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自己破産は相続にどう影響する?財産が得られなくなる場合などを解説

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今回採り上げるのは、友人同士で相談に訪れたAさん、Bさんからのお悩み。

【Aさん】先生にご協力いただいて、昨年、ようやく自己破産を申立てることができ、裁判所にも免責とやらを認めてもらいました。昨日、父親が亡くなったのですが、私は父の遺産を受け取っても大丈夫なのでしょうか。
【Bさん】私も同じように先週父親が亡くなったのですが、私はAさんと違い、まだ自己破産を裁判所に申立てていません。私の場合はどうなりますか。

今回のテーマは、「自己破産と相続」。果たして自己破産は相続にどのように影響するのでしょうか。
結論からいうと、自己破産(の開始決定)後に相続が開始したAさんには自己破産をしたことの影響は基本的にありません。これに対して、Bさんは相続の金額によっては自己破産ができなくなるなどの影響を受けると考えられます。
それでは詳しく弁護士が解説します。

自己破産をした人は相続権がなくなるの?

現代の破産法に、破産者を罰する概念はなく、破産したからといって相続権や選挙権などの権利を失うわけではありません。そのため、自己破産後にする相続には基本的に影響はありません。

(1)自己破産とは?

「自己破産」とは、財産、収入が不足し、借金返済の見込みがないこと(支払不能)を裁判所に認めてもらい、原則として、法律上、借金の支払い義務を免除してもらえる手続です。
簡単に言うと、客観的にみて借金の返済ができないので、借金を帳消しにしてもらう手続きです(ただし、公租公課など一部の返済義務は自己破産をしても帳消しにはなりません)。

自己破産手続きでは、生活に必要な範囲を超える一定の財産が処分されます。
次の3つの条件を満たす場合、その財産は自己破産手続きにおいて処分される可能性が高いでしょう。

  1. 破産手続開始時に債務者(破産する人)に属していること
  2. 差押え可能であること
  3. 価値が一定の基準(東京地裁では現金を除く財産について20万円)を上回ること

ここで着目していただきたいのが、「破産手続き開始時」に所有している財産に限られることです。開始決定後に所有するに至った財産(新得財産)は、自己破産においても処分されません。

(2)自己破産をした人は相続欠格や相続廃除にあたるの?

もしかしたら自己破産をするとその後永遠に一定程度の財産を所有できないのではないか、たとえば亡くなった父親の銀行預金を引き出して自分のものにできないのではないか、と思う人がいるかもしれません。しかし、自己破産の目的は、債務者の経済的再生を図ることなので、自己破産後の資産形成に関して制限はありません。

そもそも相続人になることのできない人は、民法891条で次の5つに定められています。
これらの事情が認められる場合には、法律上当然に相続人になれません。このような事情を「相続欠格(そうぞくけっかく)」といいます。

  1. 被相続人(例:冒頭の事例における父親)や自分と同等若しくは自分に優先する相続人に対する故意による殺人または殺人未遂、殺人予備で刑に処された人(1号)
  2. 被相続人を殺害した犯人を知っているのに、告発・告訴をしなかった人(ただし、是非の弁別がない人や犯人が自分の配偶者若しくは直系血族であった人を除く)(2号)
  3. 詐欺や強迫によって被相続人の遺言の作成や撤回などを妨げた人(3号)
  4. 詐欺や強迫によって被相続人に遺言の作成や撤回などをさせた人(4号)
  5. 被相続人の遺言を偽造・変造したり破棄・隠匿をしたりした人(5号)

891条を読めばわかるとおり、自己破産をしたことは相続欠格事由に該当しません。
では次に、被相続人が自己破産を理由に、相続させないとすることができるのかを解説します。たとえば、冒頭の事例でAさんの父親が次のように考えていたとすれば、その願いは可能でしょうか。

私の娘Aは大のパチンコ好きらしく、お金があると使いこんでしまうようです。自己破産してから借金はしていないのかもしれませんが……、Aにお金を残してもおそらくパチンコで使ってしまうのでしょうから、妻にすべて残したいのです。Aを相続人から外すことはできますでしょうか。

「全財産を妻〇〇に相続させる」との遺言を残しても、相続人が遺留分減殺請求をする限り、すべての財産を相続人に渡さないとすることはできないのが原則です。しかし、例外的に家庭裁判所に相続人の相続権を奪ってくれるように請求できることがあります。このような制度を「相続廃除(そうぞくはいじょ)」といいます。

民法892条において、相続廃除が認められうるのは次の3つのケースです。

  1. 被相続人を虐待したケース
  2. 被相続人に対して重大な侮辱を与えたケース
  3. 推定相続人にその他の著しい非行があったケース

自己破産をしたからといって、直ちに相続廃除が認められるわけではありません。
Aさんのケースでも単にパチンコが好きで自己破産しただけで、父親に迷惑をかけていないのであれば、相続廃除は認められない可能性が高いでしょう。
もっとも、程度問題なので、必ずしも相続廃除が認められないとは限りません。

借金を理由として、相続廃除が認められたケースもあります。

家業である農業をせずに方々を転々とした挙句、被相続人の印鑑を冒用しつくった借金の返済を被相続人自身にさせ、また、被相続人の不動産を担保として多額の借金をした。被相続人らの再三にわたる注意にも耳を貸さずに、一向に自身の生活態度を直す様子がない。このような状況において、被相続人の妻や他の子ら推定相続人も相続廃除をやむなしと考えている。

このような事実関係において、上記3の著しい非行があったものとして相続廃除が認められました(函館家庭裁判所審判昭和43年12月2日家庭裁判月報21巻5号60頁)。

(3)自己破産した人は相続放棄をしなければならないの?

相続放棄をするかどうかは、相続人が自由に決めることができます。
自己破産をしたからといって相続放棄をしなければならないわけではありません。
逆に、自己破産をしたからといって相続放棄をしてはいけないこともありません。
通常どおり、被相続人の財産の内容などを踏まえて、相続放棄するかを検討しましょう。

相続を放棄するには、裁判所に相続放棄の申述書等を提出します。
相続放棄にあたって、必要となる主な書類や手数料は以下のとおりです。

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
  • 収入印紙800円分(申述人1人につき)
  • 連絡用の郵便切手

相続放棄をする人の立場に応じて他にも必要な書類があるので、詳しくは被相続人が最期に住んでいた地域を管轄する家庭裁判所に尋ねてみてください。

自己破産が相続に影響する場合とは?

自己破産が相続に影響する可能性があるのは、冒頭のBさんのように、基本的に自己破産を裁判所に申立てる前に相続が起きた場合です。どのような影響があるのかみてみましょう。

(1)相続財産も含めて支払不能かどうかを判断!

相続が開始すると、被相続人の財産は相続分に従い、相続人の財産として扱われます。
その結果、借金を手持ちの資産などで支払不能とはいえなくなることがあります。
たとえば、200万円の借金で自己破産をしようとしていた人が300万円の貯金を相続したら、貯金を返済に充てることで完済できるため、もはや自己破産をすることはできません(その後の事情で自己破産が相当になった場合を除きます)。相続財産が借金を完済できるほどでなかったとしても、3年程度で完済可能となれば、支払不能と認められない可能性が高いでしょう。

(2)一定の基準を上回る相続財産は自己破産手続きで処分される

相続財産は、債務者自身の財産と扱われるので、自由財産の範囲を超えるものは、原則として自己破産手続きに則って処分されます。自己破産手続きの中で処分されることに抵抗がある場合、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったものとみなされるため、自身が相続することはできませんが、相続財産が自己破産手続きで処分されることはありません。相続放棄をするかどうかは、相続人が個別に決められるため、自身が相続放棄した財産は、相続放棄をしなかった相続人に受け継がれることになります。

ただし、相続放棄ではなく遺産分割協議をする場合には注意してください。相続財産が自己破産手続きで処分されることを回避する目的で他の相続人が過大に財産を取得するような行為は詐害行為として破産管財人の否認権の対象となることがあります。

遺産分割協議に基本的に時間的な制限はありませんが、相続放棄は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内にしなければなりません。両親など被相続人が亡くなったら、自己破産を依頼している弁護士に相談するのが良いでしょう。

(3)被相続人の借金はどうなるの?

被相続人の生前の借金は、相続開始とともに、相続人に受け継がれることになります。
もし被相続人の借金も含めて整理したい場合、自己破産の開始決定前であれば、相続した借金も含めて自己破産するか、相続放棄(または限定承認)をすることも考えられるところです。

なお、被相続人の借金だけを理由に自己破産をしようといている場合、相続放棄をすることで自己破産を避けられる可能性があります。

(4)相続財産を隠すと免責が認められないことも……

自己破産の開始決定前に相続が起きた場合、相続財産をそのまま手元に残すのは難しいでしょう。そのため、相続財産を裁判所に言わずに隠し通したいと考える人がいます。しかし、財産を隠そうとしても何らかのきっかけで発覚してしまう可能性のほうが高く、また、財産隠しは免責不許可事由にあたり、借金の返済義務が帳消しにならない危険性があります。
自己破産を依頼した後に相続があったなら、弁護士に必ず報告しましょう。

【まとめ】自己破産を検討中の方はアディーレ法律事務所へご相談ください

自己破産の開始決定後に相続が開始した場合には、自己破産の影響はほとんどありません。例外的に、借金苦を理由に被相続人に多大な迷惑をかけていた場合には、被相続人から相続廃除を請求され、相続権を失うことがあります。
これに対して、自己破産の開始決定前に相続が開始した場合には、相続放棄をしない限り、さまざまな影響があると考えられます。相続財産としてどのようなものがあるかを含めて、相続について自己破産を依頼した弁護士に連絡するようにしましょう。
相続の開始時期は、誰にもコントロールできるものではありません。借金でお困りの場合には、早く経済生活を立て直せるように、弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産のご相談なら、アディーレ法律事務所にご相談ください。