認定者が死亡した日の翌日から2年以内。

【救済制度に申請する前に指定疾病で死亡した場合の給付(疾病が中脾腫・石綿による肺がんの場合)】

給付の種類請求できる場合給付内容請求期限
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2006年3月26日以前に死亡した場合)石綿健康被害救済法施行日(2006年3月27日)以前に、指定疾病に起因して死亡した者の遺族で、死亡した当時、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
2022年3月27日まで
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2006年3月27日以降に死亡した場合)石綿健康被害救済法施行日(2006年3月27日)以降に認定の申請を行わず指定疾病により死亡した者の遺族で、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
死亡した日の翌日から15年以内。
ただし、中皮腫または肺がんにより、2006年3月27日から2008年11月30日までに死亡した者の遺族からの請求は、2023年12月1日まで。

【救済制度の申請する前に指定疾病により死亡した場合の給付(疾病が著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚)】

給付の種類請求できる場合給付内容請求期限
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2010年6月30日以前に死亡した場合)改正政令施行日(2010年7月1日)より前に指定疾病により死亡した者の遺族で、死亡した当時、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
2026年7月1日まで
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2010年7月1日以降に死亡した場合)改正政令施行日(2010年7月1日)以降に指定疾病により死亡した者の遺族で、死亡した当時、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
死亡した日の翌日から15年以内

(2)工場型アスベスト訴訟における賠償金(和解金)

工場型アスベスト(石綿)訴訟とは、アスベスト(石綿)工場での作業が原因で、アスベスト(石綿)粉じんにばく露し、その結果として健康被害に遭われた元労働者やその遺族が、適切な規制権限を行使しなかった国にその賠償を求める訴訟をいいます。

2014年10月9日、最高裁は、大阪泉南地域にあるアスベスト(石綿)工場の元労働者やその遺族が国を相手に提起した国賠請求訴訟について、
「労働大臣は、昭和33年5月26日には、旧労基法に基づく省令制定権限を行使して、罰則をもってアスベスト工場に局所排気装置を設置することを義務付けるべきであったのであり、旧特化則が制定された昭和46年4月28日まで、労働大臣が旧労基法に基づく上記省令制定権限を行使しなかったことは、旧労基法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法である」
と判断し、国側敗訴の判決(以下、この判決を「泉南アスベスト(石綿)訴訟判決」といいます。)を言い渡しました。

現在、この判決をもとに、同様の状況にあるアスベスト(石綿)工場の元労働者及びその遺族については、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起し、所定の和解要件を満たすことが確認されれば、国と裁判上の和解をすることにより賠償金(和解金)を受け取ることが可能となっています。

厚生労働省により公表されている和解要件は以下のとおりです。

厚生労働省が公表している賠償金(和解金)額は以下のとおりです。

この表にある「じん肺管理区分」とは、じん肺健康診断に基づいて、じん肺を区分したものです(じん肺法4条2項)。なお、じん肺とは、「粉じんを吸入することによって肺に生じた繊維増殖変化を主体とする疾病」(同法2条1項1号)をいい、アスベスト(石綿)粉じんを吸入したことによる石綿肺もこのじん肺の一つです。

粉じん作業に従事した事業場に勤務している間は、事業者によりじん肺健康診断が行われ、じん肺管理区分の決定申請等についても事業者が行うこととなっていますが、離職後については、ご自身でじん肺健康診断を受けて、お住まいの労働局へ申請をする必要があります。

じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合550万円
管理2で合併症がある場合700万円
管理3で合併症がない場合800万円
管理3で合併症がある場合950万円
管理4、肺がん、中皮腫、びまん性硬膜肥厚の場合1150万円
アスベスト(石綿)肺(管理2・3で合併症なし)による死亡の場合1200万円
アスベスト(石綿)肺(管理2・3で合併症あり又は管理4)肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合1300万円

(3)建設型アスベスト訴訟における給付金

建設型アスベスト(石綿)訴訟とは、建設作業に従事していたことによってアスベスト(石綿)にばく露し、石綿肺等のアスベスト(石綿)関連疾患に罹患した元建設作業員やその遺族が、国および建材メーカーを被告として、その賠償を求める訴訟をいいます。

2021年5月17日、最高裁判所第一小法廷により、4つの建設アスベスト(石綿)訴訟(横浜訴訟、東京訴訟、京都訴訟、大阪訴訟)について、国及び建材メーカーの責任を認める判決が言い渡されました。
また、同月18日、この最高裁判決を受け、建設アスベスト(石綿)訴訟の原告団・弁護団と国との間で、救済の要件等を定めた基本合意書が締結されました。

そして、2021年6月9日、参院本会議で、『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律案(以下、「給付金法」といいます。)』が可決しました。
この法律は、建設業務に従事したことによってアスベスト(石綿)にばく露し、中皮腫や肺がん等の疾病にかかった方に対して、訴訟手続によらずに、最大1300万円の給付金を支給するというものです。

これまで、建設業務に従事したことによるアスベスト(石綿)被害については、主に、国や建材メーカーを被告とする損害賠償請求訴訟を提起することで、金銭的な救済が目指されていました。

上記の法律案が成立することによって、国との関係では、このような損害賠償請求訴訟を提起することなく、金銭的な救済が図られることとなります。

(3-1)要件について

給付金の支給要件は、特定石綿被害建設業務労働者等であること、および、期間制限を経過していないことの2つです。

(3-1-1)特定石綿被害建設業務労働者等であること

『特定石綿被害建設業務労働者等であること』とは、労働基準法9条に規定される「労働者」やいわゆる一人親方等であって、特定石綿ばく露建設業務に従事することにより石綿関連疾病にかかったものをいいます(給付金法2条3項)。

【特定石綿ばく露建設業務について】
特定石綿ばく露建設業務については、給付金法2条1項に規定されています。
日本国内において行われた石綿にさらされる建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業若しくはこれらの作業の準備の作業に係る業務又はこれに付随する業務をいう。)のうち、以下の1、2の業務

  1. 石綿の吹付けの作業に係る業務(1972年10月1日~1975年9月30日までの間に行われたものに限る。)
  2. 屋内作業場であって厚生労働省令で定めるものにおいて行われた作業に係る業務(1975年10月1日~2004年9月30日までの間に行われたものに限る。)

【石綿関連疾病について】
石綿関連疾病については、給付金法2条2項に規定されています。
石綿を吸入することにより発生する次に掲げる疾病
(ア) 中皮腫
(イ) 気管支又は肺の悪性新生物(肺がん)
(ウ) 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
(エ) 石綿肺(じん肺管理区分の管理2、管理3、管理4、またはこれに相当するものに限る)
(オ) 良性石綿胸水

(3-1-2)期間制限を経過していないこと

給付金の請求には期間制限があります。そのため、期間制限を経過していないことも給付金の支給要件となります。
期間制限については、給付金法5条2項に規定されています。

[疾病][起算日]
(i)じん肺管理区分管理2、管理3及び管理4と決定された石綿肺管理区分の決定があった日から20年
(ii)(i)以外の石綿関連疾病罹患者※石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断があった日から20年
(iii)死亡死亡日から20年

※じん肺管理区分の決定を受けていないが、じん肺管理区分管理2以上の石綿肺に相当する石綿肺の起算日ついては、(i)ではなく、(ii)となると考えられます。

(3-2)特定石綿被害建設業務労働者等が死亡した場合について

特定石綿被建設業務労働者等が死亡した場合、遺族が自己の名で給付金を請求することができます(給付金法3条2項)。
遺族が複数いる場合における、給付金の支給を受けることができる順位については、給付金法3条3項、同条4項に規定されています。

1位配偶者(事実婚の配偶者を含む)
2位
3位父母
4位
5位祖父母
6位兄弟姉妹

遺族が請求する場合について、注意点が2点あります。

まず1点目は、同順位の遺族が複数いた場合、1人の請求が同順位の遺族全員の請求とみなされるという点です。

給付金法3条5項では、
「給付金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人がした請求は、その全額について全員のためにしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす」
とされており、例えば、配偶者や内縁者が不在で、子が2人以上いる場合、複数の子のうち1人が給付金を請求した場合、子の全員が請求したものとみなされます。

次に、給付金の支給を受けることができる順位が民法の相続法の規定と若干異なっている点です。民法では、配偶者と子がいる場合、それぞれ法定相続人となり、2分の1ずつの法定相続分を有していることになります。
もっとも、給付金法では、配偶者または内縁者がいた場合、たとえ子がいたとしても、配偶者または内縁者しか請求権がないことになります。

(3-3)給付金額について

給付金額については、『疾病の類型によって基本的な給付金額を算出→減額事由の有無により減額』というプロセスで決定されます。

(3-3-1)基本的な給付金額について

給付金額については、給付金法4条1項に規定されています。

[疾病][金額]
(a)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者550万円
(b)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者700万円
(c)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者800万円
(d)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者950万円
(e)中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺にかかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水にかかった者1150万円
(f)(a)又は(c)により死亡した者1200万円
(g)(b)(d)(e)により死亡した者1300万円

なお、遅延損害金及び弁護士費用については支給されませんので、注意が必要です。

(3-3-2)減額事由について

減額事由は、石綿ばく露期間による減額、喫煙習慣による減額の2つです。

【石綿ばく露期間による減額(給付金法4条2項)】
下記表の石綿ばく露期間を下回る場合には、100分の90に減額されます。

[疾病][石綿ばく露期間]
肺がん又は石綿肺10年
びまん性胸膜肥厚3年
中皮腫又は良性石綿胸水1年

減額後の給付金額は下記表のようになります。

[疾病][金額]
(a)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者495万円
(b)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者630万円
(c)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者720万円
(d)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者855万円
(e)中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺にかかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水にかかった者1035万円
(f)(a)又は(c)により死亡した者1080万円
(g)(b)(d)(e)により死亡した者1170万円

【喫煙習慣による減額(給付金法4条3項)】
肺がんにかかった特定石綿被害建設業務労働者等で、喫煙習慣がある者については、100分の90に減額されます。
なお、石綿ばく露期間による減額事由も認められる場合、石綿ばく露期間による減額により算出された金額に、100分の90を乗じた金額が給付金額とされます。

[疾病]
[ばく露期間減額の有無]
[減額後の金額]
肺がんによる死亡ばく露期間による減額なし
1170万円
ばく露期間による減額あり
1053万円
肺がんばく露期間による減額なし
1035万円
ばく露期間による減額あり
931万5000円

【まとめ】労災保険給付を受けるためには、業務上疾病であると認められる必要がある

本記事をまとめると以下のようになります。

  • 労災保険給付を受けるためには、発症した疾病が業務上疾病であると認められる必要がある
  • 業務上疾病であると認められるためには、疾病ごとにあらかじめ定められている認定基準を満たす必要がある
  • 労災保険の給付内容には様々な種類があり、給付によって時効期間が異なる場合がある
  • 労災保険給付を受けられない場合であっても、石綿健康被害救済法に基づく給付を受けることができる可能性がある
  • 労災保険給付を受けている場合であって、アスベスト(石綿)訴訟による救済を受けることができる可能性がある
  • 工場型アスベスト(石綿)訴訟では、国との和解要件が明確化されており、アスベスト(石綿)工場の元労働者やその遺族は、国を相手に国賠請求訴訟を提起し、国との間で裁判上の和解を成立させることによって、賠償金(和解金)を受け取ることが可能
  • 建設型アスベスト(石綿)訴訟では、2021年6月9日、参院本会議で、『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律案』が可決され、訴訟によらずに、最大1300万円の給付金の支給する受けることができる可能性がある

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