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性的不能を理由に離婚はできる?判例とともに解説!

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「配偶者は性的不能のため、性交渉ができない。これを理由に離婚できる?」

法律上、性交渉は夫婦関係において必須のものとはされていません。
とはいえ、性交渉は夫婦の重要な要素のひとつです。
時として、配偶者の『性的不能』は離婚問題にまで発展します。

では、配偶者の性的不能を理由に離婚をすることはできるのでしょうか。
この点、双方の合意があれば、性的不能を理由に離婚できます。

双方が離婚に合意しない場合は、裁判で離婚することになりますが、その場合、法律に定められた「離婚事由」に該当しなければ離婚できません。
この点、性的不能により性交渉を行うことが継続的に不能であり、今後も性交渉を行うことが期待できない場合は、離婚事由に該当する可能性があります。

今回の記事では、

  • 性的不能と離婚事由
  • 性的不能を理由に離婚したい場合のポイント
  • 性的不能以外に離婚事由になりうる性的問題

などについてご説明します。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

性的不能とは?

『性的不能』とはどのような状態をいうのでしょうか。
『性的不能』とは、ED(勃起不全)や性機能障害など、本人の意思にかかわらず性交渉ができない状態をいいます。
一言で性的不能といっても、原因はさまざまなケースが考えられます。

高齢になって自然に性的な能力を失ってゆく場合もありますが、若い方であってもストレスなどの心因的なものから、生活習慣によるもの、身体的疾患そのものや、その治療薬が起因する場合などさまざまです。

性的不能は離婚事由として認められる?

夫婦の一方が性的不能のために他方が離婚したいと思った時、双方が離婚に合意すれば離婚ができます(夫婦の合意によって離婚することを「協議離婚」と言います)。

他方、夫婦の一方が離婚したいと思っても性的不能の配偶者が離婚に合意しない場合、最終的には裁判で裁判官に離婚を認めてもらう必要があります(これを「裁判離婚」と言います)。
裁判離婚が認められるためには、法律に定められた『離婚事由』がなければいけません。

性的不能は「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)という離婚事由に該当する可能性があります。

婚姻に求めるものは夫婦によって違います。

結婚する前から配偶者の性的不能を承知していたのであれば、結婚後に問題にはならなかったかも知れません。
しかし結婚した後に配偶者の性的不能を知った場合、結婚を維持することでは自分の求める夫婦像や家族像の実現ができなくなることもあります。
特に、

  • 性的不能によって性交渉が全くできない
  • 医学的な治療によっても回復が不可能である
  • 治療をしたら回復するかもしれないのに、治療を拒否する

このような事情がある場合には、離婚を考えたとしても、決して責められないでしょう。
特に、性的不能により性交渉を行うことが継続的に不能であり、今後も性交渉を行うことが期待できない場合に離婚事由として認められる傾向があります。

性的不能を理由とした判例について

性的不能を理由とした離婚に関する判例を2つご紹介しましょう。

判例1:性的不能が離婚事由として認められた判例
(最高裁判決昭和37年2月6日民集第16巻2号206頁)

この判例では、次のような事情から、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められました。

  • 夫の性的不能について、約一年半の同居期間中改善しなかったこと
  • 妻が夫は睾丸を切除したけれど夫婦生活には大して影響がないとの医師の言を信じて結婚したこと
  • 夫婦の性生活は婚姻の基本となるべき重要事項であること

参考:最高裁判所判例集|裁判所 – Courts in Japan

判例2:性的不能を原因とした離婚及び慰謝料の請求が認められた事案
(京都地裁判決昭和62年5月12日判時1259号92頁)

この事案では、婚姻後、長年にわたり性交渉がないことは、原則として「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとした上で、次のような事情から離婚及び慰謝料の請求が認められました。

  • 新婚旅行から3年半の同居期間中、性交渉が正常に行われていなかったと推認されること
  • 結婚に際して、性的不能であることを知らせなかったこと
  • 婚姻に際して、相手方に対し、性的不能であることを告知しないのは信義則に照らし不法行為を構成すること

これらは、いずれも結婚にあたって夫が性的不能であることを知らなかった事例です(判例1については、生殖能力がないということは知っていました)。

他方、もしも結婚前から相手が性的不能であることを知っていたのであれば、性的不能であることだけでは離婚が認められない可能性が高いでしょう。

性的不能以外に離婚事由となりうる性的問題

司法統計によると、男女とも2019年度の離婚申立て理由の上位10位以内に「性的不調和」が入っています。

年次 申立て件数に対する割合(%)
総数(件) 総数 性格があわない 異性関係 暴力を振るう 酒を飲みすぎる 性的不調和 浪費する 病気 精神的に虐待する 家庭を捨てて省みない 家族親族と折り合いが悪い 同居に応じない 生活費を渡さない その他 不詳
2013 48,479 100.0 44.4 19.5 24.7 6.6 8.1 12.1 3.4 24.9 9.9 7.8 2.7 27.5 11.1 2.6
2014 47,529 100.0 40.9 18.7 23.2 6.5 7.9 11.3 3.1 24.3 9.2 7.4 2.6 28.5 11.5 4.3
2015 47,908 100.0 40.5 18.0 22.7 6.4 7.6 11.3 2.8 25.6 9.0 7.6 2.4 28.3 12.4 4.8
2016 48,359 100.0 39.3 17.3 21.6 6.2 7.2 10.6 1.7 25.6 8.5 6.9 2.1 29.1 11.2 5.1
2017 47,807 100.0 39.4 16.7 21.6 6.2 7.3 10.5 1.9 25.3 8.3 6.8 1.8 28.9 10.8 5.7
2018 46,756 100.0 39.1 15.8 20.8 5.9 7.0 10.0 1.8 25.2 7.7 6.8 1.8 29.4 11.1 6.0
2019 44,040 100.0 39.2 15.4 20.5 6.3 6.6 9.8 1.8 25.2 7.3 6.5 1.7 29.4 10.5 6.4
2019順位 1 5 4 10 8 6 3 7 9 2
2013 18,345 100.0 63.5 15.5 8.1 2.4 13.0 12.3 5.2 17.4 6.9 14.9 9.5 4.2 20.1 2.4
2014 18,009 100.0 61.4 15.3 8.2 2.3 13.6 12.0 5.3 17.5 6.8 14.7 10.2 4.0 20.6 3.1
2015 17,776 100.0 61.3 14.8 8.5 2.4 13.1 12.4 5.1 18.7 6.3 14.9 9.9 4.4 21.2 3.1
2016 18,135 100.0 61.4 14.3 8.5 2.3 13.3 12.5 4.4 19.8 6.1 14.8 9.5 3.8 20.4 3.3
2017 17,918 100.0 61.6 14.2 8.4 2.4 12.9 12.4 3.9 20.2 5.6 13.7 8.8 4.0 19.8 3.7
2018 17,146 100.0 60.9 13.8 8.8 2.2 12.5 11.8 3.8 19.7 5.2 13.4 9.3 4.3 20.6 3.7
2019 16,502 100.0 60.3 13.4 9.1 2.4 11.9 12.1 4.0 20.2 5.5 13.1 8.9 4.3 20.2 4.2
2019順位 1 3 7 6 5 2 9 4 8 10

※申立ての動機は、主なものを3個まで挙げる方法での重複集計による。

参考:第19表 婚姻関係事件数-申立ての動機別|裁判所 – Courts in Japan

このことからも、性的な調和を婚姻関係において重視している夫婦が多いことがうかがわれます。

「性的不調和」とは何ですか?

夫婦間の性的な問題全般です。
これまでお話した「性的不能」もそうですし、他には、セックスレスや性嗜好の不一致などがあります。

これらが離婚事由として認められるかどうかは、性的不調和そのものというよりも、それを含めて、夫婦の婚姻関係を維持することが困難かどうかという点が判断のポイントとなっているようです。

(1)セックスレス

『セックスレス』とは、カップルにおいて特殊な事情なくお互いの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期に渡り性交あるいはセクシュアル・コンタクトがないことが予想されること、と言われています。

この目安となる『月に1回』程度の性交渉や性的接触があれば、セックスレスとはいえないと考えられています。
また、セックスがほとんど行われない夫婦もいますので、離婚の原因となるのは、セックスレスの期間やセックス頻度の他『拒む』回数や頻度が高い場合といえます。

自分も夫もセックスにあまり関心がないので、セックスはほとんどしていません。
その場合もセックスレスとして離婚理由になりますか?

お互いにセックスレス状態に納得しているのであれば、離婚理由にはなりません。
セックスレスが問題になるのは、夫婦の一方が求めているのに、他方が一方的に拒否しているような場合です。

セックスレスの場合、夫婦のどちらか一方が性交渉を求めているにもかかわらず、もう一方が特段の理由なく拒否し続けたケースなどは、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。

ただし、セックスレスになった原因が自分にある場合、婚姻を継続し難い重大な事由にはならない可能性が高くなります。
例えば、次のような場合です。

  • セックスレスの原因が、自分が乱暴なセックスを望んだため相手が嫌がっている場合
  • 自分が浮気をしたことが原因で相手が嫌悪感を抱いてしまった場合
  • 家事育児などの負担を相手の過剰に負わせてしまった結果、相手が疲れてセックスに応じることが困難になってしまった場合など

(2)性的嗜好の不一致など

性的嗜好の不一致や性的異常、不本意な性交渉の強要なども離婚事由として認められる場合があります。

過去の判例では離婚が認められた事例をいくつかご紹介します。

  • 過度の性交を要求した上、性行為の際に必ず靴を履くことを強要した事例(大阪地判昭和35年6月23日判時237号27頁)。
  • 夫が同性愛者で、妻との性交渉がなくなった事例(名古屋地判昭和47年2月29日)
  • 自分の過失による交通事故により頸部脊椎の損傷によって神経が麻痺した夫が、毎日のように夫婦関係を求め、妻がいろいろ努力をしても満足な結果が得られなかった事例(東京高判昭和52年5月26日)。
  • ポルノ雑誌に異常な関心を示し、妻との性交を拒み、ポルノ雑誌を見ながら自慰行為にふけっていた事例(浦和地判昭和60年9月10日)。
  • ポルノビデオを見て自慰行為にふけり、妻との性交を拒否した事例(福岡高裁判決平成5年3月18日)。

また、次のようなケースなども離婚事由として考えられます。

  • 夫婦どちらか一方の性欲が強すぎてもう一方が断ると暴力を振るう
  • SM行為を強要する
  • 性行為を撮影して、後で見ることを強要する
  • 避妊しない性行為にこだわり、妊娠した結果中絶を強要する  など

なお、嫌がる相手に性交渉を強要した場合はDVとなり、その度合によっては夫婦間であっても刑法上の強制性交罪が成立する場合もあります。

性的不能や性的不調和を理由に離婚したいときのポイント

性的不能や性的不調和が離婚事由として認められるかどうかは「夫婦の婚姻関係を維持することが困難となるかどうかという点」から具体的な事案に照らしてケースバイケースで判断されることになります。

離婚が認められやすくなるポイントや慰謝料請求できるケースについて解説します。

(1)証拠を準備する

性的不能や性的不調和を理由として離婚をするにしても、性生活は極めてプライベートなことですので、なかなか客観的な証拠を用意するのは難しく、証明するのは大変です。

性的不能や性的不調和を理由とした慰謝料請求が認められるためには、性的不能・性的不調和自体の証拠の他、それが婚姻関係が継続できないと認められるほどの「重大な事由」にあたると推認できる証拠が必要となります。

例えば、次のような事情に関する証拠を準備しておかなくてはいけません。

  • 性交渉を求めた時の状況
    (いつ、どのように、どのくらいの頻度で求めたのかなど)
  • 性交渉を拒まれた時の状況
    (拒む時の相手の言動、何度くらい拒まれたのかなど)
  • 性交渉がない期間
  • 性交渉に向けての努力の有無・内容
  • 性的不能であれば、治療状況
    (積極的に治療に努めたのかなど)  など

このような事情を、できる限り日記などに逐一記しておくのが良いでしょう。

また、夫婦それぞれの帰宅時間や就寝時間、起床時間などはできる限り毎日記録しておくと証拠として使える可能性があります(例えば、後から、仕事が忙しくて余裕がなかったなどの主張に反論できます)。

他にも、性的不能等をめぐる夫婦間の言い争いについての録音記録なども証拠として有用です。
また、性的不調和の原因が不倫の可能性がある場合、不倫の証拠を集めるのも良いでしょう。

不倫の証拠として使えるものについては、以下の記事が詳しいのでご参照ください。

証拠とは言っても、性的なことですから恥ずかしいです。
証拠がないと、離婚はできないんですか?

相手が離婚に応じてくれればもちろん離婚はできます。
ですが、何も証拠がない状況では、相手も足元を見て自分の主張を通して離婚に応じない可能性があります。
相手が離婚に応じず、最終的に裁判をすることになれば、主張が認められるために大切なのはやはり証拠です。
まずはご自身でできる限りの証拠を準備することをお勧めします。

(2)慰謝料請求ができるか検討する

さらに、性交渉を継続的に拒否された場合や、性的不調和で性交渉をしない期間が長期にわたる場合などは、慰謝料を請求することができるケースもあります。

とくに性的不調和から配偶者が不貞行為に及んでいる場合は、慰謝料請求ができる可能性は高くなります。
慰謝料請求ができる場合にあたるかどうかについては、いろいろな事情を考慮することになるため、まずは離婚問題を取り扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

【まとめ】配偶者の性的不能は、離婚事由にあたる可能性がある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 性的不能とは、ED(勃起不全)や性機能障害など、本人の意思にかかわらず性交渉ができない状態
  • 性的不能は、離婚の事由として民法770条第1項5号に定められている「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚事由として認められることがある
  • 性的不能は『性的不調和』のひとつであり、ほかに、セックスレスや性的嗜好の不一致などが離婚事由として認められる場合がある
  • 性的不能などを理由に離婚したいのであれば、証拠を準備する必要がある
  • 性的な問題で離婚する際は、慰謝料を請求できる可能性もある

今回の記事では、性的不能と離婚についてご説明しました。性的不能を理由に離婚をすると決意しても、「配偶者と話したくない」など思われているかもしれません。また、配偶者と離婚について話しても、感情的になってしまい、「話し合いができない」「話すとストレスになる」などと感じてしまうかもしません。

このような場合には、離婚問題を取り扱うアディーレ法律事務所への相談をご検討ください。弁護士に相談・依頼することで、離婚に向けた話し合いは弁護士があなたに代わり行いますので、あなたにかかる負担やストレスを減らすことができるでしょう。

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離婚でお悩みの方は、離婚問題を積極的に取り扱っているアディーレ法律事務所(フリーコール0120-783-184)にご相談下さい。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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